やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
JCNセレクト「ワンステップアップ経腸栄養」の発刊にあたって
 全国1,400施設以上の医療機関でNSTが稼働し,「腸が機能している場合は腸を使う―When gut works,use it」の原則は,臨床の現場で広く浸透し,経腸栄養を施行する機会は非常に多くなっています.しかし,経腸栄養を施行しても,だれもが栄養状態が改善するわけではありません.使用する栄養剤の選択,投与量,投与方法などを誤れば,栄養効果は得られず,合併症を引き起こしてしまうことになります.経腸栄養に関する幅広い知識とスキルの習得は,NSTスタッフにとって必須となっています.
 平成22年の診療報酬改定において,栄養サポート加算が導入されました.チーム医療のもとでの栄養管理による医療の質の向上が高く評価されたものですが,試行的な導入であり,今後,NST活動の評価が待っています.いまこそ,臨床の現場において栄養管理に関わるスタッフの「ワンステップアップ」が必要なときがやってきたといえるでしょう.本書は,経腸栄養を学ぶうえで必要な内容を,初級コース,中級コース,上級コース,実践コースに分けて,それぞれの第一人者の先生にわかりやすく解説していただきました.NSTに関わるスタッフはもちろん,栄養管理を学ぶすべての医療職の先生に,広く活用していただけるものと思います.
 このJCNセレクト「ワンステップアップシリーズ」は,本年中に栄養アセスメント,静脈栄養の巻も発刊されます.併せてお読みいただければ,栄養管理のすべてを学んでいただけることと期待しています.
 平成22年7月吉日
 佐々木雅也
 まえがき(佐々木雅也)
基礎コース 経腸栄養に関する基礎知識を復習しよう!
 経腸栄養の適応
  ・内科領域(佐々木雅也)
  ・外科領域(井上善文)
  ・救急・ICU領域(松田兼一・他)
  ・在宅医療(岡田晋吾)
 投与方法はどのように選択するか(西口幸雄)
 経腸栄養患者の栄養アセスメントと栄養モニタリング―いつ,どのように行うか―(雨海照祥・他)
中級コース 経腸栄養剤について,より深く理解しよう!
 人工濃厚流動食の種類と特徴(山内 健)
 自然食品流動食の種類と特徴(田嶋佐和子)
 病態別経腸栄養剤にはどのような種類があるのか(丸山道生)
上級コース 経腸栄養のスペシャリストになろう!
 内科疾患における経腸栄養剤の使い方と選び方(佐々木雅也)
 外科疾患(周術期)における経腸栄養剤の使い方と選び方(岩崎晃太・他)
 救急・ICU領域における経腸栄養剤の使い方と選び方(橋本篤徳・小谷穣治)
 高齢者における経腸栄養剤の使い方と選び方(葛谷雅文)
 小児における経腸栄養剤の使い方と選び方(加治 建)
 緩和医療における経腸栄養剤の使い方と選び方(柴田賢三・他)
 胃瘻(PEG)患者における経腸栄養剤の選び方と使い方(合田文則・犬飼道雄)
実践コース 経腸栄養におけるリスクマネジメントを学ぼう!
 機械的合併症に対するリスクマネジメント
  ・経鼻経管栄養(櫻井洋一)
  ・PEGのトラブル対策(松本昌美・他)
 消化器系合併症に対するリスクマネジメント(大村健二)
 代謝性合併症に対するリスクマネジメント(朝川貴博・田中芳明)

 経腸栄養Q&A
 Q-1 経腸栄養では水分をどのように投与すればいいの(宮澤 靖)
 Q-2 経腸栄養剤の投与量はどのように決めればいいの(宮澤 靖)
 Q-3 経腸栄養で微量元素は欠乏しないの(湧上 聖)
 Q-4 経腸栄養で下痢をしたらどうすればいいの(丸山道生)
 Q-5 経腸栄養患者の誤嚥はどうしたら防げるの(粟井一哉)
 Q-6 薬剤を経管投与する際に注意することは (倉田なおみ)

 索引