やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 弊社が初めて『食餌療法シリーズ』(全12巻)を世に送り出したのは1959〜1961年のことでした.当時は,国民病とまでいわれた結核がまだ十分に駆逐されてはおらず,また“成人病“や“食餌療法”という言葉も一般には耳慣れず,疾病治療の一環としての食事療法は黎明期をむかえたばかりといってもよいころでした.そのような時代にあって,医師と病院栄養士の共著によって刊行された本シリーズは,食事療法の画期的な啓蒙書としてまことに先駆的な役割を果たしてまいりました.
 その後,医学・医療の飛躍的な進歩によって感染症は著しく減少したものの,一方では“豊か”と称される食生活や体を動かさずにすむ社会環境を背景にして,糖尿病をはじめ高血圧・肥満・動脈硬化症などを起因とする成人病が増加の一途をたどるようになってきました.このような国民の病気と食生活をめぐる変遷の中で,本シリーズは,1972年に新しい知見を加え『新編食事療法シリーズ』(全13巻)として再出発し,以後数度の改訂を重ねてまいりました.
 しかし,さらに20年が経過したいま,日本は国際化時代と呼ばれるなかにあって,他の先進諸国にも類をみないスピードで高齢化社会をむかえようとしております.慢性疾患に対する正しい食生活と運動による予防・コントロールの意義がますます重視されるとともに,新しい加工食品や輸入食品が次々と出回り,外食が普及し,食生活を取り巻く環境はさらにいっそう多彩となってきております.
 このような変化に対応するため,ここに改めて第一線の医師・栄養士を執筆陣にむかえ,病気と食事療法,病気の予防と食生活,さらには運動や日常生活のあり方などについて新しい情報を盛り込むとともに,料理写真はすべてカラー化し,内容・装丁とも一新した『食事療法シリーズ』(全10巻)を刊行することにいたしました.
 本書が,各方面で食事療法の指導にあたっておられる方々,またそれを学びつつある方々をはじめ,現にいま食事療法に挑戦しておられる方々に,よりいっそう役立つことを願ってやみません.
 新シリーズの発刊にあたり,ご協力をいただきました多くの人々に深謝するとともに,今後,読者からのご意見,ご叱正をよりどころに,さらによりよきものとなるよう随時訂正を加えていく所存です.(編集部)

 本書の構成と特徴

 本書は大きく,病気の解説と献立編および参考頁とから成り立っています.以下,それぞれの特徴について記しておきます.
 1. 病気の解説では,現代生活と高血圧・心臓病との関わり,またおもな高血圧・心臓病についてその原因・症状・診断・治療および食事療法の原則などを平易に記載してあります.
 2. 献立編は 「じょうずな献立の立て方」 「食事療法のすすめ方」 「食品の組み合わせと献立の立て方」 「一日献立例」 「一品料理」 で構成されています.
 (1) 「食品の組み合わせと献立の立て方」:一般に病院で用いられている「食品構成表」をアレンジしたものです.「食品構成表」とは,それぞれの病院において医師の指示した栄養基準量が満たされるように,食品分類にそって,あらかじめ使用する食品とその量を定めたもののことですが,この表では<栄養基準量→使用できる食品例(および使用できない食品,特殊食品)→一日の献立に使用する食品→一日献立例>という献立を立てるまでの一連の流れを表示しています.なお,“特殊食品”とは,その病態用にあらかじめ加工調整された食品のことです.
 (2) 「一日献立例」:献立表の中にはとくに“献立アドバイス”と“家族に向けて”の欄を設けてあります.前者では,その料理をじょうずにつくるための工夫や他の病態への応用などを,また後者では,とくに食事制限を必要としない家族に対しての配慮について記載しています.
 (3) 「一品料理」:各食事療法に適した一品料理を40品掲載してあります.献立頁には,とくに組み合わせる料理例を「一日献立例」の中から選んで示しました.
 3. 一日献立例および一品料理はすべてカラー写真で示してあります.分量や盛り付け方,食器の用い方などについて参考にしてください.
 4. 巻末には 「からだと栄養素」 「栄養 ・ 食事Q&A」 「外食をじょうずにとるために」 を掲載してあります. 「からだと栄養素」 では, おもな栄養素の種類とそのからだにおける働きについて概説してあります. 「栄養 ・ 食事Q&A」 では,栄養指導の現場で実際に患者から出された栄養と食事をめぐる質問のいくつかを取り上げました.また「外食をじょうずにとるために」では,おもな外食料理40品を選び,その平均的な材料と分量および,エネルギーや脂質を控えたい場合など7つのケースについて,とり方の注意を示しました.食事療法を志す人は,できれば外食は避けたいところですが,どうしても外食に頼らざるをえない場合には,この表をご参考ください.
 5. 前後の見返しには, 「計量の習慣をツけましょう」および「味付け基本マニュアル」を表示しました.食事療法を実践するうえで,各種調味料の小さじ・大さじ・カップ各1杯の量をこの計量表で覚えておくと便利です.また「味付け基本マニュアル」に示した基本的な調味料の配合比は,この割合を守れば,おいしくかつヘルシーな食事が心がけられるという目安を示したものです.
 6. 巻頭に,本書に掲載されているすべての料理について,エネルギーとたんぱく質量を記載した「料理目次」を掲載しました. 「一日献立例」の中で料理を代替するときなどに活用してください.
 7. 本書では,とくに下記のマークを用いてそれぞれの内容を表しています.
 ■朝 ■昼 ■夕 ■間食
 ■料理上のワンポイントアドバイス
 ■組み合わせの例
 序
 本書の構成と特徴
 料理目次

◆現代生活と高血圧・心臓病――(久代)

  現代の生活環境が高血圧,心臓病の引き金に
  高血圧,心臓病は生涯管理が必要

◆高血圧と食事――(久代)

 ◇病気の理解
  高血圧とはどんな病気か
  血圧が高いことと高血圧の違い
  高血圧の原因
  現代の高血圧治療の目的
  危険因子とは
  降圧療法の種類
  高血圧における薬物療法の問題点
 ◇高血圧の食事
  減塩食
  肥満と減量療法
  カルシウム,カリウムと降圧作用
  食物繊維と魚油
  食事療法で様子をみる期間と降圧薬が必要になる場合
 ◇高血圧の生活ガイド
  運動療法
  アルコールの功罪
  タバコ
  入浴
  カフェイン
  精神的ストレス
  安静
 ◇高血圧の予防
 ◇高血圧とつき合う

◆低血圧と食事――(久代)

  低血圧の原因
  本態性低血圧の人の生活処方

◆心臓の病気と食事――(久代)

 ◇現代生活と心臓病の危険因子
 ◇現代生活で問題になる心臓病の基礎知識
  狭心症と心筋梗塞(虚血性心疾患)
  不整脈
  弁膜症
  心筋症
  心不全
 ◇心臓病に関連する症状のチェックポイント
  胸痛
  動悸
  息切れ
  失神
 ◇心臓病の検査――どんなときに,どんな検査が行われ,何がわかるのか
  虚血性心疾患が疑われる場合
  不整脈のある場合
 ◇心臓病の食事
  食事療法の一般原則
  心臓の予備力が低下している場合の食事療法
  虚血性心疾患の食事療法
  高齢者の食事療法の注意
 ◇心臓病の生活ガイド
  運動
  タバコ
  アルコール
  妊娠
  性生活
  飛行機での旅行
  A型性格について

◆献立編――

 ◇じょうずな献立の立て方――(宗像)
 ◇高血圧の食事――(植田)
  本態性高血圧の食事療法のすすめ方
  肥満を伴う高血圧の食事療法のすすめ方
  食品の組み合わせと献立の立て方
   本態性高血圧/塩分8〜10gの食事
   本態性高血圧/塩分8g以下の食事
   肥満を伴う高血圧/1,000〜1,200kcal・塩分8〜10gの食事
  本態性高血圧の一日献立例
   塩分8〜10g
   塩分8g以下
  肥満を伴う高血圧の一日献立例
   1,000〜1,200kcal・塩分8〜10g
   1,200〜1,400kcal・塩分8g以下
 ◇心臓病の食事――(住田,中島)
  狭心症の食事療法のすすめ方(中島)
  心筋梗塞の食事療法のすすめ方(中島)
  心不全・弁膜症の食事療法のすすめ方(住田)
  肥満を伴う心臓病の食事療法のすすめ方(住田)
  食品の組み合わせと献立の立て方
   狭心症の食事(中島)
   心筋梗塞/回復期の食事(中島)
   心筋梗塞/安定期の食事(中島)
   心不全・弁膜症/塩分2〜5gの食事 (住田)
   心不全・弁膜症/塩分5〜8gの食事(住田)
   肥満を伴う心臓病/1,200〜1,400kcal・塩分2〜5gの食事(住田)
  狭心症の一日献立例(中島)
  心筋梗塞の一日献立例(中島)
   回復期
   安定期
  心不全・弁膜症の一日献立例(住田)
   塩分2〜5g
   塩分5〜8g
  肥満を伴う心臓病の一日献立例(住田)
   1,200〜1,400kcal・塩分2〜5g
   1,200〜1,400kcal・塩分5〜8g
◇一品料理
 塩分を控えた一品料理(動物性)(住田)
 塩分を控えた一品料理(植物性)(植田)
 脂質を控えた一品料理(中島)
◇栄養・食事Q&A
◇からだと栄養素――(藤田)
◇外食をじょうずにとるために――(渡部)