やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版序文
 本書は,1994年発刊以来,20年以上の長きにわたり,管理栄養士養成課程,栄養士養成課程を設置する大学,短期大学,専門学校をはじめとして,多くの教育機関の学生用実験書として,また食品関連科目を担当する教員の実験参考書として活用して頂いていることに,先ず以て感謝申し上げます.
 第2版改訂時には,調理科学的な実験項目,機能性成分の分析項目等,応用実験項目の充実を図り,また2006年の補訂においては,「五訂増補日本食品標準成分表」(食品成分表)の概説を追加した.その後,中等教育理科の指導要領が改訂され,本書に関係する事項としては,これまで標準試薬等,実験でなじみのある規定濃度がモル濃度へと変更された.一方, 2015年には食品成分表が七訂として発表された.
 このような社会背景に対して,時勢に取り残されるのではなく,アグレッシブに対応していく道を選び,このたび,規定濃度からモル濃度への全面変更,また「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」の概説を中心に改訂を行い,さらに一歩を踏み出すこととした.食品成分表では「管理栄養士養成課程におけるモデル・コアカリキュラム2015」における「食べ物と健康(食品成分表)」についての理解((1)食品成分表で用いられる食品の分類法について説明できる.(2)食品成分表の一般成分の分析方法について説明できる.(3)食品成分表利用における留意点を説明できる.(4)食品のエネルギー測定法,エネルギー換算係数について説明できる)に対応する内容とし,講義や学生の国家試験等,自主学習においてもポイント活用できるように配慮した.
 学生実験に同様に携わる教員として想うことがひとつある.本書の内容は,執筆者の熱意により,実験実施にあたり役立つ内容となっていると自負するが,利用する学生に対して充分な配慮をしてきたかについては疑問が残る.学生ファーストでものを考え,例えば,化学や生物を充分に学習しないで入学する学生のいることも念頭に,同じ実験項目であっても,学生が分析化学をより理解しやすいよう表現するなど,納得して実験できるようなきめ細やかな配慮が今後必要であることを.
 2017年春
 編者代表



第2版序文
 本書は1994年,主に栄養士養成施設での食品学実験のテキストとして,フローシートやレポートを添付した新企画でスタートした.以来,あたたかいご教示やご批評を賜り,たいへんありがたく,感謝申し上げる次第である.
 この間に新世紀を迎え,バイオテクノロジーによる本格的な食品技術革新が始まるとともに,かたや生活習慣病の一次予防として,健康づくりに果たす食生活の役割がクローズアップされるようになり,食環境に対する生活者の意識や要求が大きく変化してきた.また恒例の「日本人の栄養所要量」が第六次改定され,さらに18年ぶりに「日本食品標準成分表」(食品成分表)の改訂が行われ,五訂として公表された.食品成分表については健康づくりをサポートする分析項目が追加され,とりわけ微量成分に大幅な追加および変更が行われたため,現行の実験書では対応できなくなってきた.一方,学生にもっと興味を抱かせるために,目的意識のもてる応用実験の追加が望まれていた.
 このような背景から,内容は従来のレベルを維持しながらもより充実した実験書へと改める運びとなった.主な改訂点は次のとおりである.
 1.食品成分表の分析ガイドラインに沿った実験項目の整理および追加
 2.調理科学や福祉・介護など,生活者の立場で役立つ食品応用実験の追加
 3.学生の情報処理能力向上に伴う,パソコン使用を前提としたレポート形式
 この結果,実験項目が大幅に増え,レポート用紙は1実験1ぺ一ジに納めることとなった.したがって,レポートの提出を求める場合には,表と裏の実験項目に注意されたい.
 学生時代お世話になった永原・岩尾・久保先生の名著『全訂食品分析法』には足元に及ばないものの,原理,実験ポイントなどには工夫を凝らしたつもりであり,食品学実験を行う参考になればと願っている.
 最近,学生から「栄養士になるのに栄養指導・給食管理以外に,なぜ食品の物理化学的実験が必要なのか」といった質問をよく受ける.「それは栄養士になるのだから必要なのであり,むしろ健康の維持・増進に不可欠な食品の成分や性質など実体を知らないでなぜ栄養士なの?」などと答えているが,どうも科学嫌いなのに科学をしたいようである.
 最後に,本書に対するご指導,ご鞭撻をこれまで同様にお願い申し上げるとともに,初版から大変な改訂作業を円滑に進めていただいた医歯薬出版編集部に深謝の意を表する.
 2002年3月
 編者代表

 追記「五訂増補日本食品標準成分表」の公表(2005年1月)に伴い,第2版第5刷(補訂)において「第3章日本食品標準成分表に基づく定量実験」および関連する部分の訂正を行った.
 2005年11月
 編者代表



序文
 本書は,食品学実験のために学生が使用するテキストとして編集したものである.「食品学実験」のおもな目的は,実験を通じて食品に対する理解を深めることと,食品分析技術の修得であると考えられる.大学,短期大学および専門学校における栄養士養成施設において,「食品学実験」は3時間30回(2単位)実施している場合が多い.ところで,実験を行う学生は大学,短期大学などに入学して初めて本格的な「化学実験」を行う場合がほとんどであり,高等学校において化学を履修していない場合さえある.このような現状で上記の目的のために十分な成果をあげるには,指導教師の熱意と要領のよい指導,わかりやすくて使いやすい指導書がなによりも必要である.
 執筆者らはこれまで実験教育に携わってきており,本書の編集にあたって,その経験から学生に理解しやすくて受け入れられやすく,かつ教師にとっては教えやすいテキストにするよう心がけた.また,ほとんどの学生は,実験報告書(レポート)の書き方を学ぶ機会をもっていないため,このテキストでは,実験ごとに提出するレポート用紙をつけ,レポートの書き方を修得できるようにした.
 本書の構成は,初めて実験をする場合を考慮した基礎実験,四訂日本食品標準成分表の分析方法に基づく食品成分の定量分析およびその他の食品に関する実験とした.実験材料には日本人になじみの深い「大豆」を例として取り上げてみた.また,分析機器の知識は基礎実験のなかに一項目を設けて,原理などの解説と実験例を示した.「ワンポイントアドバイス」には,実験の工夫,ポイント,気をつけることなどを記して,その実験がスムーズに実施できるようにし,「コラム」欄には,食品学実験関連のミニ知識,最新の食品・栄養学の知識などを記した.
 不備な点も多いと思われますが,広く皆さんのご教示,ご指導をいただき,今後さらによりよいものにしたいと考えております.
 おわりに,本書の出版にあたり,医歯薬出版株式会社編集部にはたいへんお世話になりました.厚くお礼申し上げます.
 1994年3月
 執筆者一同
1 食品の基礎実験
 1−実験の基礎
  1)実験の全般的注意
  2)試薬の調製
  3)器具
  4)基本操作
 2−容量分析
  1)中和滴定
   Exp1 市販塩酸の濃度決定
  2)酸化還元滴定
   Exp2 過マンガン酸カリウム標準溶液の調製および標定
   Exp3 オキシドール中の過酸化水素の定量
   Exp4 チオ硫酸ナトリウム標準溶液の調製と標定
   Exp5 さらし粉中の有効塩素の定量
  3)沈殿滴定
   Exp6 0.01N硝酸銀標準溶液の調製と標定モール法
  4)キレート滴定
 3−食品実験に使われる分析手段・機器分析
  1)pHの測定
  2)比色分析
  3)蛍光分析
  4)原子吸光分析
  5)クロマトグラフィ
  6)電気泳動
2 食品成分の定性実験
 1−たんぱく質・アミノ酸の定性
  1)呈色反応
   Exp7 ビュレット反応
   Exp8 ニンヒドリン反応
   Exp9 キサントプロテイン反応
   Exp10 アダム・キーウィッツ反応ホプキンス・コーレ反応
   Exp11 ミロン反応
   Exp12 坂口反応
   Exp13 硫化鉛反応
  2)沈殿・凝固反応
   Exp14 熱による凝固反応
   Exp15 濃塩類による沈殿反応
   Exp16 有機溶媒による沈殿反応
 2−糖質の定性
  1)糖質に共通する反応
   Exp17 モーリッシュ反応
   Exp18 アンスロン反応
  2)還元糖に特有の反応
   Exp19 フェーリング反応
   Exp20 銀鏡反応
   Exp21 ベネディクト反応
  3)単糖類と二糖類の判別反応
   Exp22 バーフォード反応
  4)ケトースに特有の反応
   Exp23 セリワノフ反応
  5)六単糖と五炭糖の判別反応
   Exp24 スカトール反応
   Exp25 オルシン塩化鉄反応ビアル反応
  6)オサゾンの生成反応
   Exp26 フェニルヒドラジン反応
  7)ヨウ素-デンプン反応
   Exp27 ヨウ素-デンプン反応
 3−ビタミン類の定性
  1)脂溶性ビタミンの定性反応
   Exp28 ビタミンAの定性反応カール・プライス反応
   Exp29 ビタミンDの定性反応
   Exp30 ビタミンEの定性反応
  2)水溶性ビタミンの定性反応
   Exp31 ビタミンB1の定性反応ジアゾ法
   Exp32 ビタミンB2の定性反応ルミフラビン反応
   Exp33 ビタミンCの定性反応インドフェノール反応
3 日本食品標準成分表に基づく定量実験
 1−日本食品標準成分表
  1)日本食品標準成分表の概要
  2)日本食品標準成分表の分析方法
 2−エネルギー値の算出
 3−水分の定量
   Exp34 常圧加熱乾燥法
 4−たんぱく質の定量
   (ローリー法によるたんぱく質の微量定量法)……46,47
   Exp35 ケルダール法
 5−脂質の定量
   Exp36 ソックスレー抽出法
   Exp37 クロロホルム-メタノール混液改良抽出法
 6−炭水化物の定量
  1)全糖量の定量
   Exp38 アンスロン硫酸法
  2)食物繊維の定量
   Exp39 酵素重量法
 7−灰分の定量
   Exp40 直接灰化法
 8−無機質の定量
  1)無機質分析試料等の取り扱いについて
   Exp41 湿式分解法による試料の調製
  2)ナトリウムの定量
   Exp42 ナトリウムの定量原子吸光法
  3)カリウムの定量
   Exp43 カリウムの定量原子吸光法
  4)カルシウムの定量
   Exp44 カルシウムの定量原子吸光法
  5)マグネシウムの定量
   Exp45 マグネシウムの定量原子吸光法
  6)リンの定量
   Exp46 リンの定量比色法
  7)鉄の定量
   Exp47 鉄の定量比色法
  8)亜鉛の定量
   Exp48 亜鉛の定量原子吸光法
  9)銅の定量
   Exp49 銅の定量原子吸光法
  10)マンガンの定量
   Exp50 マンガンの定量原子吸光法
 9−ビタミンの定量
  1)ビタミンAの定量
   Exp51 レチノールの定量HPLC法
   Exp52 カロテンの定量HPLC法
  2)ビタミンDの定量
   Exp53 ビタミンDの定量HPLC法
  3)ビタミンEの定量
   Exp54 ビタミンEの定量HPLC法
  4)ビタミンKの定量
   Exp55 ビタミンKの定量HPLC法
  5)ビタミンB1の定量
   Exp56 ビタミンB1の定量HPLC法
  6)ビタミンB2の定量
   Exp57 ビタミンB2の定量HPLC法
  7)ナイアシンの定量
   Exp58 ナイアシンの定量微生物定量法
  8)ビタミンB6の定量
   Exp59 ビタミンB6の定量微生物定量法
  9)ビタミンB12の定量
   Exp60 ビタミンB12の定量微生物定量法
  10)葉酸の定量
   Exp61 葉酸の定量微生物定量法
  11)パントテン酸の定量
   Exp62 パントテン酸の定量微生物定量法
  12)ビタミンCの定量
   Exp63 ビタミンCの定量HPLC法
   Exp64 ビタミンCの定量ヒドラジン法
 10−その他の成分の定量
  1)アルコール分の定量
   Exp65 清酒中のアルコール分の定量ガスクロマトグラフ法
  2)酢酸の定量
   Exp66 食酢中の酢酸の定量直接滴定法
   Exp67 トマトケチャップ中の酢酸の定量水蒸気蒸留-滴定法
  3)カフェインの定量
   Exp68 緑茶浸出液中のカフェインの定量HPLC法
  4)タンニンの定量
   Exp69 緑茶中のタンニンの定量酒石酸鉄吸光光度法
   Exp70 コーヒー豆中のタンニンの定量フォーリン・デニス法
4 食品の応用実験
 1−食品成分の分離
   Exp71 牛乳からカゼインの分離
   Exp72 小麦粉からデンプンとグルテンの分離
 2−食品の色
  1)天然色素
   Exp73 クロロフィルの同定
   Exp74 アントシアニンの抽出と安定性試験
  2)褐変
   Exp75 酵素的褐変
   Exp76 非酵素的褐変アミノ-カルボニル反応
 3−食品の味
  1)食味テスト
   Exp77 3点識別試験法
   Exp78 濃度の識別順位法
  2)酸度
   Exp79 中和滴定による酸度測定
  3)塩分
   Exp80 沈殿滴定による塩分の定量
 4−食品の香り
   Exp81-A 酢酸イソアミルの合成
   Exp81-B 酢酸イソアミルの同定ガスクロマトグラ
   フ法
 5−食品の物性
   Exp82 えん下困難者用食品の力学的特性
   Exp83 食品の熱分析
 6−食品成分の変化
  1)デンプン
   Exp84 デンプンの糊化
   Exp85 アミラーゼの糖化力
  2)たんぱく質
   Exp86 果物のプロテアーゼによる食肉たんぱく質の分解
  3)油脂
   Exp87 酸価
   Exp88 過酸化物価
   Exp89 抗酸化活性DPPHラジカル消去活性の測定
 7−飲料水の検査
   Exp90 飲料水の水質検査
   Exp91 水道水中の塩化物イオンの定量
   Exp92 水の硬度測定
レポート