やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版序文

 2000年5月〜8月,大阪にて4回シリーズで開催した「医師・歯科医師のための摂食・嚥下障害セミナー」のテキストを基に編集した本書が,このたび第2版として発行されることになりました.
 摂食・嚥下障害に関する参考書は今でも続々と出版されていますが,それぞれに特徴があり,どれか1冊あれば十分とはなかなかいかないようです.昨年末に医歯薬出版より本書増刷の連絡がありましたが,この機会を活かしさらに充実した「医師・歯科医師のための」ハンドブックとできるよう協議しました.新たな内容として,開業医師・歯科医師の実践の紹介,介護保険での取扱いや,スクリーニングテストの考え方,気道防御のための薬物治療など,第1版に盛り込めなかったものや,この2年間で定着した新しい考え方など5項目を追加することとし,それぞれの項目に相応しい執筆者を得て,実現の運びとなりました.
 摂食・嚥下障害のリハは複数の職種によるチームアプローチが必要であることは知られていますが,主治医をはじめとした医師・歯科医師の指示なくしてはコメディカルスタッフがリハを実施できないことが往々にして忘れられがちです.摂食・嚥下障害のリハは,誤嚥性肺炎の予防をはじめとして栄養管理,呼吸管理など,常に医学的管理の下に行われなければならず,医師・歯科医師が,チームの中心的役割を果たさなければなりません.もちろん医師・歯科医師が摂食・嚥下障害のリハのすべてに精通していなければならないということではなく,チームの構成メンバーの力を結集して安全なリハを進めるための,舵取り役を務めることが役割と考えてよいと思います.
 他方,基本的な事項については,正確な知識と手技を身につけなければなりません.例えば訓練を兼ねた代替栄養法である間欠的経管栄養法や,食道入口部の開大をねらったバルーンブジー法など,医療器具を嚥下させる方法が次第に広まりつつあり,正しい適応で正しい手技を行わないと偶発的な医療過誤につながりかねません.このような方法を実施する場合はコメディカルスタッフ任せにはできず,医師・歯科医師自身がまず行ってみるなどリスク管理にもきめ細かな配慮が必要となっています.
 本書を手引きとして,摂食・嚥下障害のリハにひとりでも多くの医師・歯科医師が積極的に参加して下さることを願っています.
 2002年8月
 本多知行 溝尻源太郎

序文

 さまざまな原因で生じる摂食・嚥下障害に対しては,広くリハビリテーション医療の立場から多職種によるチームアプローチの必要性が強調されています.口腔ケア,摂食・嚥下訓練,歯科補綴的アプローチ,手術的アプローチの重要性や,低栄養,脱水,誤嚥性肺炎などへのリスク管理の必要性もよく知られています.さらに訓練にあたる言語聴覚士などは,“医師・歯科医師の指示によって”従事することが法的にも定められています.これらのことから,摂食・嚥下障害の臨床における医師・歯科医師の役割,責任の大きさは,いうまでもありません.
 臨床の現場からは“医師・歯科医師の積極的な取り組み“が強く望まれています.摂食・嚥下障害に関する全国規模の学会・研究会や,各地方での研修会・勉強会などへの医師・歯科医師の参加はまだまだ少なく,医師・歯科医師の無関心が危惧されてもいます.また,“摂食・嚥下障害はむずかしい”“わからない”という医師・歯科医師の声も聞こえてきます.
 1999年2月28日,関西を中心とした60有余名の医師・歯科医師が大阪に集まり,摂食・嚥下障害のセミナーを開催しました.参加者へのアンケート調査により,継続的なセミナーの開催とネットワークの必要性が確認され,その実現のため2年間の時限付きのワーキンググループを有志で結成し,2000年5月から8月にかけて4回シリーズの「医師・歯科医師のための摂食・嚥下障害セミナー」を開催することになりました.講師を各分野の専門家に依頼し,全講師の執筆によるテキストを作成,セミナー参加者以外にも広くその内容を知っていただくため,各講師の講演内容を項目別に並び替えて整理し,書籍として出版することになりました.
 本ハンドブックは各執筆者の講演要旨集といった性格のもので,首尾一貫した単行書ではありませんが,医師・歯科医師としてこれだけは知っておきたいと思われる内容を,おおむね盛り込んでいます.今日的課題である介護保険や,在宅での諸問題などは残念ながら含めることができませんでした.医師・歯科医師の役割や責任を果たすために,本ハンドブックを日常臨床の場面で活用していただけることを願っています.さらに,医師・歯科医師以外の方々にも摂食・嚥下障害の輪郭を理解するのに役立てていただければ幸いです.
 本書の編集に協力いただいた有志の氏名を奥付に記して感謝の意を表します.
 2000年5月
 本多知行 溝尻源太郎
 執筆者一覧
 第2版序文
 序文

第1章 リハビリテーション医学と摂食・嚥下障害の今日的課題
 1 1)リハビリテーション医学の特徴 本多知行
 2 2)チーム医療の必要性 本多知行
 3 3)リハにおける摂食・嚥下障害の位置づけ 本多知行
 4 4)医師・歯科医師のなすべきこと 本多知行
第2章 摂食・嚥下のメカニズム
 5 1)嚥下器官の解剖 梅崎俊郎
 6 2)嚥下の神経機構 梅崎俊郎
 7 3)嚥下の期と相 梅崎俊郎
   4)正常な摂食・嚥下
 8  (1)乳幼児の摂食・嚥下 向井美恵
 9  (2)成人・高齢者の摂食・嚥下 梅崎俊郎
第3章 摂食・嚥下障害の診断・評価と予後予測
 10 1)摂食・嚥下障害の定義と分類 本多知行
   2)診断・評価のポイント
 11  (1)急性期発症の摂食・嚥下障害 本多知行
 12  (2)慢性期発症の摂食・嚥下障害 本多知行
   3)診断・評価の実際
 13  (1)高次脳機能障害と摂食・嚥下障害 巨島文子
 14  (2)薬剤と摂食・嚥下障害 藤谷順子
 15  (3)全身所見の把握 藤谷順子
 16  (4)局所所見の把握 藤谷順子
 17  (5)歯,歯周組織,顎堤,咬合,顎関節の診査 小野高裕・野首孝祠
 18  (6)構音障害と摂食・嚥下障害 藤谷順子
 19  (7)ベッドサイドの検査 藤谷順子
 20  (8)内視鏡検査 溝尻源太郎
 21  (9)嚥下音,超音波 谷本啓二
 22  (10)嚥下造影の撮り方と読影のコツ 谷本啓二
 23  (11)嚥下造影の解析法 谷本啓二
 24 4)重症度分類と予後予測 本多知行
 25 5)重症度分類の追補 本多知行
 26 6)カルテの記載方法 河崎寛孝
第4章 リハビリテーションの進め方
 27 1)リハビリテーション目標の設定 本多知行
 28 2)リハビリテーション処方の実際 本多知行
   3)摂食・嚥下訓練
 29  (1)摂食・嚥下訓練の理論的背景 藤谷順子
 30  (2)治療的アプローチと代償的アプローチ 藤谷順子
 31  (3)間接訓練 藤谷順子
 32  (4)直接訓練 藤谷順子
 33  (5)特殊状況下での訓練-気管切開例-溝尻源太郎
 34 4)呼吸訓練・排痰訓練 河崎寛孝
   5)その他のアプローチ
 35  (1)口腔ケアの基礎知識 小野高裕・野首孝祠
 36  (2)歯科補綴的アプローチ 小野高裕・野首孝祠
 37  (3)手術的アプローチ 津田豪太
 38  (4)バルーン拡張法・装具など 藤谷順子
第5章 リスク管理・全身管理
   1)気道管理
 39  (1)誤嚥性肺炎 藤本卓司
 40  (2)誤嚥性肺炎に対する薬剤による予防 関沢清久
 41  (3)口腔(咽頭)ケアと誤嚥性肺炎 小野高裕・野首孝祠
 42  (4)気管カニューレの考え方と扱い方 溝尻源太郎
   2)栄養管理
 43  (1)摂食・嚥下障害症例の栄養管理 尾崎隆之
 44  (2)代替(補助)栄養法の種類と選択 尾崎隆之
 45  (3)経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)とその対応 尾崎隆之
 46  (4)経鼻栄養カテーテル留置の弊害 溝尻源太郎
 47  (5)栄養カテーテル間欠的挿入の利点と手技 尾崎隆之
 48  (6)胃食道逆流現象(GER)とその対応 尾崎隆之
 49  (7)特殊な病態(胃切後・糖尿病)での代替栄養 尾崎隆之
第6章 食物の基礎知識
 50 1)食物の形態と構造 高岡宏子
 51 2)栄養管理 高岡宏子
 52 3)嚥下障害に適した食材と調理 高岡宏子
 53 4)嚥下訓練での食形態について 高岡宏子
 54 5)病院食の現況 高岡宏子
第7章 発達障害(重症心身障害)への対応
 55 1)発達障害概論 田角 勝
 56 2)摂食・嚥下の発達障害のみかた(特徴と診断評価) 向井美恵
 57 3)摂食・嚥下の発達障害への対応(指導訓練と補助装置によるアプローチ) 向井美恵
 58 4)感受期の重要性 田角 勝
 59 5)重症心身障害児のリスク管理 田角 勝
第8章 中途障害への対応
 60 1)中途障害概論 木佐俊郎
   2)中途障害の摂食・嚥下のみかた
 61  (1)脳卒中による摂食・嚥下障害 巨島文子
 62  (2)脳卒中以外の神経疾患 巨島文子
 63  (3)口腔・咽頭・食道疾患 津田豪太
 64  (4)口腔・咽頭・食道疾患術後の嚥下障害 津田豪太
 65  (5)廃用症候群 木佐俊郎
 66 3)中途障害の摂食・嚥下障害への対応 木佐俊郎
 67 4)中途障害者のリスク管理 木佐俊郎

付 1)医療費と身障認定 河崎寛孝
付 2)診療所(医科)での摂食・嚥下障害への取り組み 宮城信行
付 3)診療所(歯科)での摂食・嚥下障害への取り組み 村田俊弘
付 4)介護保険における摂食・嚥下障害の位置付け 三石敬之

 索引