やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 臨床栄養(The Japanese Journal of Clinical Nutrition)では,2015年5月に臨時増刊号として「栄養療法のピットフォール―よりよい栄養ケアのために」を発刊しました.栄養スクリーニング・栄養アセスメントから経腸栄養,静脈栄養,さらにはライフスタイル別の栄養管理について,第一線で活躍されている先生に,基本的な考え方から,実際の方法,ピットフォールとその対策まで,明瞭に解説していただきました.臨床栄養の現場では,いわゆる成書からの知識だけでは解決できない問題に遭遇することがあります.それらに対して,豊富な臨床経験から,陥りやすい課題やその解決策を解説していただいた書は,とても好評で,大きな反響をいただきました.待望の一書を企画した私にとっても嬉しいことでした.
 前回の発刊から7年が経過し,続編として「栄養療法のコツとピットフォール―実践力アップに活かす最新情報」を企画する機会をいただきました.前回と同様のテーマでは,新しい知見なども踏まえて解説していただきました.特集には,新たにさまざまな疾患の病態別栄養療法やチーム連携におけるピットフォールと解決策も盛り込んでいます.各疾患には,診療ガイドラインも発表されています.それらは,多くの臨床研究の結果から得られたエビデンスに基づいて記載されているものです.これは,我々が栄養療法を実践するうえで指針となるべきものであり,とても重要なものです.しかしながら,診療ガイドラインにそって栄養療法を実施しても,必ずしも栄養療法が上手くいくとは限りません.合併症をきたしたり,十分な栄養効果が得られないことも経験します.そういう時には,どうしたらいいのか,いわゆる「コツ」や「ノウハウ」といったものが必要になってきます.この書は,1ランク上の栄養療法を可能にする一助になると確信しています.
 本書では,それぞれの領域で活躍されている第一線の先生方に,豊富な臨床経験から得られた「コツ」や「ノウハウ」を惜しみなく提供していただいています.これらを共有していだいて,明日からの臨床にお役立ていただければ幸いに存じます.
 最後に,大変お忙しいところご執筆いただきました先生方に,この場を借りて心より御礼申し上げます.
 2022年9月
 滋賀医科大学医学部看護学科基礎看護学講座(生化・栄養)/滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部
 佐々木雅也
 序文(佐々木雅也)
Part 1 栄養アセスメントのコツとピットフォール
 栄養スクリーニングの有用性と課題(井尻吉信)
 栄養パラメータとしての血清アルブミン値,rapid turnover protein値(福島亮治)
 身体計測の基本と重要性(真壁 昇)
 各種病態患者に対する栄養投与量の決定(櫻井洋一)
 間接熱量測定の意義と実践法(栗原美香・佐々木雅也)
Part 2 静脈経腸栄養のコツとピットフォール
 経腸栄養の下痢対策(佐々木雅也・上田涼葉)
 経鼻カテーテルによる栄養管理(西口幸雄)
 胃瘻(PEG)による栄養管理(小川滋彦)
 電解質管理―検査値の見方と補正の方法について(吉田貞夫)
 末梢静脈栄養(PPN)の有用性と課題(大村健二・小林このみ)
 非タンパク熱量/窒素(NPC/N)比の設定とアミノ酸輸液製剤(外岡 亨・鍋谷圭宏)
Part 3 疾患別の栄養療法のコツとピットフォール
 心不全(山本一博)
 COPD(藤田幸男・吉川雅則)
 消化器がん(新原正大・比企直樹)
 炎症性腸疾患(馬場重樹・佐々木雅也)
 急性膵炎(土師誠二)
 肝臓:肝硬変(原なぎさ・高橋宏和)
 腎臓:慢性腎不全―たんぱく質制限を中心に(加藤明彦)
 糖尿病―高齢者糖尿病に対する食事療法の実際(幣 憲一郎)
 皮膚―褥瘡(海塚安郎)
 摂食嚥下障害―病態に応じた食品調整(巨島文子)
 周術期(高山はるか・深柄和彦)
 ICU・重症患者(陳美仁子・小谷穣治)
Part 4 ライフステージ別の栄養療法のコツとピットフォール
 小児の栄養管理(高増哲也)
 高齢者の栄養管理(葛谷雅文)
 終末期における栄養管理(伊藤彰博・臼井正信・二村昭彦・村井美代・藤崎宏之・堀内 薫)
 在宅における栄養管理(児玉佳之)
Part 5 チーム連携のコツとピットフォール
 多職種連携で進める栄養療法(鷲澤尚宏)
 地域における栄養療法(西山順博)
 リハビリテーション部門との連携(若林秀隆)

 TOPICS 腸内細菌と栄養(内藤裕二)
 TOPICS 病院食(特別食)選択のポイント(鳥越純子・斎藤恵子)
 TOPICS 効果的な外来栄養食事指導のポイント(利光久美子)