やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集によせて
 最近わが国においても,NST(Nutrition Support Team)による栄養管理の重要性が広く認識されるようになり,それに伴って栄養アセスメントの必要性も認識されるようになった.さらに本年10月から,介護保険で管理栄養士による栄養アセスメントと栄養プランニングが要求され,ますます栄養アセスメントは重要となってきている.
 私事であるが,20数年前に日本栄養アセスメント研究会に参加して以来,「栄養評価とは何か?」と自問するも,実力不足・勉強不足のため簡単明瞭に説明できなかった(現在は「身体構成成分の測定+α」と考えている).いくつかの成書や論文雑誌などに目をやってきたが,無味乾燥で右から左にコピーしたような文章や,理解しにくい,ただただ羅列しただけの文章が多く,これまでに武藤泰敏先生の文章以外に,「眼から鱗」というような,衝撃的で明解な解説に出合うことがなかった.
 また,一般には栄養アセスメントに対して誤解がある.JARD2001のプロジェクトの功績は非常に高いが,その反面,「栄養アセスメント」=「上腕三頭筋部周囲長(AC)や皮脂厚(TSF)」であると勘違いしている人を作り出し,また「なぜACやTSFを測定するのか?」を理解していない人もいる.極端なことをいえば,ACやTSFの身体計測(anthropometry)は,人類がはじめて石という道具でクルミを叩き割った瞬間であり,その後の科学の進歩により宇宙空間にまで人間を送り出すまでになったように,その先にはハイテク機器を駆使して,人体を原子・分子のレベルで分析するAuckland-studyが存在することを知らないのである.
 今回の企画では,PART-1で進歩の歴史から栄養アセスメントの位置づけを,PART-2で身体構成成分の測定の両極として身体計測とハイテク機器測定を取り上げ,PART-3で問題点として「誤差と真実」についてと測定方法による測定値の違いなどを取り上げた.そして実践に役に立つことを目的に,PART-4で栄養プランニングに直結した栄養アセスメントの実例の具体的な提示と,PART-5で困難な企画にも拘わらず,症例の検討をしていただいた.「さすが,実力どおり!」の素晴らしい回答が得られたと思っている.これまでになかった斬新なスタイルで,読者の皆様にとって,栄養アセスメントへの理解を深められ,またすぐに現場で役立つものとなったと自負している.
 最後に,今回使用したPART-2の2症例とPART-5の検討症例は,FDC(福島ダイエティシャンクラブ)で討論された(株式会社フリークセブンからDVDとして製作されている)もので,興味のある方のFDCへの参加と,栄養アセスメントを取り扱う「世界でただひとつ」の学会である日本栄養アセスメント研究会への皆様方の参加を請い願い,序文としたい.
 2005年9月
 大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科人間栄養学専攻教授
 山東勤弥
特集によせて 山東勤弥
PART-1 栄養アセスメントに関する進歩の歴史
 栄養アセスメントに関する進歩の歴史 山東勤弥
PART-2 栄養アセスメントの基本−身体構成成分の測定
 身体計測●身体計測の実際−身長・体重・上腕周囲長・皮下脂肪厚の測定方法 内山里美・宮澤 靖・岩谷 聡・他
 身体計測●JARD2001の使用方法・問題点 佐々木雅也・栗原美香・岩川裕美
 身体計測●JARD2001の今後の課題 森脇久隆
 身体計測●Knee-Height法の方法と問題点 宮澤 靖・内山里美・岩谷 聡・他
 身体計測●Waterlowの分類法と使用方法 保木昌徳
 Auckland-study●ハイテク機器による測定 山東勤弥
 Auckland-study●栄養評価問題:症例(1) 雨海照祥・毛利 健・川上 肇・他
 Auckland-study●栄養評価問題:症例(2) 北山 卓
PART-3 栄養アセスメント上の問題点
 計測法の誤解−真実は何か,誤差について 原口紘き
 臨床検査データの問題点−分析方法による血清アルブミン値の乖離 鳴海美智子・大澤 進
 栄養スクリーニングの方法と問題点 山内 健・安武健一郎・春田典子・他
 熱量計測の問題点(1)−REEとBEEの比較 栗原美香・岩川裕美・佐々木雅也・他
 熱量計測の問題点(2)−隠れ肥満 山東勤弥
PART-4 栄養プランニングに直結した栄養アセスメントの実際
 実践例(1)茨城西南医療センター病院 田中奈津代・鈴木宏昌
 実践例(2)金沢大学医学部附属病院 大谷幸子・大村健二
 実践例(3)仙台オープン病院 佐藤敦子・土屋 誉・柴崎 忍・他
 実践例(4)東葛クリニック病院 高崎美幸・秋山和宏
 実践例(5)東京都保健医療公社大久保病院 丸山道生・竹内理恵
 実践例(6)舟山病院 鬼満圭一
PART-5 症例検討−栄養アセスメントの進め方・栄養プランニングの考え方
 症例呈示●8カ月間,食事は1日1回,認知症で寝たきりの高齢者 田村佳奈美・雨海照祥・山東勤弥
 症例検討(1)人間の尊厳の問題を考えさせる症例である 加藤裕子・亀井有子・山中英治
 症例検討(2)栄養管理だけではなく,主治医レベルの全身管理が必要 飯島正平・篠木敬二・正木克美・他
 症例検討(3)多職種による包括的な栄養サポートがより効果を発揮する 宮澤 靖
 症例検討(4)褥瘡対策チームとNSTの連携が重要である 鷲澤尚宏
4チームの総評
 多角的なアプローチが栄養ケアの進歩を生んだ 雨海照祥