やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

刊行にあたって
 超高齢社会の到来のなか,オーラルヘルスプロモーションの浸透による口腔衛生状態の改善,あるいは歯科材料や治療技術の発展などにより,歯の寿命が格段に延びてきました.このように天然歯の保存が進む一方で,Tooth wear(歯の加齢現象)や根面齲蝕が多くみられるようになってきており,象牙質知覚過敏症を訴える患者さんが急増しています.これは,咬耗や摩耗,あるいは歯肉の退縮による象牙質露出,また,昨今の健康ブームによる酸蝕症やストレス,咬合などが深く関与しています.
 象牙質知覚過敏症への対処には,まず患者教育と生活習慣改善が第一でありますが,症状を訴える患者さんに対し対症療法的に処置しなければならないのも現状です.
 最近,知覚過敏抑制を謳ったさまざまな材料が市場に溢れています.ところが,実際の患者さんを目の前にしたとき,どの材料が最も効果的なのか選択の手がかりとなる情報が少ないのが実情と思います.しかし,知覚過敏の多くは,各材料の作用機序等を理解し適切に使い分けることで,その症状改善がすばやく確実にできるのです.そして,それによって患者さんが不快症状から解放されるのみならず,信頼を獲得することで,患者数増加にもつながると思います.
 本書では,最新の基礎的・臨床的知識を基盤にして,象牙質知覚過敏症の病態,診断,ならびに治療法の基本戦略を解説するとともに,現在臨床で広く用いられている材料の作用機序や使い分け,あるいはそれらを駆使した対応法などについて症状別に情報を提供しています.
 また,第5章では,さらに読者の皆様のより深い理解のために,約10年前になりますが,歯界展望に掲載された象牙質知覚過敏症の生理学,形態学や機序などを中心にまとめた総説論文を再度紹介させていただきました.
 本書が,必ずや先生方の明日からの臨床に役立つ,チェアサイドの治療ガイドとなるよう心より願っております.
 2011年7月
 編者 冨士谷盛興・千田 彰
第1章 理解しておきたい3つの治療戦略(冨士谷盛興)
第2章 歯がしみる──こんな場合にはどうする?
 1.咬み合わせの部分がしみる(高見澤俊樹・宮崎真至)
 2.歯を削ってからしみるようになった(冨士谷盛興・千田 彰)
 3.最終の修復処置後にしみるようになった(田上順次)
 4.ホワイトニング後にしみるようになった(大森かをる)
 5.抜髄したくなるくらい悩ましい象牙質知覚過敏症への対処──究極の知覚過敏対策(冨士谷盛興・千田 彰)
第3章 象牙質知覚過敏症の治療に使えるレーザー(篠木 毅)
第4章 この患者さんにはこの材料──作用を知って正しく使おう
 1.シュミテクトシリーズ(安田 登)
 2.スーパーシール(田村仁志)
 3.スマートプロテクトソフト(英保裕和)
 4.Fバニッシュ歯科用5%(荒木久生)
 5.サホライド液歯科用38%(福島正義)
 6.システマセンシティブ ソフトペースト(中嶋省志)
 7.ガム・デンタルジェル センシティブ(高山真一)
 8.メルサージュヒスケア(寺田林太郎)
 9.ハイブリッドコートII(山本 寛)
 10.トクヤマ シールドフォース プラス(高橋英登)
 11.クリンプロXTバーニッシュ(冨士谷盛興,千田 彰)
 12.MSコートONE(山本 寛)
 13.フジフィルLCフロー(齋藤季夫)
 14.グルーマ・ディセンシタイザー(宇野 滋)
 15.デセンシー(村岡宏祐,久保田浩三,笠井宏記,中島啓介,横田 誠)
 16.スマートプロテクト(英保裕和)
第5章 象牙質知覚過敏──その生理学,形態学,機序と治療法(Charles F.Cox,千田 彰ほか)

 コラム1 象牙質知覚過敏症はなぜ起こる?(寺中敏夫・向井義晴)
 コラム2 歯がしみるのはすべて象牙質知覚過敏症か?(池田英治)

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