やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 1967年から近畿大学薬学部所属クラブの漢方研究会に籍を置き,当時漢方特別講座を担当されていた山元豊治(章平は号)先生から漢方範疇理論の手ほどきを受け,また1973年から約2年間寝食を共にして範疇理論を本格的に伝授していただきました.本書は,我が師である故山元章平先生から教わった範疇論を基本におき,また約40年の実践経験を加味して,特に生薬を専門に勉強してきた人達に対して,わかりやすく理解して頂くために最低限の漢方用語のみで纏めたものです.
 山元章平先生は吉益東洞以来,初めて薬物から傷寒論・金匱要略を読んだ人であります.したがって,これから漢方を始めたいと思っている薬系の人達にとって取り入れ易い理論であります.
 特に本書では範疇理論を用いることで,古代中国医学が採用している診断即治療の合理的な処方決定方法をマスターして頂きたく思います.もう少し深く追求していくと,この範疇理論を用いることにより,現代医学で使用されている薬物の副作用を軽減できることも可能であることがおわかり頂けると思います.
 また,近年高病原性鳥インフルエンザの変異よって発症するとみられる,人から人に感染をする新型インフルエンザのパンデミックが起こることが危惧されています.既に1918年にスペインかぜの世界的大流行がありました.傷寒論の前文にスペインかぜに匹敵するような感染症の大流行があったと解釈できる記述があります.傷寒論は先ず急性熱性病の治療法を記述し,次に緩解しなかった場合に派生する種々の症状を分類し,系統だてた治療法を述べています.その当時,後生に伝えようとしたことの一端が現在のインフルエンザに代表される治療法である可能性があります.
 今後この範疇理論によって未知となっていることが解明出来るものと期待しています.
 2008年7月
 大野東にて
 森山健三
・はじめに-漢方の治療法
・漢方薬と民間薬
・生薬とは
 漢方方剤に煎薬用として用いられる生薬
・漢方の剤型
 煎じ薬
 散剤
 丸剤
・エキス製剤について
 エキスの作成
 煎じ液濃縮の限界
 エキス製造工程
・医薬品の製造・販売
 医薬品の製造承認許可
 医薬品の販売
 登録販売者制度
・漢方の疾病観
 基本概念
 スペイン風邪について
 高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)
 世界的流行(パンデミック)が起きたら
・漢方治療の考え方
・漢方の診断法と「証」
・表・裏(部位範疇)
・寒・熱,緩・緊(病状範疇)
 緩・緊
 寒・熱
・三陰・三陽(病位範疇)
 三陽病
 三陰病
・疾病と症候との関係
・気・血・水
・気血水交錯図と病道・病期
・正病と壊病,卒病・雑病・合病
・治病メカニズムの考え方
・誤治による救済について
 寒証・熱証の使用誤りの場合
 緩証・緊証の使用誤りの場合
・薬物編
 薬物の八分類
 薬物の四つの薬能
 処方構成
 薬物の分類と三つの薬性
 気血水と汗・吐下・利について
 疾病ならびに処方と症候との関係および範疇症候と特異症候(外証)
 『重校薬徴』の「主治・兼治」
・処方構成と証の読み方
・方証相対の図解
・漢方方剤系統論
 こり
 痛み
 だるさ
  column 小柴胡湯-警告,禁忌,併用注意
  column 麻黄含有製剤の副作用
・一貫堂医学
 三大証分類
 一貫堂医学からみた疾病予防法
 効果を上げる服用指示と養生法
・診察法
 四診
・漢方方剤と新薬との併用
 新薬との併用
 漢方方剤同士の併用
・漢方方剤の用法(1)
 漢方方剤抽出方法
・漢方方剤の用法(2)
 漢方方剤の服用指示
 その他の治療法
・水の異常
 水毒症
 浮腫
 体液の組成
 体液の移動と体液量の測定
・腎虚
・虚労
・心窩部痛
・オ血
 オ血の自覚症状
 オ血の治療法
 オ血証の判定基準
 オ血の徴候
・気の異常
・その他の異常
・舌状
・『金匱要略』にみられる病態の鑑別と健康法,治療法
 名医は未病を治す
 健康保持の要訣
 生死の見分け方
 治療の順序
 食欲
・疾病の原因と予防の考え方
 活性酸素
 スパーオキシドディスモターゼ
・漢方薬が検査値に及ぼす影響について-1,5AGを例に
・かぜ症候群
 インフルエンザと普通の風邪の違い
 風邪の予防
 傷寒論医学からみた「風邪」
 問診の要点
 より効果を上げるための服用指示と養生法
 漢方方剤による治療
 漢方方剤使用上の注意
  column インフルエンザウイルス宇宙飛来説
  column マクロファージ
・消化器系疾患(1)
 問診の要点
 漢方方剤による治療
・消化器系疾患(2)
 胃液の分泌
 消化の仕組み
 胃炎
 消化性潰瘍
 消化性潰瘍の治療
  column ヘリコバクター・ピロリについて
  column 消化性潰瘍をめぐる最近の基礎研究
・消化器系疾患(3)
 肝臓の機能
 西洋医学の「肝」と中国医学(中医学)の「肝」
 肝機能検査
 各種肝疾患の症状
 漢方方剤による治療
 胸脇苦満,頸項強,脇下痞鞭・満(痛)の関係
・アレルギー疾患(1)
 気管支喘息とは
 即時型と遅発型
 喘息発作のメカニズム
 喘息の治療
 漢方方剤による治療
 喘息の心身医学的治療
  column 喘息をめぐる最近の話題1
  column 喘息をめぐる最近の話題2-心身症としての病態
・アレルギー疾患(2)
 花粉症
 アレルギーとは
 抗原として考えられるもの
 ストレス,体質とアレルギー
 アレルギー性鼻炎の増加の原因
 アレルギー性鼻炎の予防
 東洋医学からみた花粉症
 漢方方剤による治療
・アレルギー疾患(3)
 アレルギー性接触皮膚炎
 アトピー性皮膚炎
 漢方方剤によるアトピー性皮膚炎の治療
・泌尿器系疾患-水分代謝障害
 水毒とは
 漢方方剤による水毒の治療
 利水生薬-朮
 現代生理学からみた水分代謝障害
 水分代謝障害の場合に訴える症状
 漢方方剤による腎性浮腫の治療
  column カビ止めに朮
  column 浮腫がある場合の禁忌
・循環器系疾患(1)
 血圧とは?
 血圧の新しい定義
 高血圧の種類
 高血圧の症状
 高血圧の予防と養生法
 降圧薬の開始時期と降圧目標
 漢方方剤による治療
・循環器系疾患(2)
 脳血管性認知症
 脳血管性認知症の対策
 脳血管性認知症の薬物療法研究
 漢方方剤による治療
・生活習慣病(1)
 脂質異常症とは
 脂質異常症の治療
 漢方方剤による治療
・生活習慣病(2)
 糖尿病とは
 糖尿病発病の仕組み
 糖尿病の診断基準(日本糖尿病学会)
 糖尿病の病型
 年齢と糖尿病
 血糖の調節
 糖尿病発症の誘因-肥満
 糖尿病の食事療法
 糖尿病の漢方治療
・生活習慣病(3)
 肥満症とは
 肥満の原因
 肥満の種類
 体重を減少させる
 肥満の合併疾患
 肥満の治療-運動療法
 肥満に有効な生薬,食物
 肥満の漢方治療
・精神神経系疾患(1)
 高齢者の精神疾患
 精神障害の分類と原因
 認知障害
 認知症対策
 漢方方剤による治療
  column 健康なお年寄りの物忘れ
・精神神経系疾患(2)
 うつ病とは
 うつ病者の性格傾向
 うつ病の特徴
 漢方方剤による治療
  column ノイローゼの憂うつとうつ病
・精神神経系疾患(3)
 不眠症とは
 不眠症の治療
 漢方方剤による治療
  column 夢について
  column ミラクル物質メラトニン
  column メラトニンの代謝
  column 松果体とは
・婦人科疾患
 更年期障害
 ホルモンの作用
 更年期障害の発症
 現代医学からみた更年期症状
 東洋医学からみた婦人病について
 冷え症をみる方法-望診術の活用
 婦人病とオ血
 漢方方剤による治療
・東洋医学からみた夏の諸症状改善
 夏バテ
 夏バテの症状
 夏バテの対策
 漢方方剤による治療
 夏バテの特効薬
 夏の養生法
・高貴動物生薬の効用-臓器製剤
 六神丸
 高貴動物生薬の薬理作用
 高貴動物生薬の臨床治験
  column 強心薬(センソ含有製剤等)の使用上の注意(抜粋)
・漢方の三大古典
 黄帝内経
 神農本草経
 傷寒雑病論

 付.漢方方剤十五範疇分類一覧表
 付.薬物の寒・熱,緩・緊,気血水分類表
 付.急性症候十二範疇分類表
 索引