やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書では,日本の歯科医療がもつ可能性と取るべき成長戦略について記しています.
 今,日本の医療は,そして歯科医療は大きな転換点を迎えています.2006年,厚生労働省は「2025年度には医療費を2兆円削減すること」を数値目標に掲げ,生活習慣病対策に打って出ました.しかしながら,予防により医療費を下げられるという明確なエビデンスはなく,その流れは失速しました.ところが2014年に発足した第2次安倍内閣により,予防医療による健康寿命の延伸が国家戦略に組み込まれ,再度,日本における予防医療の歯車が動き始めました.
 ときを同じくして,口腔の全身健康への影響についてのリサーチが世界中で行われるようになり,歯科のみならず,医科,そして国民レベルで口腔健康の重要性が,徐々に認識されるようになってきました.
 この流れを受けて,歯科医療が「医療の中の歯科村」を出て,既存の歯科医療のコアバリューを大切に引き継ぎながら新領域を拡大し,「医療の中の歯科医療」へと昇華していくことは,国家・国民にとっての歯科医療の社会的価値の向上に繋がります.
 本書は,筆者の専門である「歯科医学×経営学」,そして「日本×米国」という複視座から見えてきた,日本の歯科医療がもつ可能性と取るべき成長戦略に,医療人,経済人,政府関係者,医療現場,アカデミア,そして関連産業などとの交流や,医療ジャーナリストとしての取材を通じて見えてきた知見を重ね,可能な限り客観的かつ網羅的に綴り上げたものです.
 本書が,日本の歯科医療にとっての希望,そして日本社会の発展に繋がることを願っています.
 赤司征大
 序
第一章 日本国のこれから
第二章 医療・歯科医療のこれから
第三章 地域包括ケアシステムと歯科衛生機能
第四章 地域包括ケアシステムに活きる歯科医院
第五章 地域包括ケアシステムに求められる歯科医療
第六章 歯科医療×テクノロジー
第七章 米国歯科医療のエコシステム
第八章 日本歯科医療への示唆(1)歯科医師×Xの可能性
第九章 日本歯科医療への示唆(2)歯科医師の研鑽のこれから
第十章 日本歯科医療への示唆(3)歯科医師会と歯科医師連盟の真価
第十一章 日本歯科医療への示唆(4)歯科医療がもつべきプリンシプル
第十二章 日本歯科医療への示唆(5)科学としての歯科医療
第十三章 日本歯科医療への示唆(6)医療の中の歯科医療へ
第十四章 日本歯科医療への提言
第十五章 歯科医療という日本国の光
 結