序文
近年,コンピュータや医療機器の進歩に伴い,歯科開業医においても,最先端のデジタル画像である,X線CT(Computed tomography)や磁気共鳴画像(Magnetic resonance imaging:MRI)検査が日常臨床に急速に普及してきました.これらのモダリティを画像センターおよび大学病院等に検査依頼し,日常臨床に利用している先生方は年々増加しています.特に,被曝のないMRI検査は,顎関節疾患を中心に臨床応用されるようになりました.
CTは水を基準としたX線吸収率をコンピュータにより画像化した被曝を伴う検査である一方,MRIは磁気共鳴現象(MR現象)によって生じる生体内組織の水素原子からの信号をコンピュータにより画像化した被曝のない検査です.CTを含む,X線検査は主に歯や顎骨のカルシウムの増減を観察しているのに対し,ヒトの身体は新生児で約70%,成人で60%以上が水分でできているため,水素原子を画像対象とするMRI検査は人体の構造を画像化するのに非常に好都合な画像検査装置です.
顎関節疾患MRI検査は,関節円板の直接描出が可能であり,被曝のない無侵襲な検査として広く臨床に普及し,円板の位置,形態,動態,下顎頭の骨髄信号,骨吸収,Joint effusionの有無等の検査に有効です.これらMRIによる顎関節疾患の画像診断は,歯科医師国家試験にも出題されるようになりました.
また,従来は咀嚼筋痛の画像評価は困難でしたが,近年のMRI撮像法の進歩により,MRI拡散強調像による咀嚼筋痛の定量評価も報告される他,装置へのAI機能の搭載等,急速に進歩を遂げています.しかしながら,これら急速に進歩する画像検査法ですが,顎関節を中心に解剖から正常画像解剖および鑑別診断まで詳細に記載し,検査所見や動画も掲載した,デジタル画像の粋であるCT,MRI検査に特化した顎関節の成書は刊行されていませんでした.
本書は顎関節の解剖から正常画像解剖および鑑別診断等を詳細に述べ,加えて最新情報も満載し,日頃よりMRIやCT検査を顎関節疾患に臨床応用している先生方やこれから取り入れていこうとする先生方,またこれから始める研修医や学生に有用な情報を顎関節各分野のエキスパートにおまとめいただいた,顎関節診療を行ううえで必携の一冊となっています.日常臨床等でも大変お忙しいエキスパートの先生方,また本書の企画,校正をいただいた医歯薬出版の志村氏にこの場を借りて深謝申し上げます.
本書が顎関節疾患に日夜取り組まれている先生方や診療に悩まれている先生方,またこれから取り組もうとされている先生方の一助になれば幸いです.
2024年8月吉日 金田 隆
近年,コンピュータや医療機器の進歩に伴い,歯科開業医においても,最先端のデジタル画像である,X線CT(Computed tomography)や磁気共鳴画像(Magnetic resonance imaging:MRI)検査が日常臨床に急速に普及してきました.これらのモダリティを画像センターおよび大学病院等に検査依頼し,日常臨床に利用している先生方は年々増加しています.特に,被曝のないMRI検査は,顎関節疾患を中心に臨床応用されるようになりました.
CTは水を基準としたX線吸収率をコンピュータにより画像化した被曝を伴う検査である一方,MRIは磁気共鳴現象(MR現象)によって生じる生体内組織の水素原子からの信号をコンピュータにより画像化した被曝のない検査です.CTを含む,X線検査は主に歯や顎骨のカルシウムの増減を観察しているのに対し,ヒトの身体は新生児で約70%,成人で60%以上が水分でできているため,水素原子を画像対象とするMRI検査は人体の構造を画像化するのに非常に好都合な画像検査装置です.
顎関節疾患MRI検査は,関節円板の直接描出が可能であり,被曝のない無侵襲な検査として広く臨床に普及し,円板の位置,形態,動態,下顎頭の骨髄信号,骨吸収,Joint effusionの有無等の検査に有効です.これらMRIによる顎関節疾患の画像診断は,歯科医師国家試験にも出題されるようになりました.
また,従来は咀嚼筋痛の画像評価は困難でしたが,近年のMRI撮像法の進歩により,MRI拡散強調像による咀嚼筋痛の定量評価も報告される他,装置へのAI機能の搭載等,急速に進歩を遂げています.しかしながら,これら急速に進歩する画像検査法ですが,顎関節を中心に解剖から正常画像解剖および鑑別診断まで詳細に記載し,検査所見や動画も掲載した,デジタル画像の粋であるCT,MRI検査に特化した顎関節の成書は刊行されていませんでした.
本書は顎関節の解剖から正常画像解剖および鑑別診断等を詳細に述べ,加えて最新情報も満載し,日頃よりMRIやCT検査を顎関節疾患に臨床応用している先生方やこれから取り入れていこうとする先生方,またこれから始める研修医や学生に有用な情報を顎関節各分野のエキスパートにおまとめいただいた,顎関節診療を行ううえで必携の一冊となっています.日常臨床等でも大変お忙しいエキスパートの先生方,また本書の企画,校正をいただいた医歯薬出版の志村氏にこの場を借りて深謝申し上げます.
本書が顎関節疾患に日夜取り組まれている先生方や診療に悩まれている先生方,またこれから取り組もうとされている先生方の一助になれば幸いです.
2024年8月吉日 金田 隆
序文
編著者略歴
GRAPHICS
01 正常顎関節解剖像(阿部伸一)
02 正常顎関節MRI(1) 成人(32歳女性)(箕輪和行)
03 正常顎関節MRI(2) 小児(12歳女児)
04 【動画】正常顎関節MRI
05 【動画】復位性関節円板前方転位MRI
06 【動画】非復位性関節円板前方転位MRI
CHAPTER 1 正常像と機能
01 正常解剖像と機能(1) 顎関節の骨部(阿部伸一)
02 正常解剖像と機能(2) 顎関節の軟組織部1:関節円板
03 正常解剖像と機能(3) 顎関節の軟組織部2:顎運動に関与する筋群
04 正常解剖像と機能(4) 顎関節の軟組織部3:靭帯
05 正常解剖像と機能(5) 顎関節の加齢変化
06 正常顎関節CT(箕輪和行)
07 正常顎関節MRI
08 正常変異像(二重下顎頭)(金田 隆)
09 下顎骨の加齢変化(1) 下顎頭
10 下顎骨の加齢変化(2) 下顎骨骨髄
CHAPTER 2 画像検査法
01 単純およびパノラマX線検査(金田 隆)
02 MRIとCTの選択法
03 MRI検査の原理・特徴
04 CT検査の原理・特徴
05 MRI検査の依頼(1) 顎関節に関連する撮像法の種類・特徴(箕輪和行)
06 MRI検査の依頼(2) 撮像断面の位置決め
07 MRI検査の依頼(3) オーダー法(月岡庸之)
08 MRI検査手順
CHAPTER 3 異常像
01 顎関節症(1) MRIによる顎関節の画像診断(金田 隆)
02 顎関節症(2) 関節円板の位置・動態・形態
03 顎関節症(3) Joint effusion
04 顎関節症(4) 骨髄信号の異常と骨変化
05 顎関節症と鑑別を要する疾患(1) PCR(Progressive condylar resorption,特発性下顎頭吸収)(箕輪和行)
06 顎関節症と鑑別を要する疾患(2) 顎関節炎(化膿性)
07 顎関節症と鑑別を要する疾患(3) 骨軟骨腫
08 顎関節症と鑑別を要する疾患(4) 滑膜軟骨腫症
09 顎関節症と鑑別を要する疾患(5) 偽痛風
10 顎関節症と鑑別を要する疾患(6) 関節リウマチ
11 顎関節症と鑑別を要する疾患(7) ガングリオン・滑膜嚢胞
12 顎関節症と鑑別を要する疾患(8) 悪性腫瘍1:転移性骨腫瘍
13 顎関節症と鑑別を要する疾患(9) 悪性腫瘍2:咽頭癌
CHAPTER 4 MRI画像検査報告書の供覧
CASE 01 復位を伴う関節円板の前外方転位(金田 隆)
CASE 02 復位を伴わない関節円板の前方転位
CASE 03 変形性顎関節症(1)
CASE 04 変形性顎関節症(2)
CHAPTER 5 一般歯科臨床医によるMRI臨床応用例の供覧
CASE 01 全顎に及ぶ知覚過敏を主訴とした患者の咬合再構成症例(鷹木雪乃)
CASE 02 骨格性III級の成長が認められた幼児への顎関節の成長にも配慮した症例
CASE 03 下顎頭に骨髄浮腫が認められた開咬患者の咬合再構成症例
CASE 04 両側顎関節の痛みを主訴として来院した高齢患者の症例
CASE 05 顕著な顎位のズレを伴う多数歯欠損をインプラント補綴を用いて咬合再構成を行った症例(大谷 昌)
索引
編著者略歴
GRAPHICS
01 正常顎関節解剖像(阿部伸一)
02 正常顎関節MRI(1) 成人(32歳女性)(箕輪和行)
03 正常顎関節MRI(2) 小児(12歳女児)
04 【動画】正常顎関節MRI
05 【動画】復位性関節円板前方転位MRI
06 【動画】非復位性関節円板前方転位MRI
CHAPTER 1 正常像と機能
01 正常解剖像と機能(1) 顎関節の骨部(阿部伸一)
02 正常解剖像と機能(2) 顎関節の軟組織部1:関節円板
03 正常解剖像と機能(3) 顎関節の軟組織部2:顎運動に関与する筋群
04 正常解剖像と機能(4) 顎関節の軟組織部3:靭帯
05 正常解剖像と機能(5) 顎関節の加齢変化
06 正常顎関節CT(箕輪和行)
07 正常顎関節MRI
08 正常変異像(二重下顎頭)(金田 隆)
09 下顎骨の加齢変化(1) 下顎頭
10 下顎骨の加齢変化(2) 下顎骨骨髄
CHAPTER 2 画像検査法
01 単純およびパノラマX線検査(金田 隆)
02 MRIとCTの選択法
03 MRI検査の原理・特徴
04 CT検査の原理・特徴
05 MRI検査の依頼(1) 顎関節に関連する撮像法の種類・特徴(箕輪和行)
06 MRI検査の依頼(2) 撮像断面の位置決め
07 MRI検査の依頼(3) オーダー法(月岡庸之)
08 MRI検査手順
CHAPTER 3 異常像
01 顎関節症(1) MRIによる顎関節の画像診断(金田 隆)
02 顎関節症(2) 関節円板の位置・動態・形態
03 顎関節症(3) Joint effusion
04 顎関節症(4) 骨髄信号の異常と骨変化
05 顎関節症と鑑別を要する疾患(1) PCR(Progressive condylar resorption,特発性下顎頭吸収)(箕輪和行)
06 顎関節症と鑑別を要する疾患(2) 顎関節炎(化膿性)
07 顎関節症と鑑別を要する疾患(3) 骨軟骨腫
08 顎関節症と鑑別を要する疾患(4) 滑膜軟骨腫症
09 顎関節症と鑑別を要する疾患(5) 偽痛風
10 顎関節症と鑑別を要する疾患(6) 関節リウマチ
11 顎関節症と鑑別を要する疾患(7) ガングリオン・滑膜嚢胞
12 顎関節症と鑑別を要する疾患(8) 悪性腫瘍1:転移性骨腫瘍
13 顎関節症と鑑別を要する疾患(9) 悪性腫瘍2:咽頭癌
CHAPTER 4 MRI画像検査報告書の供覧
CASE 01 復位を伴う関節円板の前外方転位(金田 隆)
CASE 02 復位を伴わない関節円板の前方転位
CASE 03 変形性顎関節症(1)
CASE 04 変形性顎関節症(2)
CHAPTER 5 一般歯科臨床医によるMRI臨床応用例の供覧
CASE 01 全顎に及ぶ知覚過敏を主訴とした患者の咬合再構成症例(鷹木雪乃)
CASE 02 骨格性III級の成長が認められた幼児への顎関節の成長にも配慮した症例
CASE 03 下顎頭に骨髄浮腫が認められた開咬患者の咬合再構成症例
CASE 04 両側顎関節の痛みを主訴として来院した高齢患者の症例
CASE 05 顕著な顎位のズレを伴う多数歯欠損をインプラント補綴を用いて咬合再構成を行った症例(大谷 昌)
索引














