序文
1960年代初頭,「Nitinol」というニッケルチタン(NiTi)合金が米国海軍兵器研究所によって開発され,その形状記憶や超弾性という新しい金属特性は,その後の医学と歯学に大きな影響を与えました.歯内療法領域では,1988年にNiTi合金による#15ハンドファイルが作製され,その有効性について初めての研究報告がなされました.そしてそれはNiTiロータリーファイルへと発展し,1990年代の第1世代から現在の第7世代に至るまで,実に30年以上にわたり進化を続けています.
NiTiロータリーファイルの使用率は世界的に増加し,一般開業医で50〜70%,専門医では95%を超えていることが報告されています(Chapter1参照).わが国では2022年4月に保険適用となり,その普及は確実に進んでいるものと考えられますが,一般開業医における使用率は他国と比較して高いとはいえないのが実情です.その主な要因としてあげられるのはコストの問題です.NiTiロータリーファイルのコストは従来のステンレススチール(SS)ハンドファイルの6〜7倍であること,エンドモーターを使用する必要があること等,それらの負担が保険診療におけるハードルとなっているものと考えられます.現実的に一般開業医(保険医)にNiTiファイルを本格導入するためには,現在すでにルーティンで使用しているSSハンドファイルと同じ価格帯にすることが不可欠であると考えられました.
そのような背景から,第1にNiTi合金を採用すること,第2にNiTiロータリーファイルと同じ根管形成が可能であること,そして第3にコストの問題を解決することを条件として,日本とフランスのファイル開発チームがアイデアを出し合い,日本における保険診療の環境に焦点を絞ったNiTiハンドファイル「HandFlex」が開発されました.本書はHandFlexの完全ガイドとして,その概要から各種操作方法,そして教育・研究の展望について,現状のすべてをまとめたものです.教育研究サイドから北海道大学歯科保存学教室の友清 淳教授,研究サイドから東京歯科大学歯内療法学講座の古澤成博客員教授,そして臨床サイドからは大阪府開業(大阪大学臨床教授)の木ノ本喜史先生と筆者を中心として,現在のわが国におけるHandFlex応用の最前線が示されています.
日本の歯内療法症例の大多数は一般開業医が行っています.保険診療におけるNiTiファイルの幅広い応用は,わが国の歯内療法の質を根底から高めることにつながる現実的アプローチの1つであると考えられます.本書がその一端を少しでも担うことができるならば,それは執筆陣にとって幸甚の極みです.
医療法人社団 平和歯科医院
阿部 修
1960年代初頭,「Nitinol」というニッケルチタン(NiTi)合金が米国海軍兵器研究所によって開発され,その形状記憶や超弾性という新しい金属特性は,その後の医学と歯学に大きな影響を与えました.歯内療法領域では,1988年にNiTi合金による#15ハンドファイルが作製され,その有効性について初めての研究報告がなされました.そしてそれはNiTiロータリーファイルへと発展し,1990年代の第1世代から現在の第7世代に至るまで,実に30年以上にわたり進化を続けています.
NiTiロータリーファイルの使用率は世界的に増加し,一般開業医で50〜70%,専門医では95%を超えていることが報告されています(Chapter1参照).わが国では2022年4月に保険適用となり,その普及は確実に進んでいるものと考えられますが,一般開業医における使用率は他国と比較して高いとはいえないのが実情です.その主な要因としてあげられるのはコストの問題です.NiTiロータリーファイルのコストは従来のステンレススチール(SS)ハンドファイルの6〜7倍であること,エンドモーターを使用する必要があること等,それらの負担が保険診療におけるハードルとなっているものと考えられます.現実的に一般開業医(保険医)にNiTiファイルを本格導入するためには,現在すでにルーティンで使用しているSSハンドファイルと同じ価格帯にすることが不可欠であると考えられました.
そのような背景から,第1にNiTi合金を採用すること,第2にNiTiロータリーファイルと同じ根管形成が可能であること,そして第3にコストの問題を解決することを条件として,日本とフランスのファイル開発チームがアイデアを出し合い,日本における保険診療の環境に焦点を絞ったNiTiハンドファイル「HandFlex」が開発されました.本書はHandFlexの完全ガイドとして,その概要から各種操作方法,そして教育・研究の展望について,現状のすべてをまとめたものです.教育研究サイドから北海道大学歯科保存学教室の友清 淳教授,研究サイドから東京歯科大学歯内療法学講座の古澤成博客員教授,そして臨床サイドからは大阪府開業(大阪大学臨床教授)の木ノ本喜史先生と筆者を中心として,現在のわが国におけるHandFlex応用の最前線が示されています.
日本の歯内療法症例の大多数は一般開業医が行っています.保険診療におけるNiTiファイルの幅広い応用は,わが国の歯内療法の質を根底から高めることにつながる現実的アプローチの1つであると考えられます.本書がその一端を少しでも担うことができるならば,それは執筆陣にとって幸甚の極みです.
医療法人社団 平和歯科医院
阿部 修
序文
Chapter 1 NiTiハンドファイルの潮流とHandFlexの開発
(阿部 修)
はじめに:なぜ今NiTiハンドファイルなのか
検証:なぜNiTiが必要なのか?〜重要な基本操作であるSSハンドファイルテクニックとそのリスク
NiTiハンドファイルの進化と可能性
NiTiグレートテーパーハンドファイル「HandFlex」の開発
Chapter 2 NiTiグレートテーパーハンドファイル「HandFlex」の効率的な応用について
(阿部 修)
HandFlexの概要
HandFlex Shaping filesによる効果的な手用根管形成テクニックとは:「Modified Balanced Force Technique」の実際
臨床症例
NiTiハンドファイル「HandFlex」の可能性
Chapter 3 NiTiハンドファイル「HandFlex」を用いた根管形成教育の実践と今後の展望
(友清 淳)
根管形成に関する教育について
NiTiファイルについて
NiTiファイルの学生実習への導入
HandFlexについて
NiTiハンドファイル実習について
HandFlexを使用した根管形成実習を終えて
今後の展望
交換留学生へのHandFlexを使用した根管形成実習について
Chapter 4 基礎的研究結果から考える新規NiTiハンドファイル「HandFlex」の有用性
(古澤誉彰・番場桃子・佐古 亮・淺井知宏・山田雅司・古澤成博)
はじめに
HandFlexにおける各形成法の比較
臨床におけるグライドパス形成時のHandFlexとNiTiロータリーファイルの比較
おわりに
Chapter 5 NiTiハンドファイル「HandFlex」の臨床的意義と臨床応用
(木ノ本喜史)
はじめに
HandFlexとの出会い
HandFlexの長所と短所
HandFlexの臨床的な使用方法
HandFlexの臨床的な注意点
まとめ
Chapter 6 NiTiハンドファイルの研究と臨床
(山田雅司・田宮資己・淺井知宏・古澤成博・笠原典夫・松永 智・阿部伸一)
はじめに
ファイル特性を利用した効率的な使用法の検討
ファイル特性が根管へ及ぼす影響の検証(われわれの研究データ)
研究を通じてわかったこと
研究を反映した実際の臨床で推奨するファイル使用方法
これからの展望について
あとがき
索引
編著者一覧
Chapter 1 NiTiハンドファイルの潮流とHandFlexの開発
(阿部 修)
はじめに:なぜ今NiTiハンドファイルなのか
検証:なぜNiTiが必要なのか?〜重要な基本操作であるSSハンドファイルテクニックとそのリスク
NiTiハンドファイルの進化と可能性
NiTiグレートテーパーハンドファイル「HandFlex」の開発
Chapter 2 NiTiグレートテーパーハンドファイル「HandFlex」の効率的な応用について
(阿部 修)
HandFlexの概要
HandFlex Shaping filesによる効果的な手用根管形成テクニックとは:「Modified Balanced Force Technique」の実際
臨床症例
NiTiハンドファイル「HandFlex」の可能性
Chapter 3 NiTiハンドファイル「HandFlex」を用いた根管形成教育の実践と今後の展望
(友清 淳)
根管形成に関する教育について
NiTiファイルについて
NiTiファイルの学生実習への導入
HandFlexについて
NiTiハンドファイル実習について
HandFlexを使用した根管形成実習を終えて
今後の展望
交換留学生へのHandFlexを使用した根管形成実習について
Chapter 4 基礎的研究結果から考える新規NiTiハンドファイル「HandFlex」の有用性
(古澤誉彰・番場桃子・佐古 亮・淺井知宏・山田雅司・古澤成博)
はじめに
HandFlexにおける各形成法の比較
臨床におけるグライドパス形成時のHandFlexとNiTiロータリーファイルの比較
おわりに
Chapter 5 NiTiハンドファイル「HandFlex」の臨床的意義と臨床応用
(木ノ本喜史)
はじめに
HandFlexとの出会い
HandFlexの長所と短所
HandFlexの臨床的な使用方法
HandFlexの臨床的な注意点
まとめ
Chapter 6 NiTiハンドファイルの研究と臨床
(山田雅司・田宮資己・淺井知宏・古澤成博・笠原典夫・松永 智・阿部伸一)
はじめに
ファイル特性を利用した効率的な使用法の検討
ファイル特性が根管へ及ぼす影響の検証(われわれの研究データ)
研究を通じてわかったこと
研究を反映した実際の臨床で推奨するファイル使用方法
これからの展望について
あとがき
索引
編著者一覧














