やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 歯科臨床は日進月歩であり,次から次へと新知見,新技術(新材料含む)が発表されていることに疑いの目を持つ人はいないと想像する.では,我々はその新知見や新技術の情報をどのようにして得るのであろうか? 一部のエキスパートオピニオンからなのか? それとも,インターネットや書籍などの媒体からなのか? どの方法も決して間違っているとはいえない.しかし,本当に必要な情報は,他者から与えられるより,自身で探して得るものではないかと考える.それは偏ひとえに自身と他者との興味が異なるからである.
 Evidence-based medicine(EBM),Evidencebased dentistry(EBD)という用語が一昔前に比べてずいぶん浸透した.きっとこの書籍を手に取った多くの方にとって聞き覚えのある用語であろうかと思う.EBM,EBDの概念はすでに歯学部卒前教育においても教えられており,さらに学部の講義においてEBM,EBDを学習する場として科学英語論文の精読を行った人もいることであろう.そのような経験がある方には,ぜひ当時の記憶を思い出してほしい.すらすら科学英語論文を読んで理解できたであろうか? 英語に長けている場合を除いて,ほとんどの人が苦手意識をもちながら科学英語論文と向き合っていた姿が容易に想像できてしまう.
 さらに,一部の読者を除き,科学英語論文の読み方,書き方を一から教わることはないのではなかろうか.かくいう私も,諸先輩の真似をしながら科学英語論文を書いてみては適宜修正してもらってきた経験があるし,科学英語論文を抄読する機会があってもただひたすらに知らない用語をつど調べては直訳しながら読んでいたものである.しかし,世の中には科学英語論文の読み方,書き方の解説書なるものが存在することを知り,その解説書を読むことで科学英語論文に対するイメージがずいぶん好転した.
 そのような筆者の経験も踏まえて,このたび「歯科医のための科学英語論文ガイド」を上梓することとなった.世の中の多くの科学英語論文の解説書が医学系のものであり,歯学系のテーマを取り扱った解説書があれば良いなと前々から思っていたことが本書を執筆する最大の動機となった.「歯科医のための」と銘打っているが,科学英語論文に触れる機会のある歯科医療従事者の皆様に手に取って読んでもらえたら幸いである.最後に,本書の制作に際し,医歯薬出版株式会社の上田雄介氏,志村健作氏には多大なるご尽力を賜りこの場を借りて感謝申し上げたい.
 兒玉直紀
Guide 1 論文の読み解きに必要な基本知識
 1 学術雑誌独自の専門用語
 2 代表的な歯科系学術雑誌
 3 あなたに必要な論文の種類は?(科学英語論文の基本的タイプ)
 4 Clinical questionを立案し,文献検索をしよう!
Guide 2 論文読み解きガイド
 1 Original articleの読み方
 2 Editorial / Letter to the Editorの読み方
 3 Case reportの読み方
 4 Short communicationの読み方
 5 Review articleの読み方
Guide 3 論文がジャーナルに掲載されるまで〜知っておきたい投稿の流れ/書き方ガイド〜
 1 科学英語論文を書くための準備〜報告ガイドラインを把握する〜
 2 科学英語論文の書き方をマスターする
 3 科学英語論文を投稿する前に〜最終チェックで必要なこと〜
 4 科学英語論文を投稿してみよう!
 5 科学英語論文投稿その後
 6 Reviewerの心得
 7 総括:科学英語論文の読み方・書き方

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