やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 小児の特徴は,背が伸びる,体重が増える,二次性徴があるなど「成長」すること,そして,歩く・走る,言葉を獲得し読み・書くなど「発達」することです.「栄養」はこの「成長と発達」を支える大きな力です.
 わが国では年間出生数が100万人を切り,超少子高齢社会となっています.思いもよらなかったCOVID-19感染症がパンデミックを起こし,人と人の距離を保つことが要求されています.もともと育児・食育をめぐる環境は年々悪化していたところに今回のCOVID-19禍です.孤立しがちな「子育て」の中で「栄養を通じた支援」は,今こそ必要です.
 「小児栄養」には成長・発達を支え,疾患を予防するといった「保健分野」と,疾患をもった子どもへの「病態栄養の分野」があります.前者では子どもたちが適切な食習慣を獲得するための食育的視点が必要です.後者では,疾患と病態を理解(サイエンス)したうえで,栄養状態や栄養素の過不足をアセスメントし,日常の食事や食生活の中で実行できる栄養食事療法に発展させる(アート),テーラーメイドのアプローチを行っていくことも必要です.患者と家族に寄り添いながら,その食生活が豊かで楽しいものとなるように,患者本人が理解し自ら行動できるように支援することが求められます.
 小児の臨床栄養に関する書籍は専門書をはじめ種々出版されていますが,管理栄養士が行う栄養食事指導について具体的に学べる本は多くありません.本書は,総論で小児に携わる管理栄養士にとって必要な基本的知識を学ぶことができるようになっています.また,各論では,各専門分野の医師が病態についてわかりやすく解説したうえで,具体的な症例を用いて,管理栄養士が患者と家族に対してどのように栄養食事指導を展開していくかを詳しく解説しています.管理栄養士だけでなく,小児栄養を学ぶ医師や他の医療者にも役立つ内容です.小児の臨床栄養にはじめて携わる管理栄養士や,栄養士養成施設で小児栄養を学ぶ皆様に参考にしていただき関係者にも利用していただいて,疾患をもつ患者の栄養食事療法のためにお役立ていただければ幸いです.
 最後に,ご多忙な中ご執筆賜りました著者の皆様方と,医歯薬出版編集部の斎藤絵里子氏のご協力で発刊にこぎつけましたことに深謝申し上げます.
 2020年7月
 編者 位田 忍
    西本裕紀子
 序
 略語一覧
Part 1 総論 小児の臨床栄養に携わる管理栄養士が知っておきたい基礎知識
 1 小児医療をめぐる動向と小児の疾患分類(位田 忍)
 2 小児の特徴と成長のメカニズム(位田 忍)
 3 栄養療法が必要となる小児の疾患(川井正信)
 4 疾患をもつ小児の臨床栄養管理―管理栄養士の役割(西本裕紀子)
 5 小児の栄養アセスメント(惠谷ゆり)
 6 成長曲線,肥満度判定曲線と体格評価(川井正信)
 7 栄養摂取目標量の設定の基本(位田 忍)
 8 病院給食における小児食(麻原明美・西本裕紀子)
 9 母乳・ミルク・栄養剤の基礎知識(西本裕紀子・堀 香澄)
 10 疾患をもつ小児の離乳(加嶋倫子)
 11 小児の栄養食事指導で留意すべきこと(西本裕紀子)
 Column 小児専門管理栄養士制度(西本裕紀子)
Part 2 病態別 栄養食事指導ケースブック
 1 体重増加不良・低身長(川井正信・西本裕紀子)
 2 食物アレルギー(錦戸知喜・麻原明美)
 3 学童思春期やせ・摂食障害(庄司保子・伊藤真緒)
 4 短腸症(位田 忍・西本裕紀子)
 5 炎症性腸疾患(萩原真一郎・伊藤真緒・加嶋倫子)
 6 単純性肥満・2型糖尿病(川井正信・西本裕紀子・麻原明美)
 7 1型糖尿病(川井正信・加嶋倫子)
 8 脂質代謝異常(惠谷ゆり・加嶋倫子)
 9 ビタミンD欠乏性くる病(道上敏美・麻原明美)
 10 てんかん(ケトン食療法)(柳原恵子・伊藤真緒)
 11 ダウン症候群(植田紀美子・加嶋倫子)
 12 プラダー・ウィリー症候群(位田 忍・西本裕紀子)
 13 心疾患(橋邦彦・西本裕紀子)
 14 腎疾患(山村なつみ・加嶋倫子)
 15 がん・血液疾患(安井昌博・伊藤真緒)
 16 重症心身障害児(曹 英樹・西本裕紀子)
 Column 栄養食事指導の診療報酬(西本裕紀子)

 索引