やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 リハビリテーション栄養に関する9 冊目の書籍を,医歯薬出版株式会社から出版させていただくことになりました.今回は在宅をテーマにしました.病院でのリハビリテーション栄養に関しては,先行書籍でかなり紹介してきました.一方,在宅に関しては,『リハビリテーション栄養ハンドブック』『実践リハビリテーション栄養』『認知症のリハビリテーション栄養』でそれぞれ6〜 18 ページ紹介したのみでした.地域包括ケア時代では,在宅リハビリテーション栄養の視点をもつことの重要性が高まります.そのため,在宅リハビリテーション栄養のエビデンスは少ないですが今回,企画しました.
 病院でのリハビリテーション栄養は,国際生活機能分類のうち疾患,機能,活動に対するアプローチが中心となります.参加,環境因子,個人因子については,十分考慮されていませんでした.一方,在宅リハビリテーション栄養は,参加,環境因子,個人因子に対するアプローチが中心となるため,これらに重きを置いた書籍としました.地域包括ケアシステムの土台となる住まいと住まい方にも,在宅リハビリテーション栄養は有用です.
 第1 章:在宅リハビリテーション栄養の必要性が“Why“,第2 章:在宅リハビリテーション栄養評価が“What”,第3 章:在宅リハビリテーション栄養ケアプランが“How” という構成としました.全体を読むことで多職種連携や地域連携を含めて,在宅リハビリテーション栄養の実践に活用できると考えています.今回,ほとんどの執筆者は在宅で勤務されていて,在宅の臨床現場を熟知しています.大変お忙しい中,執筆してくださった皆様に深謝いたします.
 日本リハビリテーション栄養研究会(https://sites.google.com/site/rehabnutrition/)では,リハビリテーション栄養の臨床研究を推進しています.2014 年から3 日間のリハビリテーション栄養研究デザイン学習会を開催しています.その効果もあり,回復期リハビリテーション病院や急性期病院では,リハビリテーション栄養のエビデンスが徐々に蓄積されています.しかし,在宅リハビリテーション栄養のエビデンスは現在,症例報告レベルです.今回の書籍をきっかけとして,在宅リハビリテーション栄養の実践と同時に臨床研究も広がればと考えています.
 日本リハビリテーション栄養研究会の会員数は,2015 年8 月時点で約4,600 人となりました.今後は国内だけでなく海外,特にアジアでリハビリテーション栄養の考え方を広めるつもりです.リハビリテーション栄養に関心のある方は,ぜひ日本リハビリテーション栄養研究会にご入会ください.
 最後に医歯薬出版株式会社の小口真司さんには,今回も企画,執筆,編集などで大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
 2015年9 月
 若林秀隆
第1章 在宅リハビリテーション栄養の必要性
 1.なぜ在宅リハビリテーション栄養か:看護師の視点から
  はじめに /看護師からみた在宅リハビリテーション栄養とは /在宅リハビリテーション栄養の必要性 /在宅リハビリテーション栄養の課題
 2.なぜ在宅リハビリテーション栄養か:管理栄養士の視点から
  はじめに /管理栄養士からみた在宅リハビリテーション栄養とは /在宅リハビリテーション栄養の必要性 /在宅リハビリテーション栄養の課題
 3.なぜ在宅リハビリテーション栄養か:理学療法士の視点から
  はじめに /理学療法士からみた在宅リハビリテーション栄養とは /在宅リハビリテーション栄養の必要性 /在宅リハビリテーション栄養の課題 /おわりに
 4.なぜ在宅リハビリテーション栄養か:医師の視点から
  はじめに /在宅リハビリテーション栄養とは /在宅リハビリテーション栄養の必要性 /在宅リハビリテーション栄養の課題 /おわりに
第2章 在宅リハビリテーション栄養評価
 1.在宅リハビリテーション栄養での国際生活機能分類の活用法
  はじめに /心身機能・身体構造 /活動 /BADL /IADL /AADL /QOL・生きがい
 2.在宅での参加・環境因子・個人因子の評価
  はじめに /活動と参加 /環境因子 /個人因子 /おわりに
 3.在宅での栄養評価
  はじめに /在宅療養患者の特徴 /栄養スクリーニング /身体計測 /採血データ /おわりに
 4.在宅での食生活評価
  はじめに /食事摂取量の評価 /食生活評価
 5.在宅でのサルコペニア・フレイル評価
  サルコペニアの評価 /フレイルの評価 /在宅でのフレイル・サルコペニア評価
 6.在宅での摂食嚥下障害,オーラルフレイル評価
  はじめに /在宅スタッフの口腔,嚥下に対する意識 /在宅で求められる簡便,短時間,見える化スクリーニング /ROAGとは /在宅での口腔機能障害 /ROAGによるオーラルフレイルの早期スクリーニング
 7.在宅リハビリテーション栄養の予後予測と訓練内容判断
  在宅リハビリテーション栄養の予後予測と目標設定 /在宅リハビリテーション栄養の計画内容の判断 /在宅リハビリテーション栄養の訓練内容判断の実際
第3章 在宅リハビリテーション栄養ケアプラン
 1.在宅リハビリテーション栄養を考慮したケアプランの作り方
  はじめに /在宅要介護高齢者を取り巻く日常生活環境の実状 /日本の介護保険制度とケアプランの示す自立支援 /ケアプランの要となるアセスメント方法 /おわりに
 2.在宅での多職種連携のあり方
  はじめに /なぜ今,連携なのか /連携を阻害する因子 /在宅での多職種連携の実際 /おわりに
 3.在宅でのリハビリテーション栄養ケアプランと事例紹介:看護師の視点から
  はじめに /事例紹介 /リハビリテーション栄養評価 /ゴール設定 /リハビリテーション栄養ケアプラン /経過 /考察 /おわりに
 4.在宅でのリハビリテーション栄養ケアプランと事例紹介:管理栄養士の視点から
  はじめに /事例紹介 /リハビリテーション栄養評価 /ゴール設定 /リハビリテーション栄養ケアプラン /経過 /考察
 5.在宅でのリハビリテーション栄養ケアプランと事例紹介:理学療法士の視点から
  はじめに /事例紹介 /リハビリテーション栄養評価 /ゴール設定 /リハビリテーション栄養ケアプラン /経過 /考察
 6.在宅でのリハビリテーション栄養ケアプランと事例紹介:作業療法士の視点から
  はじめに /事業の紹介 /事例紹介 /リハビリテーション栄養評価 /ゴール設定 /リハビリテーション栄養ケアプラン /作業療法経過 /おわりに
 7.在宅でのリハビリテーション栄養ケアプランと事例紹介:言語聴覚士の視点から
  はじめに /事例紹介 /経過 /考察
 8.在宅でのリハビリテーション栄養ケアプランと事例紹介:歯科衛生士の視点から
  はじめに /事例紹介 /リハビリテーション栄養評価(訪問開始時) /ゴール設定 /リハビリテーション栄養ケアプラン /経過 /考察
 9.在宅でのリハビリテーション栄養ケアプランと事例紹介:薬剤師の視点から
  はじめに /事例紹介 /リハビリテーション栄養評価 /ゴール設定 /リハビリテーション栄養ケアプラン /経過 /考察
 10.在宅の食環境問題と支援
  はじめに /問題点(1):低栄養 /問題点(2):口腔機能低下 /問題点(3):サルコペニア /問題点(4):骨粗鬆症
 11.在宅でのリハビリテーション栄養サマリーの活用法
  はじめに /リハビリテーション栄養サマリーの特徴 /記載内容 /記載時のポイント /活用法 /課題 /おわりに
 12.在宅でのテクノエイドの活用法
  はじめに /事例(1) /事例(2) /川崎市における住宅改修・補装具作製について /在宅リハビリテーションサービス事業 /おわりに

 索引