やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 臨床に従事する初心者はもちろんのこと,熟練した臨床家にあっても,問診,視診を含めた触診による評価を十分に行うことは診断学の根幹をなすものであり,きわめて重要な意味を持つといえます.とくに整形外科領域では,これらの評価を行うことで約90%は診断可能とさえ言われております.
 一方,このような評価がこれだけ重要な意味を持つにもかかわらず,関連職種の教育においては必ずしも十分な学習が行われているとはいえません.卒業した後に個々人が臨床経験から獲得する情報はきわめて微々たるものであり,基礎から臨床まで,より効率的に学べる本がつくれないものかと考えておりました.
 今回,機能解剖学に基づく四肢関節の基本的な触診法を豊富な図と写真(外観,骨模型,X線写真など)を用いて示すとともに,日頃からよく目にする運動器疾患を触診との関連から分かりやすく説明することを目的に,本書『カラー写真で学ぶ四肢関節の触診法』の著作をすすめました.
 表在解剖と運動器疾患の両者を同時に理解できるように工夫したのが本書の大きな特徴といえます.臨床に携わる皆さんの座右の書となれば幸です.
 最後に,本書の著作にあたって多くのX線写真の提供を頂いた信原病院の信原克哉院長,米田医院の米田敬先生,山本啓司先生,さらに出版にあたってご指導賜りました医歯薬出版の竹内大様にこの場をお借りしまして心より深謝いたします.
 明治鍼灸大学保健医療学部
 竹内義享
序章 総論/四肢関節の触診法
 1.意義
 2.触診の基礎
 3.触診のコツ
 4.外傷性疾患の触診
 5.非外傷性疾患の触診
 6.骨の形態に関する一般的な名称
第1章 肩関節・上腕部
 1.鎖骨
 2.肩峰
 3.肩鎖関節
 4.胸鎖関節
 5.大結節
 6.結節間溝
 7.小結節
 8.肩峰と上腕骨の間隙
 9.烏口突起
 10.肩甲骨内側縁
 11.肩甲骨上角
 12.肩甲骨下角
 13.棘上筋・棘下筋
第2章 肘関節・前腕部
 1.上腕骨外側上顆
 2.上腕骨外顆縁
 3.上腕骨内側上顆
 4.上腕骨内顆縁
 5.尺骨神経
 6.ヒューター線・ヒューター三角
 7.肘頭
 8.橈骨頭
第3章 手関節・手部
 1.橈骨茎状突起
 2.スナッフボックス(舟状骨)
 3.第1手根中手関節
 4.大菱形骨
 5.尺骨茎状突起
 6.三角骨
 7.リスター結節
 8.有頭骨
 9.月状骨
 10.舟状骨結節
 11.豆状骨
 12.有鉤骨鉤
 13.中手骨
 14.指節骨
第4章 股関節・股部
 1.腸骨稜
 2.上前腸骨棘
 3.下前腸骨棘
 4.大腿骨頭
 5.大転子
 6.坐骨結節
第5章 膝関節・膝部
 1.膝蓋骨
 2.膝蓋靭帯(膝蓋腱)
 3.膝蓋内側滑膜ヒダ
 4.脛骨粗面
 5.関節裂隙
 6.鵞足部
 7.脛骨内側縁
 8.外側側副靭帯
 9.内側側副靭帯
 10.腸脛靭帯
 11.腓骨小頭
 12.下腿三頭筋
第6章 足関節・足部
 1.外果
 2.第5中足骨粗面
 3.前距腓靭帯
 4.足根洞
 5.長・短腓骨筋腱
 6.踵骨前方突起
 7.内果
 8.舟状骨結節
 9.足背動脈
 10.中足骨
 11.アキレス腱
 12.足底腱膜
 参考文献
 索引
 
 クリニカルポイント
  (1) 肩関節前方(烏口下)脱臼の外観
  (2) SLAP(Superior Labrum Anterior Posterior)損傷
  (3) 肩関節下方不安定性の確認方法
  (4) 涙のしずく徴候(tear drop sign)―前骨間神経麻痺
  (5) 下垂指変形
  (6) 急性塑性変形
  (7) フォーク状変形とスコップ様(鋤型)変形
  (8) 橈骨遠位端部骨折に後遺した遠位橈尺関節背側脱臼
  (9) ベネット骨折とリバース・ベネット骨折
  (10) 右第5手根中手関節脱臼
  (11) エクストラ・オクターブ骨折
  (12) ガングリオン
  (13) 中手指節関節の背側でみられた指伸筋腱脱臼
  (14) ヘルニア腫瘤の自然退縮例
  (15) 脂肪滴
  (16) サギング(Sagging)徴候
  (17) 関節リウマチによる破壊性脱臼
 エキスパートへの道
  (1) 触診時の配慮と技術
  (2) インピンジメント症候
  (3) 腱板疎部
  (4) 後方四角腔
  (5) 腫脹著明時の内・外側上顆の触診法
  (6) フォルクマン拘縮
  (7) 離断性骨軟骨炎
  (8) 三角線維軟骨複合体損傷(TFCC)
  (9) 手根管症候群
  (10) 大腿三角(スカルパ三角)
  (11) ローザー・ネラトン線
  (12) Q角(Qアングル)
  (13) 関節包と膝蓋下脂肪体