序
超音波検査を施行する者にとって,肝腫瘤性病変の診断は存在,質的診断ともに,もっともニーズが高い領域の一つである.とくにわが国ではB型,C型肝炎罹患者が多く,肝細胞癌のスクリーニングとして超音波検査は欠かせない診断法となっている.また,肝細胞癌が発見された際の治療法の一つとして,とくに再発の場合にはその多くはラジオ波焼灼療法が選択され,その際のガイドとして超音波検査は必須のツールとなる.これまで超音波検査はBモードの高い分解能によって疾患診断に大きく寄与してきたが,やはりBモードのみでは限界があり,早くから造影剤が使用されてきたCT,MRI検査と比較するとその診断能は決して十分とはいえない状況であった.
CT,MRIの造影剤導入から遅れて,超音波用の第1世代経静脈性造影剤レボビストRが1997年に発売された.しかしながら,レボビストは造影剤を破壊しながら造影効果を得るという手法であったため,その造影効果は持続せず,手技も煩雑であることにより施行施設は限られていた.このような状況下で第2世代の造影剤ソナゾイドRが2007年1月に日本で発売された.ソナゾイドは1つの造影剤で「vascular phase(血管相)にて血流診断,post vascular phase(後血管相)にてクッパー診断」と2つの異なった時相と機序による診断が行えるすばらしい造影剤である.リアルタイムにダイナミックな血管相を観察でき,post vascular phaseにおいては造影持続時間が長く肝臓全体の十分な観察が行えるため,施行者への負担も軽減した.臨床では肝表面の微小転移の発見などに威力を発揮している.しかしながら,ソナゾイドが臨床導入されてからすでに5年が経過したにもかかわらず,造影超音波検査の普及はいまだ十分であるとはいえない.
そこで,造影超音波検査とはどのような検査なのか,手技も含めて現在までの知見とその有用性をまとめた本別冊を企画した.ソナゾイドの薬理的な基礎から,装置の設定,肝腫瘤の造影診断,有用な臨床例,応用編,治療ガイドの実際など,現在その分野の第一線でご活躍されている先生に執筆をお願いした.本書をご一読いただき,造影超音波検査にまず興味をもち,施行する際にはぜひ参考としていただきたい.本書は施行者必見のバイブルとなるようなすばらしい内容になっていると自負している.
本書が少しでも造影超音波検査の普及に役立ち,患者さんの診療に貢献できることを願っている.
2012年5月
編集代表 西 田 睦
梨 昇
超音波検査を施行する者にとって,肝腫瘤性病変の診断は存在,質的診断ともに,もっともニーズが高い領域の一つである.とくにわが国ではB型,C型肝炎罹患者が多く,肝細胞癌のスクリーニングとして超音波検査は欠かせない診断法となっている.また,肝細胞癌が発見された際の治療法の一つとして,とくに再発の場合にはその多くはラジオ波焼灼療法が選択され,その際のガイドとして超音波検査は必須のツールとなる.これまで超音波検査はBモードの高い分解能によって疾患診断に大きく寄与してきたが,やはりBモードのみでは限界があり,早くから造影剤が使用されてきたCT,MRI検査と比較するとその診断能は決して十分とはいえない状況であった.
CT,MRIの造影剤導入から遅れて,超音波用の第1世代経静脈性造影剤レボビストRが1997年に発売された.しかしながら,レボビストは造影剤を破壊しながら造影効果を得るという手法であったため,その造影効果は持続せず,手技も煩雑であることにより施行施設は限られていた.このような状況下で第2世代の造影剤ソナゾイドRが2007年1月に日本で発売された.ソナゾイドは1つの造影剤で「vascular phase(血管相)にて血流診断,post vascular phase(後血管相)にてクッパー診断」と2つの異なった時相と機序による診断が行えるすばらしい造影剤である.リアルタイムにダイナミックな血管相を観察でき,post vascular phaseにおいては造影持続時間が長く肝臓全体の十分な観察が行えるため,施行者への負担も軽減した.臨床では肝表面の微小転移の発見などに威力を発揮している.しかしながら,ソナゾイドが臨床導入されてからすでに5年が経過したにもかかわらず,造影超音波検査の普及はいまだ十分であるとはいえない.
そこで,造影超音波検査とはどのような検査なのか,手技も含めて現在までの知見とその有用性をまとめた本別冊を企画した.ソナゾイドの薬理的な基礎から,装置の設定,肝腫瘤の造影診断,有用な臨床例,応用編,治療ガイドの実際など,現在その分野の第一線でご活躍されている先生に執筆をお願いした.本書をご一読いただき,造影超音波検査にまず興味をもち,施行する際にはぜひ参考としていただきたい.本書は施行者必見のバイブルとなるようなすばらしい内容になっていると自負している.
本書が少しでも造影超音波検査の普及に役立ち,患者さんの診療に貢献できることを願っている.
2012年5月
編集代表 西 田 睦
梨 昇
序(西田 睦,梨 昇)
1 超音波造影剤について-ソナゾイドRの基礎的知識(山ア幸雄)
1.製剤の成分と特徴
2.体内循環と排泄の仕組み
3.クッパー細胞への取り込み
4.用法・用量
5.配合変化
6.安全性に関して
2-1 造影超音波検査の実際−検査手法とそのポイント 東芝社の装置を中心に(山本幸治)
1.ソナゾイド造影超音波の特徴
2.検査の実際と撮像のポイント
3.検査の実際と流れ
4.defect re-perfusion imaging法
2-2 造影超音波検査の実際−検査手法とそのポイント GE社の装置を中心に(前川 清)
1.超音波装置と造影モードおよびプローブの設定
2.データ保存とhybrid contrast imaging
3.defect re-perfusion imaging(defect re-injection test:D-RIT)
4.D-RITの実際
3 各時相の読影方法とポイント(石井由比,梨 昇,広瀬俊治)
1.造影超音波の時相
2.各時相で得られる造影効果の解釈
4-1 造影超音波診断(症例編) 肝細胞癌(HCC)(是永圭子,畠 二郎,河合良介,谷口真由美,麓 由起子,岩井美喜,中武恵子,竹之内陽子)
1.HCC診療における造影超音波の役割
2.造影超音波における留意点
4-2 造影超音波診断(症例編) 肝細胞癌以外の肝腫瘍典型例(熊田 卓,豊田秀徳,多田俊史,金森 明,竹島賢治,乙部克彦)
1.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
2.転移性肝腫瘍
3.肝細胞腺腫
4.肝血管腫
5.限局性結節性過形成(FNH)
6.その他の腫瘍
4-3 造影超音波診断(症例編) ソナゾイド造影超音波検査が有用な症例(西田 睦)
1.臨床における位置づけ
2.有用な対象
3.臨床例
5 治療支援と造影超音波検査(大村卓味)
1.肝癌の経皮的治療の歴史
2.ラジオ波焼灼療法の原理と方法
3.ラジオ波焼灼療法の適応
4.造影超音波による経皮的治療の支援
6 CT・MRIとのフュージョン画像表示の臨床応用と注意点(小川眞広)
1.フュージョンの簡単な原理
2.フュージョン検査の手技
3.フュージョン検査が必要とされる症例
4.フュージョン検査と造影
付 同意書の例
1 超音波造影剤について-ソナゾイドRの基礎的知識(山ア幸雄)
1.製剤の成分と特徴
2.体内循環と排泄の仕組み
3.クッパー細胞への取り込み
4.用法・用量
5.配合変化
6.安全性に関して
2-1 造影超音波検査の実際−検査手法とそのポイント 東芝社の装置を中心に(山本幸治)
1.ソナゾイド造影超音波の特徴
2.検査の実際と撮像のポイント
3.検査の実際と流れ
4.defect re-perfusion imaging法
2-2 造影超音波検査の実際−検査手法とそのポイント GE社の装置を中心に(前川 清)
1.超音波装置と造影モードおよびプローブの設定
2.データ保存とhybrid contrast imaging
3.defect re-perfusion imaging(defect re-injection test:D-RIT)
4.D-RITの実際
3 各時相の読影方法とポイント(石井由比,梨 昇,広瀬俊治)
1.造影超音波の時相
2.各時相で得られる造影効果の解釈
4-1 造影超音波診断(症例編) 肝細胞癌(HCC)(是永圭子,畠 二郎,河合良介,谷口真由美,麓 由起子,岩井美喜,中武恵子,竹之内陽子)
1.HCC診療における造影超音波の役割
2.造影超音波における留意点
4-2 造影超音波診断(症例編) 肝細胞癌以外の肝腫瘍典型例(熊田 卓,豊田秀徳,多田俊史,金森 明,竹島賢治,乙部克彦)
1.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
2.転移性肝腫瘍
3.肝細胞腺腫
4.肝血管腫
5.限局性結節性過形成(FNH)
6.その他の腫瘍
4-3 造影超音波診断(症例編) ソナゾイド造影超音波検査が有用な症例(西田 睦)
1.臨床における位置づけ
2.有用な対象
3.臨床例
5 治療支援と造影超音波検査(大村卓味)
1.肝癌の経皮的治療の歴史
2.ラジオ波焼灼療法の原理と方法
3.ラジオ波焼灼療法の適応
4.造影超音波による経皮的治療の支援
6 CT・MRIとのフュージョン画像表示の臨床応用と注意点(小川眞広)
1.フュージョンの簡単な原理
2.フュージョン検査の手技
3.フュージョン検査が必要とされる症例
4.フュージョン検査と造影
付 同意書の例