やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第7版 改訂の序
 このたびは本書が発行されて以来,第7版としての改訂を行うことになった.24年間で改題を含め,このように改訂回数が重なったが,基本的には旧版での理念を生かしながら,栄養学をはじめ関係学問の進歩や社会情勢の変化に伴い必要に応じてその部分を改めてきたところである.
 今回の改訂は主として「日本人の食事摂取基準(2005年版)」が策定されたことによるものである.2005年4月より使用される食事摂取基準には,栄養学に加えて確立論が導入されている.この概念によれば,単に数値に束縛されることなく,利用にあたっては対象の特性を十分考慮して柔軟に活用すべきであると強調されている.
 本書では,関係する箇所としてライフステージごとに設けた食品構成について次のように改めた.
 エネルギーは食品摂取基準の推定エネルギー必要量を用い,たんぱく質,脂質,炭水化物はエネルギー比率で表すことにした.エネルギー比率は初版以来用いてきたが,食品構成と連動しやすいと考えたからである.
 もとより,食品構成は食事摂取基準を満たすための食品の種類とその量の目安であるところから,ここで用いた栄養比率は,食事摂取基準を食品構成に展開して実用に近づけるための方法にほかならない.
 さらに,これを機にその他の内容についても追加または変更して改訂を行った.
 今回は時間的に切迫した改訂作業になったため,ひとかたならぬご苦労をかけた医歯薬出版株式会社編集部に厚くお礼申しあげる.
 今日まで温かく支持していただいた諸先生や利用して下さったみなさまに感謝しつつ,これからも実践的な教材としての本書が栄養学の実習に関してささやかながらも資することを願っている.
 2005年2月
 著者


 人間の栄養については,生命現象として当然起こってくる変化,それは成長にはじまり老年にいたる,生きる過程への対応がまず考えられる.加えて次代の生命を生みだす母性の問題や労働,スポーツなど生活する人間としての面も無視できない.
 本書ではこれらの生理や生活現象をふまえて,よりよく生きるための栄養とそれに適合した食物はどのようにすればよいかを勘案しながら,各ライフステージの問題に日常の食物作りを通してアプローチしようとするものである.したがって,こうした意図から人びとの多様性に適応した食物作りを試みる場としてこの特殊栄養学実習を位置づけることとした.
 なお,現代の社会生活では集約的に食物が提供される施設もふえてきているので,集団給食において可能な献立を例示することとした.集団給食のもつ合理性と個人の生理状態による特異性とはかなり矛盾を含んだ問題でありながらも,できるかぎり両面を阻害せず接点を求めるよう努力したつもりである.しかし,目的は十分に果たせたとはいえず,今後いっそうの充実をはかっていきたいものと願っている.ご叱正やご意見など賜われば幸甚の至りである.
 おわりに,本書が世にだされるにあたって多大の協力を得た名古屋女子大学,四国女子大学の関係者各位に謝意を表する次第である.
 1981年1月
 著者
第1章 成長期の栄養
 I.乳児期の栄養
  1.乳児期の栄養の特性
  2.乳児期の区分
  3.乳児の発育・発達
   口腔における消化過程  胃における消化過程  小腸における消化過程
  4.乳児の食事摂取基準
  5.調乳・授乳
   調乳
  6.授乳期にありがちなトラブル
 II.離乳期の栄養
  1.離乳の基準
  2.離乳期の食物
  3.離乳食の与え方
  4.離乳の必要性
  5.離乳期にありがちなトラブル
   離乳食
   ●離乳の準備食―離乳の準備に適する単品料理2種
    1.果汁/2.野菜スープ
   ●離乳に適する単品料理7種
    1.かゆの調製/2.りんご入りパンがゆ/3.さつまいものミルク煮/4.豆腐としらす干しの煮つけ/5.パンのチーズ焼き/6.トマト入りオムレツ/7.キャロットゼリー
   離乳食製品
   ●選択式離乳食献立
    初期/中期/後期(1)・(2)/完了期(1)・(2)
   ●離乳食献立横連絡式
    (1)/(2)/B
   ●離乳食・幼児食献立横連絡式
 III.幼児期の栄養
  1.幼児期の栄養の特性
  2.幼児の発育・発達
  3.幼児の食事摂取基準
  4.幼児の食事作りと与え方
   ●幼児に適する単品料理 4種
    1.変わりコロッケ/2.魚のカレーソース煮/3.かぼちゃの黄金焼き/4.ハム巻きほうれんそう
   ●幼児の間食に適する単品料理 5種
    1.うず巻き田楽/2.キャロットケーキ/3.ソフトドーナツ/4.ミルクゼリー/5.いちごスカッシュ
  5.幼児期にありがちなトラブル 42
  6.保育所における給食
   ●幼児食献立
    1〜2歳児/3歳児/4〜5歳児/1〜2歳児より3〜5歳児に連絡
   ●幼児食献立
   ●幼児の弁当献立
    (1)/(2)/食パンを使った行楽弁当/米を主体にした行楽弁当
   ●行事食の献立
    ひな祭り(1)・(2)/端午の節句(1)・(2)/クリスマス(1)・(2)/正月
   ●単品料理
    フルーツ3色ゼリー
   ●行事食の献立
    デザートを中心にしたもの/バースデイ(1)・(2)
 IV.学童期の栄養
  1.学童期の栄養の特性
  2.学童期の発育・発達
  3.学童の食事摂取基準
  4.学校給食
   ●学童に適する単品料理12種
    1.オードブル風/2.トマトライス/3.カレーピラフ/4.ロールチキン/5.ジュクセール/6.さんまの巻き揚げ/7.揚げギョーザ/8.パンプキンスープ/9.洋風雑煮/10.中華風雑煮/11.ポテトチップス入りオムレツ風/12.グレープフルーツポンチ
   ●学童食献立
    低学年から高学年へ横連絡式(1)・(2)/学校給食低学年用/学校給食高学年用(1)・(2)/学校給食のない日の家庭献立
   ●選択式おやつの献立
    野菜,フルーツを主体にしたもの/米を主体にしたもの
   ●学童食献立(学校給食のない日の家庭献立)
    低学年用/高学年用
 V.思春期の栄養
  1.思春期の栄養の特性
  2.思春期の発育・発達
  3.思春期の食事摂取基準
  4.思春期の貧血
   ●中・高校生に適する単品料理6種
    1.パンケースグラタン/2.冷し中華そば/3.八宝餅/4.餅とベーコンのホイル焼き/5.ジャーマンサラダ/6.コーヒーゼリー
   焼き物料理
   ●貧血者に適する単品料理 7種
    1.レバー入り麻婆豆腐/2.炒黄瓜/3.あさりのカレースープ/4.変わりミートボール/5.ロッククッキー/6.梅しそご飯/7.焼き肉サラダ
   ●思春期食(中・高校生)
   ●中・高校生弁当食献立(1)/(2)
   ●女子の貧血食献立(1)/(2)/B
第2章 成人期の栄養
 I.母性栄養
  1.妊婦の栄養の特性
  2.産褥期の栄養の特性
  3.授乳婦の栄養の特性
   ●妊婦・授乳婦に適する単品料理4種
    1.チキンショーフロア/2.船場煮/3.ひらめのホイル焼き/4.かぼちゃサラダ
   ●つわり(軽度)食献立
    (1)/(2)
   ●妊娠前半期食献立
   ●妊娠後半期食献立
   ●単品料理
    野菜入りワッフル(食欲不振のときに)
   ●産褥期食献立
   ●授乳期食献立
    (1)/(2)
   ●妊娠中毒症食献立
    I度/II度/III度
   ●単品料理
    いわしの野菜巻き
 II.スポーツ栄養
  1.スポーツ選手の栄養の特性
   ●スポーツ選手食献立
    (1)/(2)
 III.労働栄養
  1.労働栄養の特性
   ●勤労者に適する単品料理6種
    1.あさりの酒蒸し/2.吐司蝦巻/3.青椒肉絲/4.揚げなすのみそかけ/5.いわしの柳川風/6.豆腐のしそ焼き
   ●勤労者食献立
    身体活動レベルI(低い)/身体活動レベルII(ふつう)/身体活動レベルIII(高い)
   ●1食分献立表勤労者(身体活動レベルIII,高い)
   ●精神労働者食献立
    (1)/(2)
 IV.肥満
   ●勤労者の肥満制限食献立
    (1)春〜初夏向/(2)秋〜冬向
第3章 老年期の栄養
 I.老年期の栄養
  1.老年期の栄養の特性 151
  2.老年期の食事摂取基準
  3.老年期に適する調理
  4.老年期に多い症状
   ●老年期に適する単品料理6種
    1.こがね豆腐/2.凍り豆腐の卵とじ/3.れんこんのつくね煮/4.きのこご飯/5.ひじきご飯/6.豆腐の中華風サラダ
   ●老年期食献立
   ●老年期食献立
    歯の弱い人のために/コレステロールの高い人のために/トリグリセリドの高い人のために/血圧の高い人のために(1)・(2)/骨粗鬆症の人のために(1)・(2)・B

・参考文献
付表1 日本人の食事摂取基準(2005年版)
付表2 五訂日本食品標準成分表による食品類別荷重平均成分表
付表3 健康づくりのための食生活指針(対象特性別)