やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 管理栄養士養成の新カリキュラムでは「給食経営管理論」だけではなく,さまざまな教科でマネジメントが求められています.一方,介護保険施設における「栄養ケア・マネジメント」や医療施設での「栄養管理実施加算」を実施するためには,日常業務を効率的に行いベッドサイド訪問や栄養・食事指導の時間を生み出すための,管理栄養士自身の業務のマネジメントも必要となってきました.
 給食の運営に求められるものは,単なる食事の提供から,疾病治癒や栄養ケアに貢献できる栄養管理,すなわち「成果を出せる食事サービス」へと変わりました.しかし実際の給食運営の現場では,給食に対する報酬の削減が進み,より限られた収入の中での効果的・効率的運用が求められています.給食経営の管理者となる管理栄養士には,業務のマネジメント能力と,喫食者から高い評価を得るためのマーケティング能力が不可欠です.新カリキュラムにもそれらが盛り込まれていますが,学生がマネジメントを学ぶもっとも良い機会が「給食マネジメント実習」です.
 本書では,マネジメントサイクル(PDCAサイクル)であるPlan(計画), Do(運営),Check(評価),Action(改善を加えた運営)を通して,以下の事項の習得を目的としました.
 1.経営資源5M(man,money, machine,material,method)を最大限活用して,栄養管理,衛生・安全管理,経営管理を行う.
  例「栄養管理のみならず,喫食者の食事の満足度はどうか」
  「収入と支出のバランスを考え,常に原価意識をもって業務を行っているか」
 2.食材料が食事に変換され,最終的に残菜として処理されるまでの生産管理を,HACCPシステムに準じて理解する.
  例「二次汚染を防ぐ運用上の留意点は何か.どのように給食従事者に徹底させるか」
  「提供時間を考慮して,どのように生産工程を管理するか」
 3.常に作業の目的を意識し,PDCAサイクルにもとづいたマネジメントを行う. Sub Check,Total Checkでは 評価,問題点と課題を考察した後,改善案を構築する.
  例「この作業や製品に求められている品質基準はどのようなものか」
  「実習後の問題点と課題は何か.次回に向けての課題は何か」
 本書には,帳票の記入例とポイントをできるだけ具体的に入れるように努力しました.また帳票類は,使いやすいように小冊子(実習ノート)にしてまとめました.
 本書が管理栄養士・栄養士の養成に役立てば幸いです.
 最後に,本書の出版にあたってご尽力いただきました医歯薬出版編集部の方々に厚く御礼申し上げます.

 2007年9月
 
 
 第1版第8刷では「日本人の食事摂取基準2015年版」に準拠させるとともに,「大量調理施設衛生管理マニュアル」を最新(平成25年10月改正)のものにした.
 
 2015年2月
 編著者一同
I─実習ガイダンス 亀山良子
 1.実習の目的と流れ
  (1)目的
  (2)給食経営とサブシステム
  (3)給食の運営・管理実習の流れ
 2.実習の諸注意と役割分担
  (1)実習の諸注意
   (1)心がまえ
   (2)衛生・安全管理
   (3)事前の準備
  (2)実習スケジュール,グループ編成・役割分担
  (3)緊急時対応
   (1)人への対応
   (2)施設・設備への対応
   (3)災害時の対応
II─給食経営のTotal Plan 松月弘恵
 1.給食システム計画
  (1)給食の理念と目標
  (2)食事提供システム
  (3)品質保証と品質基準
  (4)経営計画
  (5)厨房構造と設備
   (1)厨房の汚染エリア
   (2)清潔エリアの衛生管理
   (3)加熱・冷却機器
   (4)動線の確認
  (6)組織と人員計画
   (1)組織の原則
   (2)リーダーとチームワーク
 2.栄養管理計画
  (1)栄養アセスメント
  (2)栄養計画
   (1)推定エネルギー必要量の設定
   (2)給与栄養目標量の設定
   (3)食品群別荷重平均成分表
   (4)食品構成表
 3.栄養教育計画
  (1)教育の目的とテーマ
  (2)媒体作成
  (3)喫食者評価計画
III─給食の食事計画 韓 順子
 1.食事計画
  (1)献立計画
  (2)献立計画に関する帳票類と作成手順
   (1)期間献立表
   (2)献立表(予定・実施)
   (3)作業指示書(レシピ)
   (4)作業工程表(予定・実施)
  (3)試作
   (1)試作用食品購入記録・在庫食品出庫表
   (2)試作評価表
 2.食材料購入計画
  (1)食材料購入計画に関する帳票類と作成手順
   (1)食材日計表
   (2)在庫食品受払い簿
   (3)発注書
IV─給食の運営・管理 韓 順子
 1.衛生安全管理
  (1)大量調理施設衛生管理マニュアル
  (2)調理従事者の衛生管理(個人衛生管理)
   (1)個人衛生点検表
  (3)施設・設備の衛生管理
 2.生産管理
  (1)食材料の検収・保管
   (1)検収記録表
  (2)下処理
   (1)使用水の点検
   (2)下処理室の温度・湿度と,冷蔵庫・冷凍庫の温度
   (3)細菌検査(フードスタンプ法)
   (4)廃棄率調査
   (5)危機管理記録(下処理室・調理室・配膳室・洗浄室・フロア)
  (3)調理
   (1)使用水の点検
   (2)調理室の温度・湿度と,冷蔵庫・冷凍室の温度
   (3)製品の加熱・冷却記録
   (4)料理の保管中の温度
   (5)調理品の保存食採取
  (4)盛付け
   (1)盛付けの手順
   (2)盛付け時のポイント
  (5)提供・サービス
   (1)配膳室の温度・湿度と,冷蔵庫・冷凍室の温度
   (2)配膳室の危機管理記録
   (3)フロア管理
   (4)サービング
   (5)残菜量調査
  (6)食器洗浄
   (1)洗浄室の温度・湿度と,食器保管庫の温度
   (2)食器の洗浄調査
   (3)危機管理記録
  (7)清掃・点検
   (1)作業安全・防災点検
 3.運営の確認
  (1)検食簿
  (2)給食日誌
  (3)作業写真
V─Sub Check各実習のまとめ 亀山良子
 1.Sub Checkを進めるにあたって
 2.運営・管理の評価
  (1)廃棄率の評価
  (2)実施献立表,実施作業指示書,実施作業工程表の作成および修正
  (3)生産管理,衛生・安全管理,危機管理の評価
  (4)品質の評価
   (1)目標
   (2)実施中の具体的な計測
 3.栄養管理の評価
  (1)残菜の評価
   (1)提供重量
   (2)残菜重量
  (2)栄養量の評価
   (1)目標量
   (2)予定量
   (3)実施量
   (4)摂取量
   (5)目標達成度
   (6)各栄養比率(エネルギー比および動物性たんぱく質比)
   (7)問題点・改善案
  (3)料理カードの作成
  (4)栄養教育の評価
 4.経営管理の評価
  (1)原価・会計管理,食材料管理
   (1)料理別食材料費
   (2)ABC分析
  (2)喫食者の評価
VI─Total Check総合評価 松月弘恵
 1.栄養管理の評価
  (1)栄養出納表
  (2)栄養管理報告書
   (1)報告内容
 2.経営管理の評価
  (1)原価・会計管理
   (1)期間純食材料費
   (2)収支決算
   (3)ABC分析を用いた食材料費の分析
  (2)給食目標の達成度
   (1)栄養管理(給与栄養目標量の達成度)
   (2)品質管理(品質目標との比較)
   (3)衛生・安全管理(細菌検査,疲労調査)
   (4)喫食者管理(喫食者満足度)
 3.実習の自己評価

付表1 日本人の食事摂取基準(2015年版)
付表2 食品分類表(事業所用・東京都)
付表3 大量調理施設衛生管理マニュアル