やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき
 人体の極めて複雑な生命活動を学ぶためには,形態(解剖学)と機能(生理)とを結びつけて理解するのが最も望ましい.そこで,形態と機能を理解するために必要と考えられる働きや仕組みについて,生理的な面からまとめたものが本書である.本書により,生理学を能率的に整理・理解して,人体の構造を考えていただければ幸いである.
 本書は「知識のまとめやさしい生理」として1987年に伊東一郎先生と共著で上梓し,増補・修正をしながら20年有余にわたって,看護師,理学・作業療法士,言語聴覚士,柔道整復師,あん摩・マッサージ・指圧・鍼灸師,管理栄養士など医療関係の道を目指す学生諸氏に利用されてきた.この間,国家試験のガイドラインが設けられ,かつその改訂も行われた.当然ながら医学の進歩,社会の変化もあり,これらの経緯から,このたび,小室正人・五十里良生両先生のご協力を得て,抜本的な改訂を行った.
 本書は簡潔に記述を行ったため,難解にならないよう,また記述に誤りが生じないよう努め.今後もご批判やご助言をいただきながら,本書名にふさわしい「やさしい生理」となるようブラッシュアップを重ねていきたい.
 2011年9月
 著者を代表して
 石橋治雄
CHAPTER1 総論
 A 人体を構成する要素
 B ホメオスタシス
 C バイオリズム(生体リズム)
  概日リズム
  生理現象と周期
 D 細胞の構造と機能
  細胞膜の機能
  細胞内小器官
 E 生体の化学的基礎
  代謝
  物質の移動
  エンドサイトーシスとエクソサイトーシス
 F 体液の区分と組成
  区分と水バランス
  体液のイオン組成
  体液の酸塩基平衡
  体液の浸透圧
 演習問題
CHAPTER2 血液
 A 成分
  血漿と血清
  血漿蛋白質
  血球
 B 赤血球
  ヘモグロビン生成と造血
  分解とビリルビン代謝
  酸素解離曲線
  二酸化炭素の運搬
 C 白血球
  生体防御の分類
  細胞性免疫と液性免疫
  アレルギー
 D 血小板
 E 血液凝固
  血小板による一次止血
  凝固系による二次止血
  線維素溶解系
 F 血液型
 演習問題
CHAPTER3 循環
 A 心臓
  構造
  心臓のポンプ機能
  心筋の性質
  心周期と心音
  心電図
 B 血管
  構造と働き
  血圧
 C リンパ管
 D 循環の調節
  神経性調節
  ホルモン性調節
  局所性調節
 E 局所の循環
 演習問題
CHAPTER4 呼吸
 A 呼吸器
  呼吸器の機能的構造
  外呼吸と内呼吸
 B 換気(呼吸運動)とその仕組み
  吸息と呼息
  呼吸と胸膜腔内圧,肺胞内圧の変化
  換気量と残気量
  肺胞換気量と死腔
  呼吸のための仕事
 C ガス交換とガス運搬
  肺でのガス交換
  酸素分圧,二酸化炭素分圧の体内での変化
  酸素の運搬
  二酸化炭素の運搬
  呼吸と酸塩基平衡
 D 呼吸調節
  呼吸中枢
  呼吸運動の機械受容器反射
  呼吸運動の化学反射
  呼吸運動の随意性
 E 呼吸の異常
  呼吸数と呼吸深度の変化
  周期性呼吸
 演習問題
CHAPTER5 栄養と代謝
 A 栄養素
  栄養素の種類と働き
  糖質(炭水化物)
  蛋白質
  脂質
  無機質
  ビタミン類
  水
 B エネルギー代謝の基礎
  エネルギー代謝の概念
  ATPの構造と働き
  嫌気的代謝
  好気的代謝
 C 栄養素の代謝
  糖質の代謝
  蛋白質の代謝
  脂質の代謝
  空腹期と満腹期(吸収期)の代謝
 D 食物と栄養
  三大栄養素の生理的燃焼値
  基礎代謝
  特異動的作用
 演習問題
CHAPTER6 消化と吸収
 A 消化器の働き
  役割
  構成
  神経支配
 B 消化管の運動
  運動とその調節
 C 消化液の分泌機序
  神経性機序と体液性機序
 D 消化
  消化酵素
  糖質の消化
  蛋白質の消化
  脂質の消化
 E 吸収
  糖質の吸収
  蛋白質の吸収
  脂質の吸収
  その他の物質の吸収
 F 消化管ホルモン
  特徴
  分泌調節と作用
 G 肝臓と胆道
  構造
  肝臓の働き
  胆汁の組成と働き
 演習問題
CHAPTER7 体温とその調節
 A 体温
  体温の体部位差と変動
  体温の測定
  体温の生理的変動
 B 体熱の産生
  熱産生の仕組み
 C 熱放散
  熱放散の仕組み
  汗腺と発汗
  発汗の種類
 D 体温調節中枢
  温度受容器
  体温中枢
  体温調節反応
 E うつ熱と発熱
 F 気候馴化
 演習問題
CHAPTER8 尿の生成と排泄
 A 腎臓
  腎臓の働き
  腎臓の機能的構造
  腎血管系
  腎血流量の調節
 B 尿の生成
  尿生成の機能的単位
  糸球体ろ過の仕組み
  尿細管での再吸収
  尿細管での分泌
  腎機能評価とクリアランス
  尿の成分
 C 腎臓による体液調節
  細胞外液浸透圧の調節
  Na+濃度の調節と体液量
  酸塩基平衡の調節
 D 蓄尿と排尿
  蓄尿
  排尿
 演習問題
CHAPTER9 内分泌
 A 内分泌腺
 B ホルモンの一般的性質
  化学構造による分類
  分泌調節
 C ホルモンの種類と作用
  視床下部のホルモン
  下垂体のホルモン
  甲状腺のホルモン(甲状腺ホルモンとカルシトニン)
  副甲状腺のホルモン
  副腎皮質のホルモン
  副腎髄質のホルモン
  膵臓のホルモン
  精巣のホルモン
  卵巣のホルモン
  その他のホルモン
 演習問題
CHAPTER10 骨の生理とカルシウム代謝
 A 骨の構造と機能
  骨の機能
  骨の構造
  骨の細胞
  骨の化学的組成
 B 骨の形成・成長・改変
  骨の形成
  骨の成長
  骨の改変
 C カルシウム代謝と調節ホルモン
  カルシウム代謝
  血漿カルシウム
  ビタミンD3
  上皮小体ホルモン(パラソルモン:PTH)
  カルシトニン
 D カルシウム代謝異常と骨の病気
  骨粗鬆症
  くる病,骨軟化症
  骨の遺伝病
 演習問題
CHAPTER11 神経
 A 神経系の分類
 B 神経組織
  神経細胞
  変性と再生
 C ニューロン
 D 興奮と伝導
  活動電位
  活動電位の伝導
  活動電位の特徴
  興奮伝導の原則
 E 神経線維
  神経線維の分類
  求心性(感覚性)神経線維の分類
 F シナプス
  シナプス伝達
  興奮伝達物質
  反射とシナプス
  ニューロンの回路
 G 神経線維と伝導速度
  神経線維と付属物
  神経線維とその性質
 H 末梢神経
  末梢神経の分類
  自律神経系
  自律神経系の特徴と機能
  自律神経の支配様式
  自律神経系の化学伝達物質
 I 中枢神経
  中枢神経系の分類
  中枢神経系の機能
  脊髄反射
  体性反射
  自律神経反射
 J 脳
  脳幹
  延髄
  橋
  小脳
  中脳
  間脳
  大脳(終脳)
  大脳辺縁系
  大脳基底核
 K 高次中枢
  脳波
  覚醒・睡眠
  学習・記憶
  条件反射
 L 脳脊髄液
 演習問題
CHAPTER12 筋肉の機能
 A 骨格筋
  骨格筋の種類
  骨格筋の構造
  筋節の構造
 B 骨格筋の収縮
  筋収縮の仕組み
  筋細胞膜の興奮
  骨格筋の収縮の仕方
  筋の長さと張力の関係
  筋収縮のエネルギー
  筋収縮による熱の発生
  筋電図
 C 平滑筋
  筋線維の特徴と収縮の特徴
  平滑筋の種類と特徴
 D 心筋
  機能的構造
  電気的性質
  収縮の様式
 演習問題
CHAPTER13 感覚の生理
 A 感覚の特性
  感覚器の構成と機能
  感覚受容器,感覚神経,感覚中枢
  感覚の順応
  感覚の種類
 B 視覚
  視覚器の構造と機能
  網膜の視細胞
  光の屈折と調節
  瞳孔反射
  色の感覚
  順応
  視覚の伝導路
 C 聴覚
  聴覚器の構成と機能
  外耳と中耳
  内耳
  聴覚の伝導路
 D 平衡感覚
  前庭の構成と機能
  前庭感覚の受容器
  前庭感覚の伝導路
 E 味覚
  味覚器の構成と機能
  味覚の受容器
  味覚物質
  味覚の伝導路
 F 嗅覚
  嗅覚器の構成と機能
  嗅覚の受容器
  嗅覚の伝導路
 G 皮膚感覚
  皮膚感覚の種類
  皮膚感覚の受容器の種類と分布
  皮膚感覚の伝導路
 H 深部感覚
  深部感覚の受容器
  深部感覚の伝導路
 I 内臓感覚
  臓器感覚
  内臓痛覚
  関連痛
 演習問題
CHAPTER14 生殖
 A 染色体
  遺伝と染色体
 B 性分化
  生殖腺・副生殖器の性分化
  思春期における身体の性差
 C 男性生殖器
  構成
  精子形成
  勃起と射精
 D 女性生殖器
  構成
  卵巣と卵子形成
  性周期
 E 妊娠と分娩
  受精,着床
  胎盤
  分娩
  乳汁分泌
 演習問題
CHAPTER15 生体の防御機構
 A 防御機構と免疫
  抗原
  自己と非自己の識別
 B 免疫系の構成
  体表のバリアと体内の免疫システム
  細胞
  抗体
 C 免疫反応の分類
  自然免疫と獲得免疫
  液性免疫と細胞性免疫
 D 炎症とアレルギー
  炎症
  アレルギー
  自己免疫疾患
 演習問題

 解答
 索引