やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版 監修にあたって
 皮膚科学は口腔を扱う歯科医師,歯学生にとっては重要な隣接医学のひとつである.『歯科医のための皮膚科学』と題して,1993年に初版が刊行され,2004年には第2版が発行された.第2版は私も編著者の一人として加わった.第2版では,皮膚科医師と歯科医師がそれぞれの臨床の立場から,皮膚科疾患の口腔病変を理解するために必要な皮膚科学がわかりやすく記載されていた.
 第2版から長年経過しても本書を参考にする方が多く,内容の刷新と充実を望むご意見が多数寄せられた.そこで第3版が企画され,編集者と一部の執筆者の世代交代を行い,最新の皮膚科学の知見を踏まえた内容の充実を図った.
 対象とする読者は国家試験に臨む歯学生,臨床研修歯科医,さらに開業歯科医師で,皆様の座右に置いていただき臨床に活用できる内容を目指した.本書は皮膚科学の専門書とは少し視点を変え,歯科からみた皮膚科との連携に必要な内容に仕上がっている.
 編集代表の橋愼一先生はじめ編集委員の皆様,そして本書の目的をご理解いただき,ご執筆いただいた執筆者の方々に深く感謝申し上げる.
 2022年11月
 山根源之


第3版 編集にあたって
 第2版が発行されてから18年余りが過ぎ,第2版と比べてもだいぶ遅い改訂となった.その間,皮膚科学の進歩はめざましく,ダーモスコピーの導入,遺伝子診断,乾癬やアトピー性皮膚炎における生物学的製剤の開発など枚挙にいとまがない.そのため内容を大きく刷新する必要があった.
 今回の改訂では執筆者を大幅に変更し,各分野で御活躍中の先生方および歯学部で皮膚科学の講義を担当しておられる先生方にご執筆いただいた.
 第2版と比較して視覚での理解を深めるため巻頭カラーの掲載点数を増加させた.また,索引を充実させた.さらに皮膚病理と蛍光抗体法の項目を追加して総論の内容に厚みをもたせた.また,各論では,性行為感染症の項目を縮小して一つの章に統合した.各項目では必要に応じて「口腔外科・歯科との関連」の項目を追加し,説明が必要なトピックスについてはサイドメモを追記した.
 全体としては,歯科との関連を念頭におきつつ皮膚科学の最新情報をわかりやすい形でまとめていただいており,歯学生の教育および歯科医師の日常診療に極めて有用であると考えている.
 皮膚疾患のトピックスは多岐にわたり,用語の難しさなどわかりにくい面があるが,本書が少しでも役に立てれば幸いである.最後に,だいぶ遅くなったが無事に発刊できたことについて,関係各位の御支援に厚く御礼申し上げる.
 2022年11月
 橋愼一
 里村一人
 久山佳代


第2版 編集にあたって
 早いもので1993年に初版が発行されて以来,既に10年余りが過ぎた.諸般の事情により,第2版の発行がやや遅れたが,ここに無事発刊できたことは,関係各位のご支援,ご努力のお陰と,この場をお借りして厚く感謝の意を表したい.
 近年,皮膚科学の進歩はめざましく,たとえば尋常性乾癬の治療にはエトレチネートやシクロスポリンの内服,ビタミンD3外用剤が加わり,アトピー性皮膚炎の治療にはタクロリムス軟膏の使用が認められるようになっている.
 今回は編者も一部交代し,新しくよい本を作るという意気込みをもって3名で十分な検討をした結果,各分野でご活躍中の先生に新たにご執筆をお願いすることができた.さらにご執筆者には,歯科医師・歯学生の方々に焦点を合わせるために,皮膚科学の最新情報をできる限りわかりやすい内容でご執筆いただいた.当然,歯科特有の疾患については,歯科医の立場からご執筆いただいている.
 また全体のページ数を余り増やさずに内容を充実できるよう,疾患別にページ数の見直しを行い,たとえば局所麻酔のショック,薬疹,エイズなどについては,歯科医師にとっても避けては通れない問題と考えて,ページ数を割くようにした.
 皮膚疾患は身近な病気であるが,多彩で用語がわかりにくい面もあり,とっつきにくいと思われる方もいると思う.しかし,まずは本書で皮膚科疾患について少しでも慣れていただければ幸甚である.
 2004年2月
 山ア雙次
 山本浩嗣
 山根源之


第1版 編集にあたって
 近年,医学領域の診断および治療法の進歩はめざましい.もちろん歯科医学においても例外ではない.このような環境のなかで口腔疾患と全身症状,あるいは全身疾患と口腔病変の関連についての関心が高まってきている.歯科臨床教育でも,歯科医師国家試験制度,卒後臨床研修医制度の改革,高度先進歯科医療の充実,あるいはプライマリ・ケアの重要性など多くの課題が提供されている.
 先年“歯科医のための耳鼻咽喉科学“など歯科の隣接医学領域の書籍が数点出版されてから,皮膚科学についても必要かつ最小限の知識(minimum essential)を記載した教科書の必要性を感じていた.同時に最近の“性行為感染症(STD,sexual transmitted disease)”の新しい概念・疾患の見直しは,口腔病変との関連で必須のものとなってきている.このため本書では,とくにこの項目を各論2として独立させて掲載した.またここ数年間の講義ノートを再点検して,歯科・口腔疾患と皮膚病変とのかかわりあいの重要性を再認識した.さらに性行為感染症,とくにエイズなどの世界的蔓延の事実など,最新の正確な知識・情報を得ることは,歯学生ばかりではなく歯科医師の方々にとっても重要だと思う.
 以上の主旨から歯学生,さらには歯科医師の日常臨床にも参考となるように“歯科医のための皮膚科学”の出版が実現の運びとなった.
 本書の執筆では,歯学部で皮膚科学・外科学の講義を担当しておられる諸先生のご協力が得られた.深く感謝の意を表したい.
 本書の全般的な内容についての助言は,獨協医科大学皮膚科学,山ア雙次教授に,また病理組織所見,歯科医学との関連などについては,日本大学松戸歯学部病理学,山本浩嗣教授にご尽力をいただいた.
 なお,学生諸君のために本書では,難読文字や一部欧文にふりがなをふったり,国家試験対策のための項目や,幅広い知識が得られるように,トピックス,サイドメモ,ポイントのコラムを設けた.
 歯科臨床の実際面との関係などでは,さらに追加を要する分野があるかと思われるが,その点については今後少しずつ改訂し,内容を充実したものにしてゆきたいと考えている.
 最後に本書の刊行にあたり種々ご協力いただいた医歯薬出版の方々に厚く御礼申し上げる.
 1993年6月 編者を代表して
 鈴木邦夫
総論1章 皮膚の構造と機能
 1 皮膚の構造(大塚 勤)
 2 皮膚の機能と構築
 3 口腔粘膜と皮膚の比較(浮地賢一郎/河野通良)
総論2章 皮膚科診断学および治療学
 1 皮膚科診断学(橋愼一)
 2 皮膚科検査法
 3-1 皮膚病理組織学(馬場裕子)
 3-2 免疫組織化学(橋愼一)
 4 皮膚科治療学(谷崎英昭)
各論1章 湿疹・皮膚炎群
 (土田哲也)
 1 接触皮膚炎
 2 アトピー性皮膚炎
 3 その他の湿疹・皮膚炎群
各論2章 蕁麻疹
 (端本宇志,佐藤貴浩)
 1 蕁麻疹
 2 Quincke浮腫
 3 痒疹
 4 皮膚掻痒症
各論3章 紅斑症
 (河野通良)
 1 多形紅斑
 2 結節性紅斑
各論4章 血管炎,紫斑,その他の脈管疾患
 (出光俊郎)
 1 血管炎
 2 凝固異常による紫斑
 3 Behcet病
各論5章 血行障害・物理的化学的傷害
 (門野岳史)
 1 化学物質による皮膚傷害
 2 熱傷
 3 壊疽
 4 褥瘡
 5 糖尿病性足病変
 6 放射線皮膚炎
各論6章 薬疹・中毒疹
 1 固定薬疹(福田英嗣)
 2 播種状紅斑丘疹型薬疹
 3 Stevens-Johnson症候群
 4 TEN型薬疹(中毒性表皮壊死症)
 5 薬物性歯肉増殖症
 6 ニコチン性白色角化症
 7 重金属による障害(浮地賢一郎,山根源之)
 8 MCLS
 9 薬剤による傷害
 10 局所麻酔薬アレルギー(一戸達也)
各論7章 水疱症,膿疱症
 (河野通良)
 1 天疱瘡群(尋常性天疱瘡,落葉状天疱瘡)
 2 類天疱瘡群(水疱性類天疱瘡,粘膜類天疱瘡)
 3 その他の水疱症
 4 掌蹠膿疱症
各論8章 角化症・炎症性角化
 1 魚鱗癬(江畑 葵,秋山真志)
 2 乾癬
 3 扁平苔癬
 4 口腔扁平苔癬(浮地賢一郎)
各論9章 膠原病
 (出光俊郎)
 1 Sjogren症候群
 2 全身性エリテマトーデス
 3 全身性硬化症(強皮症)
 4 皮膚筋炎
各論10章 代謝異常症
 (岡本 崇,川村龍吉)
 1 亜鉛欠乏症
 2 Addison病
 3 ペラグラ
 4 壊血病
各論11章 色素異常症
 (古村南夫)
 1 尋常性白斑
 2 老人性色素斑
各論12章 母斑
 (古村南夫)
 1 表皮母斑
 2 脂腺母斑
 3 色素性母斑
 4 太田母斑
 5 青色母斑
 6 蒙古斑
 7 扁平母斑
各論13章 母斑症
 (古村南夫)
 1 Recklinghausen病
 2 Pringle病
 3 色素失調症
 4 Peutz-Jeghers症候群
 5 Sturge-Weber症候群
各論14章 皮膚粘膜腫瘍
 1 口腔潜在的悪性疾患(久山佳代,末光正昌,山本 泰)
 2 上皮系皮膚悪性腫瘍(舩越 建)
 3 非上皮性悪性腫瘍(舩越 建/久山佳代,末光正昌,山本 泰)
 4 上皮性良性腫瘍(久山佳代,末光正昌,山本 泰)
 5 非上皮性良性腫瘍
 6 唾液腺腫瘍
各論15章 付属器疾患
 (高木 肇)
 1 尋常性ざ瘡
 2 円形脱毛症
 3 トリコチロマニア
各論16章 細菌性皮膚疾患
 (松浦大輔)
 1 化膿性皮膚疾患
 2 抗酸菌感染症
 3 非結核性抗酸菌症
各論17章 ウイルス性疾患
 (里村一人)
 1 単純ヘルペス
 2 カポジ水痘様発疹症
 3 帯状疱疹
 4 水痘
 5 手足口病
 6 ヘルパンギーナ
 7 尋常性疣贅
 8 青年性扁平疣贅
 9 伝染性軟属腫
 10 風疹
 11 麻疹
各論18章 皮膚真菌症
 (久山佳代,末光正昌,山本 泰)
 1 白癬
 2 カンジダ症
 3 放線菌症
 4 アスペルギルス症
各論19章 性感染症
 (石地尚興)
 1 梅毒
 2 尖圭コンジローマ
 3 伝染性軟属腫
 4 伝染性単核症
 5 性器ヘルペス
 6 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症,後天性免疫不全症候群(AIDS)
各論20章 歯科用金属による粘膜病変
 (浮地賢一郎,山根源之)
 1 歯科用金属による口腔粘膜の着色
 2 歯科用金属によるアレルギー反応
 3 亜砒酸による口内炎
 4 ガルバニー電流による口腔粘膜病変
各論21章 肉芽腫
 (久山佳代,末光正昌,山本 泰)
 1 サルコイドーシス
 2 肉芽腫性口唇炎
 3 環状肉芽腫
 4 異物肉芽腫
 5 膿原性肉芽腫
各論22章 その他の病変
 (安彦善裕,山根源之)
 1 Fordyce状態
 2 正中菱形舌炎
 3 地図状舌
 4 溝状舌
 5 舌苔
 6 黒毛舌
 7 剥離性口唇炎
 8 歯瘻
 9 接触性口内炎
 10 剥離性歯肉炎
 11 褥瘡性潰瘍(義歯性潰瘍,Riga-Fede病など)

 索引