はじめに
大久保公裕
日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野
1993年3月に開催された「第5回日本アレルギー学会春季臨床大会」で,成人気管支喘息,小児気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎の4疾患の治療ガイドラインを提案する特別シンポジウムが開催され,故奥田稔先生,故石川哮先生が1992年に『Clin Exp Allergy』誌の22巻Suppl1号に発表された「International consensus report on the diagnosis and management of asthma」を参考にして,執筆者に故大山勝先生,今野昭義先生,故馬場廣太郎先生,馬場駿吉先生,故茂木五郎先生らが加わり,ガイドライン作成の全体討議を行った.最終的に1993年6月,日本アレルギー学会の内科,小児科,耳鼻咽喉科,皮膚科の合本「アレルギー疾患治療ガイドライン」中で「鼻アレルギー(含花粉症)の診断と治療」として発表された.この「アレルギー疾患治療ガイドライン」の61〜74頁とわずか14頁が,後の「鼻アレルギー診療ガイドライン」のはじまりであった.この「鼻アレルギー診療ガイドライン」の第1版は,優れた医師による優れたガイドラインとなっており,現在の第10版でもこの考え方を踏襲しているものである.
「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」の改訂ポイントは,エビデンスが蓄積された局所アレルギー性鼻炎(local allergic rhinitis:LAR)の詳細な記載をしたこと,各種治療法の標的部分を明記したこと,治療法の選択を簡素化したことなどである.LARは皮膚テストや血清特異的IgE検査で陰性でも,鼻粘膜局所で微量のIgEが産生され,局所反応を起こす新しい疾患概念である.一部のLAR患者は,将来的にアレルギー性鼻炎への進展や気管支喘息の合併などが報告されており,早期の治療介入の必要性が指摘されているものである.これ以降は企画の各項目に譲るが,現状で知りうるエビデンスをまとめたガイドラインとなっている.次期の改訂からはMinds方式となり,現在のガイドラインからは大きく変化するため,成書としての最後のガイドラインのまとめを各項で確認していただければ幸いである.
大久保公裕
日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野
1993年3月に開催された「第5回日本アレルギー学会春季臨床大会」で,成人気管支喘息,小児気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎の4疾患の治療ガイドラインを提案する特別シンポジウムが開催され,故奥田稔先生,故石川哮先生が1992年に『Clin Exp Allergy』誌の22巻Suppl1号に発表された「International consensus report on the diagnosis and management of asthma」を参考にして,執筆者に故大山勝先生,今野昭義先生,故馬場廣太郎先生,馬場駿吉先生,故茂木五郎先生らが加わり,ガイドライン作成の全体討議を行った.最終的に1993年6月,日本アレルギー学会の内科,小児科,耳鼻咽喉科,皮膚科の合本「アレルギー疾患治療ガイドライン」中で「鼻アレルギー(含花粉症)の診断と治療」として発表された.この「アレルギー疾患治療ガイドライン」の61〜74頁とわずか14頁が,後の「鼻アレルギー診療ガイドライン」のはじまりであった.この「鼻アレルギー診療ガイドライン」の第1版は,優れた医師による優れたガイドラインとなっており,現在の第10版でもこの考え方を踏襲しているものである.
「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」の改訂ポイントは,エビデンスが蓄積された局所アレルギー性鼻炎(local allergic rhinitis:LAR)の詳細な記載をしたこと,各種治療法の標的部分を明記したこと,治療法の選択を簡素化したことなどである.LARは皮膚テストや血清特異的IgE検査で陰性でも,鼻粘膜局所で微量のIgEが産生され,局所反応を起こす新しい疾患概念である.一部のLAR患者は,将来的にアレルギー性鼻炎への進展や気管支喘息の合併などが報告されており,早期の治療介入の必要性が指摘されているものである.これ以降は企画の各項目に譲るが,現状で知りうるエビデンスをまとめたガイドラインとなっている.次期の改訂からはMinds方式となり,現在のガイドラインからは大きく変化するため,成書としての最後のガイドラインのまとめを各項で確認していただければ幸いである.
特集 花粉症治療の最新情報─「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」を踏まえて
はじめに(大久保公裕)
「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」改訂のポイント(岡野光博・他)
欧州のガイドラインARIAと国際共同研究MASK study(飯沼智久)
花粉症・アレルギー性鼻炎とLAR─「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」に掲載のLARの意義(松根彰志)
花粉症発症の抑制 マスクの効果─小学生に急増するスギ花粉症から逃げ切る!?取り組み(坂下雅文)
花粉症の薬物治療(山田武千代・他)
スギ花粉症に対する舌下免疫療法(後藤 穣)
花粉症の抗体療法(太田伸男)
花粉症重症化ゼロ作戦の取り組み(川島佳代子)
TOPICS
神経内科学 精神展開剤は“ゲームチェンジャー”になるか?(内田裕之)
生理学 味覚の個人差と疾患リスク(木部未帆子)
連載
ケースから学ぶ臨床倫理推論(18)
家族の意向が患者の治療方針に影響を及ぼすケース(瀬戸山晃一)
イチから学び直す医療統計(10)
多重比較─Familywise Error RateとFalse Discovery Rateを制御するための統計手法(長島健悟・他)
FORUM
病院建築への誘い─医療者と病院建築のかかわりを考える(11)(亀谷佳保里)
司法精神医学への招待─精神医学と法律の接点(13) 児童虐待・いじめなどの小児期逆境体験と法律(桝屋二郎)
書評『CAR-T細胞療法Q&A』(畠 清彦)
次号の特集予告
はじめに(大久保公裕)
「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」改訂のポイント(岡野光博・他)
欧州のガイドラインARIAと国際共同研究MASK study(飯沼智久)
花粉症・アレルギー性鼻炎とLAR─「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」に掲載のLARの意義(松根彰志)
花粉症発症の抑制 マスクの効果─小学生に急増するスギ花粉症から逃げ切る!?取り組み(坂下雅文)
花粉症の薬物治療(山田武千代・他)
スギ花粉症に対する舌下免疫療法(後藤 穣)
花粉症の抗体療法(太田伸男)
花粉症重症化ゼロ作戦の取り組み(川島佳代子)
TOPICS
神経内科学 精神展開剤は“ゲームチェンジャー”になるか?(内田裕之)
生理学 味覚の個人差と疾患リスク(木部未帆子)
連載
ケースから学ぶ臨床倫理推論(18)
家族の意向が患者の治療方針に影響を及ぼすケース(瀬戸山晃一)
イチから学び直す医療統計(10)
多重比較─Familywise Error RateとFalse Discovery Rateを制御するための統計手法(長島健悟・他)
FORUM
病院建築への誘い─医療者と病院建築のかかわりを考える(11)(亀谷佳保里)
司法精神医学への招待─精神医学と法律の接点(13) 児童虐待・いじめなどの小児期逆境体験と法律(桝屋二郎)
書評『CAR-T細胞療法Q&A』(畠 清彦)
次号の特集予告














