序文
本書は2017 年に出版された同名タイトルの「臨床栄養」臨時増刊号が好評につき書籍化されたものです.前書を手にとっていただいた多くの読者の皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます.臨時増刊号の書籍化にともない,一部の内容をアップデートしました.とくにGLIM基準の低栄養の診断や,サルコペニア・フレイルについては注目すべき最新情報が掲載されています.
本書の目的は,病態別の栄養管理のアプローチ方法を問い直し,さまざまなセッティングや疾患における低栄養の予防と対策を提言することです.これまでに低栄養の病態を中心テーマとした類似の書籍や文献が少ない挑戦的な企画です.
低栄養は時代とともに変遷しています.一昔前(20 世紀)の管理栄養士のテキストを紐解くと,典型的な低栄養の実態としてマラスムスとクワシオルコルが紹介されており,いずれも栄養素の欠乏が低栄養の病態の中心として語られています.21 世紀の本邦においては,世界ではじめてかつ最速で超高齢社会へ突入し,少子化の進行と相まって,患者の対象が複数の慢性疾患を抱えた高齢者に急速に移行しています.医療の考え方も従来の「キュア=治す」から,「ケア」へ変化しつつあります.さらに,高齢者の健康長寿を妨げるものとして,認知症,嚥下障害,サルコペニア,フレイルの対策は喫緊の課題であり,いずれも低栄養との密接な関連が指摘されています.
不適切な医療による医原性低栄養も深刻な問題です.周術期患者や肺炎患者では「安静,禁食」と指示されることがありますが,医学的にみて本当に安静や禁食が必要かどうか検証することが必要であり,不要な安静や禁食の結果,寝たきりや嚥下障害,低栄養,サルコペニアになることは避けるべきです.いまの豊かな日本を築いてきた高齢者が健康長寿を実現するために,私たちには医療人として臨床栄養をもっと充実させていく責務があると考えます.
本書の読者対象の中心は,初級者〜中級者を想定しています.各専門領域の最前線で活躍されている執筆者の先生方に,疾患別やセッティング別に低栄養の病態の基礎を解説いただき,具体的なアプローチ方法を提示できる一冊になればと思います.一部には上級者向けの記述も含まれますが,繰り返し読むことで十分に理解が深まるものと思います.病態の理解なくして本質的な低栄養アプローチはありえません.
どうか21 世紀における低栄養の予防と対策に本書が少しでも貢献できたら,と企画者一同願っています.
2019 年4 月吉日
編者を代表して 吉村芳弘
本書は2017 年に出版された同名タイトルの「臨床栄養」臨時増刊号が好評につき書籍化されたものです.前書を手にとっていただいた多くの読者の皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます.臨時増刊号の書籍化にともない,一部の内容をアップデートしました.とくにGLIM基準の低栄養の診断や,サルコペニア・フレイルについては注目すべき最新情報が掲載されています.
本書の目的は,病態別の栄養管理のアプローチ方法を問い直し,さまざまなセッティングや疾患における低栄養の予防と対策を提言することです.これまでに低栄養の病態を中心テーマとした類似の書籍や文献が少ない挑戦的な企画です.
低栄養は時代とともに変遷しています.一昔前(20 世紀)の管理栄養士のテキストを紐解くと,典型的な低栄養の実態としてマラスムスとクワシオルコルが紹介されており,いずれも栄養素の欠乏が低栄養の病態の中心として語られています.21 世紀の本邦においては,世界ではじめてかつ最速で超高齢社会へ突入し,少子化の進行と相まって,患者の対象が複数の慢性疾患を抱えた高齢者に急速に移行しています.医療の考え方も従来の「キュア=治す」から,「ケア」へ変化しつつあります.さらに,高齢者の健康長寿を妨げるものとして,認知症,嚥下障害,サルコペニア,フレイルの対策は喫緊の課題であり,いずれも低栄養との密接な関連が指摘されています.
不適切な医療による医原性低栄養も深刻な問題です.周術期患者や肺炎患者では「安静,禁食」と指示されることがありますが,医学的にみて本当に安静や禁食が必要かどうか検証することが必要であり,不要な安静や禁食の結果,寝たきりや嚥下障害,低栄養,サルコペニアになることは避けるべきです.いまの豊かな日本を築いてきた高齢者が健康長寿を実現するために,私たちには医療人として臨床栄養をもっと充実させていく責務があると考えます.
本書の読者対象の中心は,初級者〜中級者を想定しています.各専門領域の最前線で活躍されている執筆者の先生方に,疾患別やセッティング別に低栄養の病態の基礎を解説いただき,具体的なアプローチ方法を提示できる一冊になればと思います.一部には上級者向けの記述も含まれますが,繰り返し読むことで十分に理解が深まるものと思います.病態の理解なくして本質的な低栄養アプローチはありえません.
どうか21 世紀における低栄養の予防と対策に本書が少しでも貢献できたら,と企画者一同願っています.
2019 年4 月吉日
編者を代表して 吉村芳弘
序文
Part 1 低栄養の最新知識
21 世紀における低栄養の諸問題(吉村芳弘)
低栄養の病態概論(宮島 功)
低栄養の分類と診断基準(西岡心大)
低栄養がもたらす健康・疾患リスク(葛谷雅文)
低栄養のスクリーニング・アセスメント(雨海照祥・他)
低栄養患者に対するルート選択とプランニング(小山 諭)
医原性の低栄養をつくる医療とは(森 みさ子)
サルコペニアとフレイル(谷川隆久・荒井秀典)
〔コラム〕EWGSOP2 基準のサルコペニア(吉村芳弘)
〔コラム〕なぜ低栄養対策にドラッカーの“マネジメント” が必要なのか(海道利実)
Part 2 セッティング別 低栄養マネジメント
ICUでの低栄養の対処法(東別府直紀)
周術期の低栄養対策(谷口英喜)
回復期リハビリテーション病棟における低栄養対策(桐谷裕美子)
緩和ケア病棟における低栄養の考え方と対応(村井美代・他)
精神科における低栄養対策(阿部裕二)
小児病院における低栄養対策(高増哲也)
高齢者施設における低栄養対策(阿部咲子)
在宅における低栄養対策(佐々木 淳)
〔コラム〕地域へ飛び出す栄養サポート―WAVESの取り組み(秋山和宏)
Part 3 病態別 低栄養マネジメント
【急性疾患】
脳卒中(高畠英昭)
ARDS(泉野浩生)
虚血性心疾患(木田圭亮・鈴木規雄)
Refeeding症候群(大村健二)
大腿骨近位部骨折(酒井友恵)
褥瘡(真壁 昇)
炎症性腸疾患(斎藤恵子・他)
誤嚥性肺炎(三鬼達人)
【慢性疾患】
COPD(藤田幸男・吉川雅則)
糖尿病(川ア英二)
慢性肝疾患(白木 亮)
慢性腎臓病(山田康輔・山田とも子)
慢性心不全(宮島 功)
がん悪液質(木久美・他)
神経疾患(片多史明)
認知症の人の食生活をチームで支えるために(田中志子)
〔コラム〕栄養ケアプロセス(NCP)の実践ポイント―低栄養患者を例に(片桐義範)
Part 4 多職種による低栄養へのアプローチ
NSTによる低栄養マネジメント(鷲澤尚宏)
リハビリテーション栄養(鈴木達郎)
薬剤師が活躍する低栄養マネジメント(宮崎 徹)
歯科が活躍する低栄養マネジメント(石井良昌・廣田佳代子)
管理栄養士が活躍する低栄養マネジメント(嶋津さゆり)
看護師が活躍する低栄養マネジメント(清水孝宏)
〔コラム〕低栄養対策における栄養経営士の役割(宮澤 靖)
Part 5 高齢者を支える栄養ケア実践例
低栄養の食事指導(工藤美香)
調理・献立の工夫―食形態を中心に(中原さおり)
調理・献立の工夫―栄養強化(エネルギー・栄養素)を中心に(吉村由梨)
在宅向けの市販食品(コンビニ,宅配などを含む)の利用・工夫(江頭文江)
索引
Part 1 低栄養の最新知識
21 世紀における低栄養の諸問題(吉村芳弘)
低栄養の病態概論(宮島 功)
低栄養の分類と診断基準(西岡心大)
低栄養がもたらす健康・疾患リスク(葛谷雅文)
低栄養のスクリーニング・アセスメント(雨海照祥・他)
低栄養患者に対するルート選択とプランニング(小山 諭)
医原性の低栄養をつくる医療とは(森 みさ子)
サルコペニアとフレイル(谷川隆久・荒井秀典)
〔コラム〕EWGSOP2 基準のサルコペニア(吉村芳弘)
〔コラム〕なぜ低栄養対策にドラッカーの“マネジメント” が必要なのか(海道利実)
Part 2 セッティング別 低栄養マネジメント
ICUでの低栄養の対処法(東別府直紀)
周術期の低栄養対策(谷口英喜)
回復期リハビリテーション病棟における低栄養対策(桐谷裕美子)
緩和ケア病棟における低栄養の考え方と対応(村井美代・他)
精神科における低栄養対策(阿部裕二)
小児病院における低栄養対策(高増哲也)
高齢者施設における低栄養対策(阿部咲子)
在宅における低栄養対策(佐々木 淳)
〔コラム〕地域へ飛び出す栄養サポート―WAVESの取り組み(秋山和宏)
Part 3 病態別 低栄養マネジメント
【急性疾患】
脳卒中(高畠英昭)
ARDS(泉野浩生)
虚血性心疾患(木田圭亮・鈴木規雄)
Refeeding症候群(大村健二)
大腿骨近位部骨折(酒井友恵)
褥瘡(真壁 昇)
炎症性腸疾患(斎藤恵子・他)
誤嚥性肺炎(三鬼達人)
【慢性疾患】
COPD(藤田幸男・吉川雅則)
糖尿病(川ア英二)
慢性肝疾患(白木 亮)
慢性腎臓病(山田康輔・山田とも子)
慢性心不全(宮島 功)
がん悪液質(木久美・他)
神経疾患(片多史明)
認知症の人の食生活をチームで支えるために(田中志子)
〔コラム〕栄養ケアプロセス(NCP)の実践ポイント―低栄養患者を例に(片桐義範)
Part 4 多職種による低栄養へのアプローチ
NSTによる低栄養マネジメント(鷲澤尚宏)
リハビリテーション栄養(鈴木達郎)
薬剤師が活躍する低栄養マネジメント(宮崎 徹)
歯科が活躍する低栄養マネジメント(石井良昌・廣田佳代子)
管理栄養士が活躍する低栄養マネジメント(嶋津さゆり)
看護師が活躍する低栄養マネジメント(清水孝宏)
〔コラム〕低栄養対策における栄養経営士の役割(宮澤 靖)
Part 5 高齢者を支える栄養ケア実践例
低栄養の食事指導(工藤美香)
調理・献立の工夫―食形態を中心に(中原さおり)
調理・献立の工夫―栄養強化(エネルギー・栄養素)を中心に(吉村由梨)
在宅向けの市販食品(コンビニ,宅配などを含む)の利用・工夫(江頭文江)
索引