はじめに
八角高裕
京都大学大学院医学研究科 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)京都ユニットセンター
分子標的薬や遺伝子治療などの開発により遺伝性疾患の治療は革新的な進歩を遂げているが,患者予後の改善には可能なかぎり早期(理想的には発症前)からの治療介入が重要であり,新生児スクリーニングによる早期(発症前)診断の重要性が高まっている.Guthrieらにより確立された乾燥濾紙血検体を用いた診断法により,フェニルケトン尿症の新生児スクリーニングが実用化され,その後,ホルモンや代謝産物の測定により診断が可能な疾患を中心に対象が拡大し,現時点でわが国では20疾患に対する公費新生児スクリーニングが実施されている.さらに,解析技術の進歩により乾燥濾紙血検体を用いた核酸や酵素活性の測定が可能となり,いくつかの疾患を追加した“拡大新生児スクリーニング”が各地で実施されているところである.出生後まもなく診断され,これまでの症例とは比較にならない高い治療効果が得られた症例の報道をご覧になった読者も多いと思われる.今後はこれらの検査を広く普及させ,公費化することが望まれるが,それには乗り越えなければならない課題も多い.加えて,スクリーニング陽性例にすばやく適切に対応し,必要な医療を迅速に導入する医療連携の体制づくりも欠かせない.
本特集では,長年“拡大新生児スクリーニング”に関わってこられた専門家の先生をお招きし,社会実装に向けて乗り越えなければならない社会的・倫理的・技術的な問題について解説していただくとともに,原発性免疫不全症,脊髄性筋萎縮症,ライソゾーム病,副腎白質ジストロフィーの4疾患を取り上げ,スクリーニングの実際と陽性例への対応について解説していただいた.
近年,新たな解析手法を用いた疾患診断法の研究も進んでおり,診断可能となる遺伝性疾患はますます増えることが予想される.本特集を通じて,多くの方々に新生児スクリーニングに興味を持っていただき,実装化に向けた課題の解決につながることを期待する.
八角高裕
京都大学大学院医学研究科 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)京都ユニットセンター
分子標的薬や遺伝子治療などの開発により遺伝性疾患の治療は革新的な進歩を遂げているが,患者予後の改善には可能なかぎり早期(理想的には発症前)からの治療介入が重要であり,新生児スクリーニングによる早期(発症前)診断の重要性が高まっている.Guthrieらにより確立された乾燥濾紙血検体を用いた診断法により,フェニルケトン尿症の新生児スクリーニングが実用化され,その後,ホルモンや代謝産物の測定により診断が可能な疾患を中心に対象が拡大し,現時点でわが国では20疾患に対する公費新生児スクリーニングが実施されている.さらに,解析技術の進歩により乾燥濾紙血検体を用いた核酸や酵素活性の測定が可能となり,いくつかの疾患を追加した“拡大新生児スクリーニング”が各地で実施されているところである.出生後まもなく診断され,これまでの症例とは比較にならない高い治療効果が得られた症例の報道をご覧になった読者も多いと思われる.今後はこれらの検査を広く普及させ,公費化することが望まれるが,それには乗り越えなければならない課題も多い.加えて,スクリーニング陽性例にすばやく適切に対応し,必要な医療を迅速に導入する医療連携の体制づくりも欠かせない.
本特集では,長年“拡大新生児スクリーニング”に関わってこられた専門家の先生をお招きし,社会実装に向けて乗り越えなければならない社会的・倫理的・技術的な問題について解説していただくとともに,原発性免疫不全症,脊髄性筋萎縮症,ライソゾーム病,副腎白質ジストロフィーの4疾患を取り上げ,スクリーニングの実際と陽性例への対応について解説していただいた.
近年,新たな解析手法を用いた疾患診断法の研究も進んでおり,診断可能となる遺伝性疾患はますます増えることが予想される.本特集を通じて,多くの方々に新生児スクリーニングに興味を持っていただき,実装化に向けた課題の解決につながることを期待する.
特集 拡大新生児スクリーニング検査の成果と展望
はじめに(八角高裕)
拡大マススクリーニング公費化に向けた社会的課題(但馬 剛)
拡大新生児スクリーニングにおける倫理的・法的・社会的課題(瀬戸俊之)
新生児スクリーニングの技術的な課題(小原 收)
先天性免疫異常症に対する新生児マススクリーニング検査(若松 学・村松秀城)
脊髄性筋萎縮症スクリーニングの実際(佐久間 啓)
ライソゾーム病の新生児スクリーニングの実際(小林博司)
副腎白質ジストロフィーの現状と課題(下澤伸行)
TOPICS
救急・集中治療医学 院外心停止患者の救命処置における性別および年齢の違いによる影響(石井正将)
神経精神医学 矯正精神医療の現状と課題(奥村雄介)
連載
臨床医のための微生物学講座(22)
サイトメガロウイルス(森内浩幸)
緩和医療のアップデート(17)
小児緩和ケアのあゆみ(多田羅竜平)
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(9)
脳組織Treg分化における抗原提示細胞(松井亜子・伊藤美菜子)
FORUM
死を看取る─死因究明の場にて(23) 死因究明の実践(6)(大澤資樹)
病院建築への誘い─医療者と病院建築のかかわりを考える 特別編─病院建築におけるコンサルティング(亀谷佳保里)
次号の特集予告
はじめに(八角高裕)
拡大マススクリーニング公費化に向けた社会的課題(但馬 剛)
拡大新生児スクリーニングにおける倫理的・法的・社会的課題(瀬戸俊之)
新生児スクリーニングの技術的な課題(小原 收)
先天性免疫異常症に対する新生児マススクリーニング検査(若松 学・村松秀城)
脊髄性筋萎縮症スクリーニングの実際(佐久間 啓)
ライソゾーム病の新生児スクリーニングの実際(小林博司)
副腎白質ジストロフィーの現状と課題(下澤伸行)
TOPICS
救急・集中治療医学 院外心停止患者の救命処置における性別および年齢の違いによる影響(石井正将)
神経精神医学 矯正精神医療の現状と課題(奥村雄介)
連載
臨床医のための微生物学講座(22)
サイトメガロウイルス(森内浩幸)
緩和医療のアップデート(17)
小児緩和ケアのあゆみ(多田羅竜平)
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(9)
脳組織Treg分化における抗原提示細胞(松井亜子・伊藤美菜子)
FORUM
死を看取る─死因究明の場にて(23) 死因究明の実践(6)(大澤資樹)
病院建築への誘い─医療者と病院建築のかかわりを考える 特別編─病院建築におけるコンサルティング(亀谷佳保里)
次号の特集予告














