やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第9版 改訂の序

 この度栄養士法の改正に伴い栄養士・管理栄養士課程のカリキュラム改正が行われた.
 この改正による臨床栄養学分野の主たる目標は=cd=b854医療チームの一員としてわたりあえる高度の専門的知識と技術を持った資質の人材を育成すること=cd=ba25である.
 そこで本書においてもこの改正の基本方針に基づいて栄養アセスメントを範疇に内容の全面的見直しを行った.また第六次改定日本人の栄養所要量および五訂日本食品標準成分値が改正され,さらに糖尿病や高血圧の診断基準,肥満の判定など実態に即応して基準の見直しがなされたが,これらに準じて本書の内容も改めた.
 臨床栄養学分野の専門的業務に対応できる人々の育成が急務である今日にあって本書が十分に機能することができればと著者一同願っている.今後とも皆様の一層のご鞭達をいただきたくお願いして改訂の序としたい.
 平成14年3月
 著者一同

参考文献
 ○玉川和子ほか:病態・特殊栄養学実習書,医歯薬出版,1987.
 ○椎名晋一:患者ケア・食事指導のための疾患と検査のポイント,医歯薬出版,1986.
 ○山口和子:食事療法の実習,医歯薬出版,1985.
 ○三浦裕士編:臨床栄養(vol.70 No.6臨時増刊5),医歯薬出版,1986.
 ○吉利和ほか:(最新看護セミナー14)心不全ハンドブック,メヂカルフレンド社,1986.
 ○吉利和ほか:(最新看護セミナー17)糖尿病ハンドブック,メヂカルフレンド社,1986.
 ○鈴木秀郎:からだの働きと病期,医学書院,1985.
 ○田中武彦ほか:ベッドサイドの栄養管理,医学書院,1987.
 ○古川俊之訳:体液・電解質,基本ルール10章,医学書院,1982.
 ○日野原重明:看護のための水と電解質の知識,医学書院,1982.
 ○和田孝雄:絵でみる水・電解質,医学書院,1986.
 ○深見良子ほか:臨床栄養学・実習,建帛社,1987.
 ○日本糖尿病学会編:糖尿病治療のための食品交換表,文光堂,1987.



 今日,高度の科学技術の発達によってもたらされた豊かな生活享受の一方で,成人病の増加や,変化のはげしい社会に対するストレスの増加や飽食などは,疾患の誘因にもなっている.この歪みの是正に対応する栄養学の学習は必須であると共に,その得られた知識を実践に移すための学習や技術の習得も非常に重要である.
 今回栄養士法施行規則一部改正の省令が公布されたのを機に,「病態・特殊栄養学実習書」を改稿し,「臨床栄養学実習書」として改めて刊行することになった.本書では,「食べやすい治療食の考え方」を中心に集約した従来の実習の骨子を生かし充実させるよう留意した.また進歩の著しい臨床栄養の把握については,臨床症状と関連性を強めた食事の考え方を実践に移すべく各疾病の食事療法を構成した.
 最後に本書が,栄養摂取のあり方を考慮せずに疾病を治療し得ない今日の課題を追求する,次代の専門家の育成に役立つことができれば誠に幸いである.
 前書同様諸先生方のご意見,ご助言をいただきたくお願いする次第である.
 なお,各種疾患の臨床検査に関しては,九州厚生年金病院健康診断部長・長野政則氏にご高閲いただきました.深く感謝致します.
 昭和63年3月
 著 者

本書を使用するにあたって

 1. 栄養基準量について
 本書に用いた栄養基準量は,常食では30〜69歳の男女平均値*を基準量とし,他の食事は常食の数値を準用した.しかし,この場合の基準はあくまで目安量であるので,栄養基準量に幅をもたせた.また疾病別食事は,いろいろな事例により,食事形態は,飯,全かゆなどさまざまであるが,特殊なものを除き,大半は「飯」として考えた.
 2. 食品構成について
 1) 食品群の分類および食品群別荷重平均成分値について
 食品群別荷重平均成分値は平成10年国民栄養調査結果を参考に食品の種類別使用比率から,五訂日本食品標準成分表を用いて算出した.また特別の制限や特定の使い方をする治療食用には別に荷重平均成分値を作成し,それを使用した(p.11,表1-3参照).
 2) 食品構成作成にあたっての食品の使用量決定について
 一般的に日常使用する常用量を下記のとおり設定し,特別のものを除きこれを採用した.
 飯 1食 200g(精白米 80g) 魚 1日 60g,70g
 かゆ 1食 200g,250g 牛乳 1日 200ml
 いも 1日 50g,100g 砂糖 1日 20g
 卵 1日 50g 油脂 1日 10g
@豆腐 1日 50g,100g みそ 1日 12g
 3) 食品構成の記入について
 備考欄は,同一食品群内で使用食品を限る場合には,その食品名を()内に記入し,栄養価を算出した.
 3. 献立作成について
 献立作成の方法は,原則として荷重平均法(特定のものを除く)を採用し,使用食品量は±10%の範囲とした.また栄養価の計算は,栄養基準量に数値の幅をもたせた場合はその範囲内で,もたせない場合は誤差の許容範囲を±5%
 本書を使用するにあたって

1章 臨床栄養の基礎
 I 臨床栄養管理
   1.栄養管理
     1)栄養管理システム
   2.栄養補給法
     1)栄養補給法の種類
     2)栄養補給法の特徴
     3)栄養補給法の選択
 II 食事計画
   1.治療食の種類
   2.食事計画の立て方
     1)栄養基準の決め方
     2)食品群別荷重平均成分値の求め方
     3)食品構成表の作成
     4)献立作成とその手順
     5)調味の基本
2章 治療食の種類
 I 流動食
   1.経腸(経管)流動食
     1)経腸(経管)流動食の種類と適応疾患
     2)経腸(経管)流動食の食品の選択
   2.経口流動食
     1)経口流動食の定義と適応症
     2)経口流動食の種類
     3)食品の選択と注意
     4)流動食に適した料理
     5)栄養基準
     6)献立作成
 II 軟菜食
     1)軟菜食の定義と適応症
     2)軟菜食の種類
     3)食品の選択と注意
     4)調理上の注意
     5)軟菜食に適した料理
     6)栄養基準
     7)食品構成および献立
 III 常 食
3章 栄養成分別管理治療食
 I 食塩制限食
   1.減塩食を適応する疾患
   2.浮腫のある場合の食事の基本方針
     1)浮腫(全身)のある場合
     2)浮腫
   3.ナトリウム制限の調理
     1)食品の選択と注意
     2)減塩調理の工夫
     3)無塩食調理の工夫
 II エネルギーコントロール食
   1.エネルギーコントロール食の考え方
     1)低エネルギー食を適応する疾患
     2)食品の選択と注意
     3)調理上の注意
   2.糖尿病の食事
     1)糖尿病の成り立ち
     2)糖尿病の分類
     3)糖尿病の臨床検査
     4)糖尿病の食事療法――基本方針
   3.肥満症の食事
     1)肥満症の分類
     2)肥満の判定
     3)肥満症の診断基準
     4)肥満症の臨床検査
     5)肥満症の食事療法――基本方針
     6)栄養基準
     7)食品構成および献立
     8)小児肥満症の食事療法
   4.心臓疾患の食事
     1)心臓のはたらき
     2)心臓疾患の種類
     3)うっ血性心不全の臨床検査
     4)うっ血性心不全の食事療法――基本方針
   5.高血圧症の食事
     1)高血圧の成り立ち
     2)高血圧症の分類
     3)本態性高血圧症の臨床検査
     4)本態性高血圧症の食事療法――基本方針
   6.痛風・高尿酸血症の食事
     1)痛風・高尿酸血症の成り立ち
     2)高尿酸血症の臨床検査
     3)薬物の種類と食品中の成分との相互作用
     4)痛風・高尿酸血症の食事療法――基本方針
 III たんぱく質コントロール食
   1.たんぱく質コントロール食の考え方
     1)たんぱく質コントロール食を適応する疾患
     2)食品の選択と調理の工夫
   2.腎臓疾患の食事
     1)腎臓のはたらき
     2)腎臓疾患の種類
     3)腎臓疾患の臨床検査
     4)腎臓疾患の食事療法――基本方針
     5)腎臓疾患の栄養摂取基準
     6)腎臓疾患の食品構成および献立作成
     7)妊娠高血圧症候群の食餌療法
     8)小児腎臓病の食事療法
   3.肝臓疾患の食事
     1)肝臓のはたらき
     2)肝臓疾患の種類
     3)肝臓疾患の臨床検査
     4)肝臓疾患の食事療法――基本方針
     5)肝臓疾患の栄養基準
     6)肝臓疾患の食品構成および献立作成
 IV 脂質コントロール食
   1.脂質コントロール食の考え方
     1)低脂質食を適応する疾患