やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
JCNセレクト「薬物-飲食物相互作用-的確な栄養療法のために」発刊にあたって
 栄養には,からだに取り入れる「栄養素」と,それを代謝して自分のからだの血となり肉となる「栄養状態」の,ふたつの意味があると日頃から感じています.
 これらふたつの栄養は,互いに影響し合い,共鳴し合います.摂取する栄養素の量と質が十分でなければ,まるで光を浴びた木陰が,湖面に細かく揺れながら映し出されるように,からだの栄養状態は映し出されてしまいます.
 疾患が栄養素の摂取量と質とを変化させる.疾患が重症であればあるほど,その変化の度合いと方向をさえも変えてしまいます.ヒトのからだになんらかの病魔が巣くったとたん,疾患の種類と重症度が,これらふたつの栄養を決定する函数に加わってくることを,今回ご執筆いただいたすべての原稿から勉強させていただきました.
 今回のテーマである薬剤は,薬剤そのものが症状や疾患を軽快,消滅させるためのものであるのと同時に,直接・間接に栄養に影響を与えます.
 すべての臨床栄養にたずさわっておられる方は,そのことをすでに十分ご承知とは思いますが,本書によって,アップデートされた情報を確認することができることと思います.
 千年に一度の大災害で,深い傷を負ってしまった日本.しかし,私たちを取り巻く地球と宇宙の時間は,決して止まることはありません.
 きっとくる,さらなる善き日のために玉稿を賜ったすべての執筆者の方々に深く感謝いたします.
 かつて彼の地で,片方の聴力を失われたある方が静かに私に語ってくれた言葉が,あの日以来私の頭のなかで繰り返し響いています.
 Never Give Up!
 Never,Never Give Up!!
 Never,Never,Never Give Up!!!
 いまを信じ,明るい未来の到来を信じ,一歩だけ前に歩をすすめることにいたしましょう.

 平成24 年10 月 雨海照祥
 まえがき(雨海照祥)
Introduction
 薬物─飲食物相互作用とは(和田政裕)
Part-1 症状別─相互作用
 食欲低下(内田享弘・原口珠実)
 嘔吐(鴨志田敏郎)
 下痢(脇田真希)
 意識障害(鈴木幹男)
 多動(岩崎信明)
 骨格筋減少(サルコペニア)(葛谷雅文)
Part-2 薬剤別─相互作用
 抗菌薬(田中章貴・他)
 抗ヘルペスウイルス薬(三和田陽介・高橋昌也)
 抗ウイルス薬(インフルエンザ)(泉 維昌)
 抗ウイルス薬(肝炎)(徳本良雄・恩地森一)
 制酸剤(近藤 匡)
 Prokinetics(消化管蠕動促進薬)(一丸智美)
 強心剤(徳永千穂・他)
 抗不整脈薬(久米淳美・島田和典)
 抗コリン薬(田井真弓)
 抗血栓薬(若山 暁)
 脂質降下薬(中 宣敬)
 血糖降下薬(原 英記・藤岡三千代)
 免疫抑制薬(高田泰次)
 インターフェロン・インターロイキン(徳本良雄・恩地森一)
 副腎皮質ホルモン(酒井良子・宮坂信之)
 ホルモン製剤(性ホルモン剤)(上田康夫)
 鎮静薬(山田久美子・田中 誠)
 禁煙薬(松井 祥子)
 和漢薬(高 明)
 経腸栄養剤(栗原美香・他)
 静脈栄養剤と食事との相互作用(林 宏行)
 静脈栄養剤添加ミネラル製剤(杉浦伸一)
 脂肪乳剤(雨海照祥)
 スポーツコンディショニングにかかわるサプリメント(後藤美奈・他)
Part-3 疾患別─相互作用
 抗がん剤1(固形がん)(吉波哲大・矢野雅彦)
 抗がん剤2(血液腫瘍)(長谷川大一郎)
 重症患者における食事・経腸栄養の相互作用(東別府直紀・他)
 クローン病の栄養療法と抗TNF─α抗体製剤(福田能啓・奥田真珠美)
 妊娠高血圧症候群(PIH;妊娠中毒症)(降圧薬)(上田康夫)
 索引