顎関節症運動療法のすすめ
顎関節症は,基本的に運動器の機能障害であり,欧米では,歯科医師,理学療法士,心理士といった多職種が協働している.日本では保険制度の問題もあり,整形外科でも顎関節症を扱っていないため,理学療法士も顎関節症を学ぶ機会はほぼない.一方,歯科では運動器を上下歯列の接触(咬合)を中心に考えているため,歯科医師の多くが臨床において顎関節,咀嚼筋,咬合を総合的に捉えているとは言いがたい.このように考えると,顎関節症は医科と歯科を結ぶ重要なピースとなっているのではないかと感じている.
人の身体は,大変許容性が高く,通常の歯科的な対応で問題が生じることは少ないのであるが,筆者のところに来院した難治性となっている症例をみると,病態についての説明はされず,口腔内装置や,噛みしめないように指導するだけといった対応をされてきたものが多い.もし歯科医師に運動器,運動療法の知識が少しでもあれば,発症の回避,早期の回復,そして慢性化が防げたのではないかと考えると,歯科医師が運動器への対応を知ることは喫緊の課題である.
今回,海外で研修するなど勉強を重ね,理学療法士に顎関節症を啓発している理学療法士の古泉貴章先生,理学療法士としてリハビリを行っていくなかで顎関節への興味から歯科医師となり,現在,両方のライセンスをもち歯科開業医として臨床を行っている遠藤優先生と出会い,歯科医師にも理学療法士にも有用な顎関節症の運動療法の書籍が必要であることを実感し,一緒に本書を上梓することができた.
本書は,やや難しい部分もあると思うが,運動療法を行ううえで必要なことは医療者が基本的知識をもとに,施術による患者さんの反応をみながら,自分のやり方を確立していくことにある.本書のどの手技も,そのような過程のなかでできたものである.
まず患者さんの話を聞き,病態を確認し,患者さんと一緒に病態にあった運動療法をつくっていく.この過程が患者さんのアドヒアランスを高め,信頼関係を深めるとともに,医療者の成長につながり,これがまた次の患者さんに活かされていく.このように考え診療していくと,きっと臨床が楽しくなるはずである.
ぜひ,患者さんと一緒に自分の運動療法を確立していただきたい.
2025年6月 島田 淳
顎関節症は,基本的に運動器の機能障害であり,欧米では,歯科医師,理学療法士,心理士といった多職種が協働している.日本では保険制度の問題もあり,整形外科でも顎関節症を扱っていないため,理学療法士も顎関節症を学ぶ機会はほぼない.一方,歯科では運動器を上下歯列の接触(咬合)を中心に考えているため,歯科医師の多くが臨床において顎関節,咀嚼筋,咬合を総合的に捉えているとは言いがたい.このように考えると,顎関節症は医科と歯科を結ぶ重要なピースとなっているのではないかと感じている.
人の身体は,大変許容性が高く,通常の歯科的な対応で問題が生じることは少ないのであるが,筆者のところに来院した難治性となっている症例をみると,病態についての説明はされず,口腔内装置や,噛みしめないように指導するだけといった対応をされてきたものが多い.もし歯科医師に運動器,運動療法の知識が少しでもあれば,発症の回避,早期の回復,そして慢性化が防げたのではないかと考えると,歯科医師が運動器への対応を知ることは喫緊の課題である.
今回,海外で研修するなど勉強を重ね,理学療法士に顎関節症を啓発している理学療法士の古泉貴章先生,理学療法士としてリハビリを行っていくなかで顎関節への興味から歯科医師となり,現在,両方のライセンスをもち歯科開業医として臨床を行っている遠藤優先生と出会い,歯科医師にも理学療法士にも有用な顎関節症の運動療法の書籍が必要であることを実感し,一緒に本書を上梓することができた.
本書は,やや難しい部分もあると思うが,運動療法を行ううえで必要なことは医療者が基本的知識をもとに,施術による患者さんの反応をみながら,自分のやり方を確立していくことにある.本書のどの手技も,そのような過程のなかでできたものである.
まず患者さんの話を聞き,病態を確認し,患者さんと一緒に病態にあった運動療法をつくっていく.この過程が患者さんのアドヒアランスを高め,信頼関係を深めるとともに,医療者の成長につながり,これがまた次の患者さんに活かされていく.このように考え診療していくと,きっと臨床が楽しくなるはずである.
ぜひ,患者さんと一緒に自分の運動療法を確立していただきたい.
2025年6月 島田 淳
CHAPTER 01 基礎知識
顎関節症の考え方
顎関節症と口腔機能そして姿勢
顎関節症と運動療法
顎関節症治療の流れ
CHAPTER 02 診察・検査
医療面接によるリスク因子の把握
運動機能の評価
関節可動域評価のための顎関節の知識
顎関節症検査
関節可動域の評価
触診・圧痛検査
口腔機能検査
口腔内所見
咬合検査
画像検査
CHAPTER 03 病態診断と治療法
顎関節症の病態分類
治療を行うポイント
顎関節症の治療
CHAPTER 04 リスク因子の管理
疾患教育と病態説明
守るセルフケア
CHAPTER 05 運動療法の実際
運動療法を行うにあたって
物理療法
マッサージ
モビライゼーション
運動療法
CHAPTER 06 咬合と顎関節症
CHAPTER 07 まとめ
運動療法を行う流れ
運動療法の選択と指導
付録
顎関節症の診察・検査票【初診用】
質問票【初診用】
顎関節症の考え方
顎関節症と口腔機能そして姿勢
顎関節症と運動療法
顎関節症治療の流れ
CHAPTER 02 診察・検査
医療面接によるリスク因子の把握
運動機能の評価
関節可動域評価のための顎関節の知識
顎関節症検査
関節可動域の評価
触診・圧痛検査
口腔機能検査
口腔内所見
咬合検査
画像検査
CHAPTER 03 病態診断と治療法
顎関節症の病態分類
治療を行うポイント
顎関節症の治療
CHAPTER 04 リスク因子の管理
疾患教育と病態説明
守るセルフケア
CHAPTER 05 運動療法の実際
運動療法を行うにあたって
物理療法
マッサージ
モビライゼーション
運動療法
CHAPTER 06 咬合と顎関節症
CHAPTER 07 まとめ
運動療法を行う流れ
運動療法の選択と指導
付録
顎関節症の診察・検査票【初診用】
質問票【初診用】














