はじめに
坂口太一
兵庫医科大学心臓血管外科
2013年に経カテーテル的大動脈弁置換術(transcatheter aortic valve implantation/replacement:TAVR)が保険償還されてから11年,2018年に僧帽弁クリップ(MitraClip TM)と弁膜症に対するMICS(minimally invasive cardiac surgery;低侵襲心臓手術)が保険償還されてから6年が経過した.これらの治療法はそれぞれの領域で急速に普及し,循環器治療のあり方を大きく変えている.
特に,大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)に対する治療では,TAVRの施行数が従来の外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)を凌ぐようになり,大動脈弁MICSを含めたSAVRと組み合わせた“ライフタイムマネジメント”の重要性が広く認識され,治療の選択肢が多様化している.一方で,僧帽弁の低侵襲治療も着実に進歩しており,僧帽弁形成術ではMICSが全体の4割に達し,標準治療としての地位を確立しつつある.さらに,MitraClip TMの普及により,僧帽弁閉鎖不全症に対する治療体系も変化を遂げつつあり,今後のさらなる発展が期待されている.
冠動脈血行再建の分野においては,低侵襲冠動脈バイパス術(MICS coronary artery bypass grafting:MICS CABG)が静かに広がりをみせている.特に,多枝バイパス術に加え,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)とのハイブリッド治療があらためて注目されており,新たな治療の可能性が開かれている.
不整脈手術の分野でも革新が進んでいる.内視鏡下心房細動アブレーション手術と左心耳閉鎖術は新たな需要を開拓しており,デバイスのさらなる進化とともに今後の発展普及が期待されている.
本特集では,これらの分野で活躍するエキスパートたちに,それぞれの現状と今後の展望について解説していただいた.循環器低侵襲治療の進化は,患者にとっての負担軽減と治療の質向上に直結するものである.本特集が最新の知見や技術を理解する一助となり,読者が今後の治療の方向性を考える契機となれば幸いである.
坂口太一
兵庫医科大学心臓血管外科
2013年に経カテーテル的大動脈弁置換術(transcatheter aortic valve implantation/replacement:TAVR)が保険償還されてから11年,2018年に僧帽弁クリップ(MitraClip TM)と弁膜症に対するMICS(minimally invasive cardiac surgery;低侵襲心臓手術)が保険償還されてから6年が経過した.これらの治療法はそれぞれの領域で急速に普及し,循環器治療のあり方を大きく変えている.
特に,大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)に対する治療では,TAVRの施行数が従来の外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)を凌ぐようになり,大動脈弁MICSを含めたSAVRと組み合わせた“ライフタイムマネジメント”の重要性が広く認識され,治療の選択肢が多様化している.一方で,僧帽弁の低侵襲治療も着実に進歩しており,僧帽弁形成術ではMICSが全体の4割に達し,標準治療としての地位を確立しつつある.さらに,MitraClip TMの普及により,僧帽弁閉鎖不全症に対する治療体系も変化を遂げつつあり,今後のさらなる発展が期待されている.
冠動脈血行再建の分野においては,低侵襲冠動脈バイパス術(MICS coronary artery bypass grafting:MICS CABG)が静かに広がりをみせている.特に,多枝バイパス術に加え,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)とのハイブリッド治療があらためて注目されており,新たな治療の可能性が開かれている.
不整脈手術の分野でも革新が進んでいる.内視鏡下心房細動アブレーション手術と左心耳閉鎖術は新たな需要を開拓しており,デバイスのさらなる進化とともに今後の発展普及が期待されている.
本特集では,これらの分野で活躍するエキスパートたちに,それぞれの現状と今後の展望について解説していただいた.循環器低侵襲治療の進化は,患者にとっての負担軽減と治療の質向上に直結するものである.本特集が最新の知見や技術を理解する一助となり,読者が今後の治療の方向性を考える契機となれば幸いである.
特集 進歩する循環器低侵襲治療
はじめに(坂口太一)
大動脈弁MICS(細羽創宇)
至適大動脈弁狭窄症治療について考える(前田孝一)
僧帽弁MICSの現状と今後の展望(西 宏之)
僧帽弁閉鎖不全症に対するTEER(transcatheter edge-to-edge repair)の現状(久保俊介)
ロボット心臓手術の現状と展望(吉川泰司)
低侵襲冠動脈バイパス術の現状と展望(橘 一俊)
ウルフ-オオツカ法による心房細動治療への挑戦(伊東博史)
TOPICS
生化学・分子生物学 天然の遺伝子治療薬として働く4.5SH RNA(中川真一・芳本 玲)
腎臓内科学 慢性腎臓病による認知機能低下のメカニズム(松木久住・萬代新太郎)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(27)
NK細胞の自己・非自己認識機構の制御によるがん免疫療法(保仙直毅)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(13)
炎症性腸疾患と再生医療(岡本隆一・他)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(4)
良心的拒否(新井奈々)
FORUM
戦争と医学・医療(15) ベトナム戦争と枯れ葉剤の健康被害(城戸照彦)
次号の特集予告
はじめに(坂口太一)
大動脈弁MICS(細羽創宇)
至適大動脈弁狭窄症治療について考える(前田孝一)
僧帽弁MICSの現状と今後の展望(西 宏之)
僧帽弁閉鎖不全症に対するTEER(transcatheter edge-to-edge repair)の現状(久保俊介)
ロボット心臓手術の現状と展望(吉川泰司)
低侵襲冠動脈バイパス術の現状と展望(橘 一俊)
ウルフ-オオツカ法による心房細動治療への挑戦(伊東博史)
TOPICS
生化学・分子生物学 天然の遺伝子治療薬として働く4.5SH RNA(中川真一・芳本 玲)
腎臓内科学 慢性腎臓病による認知機能低下のメカニズム(松木久住・萬代新太郎)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(27)
NK細胞の自己・非自己認識機構の制御によるがん免疫療法(保仙直毅)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(13)
炎症性腸疾患と再生医療(岡本隆一・他)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(4)
良心的拒否(新井奈々)
FORUM
戦争と医学・医療(15) ベトナム戦争と枯れ葉剤の健康被害(城戸照彦)
次号の特集予告














