やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版改訂の序
 栄養士法の一部改正が行われ,平成14年4月1日から施行されることとなった.
 これによって,栄養士および管理栄養士の定義が明確となり業務の内容も管理栄養士の専門性が問われるものとなった.
 今後の栄養指導について,専門知識とそれに伴う技術が一層重要となる.このような現状のなかで,栄養士養成における栄養指導実習の授業内容はより深い内容の充実が望まれることになる.
 2005年に,栄養指導業務のなかの重要な柱となる「日本人の食事摂取基準(2005年版)」が策定された.これは前回より以上に国際的視野に立脚した内容である.今回は主にこれをどのように栄養指導実習に取り入れるか,またこれを活用するにはどのような実習が必要かということと,これからの栄養士は,人と人とのかかわりのなかで仕事を行う場面が多くなると考えられるので,職業人としてのマナーも大切になってくるこの点にも注目して改訂を行った.
 本書について各方面からのご意見をいただくことを著者一同が心から願っている.今回の改訂にあたり,多くの方々の著書や論文を参考にさせていただいたことに心よりお礼申しあげ,さらに医歯薬出版株式会社に感謝申しあげる.
 2005年1月
 著者一同

まえがき
 栄養士・管理栄養士の教育カリキュラムのなかで,栄養士養成の基礎をつくる教科として栄養指導がある.これらの内容は,講義または演習4単位以上,実験または実習2単位以上で構成されている.
 これらのなかで,栄養指導論実習については,担当する教員によって内容が取捨選択され,その内容が明確にされていないといっても過言ではないのが現状である.
 現在,栄養指導論演習と実習の内容の区別や年間2単位の実習内容の授業計画(シラバス)が具体的に示された実習書は少ないと思われる.
 そこで,「New栄養指導論」の姉妹編として,「New栄養指導実習」の作成を試みた.
 本書では,New栄養指導論をテキストとして授業を行った著者らの意見を基にして,栄養指導論の実習ではその内容として何を取りあげるのが適当であるか,基本に立ちかえり,検討を加えるなどして,学生たちがより充実した方法や技術が理解できるように工夫を試みた.
 しかし,まだまだ目指す所は遠いもののような感はあるものの,できるかぎり栄養指導実習のテキストに近いものにしたつもりである.
 まだ不備は多々あると思うが,皆様から素直なご意見をいただき,より充実した方向へ改訂を重ねてゆきたいと願っている.
 最後に多くの先輩諸氏の著書・論文を参考とさせていただいたことに心よりお礼申しあげる.また本書出版にあたり,医歯薬出版株式会社のご熱意とご協力に感謝申しあげる.
 1998年1月
 著者一同
第1章 栄養教育・指導実習の意義
 1.栄養教育・指導実習のポイント
 2.「栄養教育・指導論実習」の範囲と計画
第2章 栄養教育・指導の方法とテクニック
 1.栄養教育・指導の進め方
 2.栄養教育・指導の実際
  1)栄養教育・指導対象者の実態把握
  2)栄養教育・指導の計画(Plan)
   (1)目標設定の手順 (2)栄養教育・指導計画
  3)栄養教育・指導の実施(Do)
  4)栄養教育・指導の評価(See)
  5)栄養教育・指導評価の判定(Check)
 3.栄養教育・指導の実習
  1)栄養士としての心がまえ
  2)自分の考えを上手に表現する
   (1)手順を考える(自己紹介の場合の例) (2)話す内容の原稿を準備する (3)話し方のポイント
  3)集団のなかで自分の考えを上手に表現する「集団討議法」
  4)個別の栄養教育・指導
  5)集団別の栄養教育・指導
  6)集団への効果的栄養教育・指導
  7)院内・外来・在宅患者訪問栄養食事指導
   (1) 院内ベッドサイドでの個別指導 (2) 外来患者への個別指導 (3)在宅患者訪問栄養食事指導
 4.栄養教育・指導のための情報収集
  1)栄養関係文献の検索方法
  2)栄養教育・指導関係データの収集
第3章 栄養教育・指導実習の基礎
 1. 栄養価算定に関する実習
  1)日本食品標準成分表の使い方
   (1)食品標準成分表の食品群・収載食品数 (2)成分項目 (3)成分表使用上の留意点
  2)栄養価計算方法
   (1)栄養価の算定 (2)栄養価記入上の留意点
 2. 食品構成に関する実習
  1)食品構成表の作成
   (1)作成の手順 (2)食品構成量から栄養量の算出
  2)糖尿病食品交換表の日常食への応用
   (1)糖尿病食品交換表の仕組み (2)食品構成と献立作成
 3. 献立作成に関する実習
  1)献立の条件
  2)献立作成の手順
 4.食事摂取基準に関する実習
  1)日本人の食事摂取基準(2010年版)
   (1)策定の基礎理論 (2)活用の基礎理論 (3)各論
  2)推定エネルギー必要量の算定
  3)食事摂取基準を求める
 5.国民健康・栄養調査の活用
 6.身体状況の把握に関する実習
第4章 食生活・栄養・運動・休養に関する調査
 1.調査の進め方
 2.栄養素等摂取状況調査
  1)食物摂取状況
   (1)個人票 (2)食物摂取状況 (3)栄養素等摂取状況 (4)食品群別摂取状況
  2)脂肪酸摂取状況の評価法
  3)摂取たんぱく質栄養価の評価法
   (1)プロテインスコアの計算方法 (2)アミノ酸価の計算方法 (3)ケミカルスコアの計算方法
 3.食生活状況調査
  1)食習慣調査
  2)嗜好調査
  3)その他の食生活に関する調査
  4)郷土料理の調査
 4.運動と休養
第5章 栄養教育・指導調査の統計処理
 1.統計処理の方法
  1)データの整理
   (1)度数分布表・累積度数分布表 (2)ヒストグラム
  2)平均値
  3)散布度
   (1)分散 (2)標準偏差 (3)変動係数
  4)相関係数
   (1)相関 (2)相関係数
  5)統計的仮説検定
   (1)帰無仮説と対立仮説 (2)母平均の検定 (3)平均値の差の検定―少数例の場合― (4)x2検定
 2.コンピュータ処理
第6章 栄養教育・指導の調査結果のまとめ方と展開
 1.論文をまとめるうえでの条件
 2.レポート・論文のまとめ方
 3.レポート・論文執筆にあたっての留意点
 4.口頭研究発表にあたっての留意点

・参考文献