やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 栄養ケアマネジメントファーストトレーニングは,栄養部門組織が少ないスタッフで運営されつつ,時代の変化から臨床面での具体的な栄養ケアプランの提案要求が高まっている背景に対応するため,経験が浅い管理栄養士・栄養士でも適切なアプローチができるようにと企画された臨床栄養別冊です.いわば先輩の手ほどきというコンセプトなのです.
 この第4 巻は,消化器癌をテーマに,癌の栄養管理の経験豊富な先生方に依頼をして編集されました.癌疾患は患者数が増加し,治療中から治療後,ときには治療前からの栄養マネジメントが重要なことが社会的に認知され,多くの施設で対象患者を受け入れ,栄養面での支援が待たれているのです.
 これまで管理栄養士・栄養士は,診療報酬で加算対象の疾患を優先した活動を余儀なくされていましたが,2010 年のNST加算実施頃には,低栄養患者が多い癌疾患も栄養支援が重要な疾患として活動対象にあげられるようになってきました.また,癌患者の治療や生活の場が,病院から関連施設,そして在宅へと拡がりをみせていることから,ケアマネジメントの知識や情報は,病院栄養士だけでなく,施設やケアステーションなどの管理栄養士・栄養士にも重要になっています.
 今回取り上げた消化器癌は,「胃癌」「大腸癌」「食道癌」「咽頭癌」「肝癌」「膵癌・胆道癌」「癌終末期」で,どこの施設でも対象患者が多い疾患,また栄養マネジメントやアドバイスの効果が期待される疾患となっています.また,癌患者の情報をカルテから読みとるときに,共通してチェックするポイントは資料としてまとめ,重複をさけ,すっきりと整理されています.ぜひ本書を参考に,積極的に消化器癌にかかわっていただきたいと思います.
 最後になりましたが,本書の制作にかかわっていただいたすべての皆様に,また本書を手にとっていただいた方々に心より御礼を申し上げます.
 平成24 年12 月
 編者を代表して 桑原節子

企画の序
 疾患ごとに治療が異なるように,治療の一つとして位置する栄養ケアも,また異なります.そして,同一の疾患であっても病態や病期,合併症,重複する疾患や,対象となる患者の栄養状態や身体状況,社会経済などの生活環境に対応し,栄養ケアは行われます.
 このような様々な患者への栄養ケアの実践にあたり,症例経験の少ない管理栄養士は,「必要な情報を得るためにカルテから何を読むのか」「栄養評価の手順はどのように進めるのか」「各疾患に特化した治療目標をどのように設定するのか」「栄養ケアのアウトカムは何をめざすのか」,さらには「アウトカムをモニタリングするための留意点」などについて戸惑い,かつ困惑します.
 今回の「栄養ケアマネジメントファーストトレーニングシリーズ」は,様々な患者への栄養ケアの第一歩を踏み出すための実践力を養うべく企画されたシリーズです.
 「1.代謝・内分泌疾患」から始まり,「2.循環器・腎疾患」,そして「3.呼吸器疾患,摂食・嚥下障害,褥瘡,他」「4.消化器癌」「5.消化器疾患」と続く全5 冊で構成されます.栄養ケアが求められ,また期待されている多くの疾患を網羅し,各疾患の治療についての基礎知識,栄養管理上の問題,そして栄養ケアマネジメントの実際について解説しています.
 さらに,各疾患のケースレポートでは,[STEP1]栄養アセスメント,[STEP2]栄養診断,[STEP3]栄養ケア計画と実践,[STEP4]栄養ケアの評価,をフローチャートで示し,疾患への栄養ケアの特性をクローズアップさせ,栄養ケアマネジメントへの思考プロセスのトレーニングとなることを狙いました.
 本書を読み進むと,症例への栄養ケアマネジメントのイメージトレーニングから始まり,緊急性や重要性の優先順位,薬物・運動療法,あるいは外科・化学療法など,集学的治療へとセカンドトレーニングに助走していることに気づかれることでしょう.
 平成24 年7 月
 シリーズの編者を代表して 本田佳子
1 胃癌の栄養ケアマネジメント
 (須永将広)
 カルテを読む前に─治療の基礎知識
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
 Case Report 症例1 胃癌術後
 Case Report 症例2 胃癌化学療法
2 大腸癌の栄養ケアマネジメント
 (桑原節子)
 カルテを読む前に─治療の基礎知識
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
 Case Report 症例3 大腸癌術後
 Case Report 症例4 大腸癌術後再発
3 食道癌の栄養ケアマネジメント
 (松原弘樹)
 カルテを読む前に─治療の基礎知識
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
 Case Report 症例5 食道癌術後
 Case Report 症例6 食道癌サルベージ術後
4 咽頭癌の栄養ケアマネジメント
 (神谷しげみ)
 カルテを読む前に─治療の基礎知識
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
 Case Report 症例7 中咽頭癌術後
 Case Report 症例7 中咽頭癌化学放射線療法
5 肝癌の栄養ケアマネジメント
 (長谷川輝美)
 カルテを読む前に─治療の基礎知識
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
 Case Report 症例9 肝細胞癌
6 膵癌・胆道癌の栄養ケアマネジメント
 (井上聡美)
 カルテを読む前に─治療の基礎知識
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
 Case Report 症例10 膵全摘術後
7 癌終末期の栄養ケアマネジメント
 (落合由美)
 カルテを読む前に─治療の基礎知識
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
 Case Report 症例11 癌終末期

 資料1 癌治療における評価項目
  付表1 癌治療の副作用とその出現時期
  付表2 PS/ECOGの日本語訳
  付表3 癌化学療法の効果判定基準
  付表4 有害事象
  付表5 注射薬─催吐性リスク
  付表6 経口薬─催吐性リスク
 資料2 栄養評価項目
  付表1 推定必要量,活動係数・ストレス係数,たんぱく質投与量決定目安
  付表2 体重変化率,栄養障害の可能性の目安