序
「コミュニケーション」と「行動科学」を一冊にまとめる企画には,やや無理があるのではないかという危惧と,むしろこの二つの領域を一冊にまとめることに意義があるという考え方があった. つまり,この分野を現時点のサイエンスの領域で端的に二分するとすれば,コミュニケーションにおける「認知科学(cognitive science)」と行動科学における「病者行動(sickness behavior)・保健行動(health behavior)」に焦点を当てることになる.
それにしても20世紀後半から,保健医療福祉や教育の分野において,わが国では外来語で代表される用語が氾濫してきている. おそらく日本語の持つ本来の語意では通用しがたいという理由であろう. ここで使われている「コミュニケーション」がそうであり,「ケア」,「プライマリ・ヘルス・ケア」しかり,数多くの外来語が定着してくる傾向にあるが,外来語であるためにそのことを軽視するか,あるいは逆に特殊にみることがあることも否めない事実である.
いま医療では,“コミュニケーション(聞き手と送り手の交流)”が極めて重要になってきている. 従来から医師やその他の医療従事者から患者やその家族への「話し方」が,いかに大事なことかと言われてきたが,しかし現在の医療の場の状況は従来とは著しく異なってきている. そのことは,社会の中で情報というものが急速に発達してきたことにもよるし,そのことから社会そのものが成熟していく過程で現れてきた現象でもある.
医療におけるコミュニケーションで大事なことは,“見えるもの“ではなく,“見えないもの”へ耳を傾けることである. 外傷などで明らかに見えるものへの対応もあるが,むしろ見えないものに対しての訴えが多い. たとえば,「痛い」という患者の訴えは,本人にしかわからない. “見えないもの”であるその痛みにもいろいろあって,医師やその他の医療人は,その「痛み」をほんとうに理解できるかという根本的なことがある. しかも,その背景の一つには詐病(仮病)としての痛みの訴えもあり得る. 医療と医療以外のケアとの基本的な相違は,診断による患者のケアであることである. その診断に関わる要素の一つにコミュニケーションの重要さがある.
わが国の医療系の教育機関で,「コミュニケーション」と「行動科学」を従来からコア・カリキュラムに取り入れて実施しているところはきわめて少ないであろう. しかしながら,現在では欧米の多くの医療系大学でcommunicationとbehavioral scienceはコア・カリキュラムに取り入れられてきている. このテキストは,新入生から高学年までの学生を対象として編集してある. 教育用語ではvertical integrated curriculumと称しているが,すなわち同じ教科を学年が進むにつれて理解を深めて習得するように編纂されているものである.
このような時代に,テキストとしての本書を企画し,「コミュニケーション」と「行動科学」を医療系から出版することには,切実さもあるが,いささかの勇気のいることでもあった. さいわい,今回の企画に同意し執筆を引き受けてくださった著者らは,ここ10年ほど開拓してきた分野を主体にまとめることができたようである. おそらく,このようなテキストはあまり年限をおかずに改訂を重ねてテキストとして定まっていくものであろう. また,時代の変化が激しいこの社会にあっては,そのような出版の義務が課されることは当然なことであると言える.
ところで,冒頭に「コミュニケーション」を「認知科学」と置き換え,それに対応する行動科学の「病者行動・保健行動」をとりあげたが,それにはそれなりの歴史的な意義が考えられることによる. まず,20世紀前半までは,医療にも関連する領域の「意識」と「無意識」が心理学から医療へとかなりシフトしてきている. もちろんフロイトの精神分析の流れもあるが,教育心理学に基づく 「発達段階」 と「発達課題」が人間の発達に伴う認知(cognition)の解明へと展開されてきたことにもよる. 最近の脳科学の発達は,さらに認知の局在の追求と修復治療の可能性を究明している. そのような背景から,かつてErikson,E.H.の提唱した「生涯発達」は,まさに現在の高齢化していく社会でのQOL(生命・生活の質)を示唆したものであると言える. そして,その中核にある 「保健行動」 は身体的精神的健康と個別的または社会的生きがいを求めて,なお研究が続けられている. 「行動の欠陥・異常」は,認知の不明,意識のあいまいさ,生きがいの消退に繋がることが考えられる. 一方,「認知の欠如」は,コミュニケーションの欠如そのものでもある. この分野は21世紀の最大の課題である.
ありふれた日常語のコミュニケーションにしても,医療福祉の場においてそれがいかに重要であるかということは,その場面に遭遇した当事者でなければわからないものであろう. 私たちは,「保健」,「医療」,「福祉」とよく口にしているが,その中にあって患者の立場,家族の立場,人々の立場で適切に接してきているでだろうか. その適切さの経験はどこで身につけていくのだろうか. 医療系の教育の場にあっては,従来の医療技術は診断と治療および療養の手技であり,投薬の正確さであり,機器の操作性で占められていたが,いま「コミュニケーション技法」を加える必要が切実となってきている.
このテキストをまとめるに当たって,各章を分担された執筆者はひな型のない教科であるので苦心されたようであるが,現時点でかなり密度の濃い内容で適切にまとめてあるので,この分野の教科書または参考書として世に出すことに編者としては意を強くしている. それにもまして,何よりも記しておくべきことは医歯薬出版編集部の牧野和彦氏の根気強い編集作業に負うところが大きいことと,米川征英氏の寛大な配慮に心から感謝申し上げる.
2002年3月
編 者 高江洲 義矩
「コミュニケーション」と「行動科学」を一冊にまとめる企画には,やや無理があるのではないかという危惧と,むしろこの二つの領域を一冊にまとめることに意義があるという考え方があった. つまり,この分野を現時点のサイエンスの領域で端的に二分するとすれば,コミュニケーションにおける「認知科学(cognitive science)」と行動科学における「病者行動(sickness behavior)・保健行動(health behavior)」に焦点を当てることになる.
それにしても20世紀後半から,保健医療福祉や教育の分野において,わが国では外来語で代表される用語が氾濫してきている. おそらく日本語の持つ本来の語意では通用しがたいという理由であろう. ここで使われている「コミュニケーション」がそうであり,「ケア」,「プライマリ・ヘルス・ケア」しかり,数多くの外来語が定着してくる傾向にあるが,外来語であるためにそのことを軽視するか,あるいは逆に特殊にみることがあることも否めない事実である.
いま医療では,“コミュニケーション(聞き手と送り手の交流)”が極めて重要になってきている. 従来から医師やその他の医療従事者から患者やその家族への「話し方」が,いかに大事なことかと言われてきたが,しかし現在の医療の場の状況は従来とは著しく異なってきている. そのことは,社会の中で情報というものが急速に発達してきたことにもよるし,そのことから社会そのものが成熟していく過程で現れてきた現象でもある.
医療におけるコミュニケーションで大事なことは,“見えるもの“ではなく,“見えないもの”へ耳を傾けることである. 外傷などで明らかに見えるものへの対応もあるが,むしろ見えないものに対しての訴えが多い. たとえば,「痛い」という患者の訴えは,本人にしかわからない. “見えないもの”であるその痛みにもいろいろあって,医師やその他の医療人は,その「痛み」をほんとうに理解できるかという根本的なことがある. しかも,その背景の一つには詐病(仮病)としての痛みの訴えもあり得る. 医療と医療以外のケアとの基本的な相違は,診断による患者のケアであることである. その診断に関わる要素の一つにコミュニケーションの重要さがある.
わが国の医療系の教育機関で,「コミュニケーション」と「行動科学」を従来からコア・カリキュラムに取り入れて実施しているところはきわめて少ないであろう. しかしながら,現在では欧米の多くの医療系大学でcommunicationとbehavioral scienceはコア・カリキュラムに取り入れられてきている. このテキストは,新入生から高学年までの学生を対象として編集してある. 教育用語ではvertical integrated curriculumと称しているが,すなわち同じ教科を学年が進むにつれて理解を深めて習得するように編纂されているものである.
このような時代に,テキストとしての本書を企画し,「コミュニケーション」と「行動科学」を医療系から出版することには,切実さもあるが,いささかの勇気のいることでもあった. さいわい,今回の企画に同意し執筆を引き受けてくださった著者らは,ここ10年ほど開拓してきた分野を主体にまとめることができたようである. おそらく,このようなテキストはあまり年限をおかずに改訂を重ねてテキストとして定まっていくものであろう. また,時代の変化が激しいこの社会にあっては,そのような出版の義務が課されることは当然なことであると言える.
ところで,冒頭に「コミュニケーション」を「認知科学」と置き換え,それに対応する行動科学の「病者行動・保健行動」をとりあげたが,それにはそれなりの歴史的な意義が考えられることによる. まず,20世紀前半までは,医療にも関連する領域の「意識」と「無意識」が心理学から医療へとかなりシフトしてきている. もちろんフロイトの精神分析の流れもあるが,教育心理学に基づく 「発達段階」 と「発達課題」が人間の発達に伴う認知(cognition)の解明へと展開されてきたことにもよる. 最近の脳科学の発達は,さらに認知の局在の追求と修復治療の可能性を究明している. そのような背景から,かつてErikson,E.H.の提唱した「生涯発達」は,まさに現在の高齢化していく社会でのQOL(生命・生活の質)を示唆したものであると言える. そして,その中核にある 「保健行動」 は身体的精神的健康と個別的または社会的生きがいを求めて,なお研究が続けられている. 「行動の欠陥・異常」は,認知の不明,意識のあいまいさ,生きがいの消退に繋がることが考えられる. 一方,「認知の欠如」は,コミュニケーションの欠如そのものでもある. この分野は21世紀の最大の課題である.
ありふれた日常語のコミュニケーションにしても,医療福祉の場においてそれがいかに重要であるかということは,その場面に遭遇した当事者でなければわからないものであろう. 私たちは,「保健」,「医療」,「福祉」とよく口にしているが,その中にあって患者の立場,家族の立場,人々の立場で適切に接してきているでだろうか. その適切さの経験はどこで身につけていくのだろうか. 医療系の教育の場にあっては,従来の医療技術は診断と治療および療養の手技であり,投薬の正確さであり,機器の操作性で占められていたが,いま「コミュニケーション技法」を加える必要が切実となってきている.
このテキストをまとめるに当たって,各章を分担された執筆者はひな型のない教科であるので苦心されたようであるが,現時点でかなり密度の濃い内容で適切にまとめてあるので,この分野の教科書または参考書として世に出すことに編者としては意を強くしている. それにもまして,何よりも記しておくべきことは医歯薬出版編集部の牧野和彦氏の根気強い編集作業に負うところが大きいことと,米川征英氏の寛大な配慮に心から感謝申し上げる.
2002年3月
編 者 高江洲 義矩
序
Part 1.コミュニケーション
第1章 保健医療におけるコミュニケーション……高江洲義矩
I コミュニケーションの欠如とそのリスクの発生
II 医療におけるコミュニケーションをいかに学ぶか
第2章 コミュニケーションにおける情報……深井穫博
I 情報の交流様式
1.コミュニケーションにおける情報
2.コミュニケーションの成立要件
3.情報障害(information barriers)と情報の倫理性
II 保険情報と医療情報
1.保険情報
2.医療情報
III まとめ
第3章 コミュニケーション技法の実際……埴岡 隆・雫石 聰
I コミュニケーション技法の活用
1.口腔保健医療におけるコミュニケーション技法の活用場面
2.コミュニケーション技法活用のための口腔保健医療固有の特徴
3.コミュニケーション技法の活用に対する口腔保健医療固有の障壁
II コミュニケーション技法の役割
III 言語を用いたコミュニケーション技法
IV 言語以外のコミュニケーション
1.言語に付随するコミュニケーション要素
2.ボディプレイスメント・空間的位置関係
3.ボディランゲージ・動作
4.その他
V コミュニケーション技法の運用態度
VI コミュニケーション技法の落とし穴
第4章 マス・コミュニケーション……福田雅臣
I マス・コミュニケーションの特徴
II 情報の伝播様式
1.マス・コミュニケーションの構成要素
2.コミュニケーションの様式
III 情報源とその信頼性
1.マス・コミュニケーションの効果
2.説得的コミュニケーション
IV 情報と社会
1.マス・コミュニケーションの社会的機能
2.歯科情報と社会
第5章 患者とのコミュニケーション
I 患者とは……鶴本明久
1.「生活者」としての患者
2.患者の不安と恐怖
3.患者が選ぶ歯科医の選択基準
II 診察室・病院でのコミュニケーション
1.初診時のコミュニケーション
2.治療時のコミュニケーション
3.治療終了時のコミュニケーション
III 在宅介護・在宅診療でのコミュニケーション……米満正美
1.在宅介護・在宅診療の背景
2.在宅介護・在宅診療を受けている人の特徴
3.在宅介護・在宅診療でのコミュニケーション
IV 障害者とのコミュニケーション
1.障害者とは
2.障害者に対する基本的考え方
3.障害者とのコミュニケーション
第6章 健康情報の理論と実際……渡邊正樹
I マス・メディアと健康情報の実態
II 健康情報とコミュニケーションの理論
1.認知的不協和理論
2.防護動機理論
3.普及理論
4.リスク・コミュニケーションとそれにかかわる理論
III 健康情報と健康リテラシー
1.健康リテラシー
2.批判的思考
IV 健康情報に関する今後の研究課題
第7章 口腔保健情報の役割
I 口腔保健情報の現況……神原正樹
1.歯と口腔の健康情報の歴史的な変遷
2.保健情報と保健行動
3.現在の主な口腔保健情報
II 口腔保健情報の具備条件
III 口腔保健情報の役割
1.誰のための口腔保健情報か
2.口腔保健情報はどのように伝達したらよいか
3.口腔保健情報の受容過程
IV 情報技術(IT)の課題……飯島洋一
1.受け手側の情報処理能力の向上
2.仮想現実感と直接的体験
3.コンピュータ・リテラシーとデジタルディバイド
4.連携ネットワークとプライバシー保護
5.ITソリューション
第8章 医療におけるコミュニケーション技法
I 医療面接……川口陽子
1.問診との違い
2.医療面接の方法
3.医療面接時の注意点
4.医療面接の学習法
II フォーカスグループインタビュー
1.フォーカスグループインタビューの実際
2.フォーカスグループインタビューの応用
3.フォーカスグループインタビュー実施時の注意点
III ロールプレーイング……俣木志朗
1.ロールプレーイングとは
2.特徴と効果
3.ロールプレーイングの実施
4.ロールプレーイング実施上の留意点
5.フィードバックの留意点
IV 模擬患者
1.背景
2.模擬患者と標準模擬患者
3.わが国の模擬患者による教育
4.模擬患者の特性
5.模擬患者実習の特徴
6.標準模擬患者とその役割
V 交流分析……深井穫博
1.「交流分析」が生まれた背景
2.交流分析とは
3.交流分析の基礎理論
4.交流分析の日常臨床への応用
5.コミュニケーション技法における「交流分析」適用の有用性と留意点
Part2.行動科学
第9章 どうして行動科学が必要となったか……高江洲義矩・深井穫博
I 行動科学とは
1.行動科学の誕生
2.先駆的研究
3.行動主義心理学の役割
4.認知心理学・認知科学が注目される理由
II 行動科学と認知科学
1.認知科学の成立
2.認知と行動
III 保健行動から予防行動へ
1.保健行動の意義
2.ライフスタイルと健康
3.保健行動学の研究展開
4.口腔保健行動とは
5.病者の行動
IV まとめ
第10章 人の一生の行動……河村 誠
I 行動と環境
1.人の行動に影響を及ぼす要因
II 人の行動と類型
1.欲求と行動
2.人の行動の類型
III ライフサイクルと行動
1.ライフサイクル論
2.発達段階と行動
3.死と死にいたる過程
IV 行動と性,エイジング
1.行動と性
2.行動とエイジング
第11章 保健行動と予防行動……筒井昭仁
I はじめに
II 保健行動の時代的意義
III 保健行動のモデル,理論
第12章 ヘルスプロモーションと健康教育……小林清吾・有川量崇
I 健康科学とヘルスケア
1.健康とは
2.健康増進のための科学
3.キュアからケアへ
II 健康教育
1.健康教育の定義
2.健康教育の実際
III ヘルスプロモーション
1.オタワ憲章 による定義
2.種々のヘルスプロモーションモデル
3.口腔保健のためのヘルスプロモーション事例
第13章 口腔保健行動……葭原明弘・宮崎秀夫
I はじめに
II 口腔保健関連の行動モデル
III 保健行動を構成する要素の関連性
IV 口腔保健行動と口腔保健教育
V 地域ベースの口腔保健行動
VI おわりに
第14章 受療行動……安藤雄一
I はじめに
1.「受療」と「受診」
2.なぜ受療行動について知っておく必要性があるのか?
II 歯科受療行動の実態
1.受療行動に関する調査(官庁統計)と調査方法
2.官庁統計にみる歯科における受療行動の実態
3.医科との違い
4.通院の中止について
III 受療行動について理解を深めるための予備知識
1.ニーズとデマンド
2.機会費用の概念
3.医療費の三要素
IV 受療行動の決定要因
1.医科の外来利用に関する分析の例
2.歯科における調査例
V 予防と受療行動
1.受療率が意味するもの
2.歯科診療の予防シフト
第15章 患者と保健医療者の行動……飯島洋一
I 病者役割行動
1.Parsonsによる病者役割行動
2.その他の役割行動
3.病者心理と病者行動
4.病者の心理的変遷過程
II インフォームド・コンセント
1.患者の権利意識の台頭
2.インフォームド・コンセントの台頭
3.インフォームド・コンセントの基本理念
索引
Part 1.コミュニケーション
第1章 保健医療におけるコミュニケーション……高江洲義矩
I コミュニケーションの欠如とそのリスクの発生
II 医療におけるコミュニケーションをいかに学ぶか
第2章 コミュニケーションにおける情報……深井穫博
I 情報の交流様式
1.コミュニケーションにおける情報
2.コミュニケーションの成立要件
3.情報障害(information barriers)と情報の倫理性
II 保険情報と医療情報
1.保険情報
2.医療情報
III まとめ
第3章 コミュニケーション技法の実際……埴岡 隆・雫石 聰
I コミュニケーション技法の活用
1.口腔保健医療におけるコミュニケーション技法の活用場面
2.コミュニケーション技法活用のための口腔保健医療固有の特徴
3.コミュニケーション技法の活用に対する口腔保健医療固有の障壁
II コミュニケーション技法の役割
III 言語を用いたコミュニケーション技法
IV 言語以外のコミュニケーション
1.言語に付随するコミュニケーション要素
2.ボディプレイスメント・空間的位置関係
3.ボディランゲージ・動作
4.その他
V コミュニケーション技法の運用態度
VI コミュニケーション技法の落とし穴
第4章 マス・コミュニケーション……福田雅臣
I マス・コミュニケーションの特徴
II 情報の伝播様式
1.マス・コミュニケーションの構成要素
2.コミュニケーションの様式
III 情報源とその信頼性
1.マス・コミュニケーションの効果
2.説得的コミュニケーション
IV 情報と社会
1.マス・コミュニケーションの社会的機能
2.歯科情報と社会
第5章 患者とのコミュニケーション
I 患者とは……鶴本明久
1.「生活者」としての患者
2.患者の不安と恐怖
3.患者が選ぶ歯科医の選択基準
II 診察室・病院でのコミュニケーション
1.初診時のコミュニケーション
2.治療時のコミュニケーション
3.治療終了時のコミュニケーション
III 在宅介護・在宅診療でのコミュニケーション……米満正美
1.在宅介護・在宅診療の背景
2.在宅介護・在宅診療を受けている人の特徴
3.在宅介護・在宅診療でのコミュニケーション
IV 障害者とのコミュニケーション
1.障害者とは
2.障害者に対する基本的考え方
3.障害者とのコミュニケーション
第6章 健康情報の理論と実際……渡邊正樹
I マス・メディアと健康情報の実態
II 健康情報とコミュニケーションの理論
1.認知的不協和理論
2.防護動機理論
3.普及理論
4.リスク・コミュニケーションとそれにかかわる理論
III 健康情報と健康リテラシー
1.健康リテラシー
2.批判的思考
IV 健康情報に関する今後の研究課題
第7章 口腔保健情報の役割
I 口腔保健情報の現況……神原正樹
1.歯と口腔の健康情報の歴史的な変遷
2.保健情報と保健行動
3.現在の主な口腔保健情報
II 口腔保健情報の具備条件
III 口腔保健情報の役割
1.誰のための口腔保健情報か
2.口腔保健情報はどのように伝達したらよいか
3.口腔保健情報の受容過程
IV 情報技術(IT)の課題……飯島洋一
1.受け手側の情報処理能力の向上
2.仮想現実感と直接的体験
3.コンピュータ・リテラシーとデジタルディバイド
4.連携ネットワークとプライバシー保護
5.ITソリューション
第8章 医療におけるコミュニケーション技法
I 医療面接……川口陽子
1.問診との違い
2.医療面接の方法
3.医療面接時の注意点
4.医療面接の学習法
II フォーカスグループインタビュー
1.フォーカスグループインタビューの実際
2.フォーカスグループインタビューの応用
3.フォーカスグループインタビュー実施時の注意点
III ロールプレーイング……俣木志朗
1.ロールプレーイングとは
2.特徴と効果
3.ロールプレーイングの実施
4.ロールプレーイング実施上の留意点
5.フィードバックの留意点
IV 模擬患者
1.背景
2.模擬患者と標準模擬患者
3.わが国の模擬患者による教育
4.模擬患者の特性
5.模擬患者実習の特徴
6.標準模擬患者とその役割
V 交流分析……深井穫博
1.「交流分析」が生まれた背景
2.交流分析とは
3.交流分析の基礎理論
4.交流分析の日常臨床への応用
5.コミュニケーション技法における「交流分析」適用の有用性と留意点
Part2.行動科学
第9章 どうして行動科学が必要となったか……高江洲義矩・深井穫博
I 行動科学とは
1.行動科学の誕生
2.先駆的研究
3.行動主義心理学の役割
4.認知心理学・認知科学が注目される理由
II 行動科学と認知科学
1.認知科学の成立
2.認知と行動
III 保健行動から予防行動へ
1.保健行動の意義
2.ライフスタイルと健康
3.保健行動学の研究展開
4.口腔保健行動とは
5.病者の行動
IV まとめ
第10章 人の一生の行動……河村 誠
I 行動と環境
1.人の行動に影響を及ぼす要因
II 人の行動と類型
1.欲求と行動
2.人の行動の類型
III ライフサイクルと行動
1.ライフサイクル論
2.発達段階と行動
3.死と死にいたる過程
IV 行動と性,エイジング
1.行動と性
2.行動とエイジング
第11章 保健行動と予防行動……筒井昭仁
I はじめに
II 保健行動の時代的意義
III 保健行動のモデル,理論
第12章 ヘルスプロモーションと健康教育……小林清吾・有川量崇
I 健康科学とヘルスケア
1.健康とは
2.健康増進のための科学
3.キュアからケアへ
II 健康教育
1.健康教育の定義
2.健康教育の実際
III ヘルスプロモーション
1.オタワ憲章 による定義
2.種々のヘルスプロモーションモデル
3.口腔保健のためのヘルスプロモーション事例
第13章 口腔保健行動……葭原明弘・宮崎秀夫
I はじめに
II 口腔保健関連の行動モデル
III 保健行動を構成する要素の関連性
IV 口腔保健行動と口腔保健教育
V 地域ベースの口腔保健行動
VI おわりに
第14章 受療行動……安藤雄一
I はじめに
1.「受療」と「受診」
2.なぜ受療行動について知っておく必要性があるのか?
II 歯科受療行動の実態
1.受療行動に関する調査(官庁統計)と調査方法
2.官庁統計にみる歯科における受療行動の実態
3.医科との違い
4.通院の中止について
III 受療行動について理解を深めるための予備知識
1.ニーズとデマンド
2.機会費用の概念
3.医療費の三要素
IV 受療行動の決定要因
1.医科の外来利用に関する分析の例
2.歯科における調査例
V 予防と受療行動
1.受療率が意味するもの
2.歯科診療の予防シフト
第15章 患者と保健医療者の行動……飯島洋一
I 病者役割行動
1.Parsonsによる病者役割行動
2.その他の役割行動
3.病者心理と病者行動
4.病者の心理的変遷過程
II インフォームド・コンセント
1.患者の権利意識の台頭
2.インフォームド・コンセントの台頭
3.インフォームド・コンセントの基本理念
索引