はじめに
1950年代半ばから70年代にかけた我が国の高度経済成長にともない,看取りの場が在宅から医療機関へと移行してきました.したがって,21世紀は,看取りの体験をもたない新人看護師がほとんどです.新人看護師が緩和ケアや看取りのケアを実際に臨床で提供するには,先輩看護師の支援が重要になってきます.しかし,現場でそのような支援が十分になされているでしょうか?編者らが,がん看護専門看護師を目指す大学院生と対話をするとき,提供したケアについて「あれで良かったのだろうか?」と,昇華できない思いを抱えていることも少なくありません.そのため,本書では,緩和ケアや看取りの過程に取り組み始めた看護職者の方々にも,わかりやすいように,図,写真,イラストを多く用い,文章も平易にして事例やコラムなどを挿入しました.また,総論では,緩和ケアへの最近の考え方から,治療内容,補完代替療法,がん患者・家族の全体像の捉え方を概観しました.
各論では「看取りのケア」に関しても言及しました.看取りのケアは,プロセスであり「死に向かう3カ月の期間が重要注」と,言われています.本書では,週単位あるいは臨終前後のケアにも焦点をあて,特に,臨床の場で日常,提供されている鎮静と死後のケアを具体的に説明しています.エンドオブライフ(end of life)にあるがん患者とその家族へ緩和ケアを提供するとき,看護師は,どうしても「患者のとりきれない苦痛症状」「身辺に迫っている死」「大切な人を失う家族の苦悩」に向き合わなければなりません.そして,自ら提供したケアに看護師自身が意味づけできない限り「悶々とした思い」を引きずることが,筆者らの研究からもわかってきています.そのため,6章からなる各論では,症状コントロールの実際や精神面のケアだけでなく,家族・遺族ケア,患者の意思を尊重した日常生活のケアに加え,QOL・希望・意味をテーマとしたケアも収めました.さらに,最近では医療制度の変革などに伴い,在宅もしくは住み慣れた地域で看取る機会が少しずつ増えると考え,「病院から在宅への調整」「在宅での看取りのケア」も組み入れました.
本書を読む皆様が,人生の最期の時を自分らしく生きるがん患者の方々と,それを見守るご家族に寄り添い,辛い思いだけではなく,ケアリングを通し,相互に癒される体験をしていただけることを心から願っております.
(注:藤腹明子:看取りの心得と作法17カ条.pp47-54,青海社,2004)
2008年1月
編者 嶺岸秀子,千・美登子
1950年代半ばから70年代にかけた我が国の高度経済成長にともない,看取りの場が在宅から医療機関へと移行してきました.したがって,21世紀は,看取りの体験をもたない新人看護師がほとんどです.新人看護師が緩和ケアや看取りのケアを実際に臨床で提供するには,先輩看護師の支援が重要になってきます.しかし,現場でそのような支援が十分になされているでしょうか?編者らが,がん看護専門看護師を目指す大学院生と対話をするとき,提供したケアについて「あれで良かったのだろうか?」と,昇華できない思いを抱えていることも少なくありません.そのため,本書では,緩和ケアや看取りの過程に取り組み始めた看護職者の方々にも,わかりやすいように,図,写真,イラストを多く用い,文章も平易にして事例やコラムなどを挿入しました.また,総論では,緩和ケアへの最近の考え方から,治療内容,補完代替療法,がん患者・家族の全体像の捉え方を概観しました.
各論では「看取りのケア」に関しても言及しました.看取りのケアは,プロセスであり「死に向かう3カ月の期間が重要注」と,言われています.本書では,週単位あるいは臨終前後のケアにも焦点をあて,特に,臨床の場で日常,提供されている鎮静と死後のケアを具体的に説明しています.エンドオブライフ(end of life)にあるがん患者とその家族へ緩和ケアを提供するとき,看護師は,どうしても「患者のとりきれない苦痛症状」「身辺に迫っている死」「大切な人を失う家族の苦悩」に向き合わなければなりません.そして,自ら提供したケアに看護師自身が意味づけできない限り「悶々とした思い」を引きずることが,筆者らの研究からもわかってきています.そのため,6章からなる各論では,症状コントロールの実際や精神面のケアだけでなく,家族・遺族ケア,患者の意思を尊重した日常生活のケアに加え,QOL・希望・意味をテーマとしたケアも収めました.さらに,最近では医療制度の変革などに伴い,在宅もしくは住み慣れた地域で看取る機会が少しずつ増えると考え,「病院から在宅への調整」「在宅での看取りのケア」も組み入れました.
本書を読む皆様が,人生の最期の時を自分らしく生きるがん患者の方々と,それを見守るご家族に寄り添い,辛い思いだけではなく,ケアリングを通し,相互に癒される体験をしていただけることを心から願っております.
(注:藤腹明子:看取りの心得と作法17カ条.pp47-54,青海社,2004)
2008年1月
編者 嶺岸秀子,千・美登子
総論 緩和ケアとは
1 緩和ケアについて(小迫冨美恵)
1)緩和ケアの定義
2)全人的苦痛とは
3)トータルペインへの対応
まとめ
2 エンドオブライフ・ステージに化学療法・放射線治療・手術療法を受ける患者へのケア(松本 牧)
はじめに
1)治療を行う際に必要なアセスメントとケア
アセスメント ケア
2)がん治療と基本的ケア
化学療法 放射線治療 手術療法
3)事例
プロフィール 問題となる状況─アセスメント ケアの方向・ゴールと実際─実践 成果・変化─評価
まとめ
3 緩和ケアとしての補完代替療法:アロマセラピー・マッサージ(酒井篤子/三富鈴子)
1)補完代替療法とは
緩和ケアにおける補完代替療法
2)緩和ケアにおけるアロマセラピー
アロマセラピーの基本知識 精油の副作用と安全性 緩和ケアにおけるアロマセラピーの活用 アロマセラピー・マッサージの日常の看護ケアへの取り入れ方 終末期にあるがん患者への施行時の注意点 アロマセラピー・マッサージの実際(手技)
まとめ
4 エンドオブライフ・ステージにある患者・家族の全体像の把握─臨床現場における4つのプロセス(鈴木貴美/片塩 幸)
はじめに
1)全体像の把握とは
2)全体像の把握に向けた4つのプロセス
家族との信頼関係を構築する 身体症状を緩和する 日常生活の援助のなかでの信頼関係の構築 精神的な思いやスピリチュアルな側面など,患者の内面の理解 看取りが近づいたとき─その人らしさを大切にしたケアが中心の時期
まとめ
コラム
患者を尊重し安全面に配慮した環境
各論1.がん患者が体験する身体面の主な症状コントロールの実際
1 疼痛マネジメントが困難ながん患者へのケア(片塩 幸)
はじめに
1)疼痛マネジメント
2)疼痛マネジメントが困難な場合
原因と病態から痛みに関連している症状 鎮痛剤の有効性の評価 日常生活への影響 全人的視点 目標の達成度と患者の満足度の評価
3)疼痛マネジメントの実際
プロフィール 問題となる状況 再アセスメント─ケアの方向性,実際 介入の実際と評価─成果,変化
まとめ
2 呼吸困難を抱えるがん患者へのケア(我妻孝則)
はじめに
2)アセスメントと症状マネジメント
呼吸困難を抱えるがん患者の観察ポイント 呼吸困難のアセスメント 呼吸困難のマネジメント
3)トータルアセスメントと看護ケア
トータルディスニア(totaldyspnea) 看護ケア
4)事例
プロフィール 看護ケアの実際
おわりに
3 倦怠感を訴えるがん患者へのケア(岩本純子)
はじめに
1)倦怠感とは
2)倦怠感のアセスメント
3)看護ケア
倦怠感を体験している患者への看護ケア チーム医療におけるナースの役割 家族への援助
4)事例
プロフィール 看護ケアの実際
おわりに
4 口渇・口腔乾燥のあるがん患者へのケア(山田静子)
はじめに
1)口腔乾燥症とは
2)口腔乾燥のある患者のアセスメント
Q&A─アセスメントの前に アセスメントに必要な情報(観察事項)
3)口腔ケアの実際
口腔ケアのポイント 事例
おわりに
5 消化器症状(嘔気・嘔吐,腹部膨満感,下痢・便秘)に苦しむがん患者へのケア(佐藤美紀)
はじめに
1)嘔気・嘔吐
症状について 要因 問題の明確化(アセスメント)とケア
2)腹部膨満感
症状について 要因 問題の明確化(アセスメント)とケア
3)下痢・便秘
症状について 要因 問題の明確化(アセスメント)とケア
4)事例
プロフィール アセスメントとケア
おわりに
6 排尿障害を訴えるがん患者へのケア(岸田さな江)
はじめに
1)排尿障害とは
排尿障害の定義 排尿障害の原因
2)排尿障害のアセスメント
観察ポイント 援助者との関係 治療・看護方針
3)看護ケア
尿失禁のケア 排尿困難・尿閉 尊厳を保つケア
4)看護の実際
身体的側面 心理的側面 社会的側面 スピリチュアルな側面 プロフィール アセスメントとケア
おわりに
7 浮腫に苦しむがん患者へのケア(佐藤かほる/望月美穂)
はじめに
1)浮腫とは
浮腫の分類 浮腫のメカニズム
2)浮腫のアセスメント
3)浮腫のケアの実際
安楽な体位の工夫 体圧コントロール スキンケア マッサージ 圧迫療法 運動療法 安全な移動の援助 栄養状態の改善 輸液の管理 排泄の援助 安楽な着衣
4)浮腫を抱える終末期がん患者への看護介入の実際
プロフィール アセスメント 患者目標の設定と看護方針の明確化 具体的なケアの立案(患者の希望に沿って実践可能なものを選択) 看護実践 具体的なケアの評価・修正 看護介入の成果
おわりに
各論2.がん患者が体験する精神面の主な症状コントロールの実際
1 せん妄のあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)せん妄とは
せん妄の症状 せん妄はなぜ起こるのか
2)せん妄の治療
3)せん妄状態にある患者へのケアの実際
患者へのケア 家族へのケア
おわりに
2 不安のあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)不安とは
がん患者の不安の分類 不安のレベルと反応
2)不安の治療
3)不安状態にある患者へのケアの実際
把握しておくべき情報 ケアの実際
おわりに
コラム
精神看護の基本的援助技術:傾聴と共感,そして受容について
3 抑うつのあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)抑うつとは
2)抑うつ状態にある患者の治療
3)抑うつ状態にある患者へのケアの実際
情報収集とアセスメント ケアの実際
おわりに
4 希死念慮のあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)希死念慮とは
2)希死念慮のある患者への治療
3)希死念慮のある患者へのケアの実際
問診 共感
おわりに
コラム
精神看護の基本的援助技術:共感した内容の伝え方
各論3.がん患者の意思を尊重した日常生活援助の実際
1 がん患者の栄養・水分補給への援助(千ア美登子)
1)エンドオブライフ・ステージにある患者の栄養障害
2)経口摂取が可能な場合の援助の実際
食事の環境を整える 口腔内のケアを行う 誤嚥をしないように体位や食事の形態を整えて与える 適宜,水分を補給する
3)人工的な栄養・水分補給の実際
がん患者のQOLを念頭においた投与経路の選択 経腸栄養法の場合 輸液療法の場合
4)心理面・社会面への援助
プロフィール ケア
おわりに
2 がん患者の清潔への援助(三浦里織)
はじめに
1)清潔ケアのアセスメント
2)清潔ケアの実際
洗顔 口腔ケア 入浴,シャワー浴,部分浴 全身清拭 洗髪 陰部洗浄
おわりに
3 がん患者の排泄への援助(久山幸恵)
はじめに
1)排泄のマネジメント
患者の排泄機能の理解 患者の排泄に対する思いや価値観の理解 排泄ケアのアセスメント
2)実際のケアの方法
腸管への物理的な刺激によるケア
おわりに
4 がん患者の褥瘡予防への援助(松原康美)
はじめに
1)褥瘡ケアを行ううえでの問題点
病状の悪化に伴う褥瘡発生リスク 褥瘡発生危険因子のすべてを取り除くことが困難 症状緩和を前提とした褥瘡ケアの必要性
2)褥瘡予防への援助
褥瘡発生のリスクアセスメント 十分な痛みのコントロール 寝心地を考慮した体圧分散マットレスの選択 安楽な体位の調整 脆弱な皮膚に対するケア
3)褥瘡予防ケアの評価
各論4.大切な人を喪失する人々とのコミュニケーションの実際
1 がん患者・家族・遺族における喪失体験の理解と予期的悲嘆ケア(小熊理恵)
はじめに
1)死生観を模索するがん患者・家族
2)予期的悲嘆とは
3)エンドオブライフ・ステージにある人への援助
4)ボディイメージの変化やコントロール感覚を喪失した人への援助
5)意思決定と事前指示書
6)エンドオブライフ・ステージにある患者の家族への援助
家族の定義 家族へのケアの必要性 エンドオブライフ・ステージを迎える患者の家族の心理とニード 家族へのケアの実際
7)遺族へのケア
8)事例:看護ケアやがん体験の語りを通した終末期患者の妻への介入
プロフィール 看護アセスメント 看護方針 看護介入と家族の変化 成果
2 がん患者・家族の希望の尊重と意味を見いだすことへの支援(坪井 香・嶺岸秀子)
はじめに
1)“意味“とは
2)“希望”とは
3)意味づけが促されることを意図した看護ケアと希望
4)患者から実現不可能と思われる希望の表出があり,混乱する看護師への支援
5)意味づけへのアプローチ
6)ケア(コミュニケーション)の実際
プロフィール 看護介入およびAさんの変化
おわりに
3 がん患者・家族のQOLを配慮した支援(坂下智珠子)
1)概念・用語の定義
2)エビデンスに基づくアプローチの方略
3)ケアの実際
身体的安寧・症状 精神的安寧 社会的安寧 霊的安寧
おわりに
各論5.家族・遺族ケア:大切な人を喪失する配偶者・子ども・両親への対応とケアのプロセス
1 配偶者へのケア(横山利香)
はじめに
1)がん患者と配偶者との関係のアセスメント
患者と配偶者の関係を把握する 夫婦のライフサイクルからみたアセスメント
2)エンドオブライフ・ステージに向けた配偶者へのケアのポイント
入院時 治療期 エンドオブライフ・ステージ 死後
3)混乱している患者・配偶者へ向き合う担当看護師へのサポート
看護ケアを展開して混乱している時期 患者が亡くなったあと:デスカンファレンス
4)事例:終末期の患者の希望を支える配偶者に対するケア
プロフィール 初回入院時の配偶者へのケア 治療期の配偶者へのケア エンドオブライフ・ステージの配偶者へのケア 患者の死後
おわりに
2 子どもへのケア(小島ひで子)
はじめに
1)死の概念の発達と子どもの悲嘆の特徴
子どもの死の概念の発達 子どもの悲嘆の特徴
2)エンドオブライフ・ステージにある患者の子どもの反応とケア
子どもの反応 子どものケア
3)家族と死別後の子どもの反応とケア
臨終時のかかわり 葬儀への子どもの参列 悲嘆反応持続時への対応 死別ケアプログラムの実践
4)看護師へのサポート
メンタルケア 教育的かかわり
おわりに
3 両親へのケア(竹村華織)
はじめに
1)平均的な家族の発達段階から考えた両親の課題
2)死別体験に伴う悲嘆への影響要因
3)小児領域における終末期の家族の特徴
4)高齢がん患者を看取る老親の悲嘆の背景特徴
意思決定のキーパーソンとなりえない老親 子どもの家族への配慮 介護力の維持困難 老親自身の死と向き合うことへの藤
5)子どもを失いつつある両親へのケア
おわりに
各論6.看取りのケア
1 看取りのケアにおける鎮静(小笠原利枝)
はじめに
1)持続的に深い鎮静を行う要件
2)鎮静の展開
プロフィール 鎮静の提案から鎮静の実施 鎮静効果の指標 成果・変化
おわりに
2 臨終前後のケア(樋口さくら)
はじめに
1)臨終前のケア
家族が看取りをどのように受け止めているか理解して援助する 患者をどのように看取りたいか理解して援助する 家族とともに看取りの過程をたどる
2)死亡宣告時のケア
宣告に立ち会うべき家族や友人がそろっているかを確認する 患者との惜別の時間を確保する
3)臨終後のケア
家族とともに患者の闘病生活をねぎらい,患者への畏敬の気持ちを表す 遺族ケア
おわりに
3 遺族へのケア(玄海泰子)
はじめに
1)悲嘆へのケア
正常な悲嘆の心理過程 悲嘆のケアの実際
2)焼香の仕方
3)出棺時の対応
4)遺族への言葉かけ
おわりに
4 在宅での看取りのケア(中島朋子/千ア美登子)
はじめに
1)在宅での看取りのケアの実際
死の準備教育―臨死期に予測される主な変化を教える 在宅での死亡確認 死後のケア グリーフケア―悲嘆作業・喪の作業
2)在宅療養における緩和ケア
疼痛マネジメント 呼吸困難マネジメント
3)在宅療養の維持から看取りまでの支援
社会資源を活用した在宅ケアマネジメント 在宅における介護支援 自己実現への援助 意思決定への支援
おわりに
コラム
退院時の在宅調整で重要なこと―在宅ケアのキーパーソンの見極め 死の準備教育 在宅医療チーム
索引
1 緩和ケアについて(小迫冨美恵)
1)緩和ケアの定義
2)全人的苦痛とは
3)トータルペインへの対応
まとめ
2 エンドオブライフ・ステージに化学療法・放射線治療・手術療法を受ける患者へのケア(松本 牧)
はじめに
1)治療を行う際に必要なアセスメントとケア
アセスメント ケア
2)がん治療と基本的ケア
化学療法 放射線治療 手術療法
3)事例
プロフィール 問題となる状況─アセスメント ケアの方向・ゴールと実際─実践 成果・変化─評価
まとめ
3 緩和ケアとしての補完代替療法:アロマセラピー・マッサージ(酒井篤子/三富鈴子)
1)補完代替療法とは
緩和ケアにおける補完代替療法
2)緩和ケアにおけるアロマセラピー
アロマセラピーの基本知識 精油の副作用と安全性 緩和ケアにおけるアロマセラピーの活用 アロマセラピー・マッサージの日常の看護ケアへの取り入れ方 終末期にあるがん患者への施行時の注意点 アロマセラピー・マッサージの実際(手技)
まとめ
4 エンドオブライフ・ステージにある患者・家族の全体像の把握─臨床現場における4つのプロセス(鈴木貴美/片塩 幸)
はじめに
1)全体像の把握とは
2)全体像の把握に向けた4つのプロセス
家族との信頼関係を構築する 身体症状を緩和する 日常生活の援助のなかでの信頼関係の構築 精神的な思いやスピリチュアルな側面など,患者の内面の理解 看取りが近づいたとき─その人らしさを大切にしたケアが中心の時期
まとめ
コラム
患者を尊重し安全面に配慮した環境
各論1.がん患者が体験する身体面の主な症状コントロールの実際
1 疼痛マネジメントが困難ながん患者へのケア(片塩 幸)
はじめに
1)疼痛マネジメント
2)疼痛マネジメントが困難な場合
原因と病態から痛みに関連している症状 鎮痛剤の有効性の評価 日常生活への影響 全人的視点 目標の達成度と患者の満足度の評価
3)疼痛マネジメントの実際
プロフィール 問題となる状況 再アセスメント─ケアの方向性,実際 介入の実際と評価─成果,変化
まとめ
2 呼吸困難を抱えるがん患者へのケア(我妻孝則)
はじめに
2)アセスメントと症状マネジメント
呼吸困難を抱えるがん患者の観察ポイント 呼吸困難のアセスメント 呼吸困難のマネジメント
3)トータルアセスメントと看護ケア
トータルディスニア(totaldyspnea) 看護ケア
4)事例
プロフィール 看護ケアの実際
おわりに
3 倦怠感を訴えるがん患者へのケア(岩本純子)
はじめに
1)倦怠感とは
2)倦怠感のアセスメント
3)看護ケア
倦怠感を体験している患者への看護ケア チーム医療におけるナースの役割 家族への援助
4)事例
プロフィール 看護ケアの実際
おわりに
4 口渇・口腔乾燥のあるがん患者へのケア(山田静子)
はじめに
1)口腔乾燥症とは
2)口腔乾燥のある患者のアセスメント
Q&A─アセスメントの前に アセスメントに必要な情報(観察事項)
3)口腔ケアの実際
口腔ケアのポイント 事例
おわりに
5 消化器症状(嘔気・嘔吐,腹部膨満感,下痢・便秘)に苦しむがん患者へのケア(佐藤美紀)
はじめに
1)嘔気・嘔吐
症状について 要因 問題の明確化(アセスメント)とケア
2)腹部膨満感
症状について 要因 問題の明確化(アセスメント)とケア
3)下痢・便秘
症状について 要因 問題の明確化(アセスメント)とケア
4)事例
プロフィール アセスメントとケア
おわりに
6 排尿障害を訴えるがん患者へのケア(岸田さな江)
はじめに
1)排尿障害とは
排尿障害の定義 排尿障害の原因
2)排尿障害のアセスメント
観察ポイント 援助者との関係 治療・看護方針
3)看護ケア
尿失禁のケア 排尿困難・尿閉 尊厳を保つケア
4)看護の実際
身体的側面 心理的側面 社会的側面 スピリチュアルな側面 プロフィール アセスメントとケア
おわりに
7 浮腫に苦しむがん患者へのケア(佐藤かほる/望月美穂)
はじめに
1)浮腫とは
浮腫の分類 浮腫のメカニズム
2)浮腫のアセスメント
3)浮腫のケアの実際
安楽な体位の工夫 体圧コントロール スキンケア マッサージ 圧迫療法 運動療法 安全な移動の援助 栄養状態の改善 輸液の管理 排泄の援助 安楽な着衣
4)浮腫を抱える終末期がん患者への看護介入の実際
プロフィール アセスメント 患者目標の設定と看護方針の明確化 具体的なケアの立案(患者の希望に沿って実践可能なものを選択) 看護実践 具体的なケアの評価・修正 看護介入の成果
おわりに
各論2.がん患者が体験する精神面の主な症状コントロールの実際
1 せん妄のあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)せん妄とは
せん妄の症状 せん妄はなぜ起こるのか
2)せん妄の治療
3)せん妄状態にある患者へのケアの実際
患者へのケア 家族へのケア
おわりに
2 不安のあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)不安とは
がん患者の不安の分類 不安のレベルと反応
2)不安の治療
3)不安状態にある患者へのケアの実際
把握しておくべき情報 ケアの実際
おわりに
コラム
精神看護の基本的援助技術:傾聴と共感,そして受容について
3 抑うつのあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)抑うつとは
2)抑うつ状態にある患者の治療
3)抑うつ状態にある患者へのケアの実際
情報収集とアセスメント ケアの実際
おわりに
4 希死念慮のあるがん患者へのケア(須藤章子)
はじめに
1)希死念慮とは
2)希死念慮のある患者への治療
3)希死念慮のある患者へのケアの実際
問診 共感
おわりに
コラム
精神看護の基本的援助技術:共感した内容の伝え方
各論3.がん患者の意思を尊重した日常生活援助の実際
1 がん患者の栄養・水分補給への援助(千ア美登子)
1)エンドオブライフ・ステージにある患者の栄養障害
2)経口摂取が可能な場合の援助の実際
食事の環境を整える 口腔内のケアを行う 誤嚥をしないように体位や食事の形態を整えて与える 適宜,水分を補給する
3)人工的な栄養・水分補給の実際
がん患者のQOLを念頭においた投与経路の選択 経腸栄養法の場合 輸液療法の場合
4)心理面・社会面への援助
プロフィール ケア
おわりに
2 がん患者の清潔への援助(三浦里織)
はじめに
1)清潔ケアのアセスメント
2)清潔ケアの実際
洗顔 口腔ケア 入浴,シャワー浴,部分浴 全身清拭 洗髪 陰部洗浄
おわりに
3 がん患者の排泄への援助(久山幸恵)
はじめに
1)排泄のマネジメント
患者の排泄機能の理解 患者の排泄に対する思いや価値観の理解 排泄ケアのアセスメント
2)実際のケアの方法
腸管への物理的な刺激によるケア
おわりに
4 がん患者の褥瘡予防への援助(松原康美)
はじめに
1)褥瘡ケアを行ううえでの問題点
病状の悪化に伴う褥瘡発生リスク 褥瘡発生危険因子のすべてを取り除くことが困難 症状緩和を前提とした褥瘡ケアの必要性
2)褥瘡予防への援助
褥瘡発生のリスクアセスメント 十分な痛みのコントロール 寝心地を考慮した体圧分散マットレスの選択 安楽な体位の調整 脆弱な皮膚に対するケア
3)褥瘡予防ケアの評価
各論4.大切な人を喪失する人々とのコミュニケーションの実際
1 がん患者・家族・遺族における喪失体験の理解と予期的悲嘆ケア(小熊理恵)
はじめに
1)死生観を模索するがん患者・家族
2)予期的悲嘆とは
3)エンドオブライフ・ステージにある人への援助
4)ボディイメージの変化やコントロール感覚を喪失した人への援助
5)意思決定と事前指示書
6)エンドオブライフ・ステージにある患者の家族への援助
家族の定義 家族へのケアの必要性 エンドオブライフ・ステージを迎える患者の家族の心理とニード 家族へのケアの実際
7)遺族へのケア
8)事例:看護ケアやがん体験の語りを通した終末期患者の妻への介入
プロフィール 看護アセスメント 看護方針 看護介入と家族の変化 成果
2 がん患者・家族の希望の尊重と意味を見いだすことへの支援(坪井 香・嶺岸秀子)
はじめに
1)“意味“とは
2)“希望”とは
3)意味づけが促されることを意図した看護ケアと希望
4)患者から実現不可能と思われる希望の表出があり,混乱する看護師への支援
5)意味づけへのアプローチ
6)ケア(コミュニケーション)の実際
プロフィール 看護介入およびAさんの変化
おわりに
3 がん患者・家族のQOLを配慮した支援(坂下智珠子)
1)概念・用語の定義
2)エビデンスに基づくアプローチの方略
3)ケアの実際
身体的安寧・症状 精神的安寧 社会的安寧 霊的安寧
おわりに
各論5.家族・遺族ケア:大切な人を喪失する配偶者・子ども・両親への対応とケアのプロセス
1 配偶者へのケア(横山利香)
はじめに
1)がん患者と配偶者との関係のアセスメント
患者と配偶者の関係を把握する 夫婦のライフサイクルからみたアセスメント
2)エンドオブライフ・ステージに向けた配偶者へのケアのポイント
入院時 治療期 エンドオブライフ・ステージ 死後
3)混乱している患者・配偶者へ向き合う担当看護師へのサポート
看護ケアを展開して混乱している時期 患者が亡くなったあと:デスカンファレンス
4)事例:終末期の患者の希望を支える配偶者に対するケア
プロフィール 初回入院時の配偶者へのケア 治療期の配偶者へのケア エンドオブライフ・ステージの配偶者へのケア 患者の死後
おわりに
2 子どもへのケア(小島ひで子)
はじめに
1)死の概念の発達と子どもの悲嘆の特徴
子どもの死の概念の発達 子どもの悲嘆の特徴
2)エンドオブライフ・ステージにある患者の子どもの反応とケア
子どもの反応 子どものケア
3)家族と死別後の子どもの反応とケア
臨終時のかかわり 葬儀への子どもの参列 悲嘆反応持続時への対応 死別ケアプログラムの実践
4)看護師へのサポート
メンタルケア 教育的かかわり
おわりに
3 両親へのケア(竹村華織)
はじめに
1)平均的な家族の発達段階から考えた両親の課題
2)死別体験に伴う悲嘆への影響要因
3)小児領域における終末期の家族の特徴
4)高齢がん患者を看取る老親の悲嘆の背景特徴
意思決定のキーパーソンとなりえない老親 子どもの家族への配慮 介護力の維持困難 老親自身の死と向き合うことへの藤
5)子どもを失いつつある両親へのケア
おわりに
各論6.看取りのケア
1 看取りのケアにおける鎮静(小笠原利枝)
はじめに
1)持続的に深い鎮静を行う要件
2)鎮静の展開
プロフィール 鎮静の提案から鎮静の実施 鎮静効果の指標 成果・変化
おわりに
2 臨終前後のケア(樋口さくら)
はじめに
1)臨終前のケア
家族が看取りをどのように受け止めているか理解して援助する 患者をどのように看取りたいか理解して援助する 家族とともに看取りの過程をたどる
2)死亡宣告時のケア
宣告に立ち会うべき家族や友人がそろっているかを確認する 患者との惜別の時間を確保する
3)臨終後のケア
家族とともに患者の闘病生活をねぎらい,患者への畏敬の気持ちを表す 遺族ケア
おわりに
3 遺族へのケア(玄海泰子)
はじめに
1)悲嘆へのケア
正常な悲嘆の心理過程 悲嘆のケアの実際
2)焼香の仕方
3)出棺時の対応
4)遺族への言葉かけ
おわりに
4 在宅での看取りのケア(中島朋子/千ア美登子)
はじめに
1)在宅での看取りのケアの実際
死の準備教育―臨死期に予測される主な変化を教える 在宅での死亡確認 死後のケア グリーフケア―悲嘆作業・喪の作業
2)在宅療養における緩和ケア
疼痛マネジメント 呼吸困難マネジメント
3)在宅療養の維持から看取りまでの支援
社会資源を活用した在宅ケアマネジメント 在宅における介護支援 自己実現への援助 意思決定への支援
おわりに
コラム
退院時の在宅調整で重要なこと―在宅ケアのキーパーソンの見極め 死の準備教育 在宅医療チーム
索引