やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

訳者のことば
 本書『Pre-Feeding Skills』の第1版が出版されたのは,1987年であった.奇しくも同じ年に私がわが国でのこの領域における初めての著書となる『食べる機能の障害─その考え方とリハビリテーション』(医歯薬出版)を出版している.第1版の副題は“A comprehensive resource for feeding development“で,このたびの第2版の“A Comprehensive Resource for Mealtime Development”とは異なっており,分量もそれに応じて第2版の半分以下であった.第1版の特徴はそのなかに,食事そのものあるいは食事時間におけるさまざまな状態や行動の模擬体験実習が囲み記事の形で諸処に散りばめられていることである.それらが,障害児の食行動を知るうえで非常に参考になり読者に好評を得たことで,1999年に『Mealtime Participation Guide』として分離し出版されている(これも本書に劣らない大著である).その部分を抜き,しかもその後のこの領域の進展を加えた障害児の摂食問題のエッセンスとして改訂されたのが第2版である.この種の本は世界的にみても本書のほかに見あたらず,米国では「障害児の摂食障害に取り組む専門家にはこの本はMUST,すなわち必ず目を通すべき著書である」といわれているほどで,いわばこの領域におけるバイブル的専門書と解することができる.
 本書の主たる著者であるS.E.Morrisがこの道を目指したのは,1970年代初期と聞き及んでいる.彼女の最初の著書としては,1977年に出版した『Program Guidelines for Children With Feeding Problems』(48頁の小著)があり,日本語に翻訳出版されている(鷲田孝保訳:障害児食事指導の実際─話し言葉の基礎訓練.医歯薬出版,1979).障害児の摂食・嚥下に関するアプローチはヨーロッパで1940〜50年代頃に始まったといわれているが,当初は“いかにして食べさせるか”という介助法が主体であった.彼女のこの初期の本も介助法が主体となっている.このように,摂食・嚥下リハビリテーションは,ヨーロッパで障害児の摂食・嚥下の介助への取り組みとして始まったのである.
 これも不思議な縁であるが,同じ1977年に私はWHOのフェローシップでデンマークの歯科医師B.G.Russell(Children's Hospital in Vangede)のもとを視察研究に訪れており,その際に,彼がこの仕事にその約10年前から取り組んでいて,食べる機能の障害に対して歯科と理学療法科が共同で取り組んだいわゆる“バンゲード法”と彼らが呼んでいたリハビリテーション訓練法を紹介してくれた.これをわが国に紹介したことが,私がこの領域における研究・臨床に取り組んだきっかけとなった.
 当時は欧米でも,摂食・嚥下領域のリハビリテーション訓練法に関する文献や著書はほとんど見かけなかったが,1979年にヨーロッパで,D.Gallenderの著書『Eating Handicaps─Illustrated Techniques for Feeding Disorders』が出版されたことにより,数多くのリハビリテーションテクニックが紹介されて,われわれの臨床に大いに役に立った.その後,1980年代に入って米国の言語聴覚士Jeri A.LogemannによってVF(Modified Barium Swallow)が開発され,彼女はそれに基づく研究に関して『Evaluation and Treatment of Swallowing Disorders』(1983)と『Manual for the Videofluorogaraphic Study of Swallowing』(1986)という2冊の著書を相次いで出版している.これがきっかけとなって,米国では脳卒中,神経難病等のいわゆる成人中途障害における摂食・嚥下リハビリテーションへの取り組みが急速に進歩した.また,ヨーロッパでは,脳卒中等の成人中途障害における摂食・嚥下リハビリテーション訓練に関する記述がある著書としては,スイスの理学療法士Patricia M.Daviesによる『Step To Follow─ a Guide to the Treatment of Adult Hemiplegia,based on the Concept of K.and B.Bobath』(1985)がある.このなかの“第13章The Neglected Face”で,主に顔面口腔の訓練法と軟口蓋のアイシング法が豊富な写真入りで紹介されている.
 これらを参考にして,わが国では約10年後の1990年代から成人中途障害における摂食・嚥下リハビリテーションへの取り組みが本格的に始まった.その後の摂食・嚥下リハビリテーションの進展は読者諸氏もご存じのことと思うが,主として大学や病院の一部のリハビリテーション科の医師を中心として成人への取り組みが一段と進み,1995年に日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が設立され,わが国におけるこの領域の研究が飛躍的に進みはじめた.
 しかし,小児科医が中心となる障害児への取り組みはいまだ数が少ないのが現実である.最近のわが国での障害児の摂食・嚥下障害への取り組みについての論文や発表に目を通してみると,ほとんどがテクニックに関するもので,身体的,心理的な面を含めた子どもの背景に対する配慮と取り組みがあまり見られないように感じている.摂食・嚥下機能に関してはとりわけ重要なことであるが,その解釈が間違っているとしか思えないアプローチも少なくない.また,この領域のあり方についての誤った批判も見受けられるのは大変残念なことである.
 本書第2版の特徴は,他に例を見ない子どもの摂食に関する内容の深さと広さにある.すなわち,先に摂食・嚥下リハビリテーションの歴史として説明してきた介助法やリハビリテーション訓練テクニックに加えて,すべての子どもの食事を取り囲むさまざまな内的,外的環境による影響と取り扱いについて詳述されていることである.私自身の読後・訳後に抱いた強い思いは,わが国においても1人でも多くの摂食・嚥下に取り組む専門家に本書が読まれ,今までよりもさらに深く,広くその子どもおよび家族を理解し,よりよい状態に近づけていく実践者が増えほしいということである.
 なお,翻訳に当たってはなるべくわかりやすい表現にすることに極力気を配った.そのために専門用語や国柄による独自の用語等については,可能なかぎり脚注を付した.また,この領域では吸引(to suck,sucking)には狭義の吸啜(to suckle,suckling)と吸引が含まれているが,本文中でそれを区別して書かれているところと,区別なしに吸引と表されているところもある.その場合の吸引が吸啜を意味していたり,あるいは吸啜も含む場合には,訳文中では吸引(吸啜)と表現してあるので,注意していただきたい.
 最後になるが,本書を翻訳したい私の気持ちを深くご理解いただき,出版を快く引き受けていただいた医歯薬出版株式会社に深く感謝申し上げる.とりわけ,支援,激励をもって私を表裏にわたって支えてくださった鈴木弥佐士氏,同社編集部の水島健二郎氏をはじめ関係者諸氏に心から感謝の気持ちを申し上げたい.
 2009年8月 金子芳洋

序文
 『Pre-Feeding Skills第2版』においてSuzanne Evans MorrisとMarsha Dunn Kleinは,摂食というものは子どもに食べ物を与えるということをはるかに超えたものであることを,多くの方法で何度も何度もあなたに伝えるであろう.摂食は1つの“関わり合い“である.その子の食べる行動を改善し,摂食を巡る親と子どもの間の相互作用を構築することは,“信頼”に深く根ざしている.何年にもわたって私はこのメッセージを健康に関係する専門職の人々に送り続けてきているが,私はこのことが必ずしも歓迎されているとは限らないことを感じてきている.栄養学,医学,あるいはその他の身体本位の分野で教育されてきた専門家が,自分たちの職業的な努力は社会的,情緒的な問題ならびに家族動態と強く結びついていることを悟るのは容易なことではない.この著書のなかでは,読者諸氏は,子どもが食べるのを助けることの一部分として,その子の社会的,情緒的,物理的環境の影響という難問に取り組むことを初めて求められるかもしれない.
 「オズの魔法使い」の主人公の少女Dorothyが犬のTotoとともにカンザス(Kansas)で竜巻に巻き上げられたときのように,あなたは,著者らの主張するテーマによって確実にカンザスから連れ出されるであろうことに複雑な心境を抱くかもしれない! 20年前,自分自身の子どもを育て,食べ物の選択と摂食について他の人々の相談を受けていた私は,栄養士としての自分に何となく違和感を感じており,ついにはこのテーマについての論文を書くようになった.摂食には,単に栄養を熟知する以上のはるかに多くのことがあるということを私がわかりはじめる以前から,このテーマは歴然たる事実であるように思われていた.私はこれらの問題に取り組み,そして何冊かの私の著書のなかで,私はそのテーマを“摂食の関わり合い(feeding relationship)“と呼ぶに至った.それらの私の著書は,『Child of Mine:Feeding with Love and Good Sense(2000)』,『How to Get Your Kid to Eat----But Not Too Much(1987)』と『Secrets of Feeding a Healthy Family(1999)』である.そのとき以来私が書いてきた論文のなかで,私はこの問題に取り組み続けている.その多くは,本書『Pre-Feeding Skills』の至る所で引用されている.読者諸氏に以下の激励の言葉を贈りたい.“そのうちに,“関わり合い”というより広い観点から検討することが,あなたにとってもまた,気持ちよく受け入れられ,そして習慣的に行われる行動となるであろう.”
 摂食は責任の分担を要求する.親は,何を,いつ,どこで食べさせるかについて決める責任がある.一方,子どもはどのくらい食べるか,または食べるか食べないかについて決める責任がある.つまり,食物を与えるのが親の役割で,それを食べるのが子どもの役割である.この責任の分担という考え方は,子どもがある程度の食べる能力をもっていることを前提としている.しかし,子どもの食べる能力の開花は,親が効果的に食べさせることができるかどうかにかかっている.親たちは,食物を選択し調理すること,食事とスナック(おやつ)の組み立てを維持すること,食べる時間を楽しいものとすること,ならびに子どもが食べられるようになるのを期待することに責任がある.親が彼らの任務を首尾よく遂行すれば,子どもたちの食べる行動と食べ物の受け入れはますます向上し,食物摂取量を調節する能力を維持して体格は適切に成長し,食べることへの取り組みと食行動は前向きであり続けるであろう.摂食の関わり合いは信頼に始まり,信頼に終わる.すなわち,子どもは食べることを望んでおり,どれだけ食べるのかを知っていて,食べることによって成長しようとしているということに対する信頼である.もしもある子どもが食べることを望んでいないように思われる場合には,何かの問題がある.つまり,その子どもは何らかの方法で強制されているか,あるいは,成長しようともがき苦しんでいるにもかかわらずその子は十分な支援を受けていないという問題である.
 神経筋的な制限あるいは認知の制限がある子どもたちにとっては,その信頼を維持することと,摂食における責任の分担を遵守することには特別な意味がある.本書のそれぞれの著者がこの意味をどのように読み取っているのかをここに例としてあげてみよう.Suzanne Evans Morrisは,栄養的な福利を維持するほど十分には食べることができない子どもでも,摂食の過程において信頼されうることを一貫して明示している.彼女は,摂食における“関わり合い”の重要性とその効果を強調し,そして,たとえ神経筋的な制限あるいは認知の制限がある子どもでさえも,自分の能力の制限に応じて食べることを身につけ,それを楽しむ権利があることを強く主張している.経管栄養が摂食を補助するために使われるけれども,多くの子どもたちにとってこれが摂食に取って代われるものではない.子どもは,摂食によって自分の喜び,自己認識,親子関係を増進するという努力を続ければ,必ずしも栄養的に完全に支持される必要はないということをMorrisは力説している.
 摂食とは子どもを尊重することであり,同時に,その子が自分自身のために行動することに責任をもたせるということである.子どもが食べることを恐れたり,ましてや口に近づいてくるものなら何でも恐れるような場合には,食の熟達をいったいその子にどうすれば期待できるというのだろうか?子どもの感覚過敏や感覚防衛に対して口腔の脱感作を行う多くの臨床家は,それをいろいろな方法(ごまかす,裏取引を使う,チアリーダーのように激励する,など)で操作することに頼っている.Marsha Dunn Kleinは,このジレンマに対して“信頼“という答えをもっている.その子の許可を得なさい,と彼女は強く主張する.あなたがこれからしようとすることに対して受け入れる準備ができていることを子どもが示さない限りは,その子の口の中に何も入れてはならない.十分な時間的な余裕と,その子と摂食セラピスト(ならびにその子の両親)の間に前向きな信頼関係がある場合には,その子は自分自身の不安に取り組んで成長しようと決意し,そしてついには恐れていたことをするようになるであろう.子どもたちは学習し,身につけることを望むけれども,彼らがそれをマスターするための機会を用意することと,精神的に圧倒されない程度の挑戦を思慮深く与えることは,大人の役割である.Kleinは,摂食前スキル(pre-feeding skills)をますます小さいステップに分けて,子どもたちに自分でなんとか達成できるような学習機会を与えることで,彼らが自分自身をコントロールできるようにすることにかけては,完璧な“魔術師(名人)”といえる.しかしながら,この“関わり合い“に取り組むことを始めるにあたっては,あなたの関与には制限があるということを承知していることが重要である.あなたが行うことは精神〔心理〕療法ではない.摂食療法と精神〔心理〕療法の間には境界線が存在する.私は栄養士であるが,精神療法士でもあり,その境界線を明確に認識できている.あなたは疑いなく感情面に取り組むであろう.そして実際にあなたは感情を理解し,その表出を励まし,そしてそれを受け入れる必要がある.人々は感情に動かされて物事に従事するときに一層よく学習する.しかしながら,あなたが摂食の目標を達成するために親や子どもの感情あるいは生活環境を変えようとしているときには,あなたは精神〔心理〕療法へと境界線を踏み越えつつある.あなたが行う行動学的・教育的介入は現実的なものでなければならず,自らの経験を生かして“摂食前スキル(Pre-Feeding Skills)”を援助するという範疇から逸脱してはならない.もし1人の親が実際の介入をきちんと応用することができないならば,両親,その子ども,あるいは彼らの生活の内部で起こっている介入の進み具合があまりにも負担になっているために,彼らに変化をもたらすことができないのは明らかである.摂食療法を続ける前に,子どもと親を,摂食介入が効果を発揮できる状態にするためには,医師,栄養士,精神保健領域の専門家,あるいはソーシャルワーカーによる外部からの助けが必要とされる.医療関係費が削減される当今,あなたは何でもこなせるように要求されるかもしれない.だが,あなたがすべてをしてしまってはならない.あなたのやれることはたくさんあるが,しかしあなたが何かをするときには両親が必要であり,彼らは未解決の医学的あるいは栄養的な問題によって苛まれていない状態で無理なく役割を果たすことができなければならない.
 1人の子を,その子が食べることに関して可能性のあるあらゆることができるように助けることは,意欲をかきたてられてやりがいのある仕事であり,あなたの特殊技能のすべてが求められるであろう.あらゆる過程において最善の指針とすべきことは,あなたがその子を信頼し,そして可能性のあることはすべてできるようになりたいという子どもの意欲を尊重することである.『Child of Mine: Feeding with Love and Good Sense』最新版中の幼児の章(toddler chapter)からの物語を紹介しよう.13か月齢のTobinは,認知制限と神経筋的制限ならびに骨格の先天異常をもって生まれてきた.彼は,乳首哺乳はうまくこなせたけれども,4か月齢時に母親が固形食の導入を試みたところ,それは不成功に終わり,母親は乳首哺乳に戻って,かなりの期間固形食を与えなかった.その間,1人の作業療法士がTobinの口の過敏の脱感作に取り組み,また1人の理学療法士が彼の筋コントロールを助けた.彼の経過は順調に進み,与えられる軟らかい普通の食卓食を怖がることもなく,避けることもしなかった.彼はマウシングも嚥下もできたがそれらに興味があるようには全くみえなかった.彼の母親は,彼に食べさせるのは一日仕事であり,そして食べさせている最中には,たとえそれが半固形食であってさえも何度も吐きそうになることを訴えた.彼は他の食べ物を手に持つことは楽しんでいるように思われたが,彼にとってはそれを口に入れることが困難で,そして口に入れたときには吐き気を催したり,のどに詰まらせたりした.
 彼の摂食前スキルへの取り組みを中止して,Tobinを家族と一緒の食事に参加させるという決定がなされた.これに関しては両親はやる気をみせ,Tobinを食卓に連れて行き,彼を乳幼児用食事椅子に座らせて支え,自分たちの食べているものは何でもその小片を彼の前に置いた.両親は,彼に食べることを決して強制しないように戒められ,そして拍手喝采して励ますのも結局はプレッシャーになることを指摘された.Tobinの顔がぱっと明るくなり,目の前の食べ物に注意を集中し,それを拾い上げることに取り組みはじめたときの皆の驚きをあなたは想像できるだろうか.最初は,彼はトレー上の食べ物を追いかけ回すのが精一杯であったが,母親の手助けにより自分の腕がどこまで届くのかを理解したことで,彼は極めて楽に食べ物をつかむことができるようになった.このやり方はまるで魔法のようにうまくいった.Tobinは,自食し,咀嚼し,嚥下するのに必要な緻密な筋コントロールを急速に発達させた.いったん彼が上体をまっすぐにして椅子に座り自食するようになると,嘔気はもはや問題とはならなくなった.Tobinの行動をかたずを飲んで見守る両親が,彼を邪魔しないためにあえて手出しをしないで傍観し,口出ししないように唇にチャックをしている様子を想像してみてほしい.自分たちの息子が自食に懸命に取り組む姿を前にして,両親は畏敬の念に打たれ,驚愕し,嬉し涙を流し,本気になったTobinにひたすら感嘆するばかりであった.
 摂食セラピストが行った勧告は,子どもの発達と社会的必要度を十分に理解したうえで行われたものであり,そのときTobinは,自分が家族の一部であることを望んでいたと同時に,意志・行動の自主性をもつことに懸命に努める年頃であった.さらには,この小さな奇跡とも言うべき出来事は,“関わり合い”のさなかでなければ起こりえなかったと考えられる.Tobinの作業療法士と理学療法士は,注意深くそして効果的に彼に取り組んだので,Tobinは食べることについての前向きな気持ちを失わないでいることができた.家族は摂食セラピストを信頼し,そしてTobinはセラピストと両親の両者を信頼した.Tobinは家族の食卓に一緒にいることを望み,食べることを望み,それを自分自身ですることを望んだ.そしてついに彼はそれを成し遂げたのである.
 ―Ellyn Satter,M.S.,RD,CICSW,BCD
はじめに
 この分野に関する知識と理解の進展
 大いなる難題への挑戦
 目標に向かう道程
 全体的な治療方策とテクニックの問題
 学習のためのキーポント
第1章 食事の時間は何を意味しているか?その考え方
 食事の時とは何か?
  食事をすることについての考察
  食事時間の目的
  食事時間における栄養(滋養)面
  子どもと家族の両方にとって滋養になる食事時間の形成
第2章 食事の時間に影響するもの
 食事の時間に影響するものの識別と理解
  信念の影響
  文化の影響
  親の経歴の影響
  子どもの経歴の影響
  家族動態の影響
  社会経済的諸要因の影響
  子どもの健康の影響
  子どもの発達するスキルとその必要性の影響
  子どもの摂食スキルと口腔運動スキルの影響
  子どもの情緒の状態と気性の影響
  親の情緒の状態と気性の影響
 食事時間の環境の観察と理解
第3章 食事の時間における相互の役割
 食事時間は“ダンス”のようなもの
  出生から3か月─ホメオスタシスと食事の時間
  4か月から7か月─食事時間における社会化
  独立心の芽生え
  独立心旺盛な幼児期
  幼児期を過ぎた子ども
  摂食に関する特別な問題点
第4章 食べる行動に関係する解剖と生理
 口腔と咽頭の構造
 食道と胃腸管の構造
 形態と機能―腔,管,および弁
 食べる行動の神経制御
  脳神経
 嚥下
  嚥下の過程
  嚥下に関連する乳児の構造と成人の構造の比較
  新生児の口腔・咽頭と成人の口腔・咽頭の解剖組織上の相違
  乳児の解剖学的成熟と機能
 吸引
  吸引の一連の変化過程
  吸啜の仕組み
 消化
  胃での消化
  腸管での消化
 呼吸[器]系と心臓系
第5章 摂食スキルの正常発達
 正常全身運動発達の影響
  安定(性)と可動性
  運動の分離
  まっすぐな平面的動きから回転的動きへ
  正中線感覚の発達
  以前に獲得した運動パターンへの逆戻り
  運動の方向と選択を決める感覚入力
  運動の簡潔性と効率性
  律動性
  文化的な影響
  テーマと変化(変異)
 口腔感覚発達の影響
  感覚の窓
  味覚
 非摂食性口腔運動発達の影響
  マウシング
  非栄養的吸啜
 摂食スキルの順次的発達の観察
  摂食時の姿勢
  食物量
  種々な食物タイプ(種類)と,液体から他の食物(食卓用食物)への移行
  新生児期の口腔運動反射
  哺乳瓶または母親の乳房からの液体の吸引
  コップを使った液体の吸引
  ストローを使った液体の吸引
  軟固形食のスプーンを使った吸引
  液体の嚥下
  半固形食の嚥下
  固形食の嚥下
  吸引-嚥下-呼吸の協調
  流涎のコントロール(抑制)
  咬むときの顎運動
  咀嚼時の顎運動
  咀嚼時の舌運動
  咀嚼時の口唇運動
  咀嚼効率
 摂食スキルの全体観
  新生児
  3か月児
  6か月児
  9か月児
  12か月児
  15か月児
  18か月児
  2歳児
  それ以上の年長児
 発達の大局観
第6章 摂食スキルの発達を制限する各種要因
 構造的な制限
 生理機能的な制限
 ウェルネス(全体的な健全性)の制限
 体験からくる制限
 環境からくる制限
 摂食スキルの発達を制限する諸要因の影響
第7章 口腔の運動スキルを制限する各種要因
 筋肉のトーンと運動に関する専門用語
  筋緊張
  運動の方向
  運動のタイミングと強さ
  運動の分布状態
 個々の口腔構造物の機能に関する問題
  顎
  舌
  口唇と頬
  口蓋
 運動過程に関する問題
 感覚処理過程に関する問題
  過剰反応
  反応低下
  感覚防衛
  感覚的過負荷
 摂食過程に関する問題
  吸引
  嚥下
  咬断
  咀嚼
  口腔運動制限に関する用語の解説
第8章 役に立つ診断テスト
 嚥下機能の評価
  ビデオ嚥下造影検査
  超音波
  嚥下の内視鏡的評価
  頸部聴診
 胃腸機能の評価
  上部消化管造影
  pH測定
  上部消化管内視鏡検査
  胃食道シンチグラフィ
  食道マノメトリ
 呼吸機能の評価
  気管支肺胞洗浄併用気管支鏡検査
第9章 食事時間における評価
 基礎
  物語の諸要素
  対処法の追求
 過程
  論理的アプローチと直感的アプローチ
  包括的な概観
  順次的な分析
  摂食評価に対する具体的な適用:Jasonの例
 情報収集のためのアプローチ
  親との面接と親への質問票
  子どもの観察
  食事時間における評価データの記録
  親とともに摂食計画を作成
  最初の摂食計画の探求
 レポートの作成
  誰に何を?
  どんな形式で?
 評価と治療のつながり
  摂食チーム
  一連の過程
 食事時間に関する親への質問票(1)―食べるスキルと飲むスキルに関して
 食事時間に関する親への質問票(2)―経管栄養と口からの摂食開始に関して
 食事時間評価ガイド
第10章 治療への架け橋:優先事項の設定と問題解決
 情報のまとめ方
  主要な摂食問題のカテゴリー
  何がうまくいって,何がうまくいかないか?
  種々のカテゴリーのパターン化
 優先事項の設定
  解決の鍵となる問題点の同定
 問題解決
  全体像モデル
  要素スキルモデル
 架け橋の建設
 何がうまくいって,何がうまくいかないか?
第11章 食事時間の計画の作成
 目標の設定
  Dylan(12か月齢)の例
  Tyrone(5歳)の例
 計画の実行
  療法の構成
 食事時間のプログラム
 個人の食事時間の計画
第12章 治療の理念と観点
 食事時間プログラムの概念
  食事時間における影響の円形構造
  摂食プログラム,口腔運動治療プログラムならびに食事時間プログラム
 ガイドとなる基本理念
  食事時間はダンス
  信頼と敬意の育成
  子どものリードに従う
  その子どもの長所の上に築きあげる
 取り組み,治療方策,そしてテクニック
  取り組みあるいは方針
  治療方策
  テクニック
  他に取るべき道筋
 どんな療法をどのように実施するか
  何をするか
  どのように実施するか
第13章 食事時間における学習とコミュニケーション
 学習能力を最大限に活用
  学習の原理
  学習環境における変化の導入
  信念と期待の影響力
  暗示の影響力
  音楽の影響力
  想像の影響力
  変化の概念
 食事時間におけるコミュニケーション
  観察と発見
  食事時間の環境内容を高める
  内部からのメッセージ
  コミュニケーションとしての行動
  食事時間におけるコミュニケーションの用具類
 コミュニケーションと学習の相互影響
  メッセージと信念体系
  行動と学習
第14章 食事時間における感覚への取り組み
 感覚と食事時間
  感覚の個人的特質
  口を越えて
 さまざまな感覚の理解
 感覚調整と食事時間
  子どもに耳を傾ける
  感覚のための環境の調整
  子どもの感覚的調整・準備
  大人(介助者)のための感覚調整
  食事中におけるさまざまな感覚
  次の活動への移行のための感覚の調整
  子どもが食事時間の新しい感覚的課題に対応することへの援助
 環境における感覚分析票
第15章 姿勢の制御とハンドリングが食事時間に及ぼす影響
 ハンドリングと動き
 食事時間における位置取りと姿勢について考慮すべき事柄
  食事時間におけるコミュニケーション
  食事時間における社会化
  発達する摂食スキル
  摂食方法
  口腔運動スキル
  胃腸,口腔-顔面,呼吸ならびに神経系からみる姿勢制御の必要性
 身体的な必要性と坐位の選択
  その子どもの個人的必要性
 身体配列の観察
  これらのすべての要素は相互にどのように作用しているのか
  情報の記録
  安心感
  ストラップとベルト
  安全性
  食べさせる人の位置・姿勢
  情報の記録
 積極的な治療,食事時の姿勢の取り方とそのための用具類
  食事時間に子どもが自身の身体的難題に対処するのを手助けする
 食事時間の支援のための座り方と姿勢の取り方に関して考慮すべき事柄
 座り方と姿勢の取り方のための身体配列チェックリスト
第16章 栄養の問題
 栄養の評価
  既往歴
  食事に関する記録
  身体測定値
 摂取
  摂食のスキル
  食物
  子どもの食事摂取を改善する手助け
 摂取物の活用
  消化
  代謝
  子どもが食べる食物を活用できるように援助する
 使用量
  摂取量は必要使用量によって決まる
  子どもがエネルギー使用量と摂取量のバランスを取るのを助ける
 子どもの栄養必要量を満たす
  カロリーの増加
  食物多様性の拡大
  特別な健康上の必要と栄養
  特別な健康上の必要のある子どもの栄養を最大限まで高める
第17章 口腔運動療法の特性
 口腔運動の問題と治療の目標
  個々の口腔構造物の機能の問題
   顎
   舌
   口唇と頬
   口蓋
  感覚処理過程の問題
   感受性低下
   過敏性(過敏症)
  摂食過程の問題
   吸引
   嚥下
   咬み込みと咀嚼
  治療における食物の役割
   食物の移行
 治療方策と治療活動
  身体的問題
   ・支援領域
    姿勢配列(姿勢の位置関係)
    安定性
   ・制限領域
    緊張度を変える
    身体の姿勢を変える
    感覚入力を変える
    情緒的入力と反応を変える
  感覚的問題
   ・支援領域
    感覚的認知
    感覚の調整
    感覚の識別
    感覚フィードバック
   ・制限領域
    反応低下
    過剰反応
    感覚過負荷
  関わり合いの問題
   ・支援領域
    信頼
    予知
    コミュニケーション
   ・制限領域
    身体面と感覚面
    好ましくない関わり合い
    自立心の低下
    機会の不足・欠如
  口腔運動のコントロールの問題
   ・支援領域
    顎コントロール
    口唇と頬のコントロール
    舌のコントロール
    口蓋帆咽頭のコントロール
    口腔運動の模倣
    口腔の感覚運動のコントロールを組み合わせる
   ・制限領域
    筋緊張度の亢進
    筋緊張度の低下
    食いしばりと咬合
    突出
    過大な動き
    後退
    左右非対称性
    制限されている運動
  特定の摂食スキルの問題
   ・支援領域
    吸引
    嚥下
    吸引,嚥下,呼吸の協調
    咬み取り
    咀嚼
    食物の移行
    食物の選択
  ・制限領域
    誤嚥
    嘔気
    胃食道逆流
    レッチング
    詰め込み
第18章 評価と治療に適した摂食用具類
 摂食用具類を選ぶ
  選択
  供給安定性
 選択の基準
  適切な“おしゃぶり(乳首)”を選ぶ
  適切な哺乳瓶乳首を選ぶ
  適切な哺乳瓶を選ぶ
  適切なコップを選ぶ
  適切なストローを選ぶ
  適切なスプーンを選ぶ
  適切な口腔-顔面刺激用具を選ぶ
第19章 自食の問題
 自食のレディネス
 自食の学習
  ボトルフィーディング:哺乳瓶の使用
  手づかみ食べ
  スプーンによる自食
  コップ飲みの自立
  ストロー飲み
 遊びと自食
 身体的な難題を抱えた子どもの自食
  レディネス
  自食へ向けての手立て
 感覚に難題をもつ子どもの自食
  レディネス
  自食へ向けての手立て
第20章 摂食と発語:その関係の問題
 並行関係なのか,因果関係なのか
  摂食と初期の発語音
  摂食に問題のある子どもたち
  正しい質問を問う
  食事時間と摂食における方策
第21章 未熟児
 発達支援的ケア
 NICUにおける栄養補給
  未熟児のための栄養補給の連続体系
  乳首受け入れのレディネスを示す要因
  非栄養的吸啜
 未熟児によくみられる授乳に関係する障害
 授乳における親の関与
  乳房哺乳(ブレストフィーディング)
  哺乳瓶哺乳(ボトルフィーディング)
  乳汁投与の他の代替法
  指哺乳
  コップ哺乳
 授乳・摂食スキルの発達
  吸引(吸啜)と嚥下の協調の促通
  子どもからの要求を待つか,それとも計画した時間どおりに与えるか
  在宅年長未熟児の食べる能力の成長と発達の促進
第22章 胃腸系に不調がある子ども
 胃腸系の不調と摂食
  症例:Alicia
  医師との協力
 摂食に影響を及ぼす代表的な胃腸症状
  悪心
  嘔気
  嘔吐
  持続する満腹感
  レッチング
  痛み
  胃腸系への情緒の影響
  症状誘発要因
 胃腸系の不調の理解と治療
  食道の運動障害の理解と治療
  胃食道逆流の理解と治療
  胃食道逆流の症状
  レッチングの理解とその対処法
  胃内容物通過不良に関する理解とその治療
  便秘の理解と治療
  嘔気と嘔吐の理解と治療
  食欲不振の理解と治療
 胃食道逆流 親への質問票
第23章 経管栄養の子ども
 経管栄養導入の決定
  経管栄養と家族
  経管栄養とそれが実施される子ども
  経管栄養導入の理由
  経管栄養チューブの種類
 経管栄養法のマネージメント
  ボーラス投与法あるいは持続的ドリップ方式
  経管栄養のための姿勢取り
  飲食物と経管栄養
  経管栄養マネージメントチーム
 治療
  治療のための紹介
  摂食セラピストの役割
  治療に影響する代表的な事柄
 包括的口腔運動療法プログラムの構成要素
  食事時間と治療時において子どもと前向きな関係を築く
  口と摂食のつながりの確立
  医学的障害が摂食に及ぼす影響を減らす
  経管栄養が不快ではなく楽しみになるように最適化する
  頭部,頸部,体幹の姿勢コントロールを改善する
  咽頭部の気道コントロールの改善
  環境探索のための口の使用
  刺激に対する反応の正常化
  嚥下反射存在の確認と促通
  リズミカルな吸啜-嚥下の促通
  顎の筋緊張度と運動の改善
  口唇と頬の筋緊張度と運動の改善
  舌の筋緊張度と運動の改善
  発音・音遊びの助長
  総合的なコミュニケーション計画の実施
  学習環境を作り出す
  タイミング
 口腔からの栄養摂取への移行
  経管栄養から経口栄養摂取へと徐々に変化していく連続体系
  レディネスの諸要因
  連続体系に従って口腔の準備態勢を整える
  抜管
 成熟と変化
第24章 十分に食べようとしない子ども
 個人によって異なる食の本質
  成長の論点:心配することか,あるいは心配ないことか?
  心配の連続体系
 影響の層状的重なり
  食事時間の今の姿
  初期の影響:最初の層
  解釈と行動:第二の層
  層の重なりをみる
 治療方策
  多層的な問題に取り組む
  成功の可能性を最も高める食事時間の環境
  その他のアプローチ法
第25章 口唇・口蓋裂のある子ども
 裂
  裂の種類
  裂の発生率
  裂形成の原因
  チームによるサポート
  外科的処置
 裂のある子どもの摂食
  栄養と成長パターン
  裂がある場合の吸引(吸啜)と嚥下の仕組み
  裂児への哺乳
  乳房哺乳
  哺乳瓶哺乳
  口蓋栓塞子(オブチュレーター)
  スプーンフィーディング
  テクスチャーのある食物と咀嚼
  口蓋裂のある年長児
  摂食の問題が解消しない赤ちゃん
  口唇・口蓋裂児の摂食のための一般的な方策
第26章 視覚障害児の取り扱い
 乳児
  自ら体験してみる
  準備態勢を整える
  コントロール
  マウシング! マウシング! マウシング!
  感覚の異なるものをゆっくり導入
  予防
 年長視覚障害児のための食事時間
  準備態勢を整える
  慣例となっている手順
  新しいものの探索
  引き続き感覚変化をゆっくり進める
  偶然による学習と模倣
  自食を教える
  個人的な規準枠
  自食における身体的達成感
  食事時間における微調整
  視力の喪失と摂食の深刻な難題
第27章 自閉症の子ども
 多種多様な感覚と食事時間
  感受性の亢進
  感覚過負荷
  運動企図障害
 コミュニケーションの多様な構成要素と食事時間
 難題に対処するために子どもたちが用いる方策
  ピッキーイーター
  コントロール
  移行を制限する
  年長児や成人からのフィードバック
 栄養と成長
  成長についての悩み
  食べ物に関する難問
 感覚に基礎を置いた療法
 食事時間に前向きな変化を導入する
  食事時間における感覚的な難題の扱い方
  食事時間におけるコミュニケーションに関する難題の扱い方
第28章 ごくわずかな問題をもつ子ども
 問題点
  流涎
  詰め込み
  発語表出や言語表出の遅れ
  潜在的な感覚運動の問題点
 治療へのアプローチ
  的を射た疑問を呈する
  食事時間と摂食の方策
  スナック食品の選択
付録A 摂食スキル発達チェックリスト(全体観的アプローチおよび順次的アプローチ)
 摂食スキル発達チェックリスト(全体観的アプローチ)
 摂食スキル発達チェックリスト(順次的アプローチ)
付録B 食事時間にみられる状態・動作の模擬体験実習ガイド
 5.後退パターン
  目的
  準備する材料
  体験実習ガイド
  時間に余裕がある場合
  検討
  体験実習の結果概要
  多様性(バリエーション)の概要
 1.スプーンからの滑らかな食べ物の摂取
  目的
  準備する材料
  体験実習ガイド
  検討
  体験実習の結果概要
  多様性(バリエーション)の概要
 15.スプーンフィーディングにおける口唇動作の多様性
  目的
  準備する材料
  体験実習ガイド
  検討
  体験実習の結果概要
  多様性(バリエーション)の概要
 12.口腔内への接触に対する感覚防衛
  短いガイド
  拡大ガイド
  検討
  体験実習の結果概要
  多様性(バリエーション)の概要
文献
索引
脚注(訳者注)索引