やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 日本は4人に1人が65歳以上という超高齢社会をむかえました.現在の70代,80代の方々はとても若々しく,現役世代に負けない体力を有している方もおられます.しかし,何らかのつらい症状を感じながら,日々の生活を過ごされている方も多いはずです.
 「ドライマウス(口腔乾燥症)」はその症状の一つです.欧米の調査を換算すると,日本のドライマウスの患者さんは,推定で800万人,潜在的には3,000万人いると言われています.通常,唾液が少ないと口がかわきますし,口を開けたままにしていると症状が強くなり,水分がほしくなります.口の中の不快感だけでなく,味覚障害,摂食嚥下障害,義歯不適合などが生じ,虫歯や歯周病,口内炎にもなりやすくなります.また,口の中の環境が損なわれると,食事だけでなく,気道にも影響を与えて,風邪や肺炎をおこすこともあります.さらに老化や病気が重なると,その症状は悪化しやすくなります.
 そのあたりの原因とメカニズムについて簡潔に解説し,できるだけ多くの医療従事者・介護関係者の方々の臨床に生かしていただけるように本書をまとめました.皆様の日頃のお仕事にすぐに役に立つことを願っています.
 阪井丘芳
 はじめに
Chapter 1 基礎知識の再確認
 唾液腺(解剖学的)とは?
 唾液ができるメカニズム
 唾液が分泌するメカニズム
 唾液に含まれる成分と機能
  Column ドライマウスと嚥下機能との関係
Chapter 2 ドライマウスによって起こる症状
 う蝕
 歯周病
 義歯不適合
 味覚異常
 食べる機能の低下
 微生物による感染症
  Column ドライマウスと肺炎の関連性
Chapter 3 ドライマウスの原因
 唾液腺そのものの異常
 全身疾患
 薬の副作用
  Column 30種類の薬で重度のドライマウスに
 頭頚部癌への放射線治療
 ストレス
 サルコペニア
 口呼吸
Chapter 4 加齢による口腔内の変化
 唾液腺,腺組織の変化
 サルコペニア
 血流の低下
Chapter 5 ドライマウスへの対応法
 ドライマウスの検査・診断
 ドライマウスの診療手順
 保湿剤(使い方)
 唾液腺・口腔粘膜マッサージ
Chapter 6 ドライマウスに遭遇したら?
 ドライマウスチェックシート
 唾液分泌の日内変動
 どんな症状があるのでしょう?
 介護の必要な方の場合?口腔ケアが大切?
 口腔内感染症?内因性と外因性?
Chapter 7 症例別対応法の実際
 ドライマウスによりう蝕と歯周炎が進行した患者さん
 シェーグレン症候群と口腔カンジダ症を発症している患者さん
 唾液分泌量が少なく,義歯不適合の患者さん
  Column 花粉症とお薬でドライマウスに

 文献・資料
 あとがき