第6版改訂の序
この1年間の栄養関係行政の動向は,“1日が10年の如し”と思われるほど,次々と変化した.
なかでも特筆されるのは,国民が生涯にわたって健全な心身を培い,豊かな人間性を育むために,“食育“の重要性が見直され,子どもの健全育成の視点から“栄養教諭制度”が創設され,国会で食育基本法が審議され,厚生労働省に各種関連施策の推進に向けて“食育推進室“が設置されたことである.また,医学と栄養学だけでなく,確率論を導入し,可能な限り科学的根拠に基づいて策定された“日本人の食事摂取基準(2005年版)”が発表されたことである.
さらに,健康寿命を2年程度伸ばすことを目指した政策“健康フロンティア戦略“が制定されるとともに,老人保健事業の見直しでは,超高齢社会における高齢者の自立支援の観点から“活動的な85歳”が新たな目標として加えられる等々,枚挙にいとまがない.
今回の本書の主な改訂点は,最新のデータの差し替えを行うとともに,“公衆栄養のための活動指針“では,“日本人の食事摂取基準(2005年版)”の策定に伴い改正したこと,“公衆栄養と栄養行政“では,施策の動向を踏まえて内容の充実化を図ったこと,巻末資料の関係法規に“健康増進法施行規則”と“学校給食法”を追加したこと,さらに読者からの要望に応え,本文中の西暦表記に年号を併記し,一部巻末資料に変えて索引を掲載し,より活用しやすく工夫したこと等々である.
公衆栄養学は,人々の健康とQOLの向上に寄与する学問である.ヘルスプロモーションの理念が広まるなかで,この学問を礎として行われる公衆栄養活動は,単に保健サービスを提供するだけでなく,食生活や健康を切り口とした活動を通して住民一人ひとりがいきいきと暮らし,自己実現の力量形成ができるように支援し,人々と地域が変わっていくように働きかけるものである.
従って,公衆栄養活動に従事する管理栄養士・栄養士は,人々の地域生活を見渡す視点,それに根ざした公衆栄養活動のマネジメント能力,さまざまな社会資源と連携するためのコーディネート能力など,数々の知識,技能,態度,考え方の総合的能力が求められる.
本書が管理栄養士・栄養士養成のためのテキストとしてだけでなく,現在,地域で実践活動をしている管理栄養士・栄養士らの実務書としても活用され,人々の健康づくりに柔軟で多様なアプローチができる視野の広い学びに役立てていただければ幸いである.
2005年1月1日
編者 沖増 哲
はじめに
「公衆栄養」が栄養士養成施設での教科目として採用されてから22年を経過し,いま大きな転換期を迎えようとしている.
それは少子・高齢化社会と環境問題を目前にして,その目的である健康づくりが住民参加型のヘルスプロモーション,さらにはウエルネスへと転換し,それへの地域ぐるみの新しい対応が求められてきたことである.そしてそのためには地域で働く栄養士や栄養ボランティアの意識改革とそれに即した活動が必要で,その体制をどう構築していくかがこれからの大きな課題である.「方法を生み出す栄養士」への期待と併せて,これからの公衆栄養学にそれが求められる.
本書は現在,栄養士養成施設で公衆栄養学を担当している者と管理栄養士として公衆栄養活動に従事している者らによる共著である.上記のような主旨にそってこれからの「公衆栄養」に大きな期待を込めて,各章を分担執筆している.
脱稿したうえで読み返してみると,初めの意図がどれだけ達成されたかと反省される点もある.また専門の立場からは行き届かない点や不備の点も指摘されると思う.これらの点については読者諸賢ならびに同学の士のご批判とご叱正を待ちたい.なお執筆に当たっては多くの著書・論文等を参考にしたが,なかでも巻末に記した文献には負うところが多い.これらの著者各位に深く謝意を表する.
終わりに,本書の出版にご理解を賜り出版の労をとられた医歯薬出版株式会社に深くお礼を申しあげる.
平成8年1月20日
編者 沖増 哲
この1年間の栄養関係行政の動向は,“1日が10年の如し”と思われるほど,次々と変化した.
なかでも特筆されるのは,国民が生涯にわたって健全な心身を培い,豊かな人間性を育むために,“食育“の重要性が見直され,子どもの健全育成の視点から“栄養教諭制度”が創設され,国会で食育基本法が審議され,厚生労働省に各種関連施策の推進に向けて“食育推進室“が設置されたことである.また,医学と栄養学だけでなく,確率論を導入し,可能な限り科学的根拠に基づいて策定された“日本人の食事摂取基準(2005年版)”が発表されたことである.
さらに,健康寿命を2年程度伸ばすことを目指した政策“健康フロンティア戦略“が制定されるとともに,老人保健事業の見直しでは,超高齢社会における高齢者の自立支援の観点から“活動的な85歳”が新たな目標として加えられる等々,枚挙にいとまがない.
今回の本書の主な改訂点は,最新のデータの差し替えを行うとともに,“公衆栄養のための活動指針“では,“日本人の食事摂取基準(2005年版)”の策定に伴い改正したこと,“公衆栄養と栄養行政“では,施策の動向を踏まえて内容の充実化を図ったこと,巻末資料の関係法規に“健康増進法施行規則”と“学校給食法”を追加したこと,さらに読者からの要望に応え,本文中の西暦表記に年号を併記し,一部巻末資料に変えて索引を掲載し,より活用しやすく工夫したこと等々である.
公衆栄養学は,人々の健康とQOLの向上に寄与する学問である.ヘルスプロモーションの理念が広まるなかで,この学問を礎として行われる公衆栄養活動は,単に保健サービスを提供するだけでなく,食生活や健康を切り口とした活動を通して住民一人ひとりがいきいきと暮らし,自己実現の力量形成ができるように支援し,人々と地域が変わっていくように働きかけるものである.
従って,公衆栄養活動に従事する管理栄養士・栄養士は,人々の地域生活を見渡す視点,それに根ざした公衆栄養活動のマネジメント能力,さまざまな社会資源と連携するためのコーディネート能力など,数々の知識,技能,態度,考え方の総合的能力が求められる.
本書が管理栄養士・栄養士養成のためのテキストとしてだけでなく,現在,地域で実践活動をしている管理栄養士・栄養士らの実務書としても活用され,人々の健康づくりに柔軟で多様なアプローチができる視野の広い学びに役立てていただければ幸いである.
2005年1月1日
編者 沖増 哲
はじめに
「公衆栄養」が栄養士養成施設での教科目として採用されてから22年を経過し,いま大きな転換期を迎えようとしている.
それは少子・高齢化社会と環境問題を目前にして,その目的である健康づくりが住民参加型のヘルスプロモーション,さらにはウエルネスへと転換し,それへの地域ぐるみの新しい対応が求められてきたことである.そしてそのためには地域で働く栄養士や栄養ボランティアの意識改革とそれに即した活動が必要で,その体制をどう構築していくかがこれからの大きな課題である.「方法を生み出す栄養士」への期待と併せて,これからの公衆栄養学にそれが求められる.
本書は現在,栄養士養成施設で公衆栄養学を担当している者と管理栄養士として公衆栄養活動に従事している者らによる共著である.上記のような主旨にそってこれからの「公衆栄養」に大きな期待を込めて,各章を分担執筆している.
脱稿したうえで読み返してみると,初めの意図がどれだけ達成されたかと反省される点もある.また専門の立場からは行き届かない点や不備の点も指摘されると思う.これらの点については読者諸賢ならびに同学の士のご批判とご叱正を待ちたい.なお執筆に当たっては多くの著書・論文等を参考にしたが,なかでも巻末に記した文献には負うところが多い.これらの著者各位に深く謝意を表する.
終わりに,本書の出版にご理解を賜り出版の労をとられた医歯薬出版株式会社に深くお礼を申しあげる.
平成8年1月20日
編者 沖増 哲
・第6版改訂の序
・はじめに
Chapter1 これからの公衆栄養を求めて
1.公衆栄養とは
公衆栄養の必要性―生命現象の見地から
公衆栄養をこう考える
●公衆栄養は多体問題である ●公衆栄養のパラダイム
2.大きく変わる健康観―健康づくりからウエルネスへ
健康とは
健康の指標
健康づくりとその必要性
ヘルスプロモーション
新しい健康観―ウエルネス
●ウエルネスとは ●ウエルネス運動の展開
3.食生活は文化である
食生活のパラダイム
食文化の形成と伝播
●文化とは ●食文化の地域類型 ●近代以前の日本人の食文化
4.物質文明の発達と食生活の近代化―新たな食文化の創造を期待して
物質文明の発達
食生活の近代化
5.公衆栄養をめぐる環境問題
環境とそのシステムモデル
●環境とは ●環境の内容 ●環境のシステムモデル
世界人口の増大と食料問題
●人口問題 ●食料およびその他の問題
公衆栄養と環境づくり
●自然環境の役割 ●環境づくり―公衆栄養の観点から
6.公衆栄養学とそれへの取り組み
学際科学としての公衆栄養学
望まれる科学的なアプローチ
望まれる多面的なアプローチ
Chapter2 公衆栄養の方法
1.栄養疫学の考え方と方法
健康問題を発見するには
●健康調査の方法 ●調査対象者 ●質問票による健康問題の調査 ●運動量調査,運動機能検査による健康問題の発見 ●血液・尿検査などによる健康問題発見 ●健康調査における機密保護
栄養問題の発見
●栄養状態の判定 ●栄養調査 ●食生活調査
栄養と健康の関係を探るには―栄養疫学
●記述疫学 ●分析疫学 ●実験疫学
2.公衆栄養活動の進め方
マネージメントサイクル
公衆栄養活動を計画(Plan)する
●目的の確認 ●目標の設定 ●計画案の作成 ●社会資源の把握
公衆栄養活動を実施(Do)する
●公衆栄養活動の主体 ●活動の方法 ●指導媒体 ●広報活動 ●公衆栄養活動の留意点 ●コミュニケーション ●栄養士の役割
公衆栄養活動を評価(See)する
●評価の方法 ●評価の時期と内容
プリシード・プロシードモデルを使った計画(Plan)・実施(Do)・評価(See)の展開例 ●プリシード・プロシードモデルとは
3.公衆栄養学における情報処理をどう行うか
情報処理の実際
●コンピュータの種類 ●コンピュータの利用方法 ●コンピュータ利用の実際
情報システムの現状
●ダウンサイジング ●オープン化 ●マルチメディア化 ●ネットワーク化
公衆栄養学における情報処理の展望
●地域での医療情報のネットワーク化 ●家庭での利用 ●教育への利用
情報処理における機密保護
Chapter3 公衆栄養の現状と問題点を探る
1.国民健康・栄養調査(国民栄養調査:2002年(平14)度実施分以前)の側面から
食品群別摂取量
●食品群別摂取量の動向 ●食生活パターンの伝統型から欧米型への移行
栄養素等摂取量
●所要量と比べた場合の栄養素等摂取状況 ●エネルギーの栄養素別構成比―PFCエネルギー比 ●たんぱく質,脂質,炭水化物およびカルシウムの食品群別摂取構成
食塩摂取量と塩分源
食生活上の問題点
●若年層に目立つ欠食,朝食欠食 ●外食傾向 ●増える“コ”食化傾向 ●短くなる夕食の調理時間 ●食事リズムの乱れ
2.食料需給表(食料バランスシート)の側面から
食料自給率は60%,供給熱量自給率は40%
食料輸入の増加にみる飽食,高級化
供給純食料および供給栄養量の動向
食料問題を考えよう
3.家計調査の側面から
消費構造の変化と食料費の動向
加工食品志向の高まり
外食の増加と集列化
食環境の変化が生む問題点
4.国際栄養―食料・栄養・人口・健康
食料供給量からみた日本の特徴
栄養供給量からみた日本の特徴
世界の栄養問題
Chapter4 公衆栄養のための活動指針
1.食事摂取基準
栄養所要量から食事摂取基準へ
日本人の食事摂取基準(2005年版)の概要
●基本的な考 ヲ方 ●設定指標 ●活用方法 ●使用にあたっての留意点 ●年齢区分と策定栄養素等 ●エネルギーおよび主な栄養素の概要
2.“健康づくりのための食生活指針”
“健康づくりのための食生活指針”(1985年〈昭60〉)
“健康づくりのための食生活指針(対象特性別)”(1990年〈平2〉)
“食生活指針”(2000年〈平12〉)
3.健康づくりのための運動所要量
4.健康づくりのための運動指針
5.健康づくりのための身体活動のあり方―身体活動指針
6.健康づくりのための休養指針
7.健康づくりのための睡眠指針
8.食品(料理)の表示制度
特別用途食品制度
保健機能食品制度
栄養表示基準制度
アレルギー物質含有表示制度
健康食品の表示制度
日本農林規格(JAS規格)による食品の品質表示制度
外食料理の栄養成分表示制度
Chapter5 公衆栄養と栄養行政―公衆栄養の視点から行政をみる
1.栄養行政の歴史をみる―時代とともに変遷してきた栄養行政
2.栄養行政組織とその役割を知る―住民の健康づくりを支援している栄養行政
国レベルの栄養行政
●厚生労働省以外の栄養関係行政
都道府県レベルの栄養行政
●都道府県の栄養行政 ●健康科学センター
保健所(都道府県ブロックレベル)の栄養行政
市町村レベルの栄養行政
●市町村の栄養行政 ●市町村保健センター
3.栄養関係法規を理解する―住民の健康を守っている栄養関係法規
栄養士法
●栄養士法の制定趣旨と主な改正 ●栄養士法に規定する主な項目 ●栄養士と管理栄養士制度
健康増進法
●健康増進法の制定趣旨 ●健康増進法に規定する主な項目
地域保健法
●地域保健法の制定趣旨 ●地域保健法に規定する主な項目
母子保健法
●母子保健法の制定趣旨と主な改正 ●母子保健法に規定する主な項目
老人保健法
●老人保健法の制定趣旨と主な改正 ●老人保健法に規定する主な項目
4.公衆栄養施策を考える―住民の健康の保持増進と健康なまちづくりを目指して実施される公衆栄養施策
健康づくり対策
●健康づくり対策の経過 ●健康日本21―21世紀の国民健康づくり運動 ●健康づくり施策の概要
母子保健対策
●公衆栄養活動と関係のある主な施策 ●“新エンゼルプラン“・“健やか親子21”と公衆栄養活動
成人・老人保健対策
●公衆栄養活動と関係のある主な成人・老人保健対策 ●“ゴールドプラン21”と公衆栄養活動 ●健康フロンティア戦略と公衆栄養活動 ●介護保険制度と公衆栄養活動
Chapter6 公衆栄養と地区組織活動
1.地区組織活動の歴史
2.地区組織活動の意義
3.活動活性化の要件
●活動拠点の確保 ●行政側の支援 ●組織の民主的運営 ●広報活動
4.食生活改善推進員の役割
5.食生活改善推進員の活動内容
●食生活改善のための活動 ●運動普及のための活動 ●市町村事業への協力 ●社会福祉のための活動 ●生活環境改善のための活動
6.食生活改善地区活動の進め方
Chapter7 少子化のなかでの母子の健康づくり
1.母性栄養の特性と意義
2.母性栄養の現状と問題点
3.母子保健統計からみた母子保健の現状
4.これからの母子保健
母子保健法と母子保健施策
エンゼルプラン・健やか親子21
5.小児期(成長期)栄養の特性と意義
6.次世代を担う子どもたちの食生活上の課題
生活習慣病の増加
咀しゃく能力の減退
拒食,過食,ダイエット,骨折,アレルギー
ストレス症候群の増加
7.健やかな成長を目指して
子どもたちを取り巻く環境の変化
食文化と食教育
Chapter8 生活習慣病予防のための食生活
1.生活習慣病とは
2.生活習慣病の動向
生活習慣病の総患者数
生活習慣病の死亡数・死亡割合
●生活習慣病の年齢階級別死亡割合 ●癌の死亡数・死亡率 ●循環器疾患の死亡率
生活習慣病の医療費
3.生活習慣病増加の原因について考える
生活環境の変化
食習慣
ライフスタイルを見直す
●生活時間 ●食生活 ●飲酒 ●喫煙 ●運動 ●休養
4.生活習慣病予防のために
生活習慣病の予防法
●一次予防 ●二次予防 ●三次予防
生活習慣病予防のための食生活
●癌と食生活 ●循環器疾患と食生活 ●糖尿病と食生活 ●肥満と健康の問題 ●生活習慣病予防のための食生活指針
Chapter9 高齢者の栄養と食生活
1.高齢社会の進展
平均寿命の延長
出生率の低下
老年人口の増加
高齢社会の進展
2.高齢者の栄養問題を探る
老化に伴う生理学的変化
高齢者の食欲不振
高齢者の栄養不良と疾患
高齢者の精神的特性と栄養問題
高齢者の栄養摂取状況
3.高齢者の栄養状態を評価する
血液検査による評価
体格による評価
4.高齢者のための食生活
栄養素摂取量
●エネルギー ●脂質 ●たんぱく質 ●ビタミン・ミネラル ●炭水化物と食物繊維
日常生活と食習慣
高齢者のための食生活指針
長寿者の食生活
Chapter10 公衆栄養活動の実際 いま,実際に行われている公衆栄養活動に目を向けよう
1.行政における取り組み―行政は公衆栄養活動をどう具体化しているか
都道府県レベルの公衆栄養活動
●高知県における“ヤング世代の食の応援団事業”
保健所レベルの公衆栄養活動
●山口県徳山保健所における“消化器系難病の栄養・食事相談事業”
市町村レベルの公衆栄養活動
●岡山県長船町における“すこやか健診事業”
2.地域住民による取り組み―食生活改善推進員による地区組織活動
●広島県世羅町における“ヘルスサポーター事業”
3.関係団体による取り組み―(社)広島県栄養士会による公衆栄養活動
●エコ&ヘルシークッキング事業 ●“栄養3・3運動”推進事業 ●広島県版“子どものすこやか食生活指針”の策定・食教育事業
Chapter11 公衆栄養の課題 これからの栄養士への期待をこめて
1.食生活と環境との関係―公衆栄養の視点から
2.環境問題への対応
3.新たな食文化の創造―公衆栄養の文化としての定着化
・参考・引用文献
・付表・資料一覧
付表:日本人の食事摂取基準(2005年版)
資料:1―関係法規
1.栄養士法
2.栄養士法施行令
3.健康増進法
4.健康増進法地施行規則
5.地域保健法
6.母子保健法
7.老人保健法
8.食品衛生法
9.食品衛生法施行規則
10.学校給食法
2―公衆栄養の歴史
・索引
・はじめに
Chapter1 これからの公衆栄養を求めて
1.公衆栄養とは
公衆栄養の必要性―生命現象の見地から
公衆栄養をこう考える
●公衆栄養は多体問題である ●公衆栄養のパラダイム
2.大きく変わる健康観―健康づくりからウエルネスへ
健康とは
健康の指標
健康づくりとその必要性
ヘルスプロモーション
新しい健康観―ウエルネス
●ウエルネスとは ●ウエルネス運動の展開
3.食生活は文化である
食生活のパラダイム
食文化の形成と伝播
●文化とは ●食文化の地域類型 ●近代以前の日本人の食文化
4.物質文明の発達と食生活の近代化―新たな食文化の創造を期待して
物質文明の発達
食生活の近代化
5.公衆栄養をめぐる環境問題
環境とそのシステムモデル
●環境とは ●環境の内容 ●環境のシステムモデル
世界人口の増大と食料問題
●人口問題 ●食料およびその他の問題
公衆栄養と環境づくり
●自然環境の役割 ●環境づくり―公衆栄養の観点から
6.公衆栄養学とそれへの取り組み
学際科学としての公衆栄養学
望まれる科学的なアプローチ
望まれる多面的なアプローチ
Chapter2 公衆栄養の方法
1.栄養疫学の考え方と方法
健康問題を発見するには
●健康調査の方法 ●調査対象者 ●質問票による健康問題の調査 ●運動量調査,運動機能検査による健康問題の発見 ●血液・尿検査などによる健康問題発見 ●健康調査における機密保護
栄養問題の発見
●栄養状態の判定 ●栄養調査 ●食生活調査
栄養と健康の関係を探るには―栄養疫学
●記述疫学 ●分析疫学 ●実験疫学
2.公衆栄養活動の進め方
マネージメントサイクル
公衆栄養活動を計画(Plan)する
●目的の確認 ●目標の設定 ●計画案の作成 ●社会資源の把握
公衆栄養活動を実施(Do)する
●公衆栄養活動の主体 ●活動の方法 ●指導媒体 ●広報活動 ●公衆栄養活動の留意点 ●コミュニケーション ●栄養士の役割
公衆栄養活動を評価(See)する
●評価の方法 ●評価の時期と内容
プリシード・プロシードモデルを使った計画(Plan)・実施(Do)・評価(See)の展開例 ●プリシード・プロシードモデルとは
3.公衆栄養学における情報処理をどう行うか
情報処理の実際
●コンピュータの種類 ●コンピュータの利用方法 ●コンピュータ利用の実際
情報システムの現状
●ダウンサイジング ●オープン化 ●マルチメディア化 ●ネットワーク化
公衆栄養学における情報処理の展望
●地域での医療情報のネットワーク化 ●家庭での利用 ●教育への利用
情報処理における機密保護
Chapter3 公衆栄養の現状と問題点を探る
1.国民健康・栄養調査(国民栄養調査:2002年(平14)度実施分以前)の側面から
食品群別摂取量
●食品群別摂取量の動向 ●食生活パターンの伝統型から欧米型への移行
栄養素等摂取量
●所要量と比べた場合の栄養素等摂取状況 ●エネルギーの栄養素別構成比―PFCエネルギー比 ●たんぱく質,脂質,炭水化物およびカルシウムの食品群別摂取構成
食塩摂取量と塩分源
食生活上の問題点
●若年層に目立つ欠食,朝食欠食 ●外食傾向 ●増える“コ”食化傾向 ●短くなる夕食の調理時間 ●食事リズムの乱れ
2.食料需給表(食料バランスシート)の側面から
食料自給率は60%,供給熱量自給率は40%
食料輸入の増加にみる飽食,高級化
供給純食料および供給栄養量の動向
食料問題を考えよう
3.家計調査の側面から
消費構造の変化と食料費の動向
加工食品志向の高まり
外食の増加と集列化
食環境の変化が生む問題点
4.国際栄養―食料・栄養・人口・健康
食料供給量からみた日本の特徴
栄養供給量からみた日本の特徴
世界の栄養問題
Chapter4 公衆栄養のための活動指針
1.食事摂取基準
栄養所要量から食事摂取基準へ
日本人の食事摂取基準(2005年版)の概要
●基本的な考 ヲ方 ●設定指標 ●活用方法 ●使用にあたっての留意点 ●年齢区分と策定栄養素等 ●エネルギーおよび主な栄養素の概要
2.“健康づくりのための食生活指針”
“健康づくりのための食生活指針”(1985年〈昭60〉)
“健康づくりのための食生活指針(対象特性別)”(1990年〈平2〉)
“食生活指針”(2000年〈平12〉)
3.健康づくりのための運動所要量
4.健康づくりのための運動指針
5.健康づくりのための身体活動のあり方―身体活動指針
6.健康づくりのための休養指針
7.健康づくりのための睡眠指針
8.食品(料理)の表示制度
特別用途食品制度
保健機能食品制度
栄養表示基準制度
アレルギー物質含有表示制度
健康食品の表示制度
日本農林規格(JAS規格)による食品の品質表示制度
外食料理の栄養成分表示制度
Chapter5 公衆栄養と栄養行政―公衆栄養の視点から行政をみる
1.栄養行政の歴史をみる―時代とともに変遷してきた栄養行政
2.栄養行政組織とその役割を知る―住民の健康づくりを支援している栄養行政
国レベルの栄養行政
●厚生労働省以外の栄養関係行政
都道府県レベルの栄養行政
●都道府県の栄養行政 ●健康科学センター
保健所(都道府県ブロックレベル)の栄養行政
市町村レベルの栄養行政
●市町村の栄養行政 ●市町村保健センター
3.栄養関係法規を理解する―住民の健康を守っている栄養関係法規
栄養士法
●栄養士法の制定趣旨と主な改正 ●栄養士法に規定する主な項目 ●栄養士と管理栄養士制度
健康増進法
●健康増進法の制定趣旨 ●健康増進法に規定する主な項目
地域保健法
●地域保健法の制定趣旨 ●地域保健法に規定する主な項目
母子保健法
●母子保健法の制定趣旨と主な改正 ●母子保健法に規定する主な項目
老人保健法
●老人保健法の制定趣旨と主な改正 ●老人保健法に規定する主な項目
4.公衆栄養施策を考える―住民の健康の保持増進と健康なまちづくりを目指して実施される公衆栄養施策
健康づくり対策
●健康づくり対策の経過 ●健康日本21―21世紀の国民健康づくり運動 ●健康づくり施策の概要
母子保健対策
●公衆栄養活動と関係のある主な施策 ●“新エンゼルプラン“・“健やか親子21”と公衆栄養活動
成人・老人保健対策
●公衆栄養活動と関係のある主な成人・老人保健対策 ●“ゴールドプラン21”と公衆栄養活動 ●健康フロンティア戦略と公衆栄養活動 ●介護保険制度と公衆栄養活動
Chapter6 公衆栄養と地区組織活動
1.地区組織活動の歴史
2.地区組織活動の意義
3.活動活性化の要件
●活動拠点の確保 ●行政側の支援 ●組織の民主的運営 ●広報活動
4.食生活改善推進員の役割
5.食生活改善推進員の活動内容
●食生活改善のための活動 ●運動普及のための活動 ●市町村事業への協力 ●社会福祉のための活動 ●生活環境改善のための活動
6.食生活改善地区活動の進め方
Chapter7 少子化のなかでの母子の健康づくり
1.母性栄養の特性と意義
2.母性栄養の現状と問題点
3.母子保健統計からみた母子保健の現状
4.これからの母子保健
母子保健法と母子保健施策
エンゼルプラン・健やか親子21
5.小児期(成長期)栄養の特性と意義
6.次世代を担う子どもたちの食生活上の課題
生活習慣病の増加
咀しゃく能力の減退
拒食,過食,ダイエット,骨折,アレルギー
ストレス症候群の増加
7.健やかな成長を目指して
子どもたちを取り巻く環境の変化
食文化と食教育
Chapter8 生活習慣病予防のための食生活
1.生活習慣病とは
2.生活習慣病の動向
生活習慣病の総患者数
生活習慣病の死亡数・死亡割合
●生活習慣病の年齢階級別死亡割合 ●癌の死亡数・死亡率 ●循環器疾患の死亡率
生活習慣病の医療費
3.生活習慣病増加の原因について考える
生活環境の変化
食習慣
ライフスタイルを見直す
●生活時間 ●食生活 ●飲酒 ●喫煙 ●運動 ●休養
4.生活習慣病予防のために
生活習慣病の予防法
●一次予防 ●二次予防 ●三次予防
生活習慣病予防のための食生活
●癌と食生活 ●循環器疾患と食生活 ●糖尿病と食生活 ●肥満と健康の問題 ●生活習慣病予防のための食生活指針
Chapter9 高齢者の栄養と食生活
1.高齢社会の進展
平均寿命の延長
出生率の低下
老年人口の増加
高齢社会の進展
2.高齢者の栄養問題を探る
老化に伴う生理学的変化
高齢者の食欲不振
高齢者の栄養不良と疾患
高齢者の精神的特性と栄養問題
高齢者の栄養摂取状況
3.高齢者の栄養状態を評価する
血液検査による評価
体格による評価
4.高齢者のための食生活
栄養素摂取量
●エネルギー ●脂質 ●たんぱく質 ●ビタミン・ミネラル ●炭水化物と食物繊維
日常生活と食習慣
高齢者のための食生活指針
長寿者の食生活
Chapter10 公衆栄養活動の実際 いま,実際に行われている公衆栄養活動に目を向けよう
1.行政における取り組み―行政は公衆栄養活動をどう具体化しているか
都道府県レベルの公衆栄養活動
●高知県における“ヤング世代の食の応援団事業”
保健所レベルの公衆栄養活動
●山口県徳山保健所における“消化器系難病の栄養・食事相談事業”
市町村レベルの公衆栄養活動
●岡山県長船町における“すこやか健診事業”
2.地域住民による取り組み―食生活改善推進員による地区組織活動
●広島県世羅町における“ヘルスサポーター事業”
3.関係団体による取り組み―(社)広島県栄養士会による公衆栄養活動
●エコ&ヘルシークッキング事業 ●“栄養3・3運動”推進事業 ●広島県版“子どものすこやか食生活指針”の策定・食教育事業
Chapter11 公衆栄養の課題 これからの栄養士への期待をこめて
1.食生活と環境との関係―公衆栄養の視点から
2.環境問題への対応
3.新たな食文化の創造―公衆栄養の文化としての定着化
・参考・引用文献
・付表・資料一覧
付表:日本人の食事摂取基準(2005年版)
資料:1―関係法規
1.栄養士法
2.栄養士法施行令
3.健康増進法
4.健康増進法地施行規則
5.地域保健法
6.母子保健法
7.老人保健法
8.食品衛生法
9.食品衛生法施行規則
10.学校給食法
2―公衆栄養の歴史
・索引