やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 欠損補綴に関して成書を紐解いてみると,その多くは「初診時→診査・診断→補綴設計→治療術式」の順序で構成されており,補綴処置後で終わる形が多い.診査・診断に焦点を当て,その症例の現在おかれている状況,将来の予測,それに伴う補綴治療の難易度が解説されている.過去から今日に至る過程でほとんどの成書にこの形がとられてきた.当然,この形の成書はこれから勉強しようとする歯科医師には必要不可欠である.しかし,これまでに紹介されてきた補綴処置方法が,時間軸のなかでどのように変化し,問題点が浮き彫りにされ,どう対処したか,その結果は,これらのことを検証されたものは少ない.
 私自身の臨床経験は35年になる.この間,その補綴処置をいかに長期にわたって維持し,機能させるかに腐心してきた感がある.またこれまで幾度となく,専門誌や講演会などで補綴方法ならびに予後経過を報告する機会を与えていただいた.しかし,さらにその後に関しての報告を行っていないままに現在に至っている.
 今日では,欠損補綴症例に対する補綴手段として,インプラントが主流であるかのように扱われ,また患者からインプラントに関する質問も多い.しかし実際には,臨床の現場におけるパーシャルデンチャーの症例数は,インプラントをはるかにしのぐと思われる.そして,これらの補綴処置は何年維持し,機能させればよいのだろうか.パーシャルデンチャーやインプラントによる補綴処置は,ある時期必ず修正・修理・再置換を余儀なくされる場合が多い.
 そこで,本書ではこれらのことを踏まえ,短期間でのトラブル症例,経過を追えた症例,対応に苦慮している症例に対し考察を加え,適応症を見極め,その症例にあった設計,経時的変化に対応しやすい補綴設計を再考した.つたない臨床例の経過ではあるが,何かしらの参考になれば望外の喜びである.
 最後に,症例提供に協力していただいた足立敏行先生(愛知県開業),林 尚史先生(三重県開業),また,種々ご助言いただいた永山元彦教授(朝日大学歯学部口腔病理学分野),深谷佳予子先生(国民健康保険関ヶ原病院薬剤科),さらに,当院の技工を担当していただいている長谷川 進先生,安井雄一先生,新美義人先生,当院でメインテナンスを担当している歯科衛生士の山下佳子氏に衷心より深謝申し上げます.
 2013年12月吉日
 武藤 晋也
 序文
第I章 経年的変化にみるインプラント症例
 エンドポイント
  1)インプラントの場合
  2)パーシャルデンチャーの場合
 受圧条件と加圧因子
  1)受圧条件
  2)加圧因子
 インプラントを臨床応用するうえで欠かせない情報とは
 さまざまな変化をみせる症例
  症例/症例/症例/症例/症例/症例/症例/症例/症例9
  症例/症例/症例/症例/症例/症例/症例16
 考察
 設計のポイント
第II章 術後経過にみるパーシャルデンチャー症例
 経過症例からみる構造体・生体変化
  パーシャルデンチャー症例
 経過を追える症例から短期間でのトラブル症例
  症例/症例/症例/症例/症例/症例/症例/症例/症例9
  症例/症例/症例/症例13
 考察
第III章 パーシャルデンチャーによる欠損補綴設計のための構成要素と連結様式
 欠損補綴の変遷から考えるリジッドコネクティング
 パーシャルデンチャーの構成要素と連結様式
 リジッドコネクティングの成立要件と連結装置
 リジッドデンチャーにおけるアタッチメント応用の諸特徴および維持力
 リジッドコネクティングにおけるアタッチメント(一次固定)とコーヌスクローネ(二次固定)の対比
 リジッドデンチャー適用のための診査・診断およびアタッチメントの選択
 欠損状態に沿ったリジッドデンチャーの設計
  1.遊離端欠損(Kennedy I級・II級)症例へのリジッドデンチャーの設計
 欠損状態に合ったリジッドデンチャーの設計
  2.Kennedy III級・IV級および少数歯残存症例へのリジッドデンチャーの設計
第IV章 インプラントとのコラボレーションによるデンチャー症例
 インプラントとのコラボレーションによるリジッドデンチャー
 インプラント応用のパーシャルデンチャー補綴におけるインプラントの役割
  1)“補助的介入”としてのインプラント応用のパーシャルデンチャー補綴
  2)“支台歯” としてのインプラント応用のパーシャルデンチャー補綴
 インプラント応用のパーシャルデンチャーの長期安定予後獲得に向けて
  1)インプラントデンチャーの連結装置の選択
  2)義歯におけるインプラント応用の長期予後を見据えて
 さまざまな対応症例
  症例/症例/症例/症例/症例/症例6
 考察

 総括
 参考文献一覧
 索引