序
わが国のがんによる死亡者は,1981年から死因のトップとなり,2007年には33万人を超えた.これは全死亡者の3割を占めるもので,さらに増加を続けている.2006年6月には「がん対策基本法」が成立した.基本法の第一の施策に「がんの予防および早期発見の推進」があげられている.
口腔がんは,1975年の2,100名から2005年で6,900名に増加,2015年では7,800名と予想されている.これは,がん全体の1〜2%で,頭頸部癌の約半数にあたる.なお,がん登録制がいまだ徹底されていないので,口腔がんの罹患数は実際にはもっと多い可能性もある.
口腔がんは国民に認識されておらず,単なる口内炎と思っていたという患者が多い.しかしながら,がんの発見が遅れると,治療が困難となり,生命を脅かす結果となる.治療ができたとしても,手術に加えて放射線照射や抗がん薬投与を組み合わせた集学的治療を余儀なくされる.救命されたとしても拡大手術,放射線,化学療法の合併症や後遺症に苦しむ結果となる.
歯科医師や歯科衛生士は常時,口腔内を診察しており,口腔がんを含む口腔疾患の発見者となる機会が多い.事実,専門病院に紹介されてくる患者の大多数は歯科医院からの紹介である.しかし,早期の段階で紹介されてくる頻度は必ずしも高いとはいえない.
喜ばしいことは最近,口腔がんは齲蝕,歯周病に次ぐ第3番目の口腔疾患であるとの認識をもち,歯のみならず口腔粘膜を観察する歯科医師が増加してきたことである.さらに,がん対策基本法施行以来,一部の地区の歯科医師会では口腔がん検診が行われるようになってきた.しかしその中で,口腔がん検診での診断に不安感を訴える声も聞く.検診とは,ある集団から異常者をふるい分けることであり,確定診断に至る必要はない.特定の疾患の診断はその後の精密検査(二次検診)に委ねられる.
本書は,歯科医師や歯科衛生士が通常診察において口腔がんを含む口腔粘膜疾患の診断に有用な診察法や診断ポイントを記載したものである.また,口腔がんや口腔粘膜検診にも活用できるよう編集した.
2012年1月
白砂兼光
わが国のがんによる死亡者は,1981年から死因のトップとなり,2007年には33万人を超えた.これは全死亡者の3割を占めるもので,さらに増加を続けている.2006年6月には「がん対策基本法」が成立した.基本法の第一の施策に「がんの予防および早期発見の推進」があげられている.
口腔がんは,1975年の2,100名から2005年で6,900名に増加,2015年では7,800名と予想されている.これは,がん全体の1〜2%で,頭頸部癌の約半数にあたる.なお,がん登録制がいまだ徹底されていないので,口腔がんの罹患数は実際にはもっと多い可能性もある.
口腔がんは国民に認識されておらず,単なる口内炎と思っていたという患者が多い.しかしながら,がんの発見が遅れると,治療が困難となり,生命を脅かす結果となる.治療ができたとしても,手術に加えて放射線照射や抗がん薬投与を組み合わせた集学的治療を余儀なくされる.救命されたとしても拡大手術,放射線,化学療法の合併症や後遺症に苦しむ結果となる.
歯科医師や歯科衛生士は常時,口腔内を診察しており,口腔がんを含む口腔疾患の発見者となる機会が多い.事実,専門病院に紹介されてくる患者の大多数は歯科医院からの紹介である.しかし,早期の段階で紹介されてくる頻度は必ずしも高いとはいえない.
喜ばしいことは最近,口腔がんは齲蝕,歯周病に次ぐ第3番目の口腔疾患であるとの認識をもち,歯のみならず口腔粘膜を観察する歯科医師が増加してきたことである.さらに,がん対策基本法施行以来,一部の地区の歯科医師会では口腔がん検診が行われるようになってきた.しかしその中で,口腔がん検診での診断に不安感を訴える声も聞く.検診とは,ある集団から異常者をふるい分けることであり,確定診断に至る必要はない.特定の疾患の診断はその後の精密検査(二次検診)に委ねられる.
本書は,歯科医師や歯科衛生士が通常診察において口腔がんを含む口腔粘膜疾患の診断に有用な診察法や診断ポイントを記載したものである.また,口腔がんや口腔粘膜検診にも活用できるよう編集した.
2012年1月
白砂兼光
早期発見に勝る治療法はない
症例1 白板症?それとも初期癌?
症例2 舌縁の「潰瘍,しこり」は要注意
症例3 抜歯後の治癒不全は歯肉癌のサイン
症例4 肉芽様腫瘤は歯肉癌の特徴
I 口腔粘膜の構造
1 口腔の構造
1)舌の構造
2)扁桃
2 口腔粘膜の組織構造
1)皮膚
2)口腔粘膜
II 口腔病変のみかた
1 肉眼による観察
1)色の変化
2)腫れ方(腫脹,腫瘤)
(1)腫脹の形態
(2)腫脹の内容物
3)表面の変化
2 診察(検診)の手順
1)口腔診察器具
2)診察の位置
3)診察の順序
4)部位別診察法
(1)口唇の診察法
(2)頬粘膜の診察法
(3)歯肉の診察法
(4)舌の診察法
(5)口腔底の診察法
(6)口蓋の診察法
III 口腔の腫瘍
1 悪性腫瘍(がん)の特性
2 腫瘍の分類と命名法
3 口腔にみられる良性腫瘍
1)上皮性腫瘍
2)非上皮性腫瘍
3)顎骨腫瘍,腫瘍性疾患
4 口腔にみられる悪性腫瘍
1)口腔扁平上皮癌
(1) 口腔がんの部位…UICCの解剖学的分類
(2)好発部位
2)口腔扁平上皮癌の症状
(1)増殖様式別症状
(2)部位別症状
(3)疣贅性癌
3)その他の癌
4)非上皮性腫瘍
IV 口腔病変の病態と症状
1 口腔粘膜の嚢胞病変
2 白色病変と角化性病変
3 色素沈着疾患
4 口内炎
5 アフタ
6 薬疹などアレルギー反応に起因する疾患
7 ウイルス性口内炎
8 自己免疫性水疱病変
9 部位特異的病変
1)舌病変
2)口唇病変
3)歯肉疾患
V がんの原因と治療法
1 がんの原因(多段階発がん)
(1)イニシエーションとプロモーション
(2)喫煙は口腔癌の原因
(3)field cancerization
2 前癌病変と前癌状態
1)前癌病変
(1)口腔白板症
(2)口腔紅板症
2)前癌状態
(1)扁平苔癬
(2)色素性乾皮症
(3)鉄欠乏症
(4)萎縮性表皮水疱症
(5)円板状エリテマトーデス
(6)口腔粘膜下線維腫症
(7)梅毒
3)癌化に伴う細胞変化
3 口腔癌の治療
1)口腔癌の進行度
2)外科療法
(1)放射線治療
(2)化学療法
(3)合併症
VI がん患者の口腔ケアと歯科治療
1 放射線障害に対して
1)口内炎(口腔粘膜炎)
2)口腔乾燥症
3)顎骨壊死
2 化学療法と口腔合併症
1)口内炎(口腔粘膜炎)
2)感染症
3)骨髄移植合併症
3 術後の口腔管理
VII がんの簡易検査法
1 生体染色法
1)ヨード生体染色法
(1)原理
(2)準備するもの
(3)禁忌
(4)手技
(5)注意すべき点
2)トルイジンブルー生体染色法
(1)原理
(2)準備するもの
(3)禁忌
(4)手技
(5)注意すべき点
2 細胞診
1)擦過細胞診の方法
(1)準備するもの
(2)手技
(3)注意すべき点
(4)キットを用いる方法
2)細胞診の判定結果
COLUMN1 口腔がんの転移
COLUMN2 口腔がんに遭遇したとき
参考資料
文献
索引
症例1 白板症?それとも初期癌?
症例2 舌縁の「潰瘍,しこり」は要注意
症例3 抜歯後の治癒不全は歯肉癌のサイン
症例4 肉芽様腫瘤は歯肉癌の特徴
I 口腔粘膜の構造
1 口腔の構造
1)舌の構造
2)扁桃
2 口腔粘膜の組織構造
1)皮膚
2)口腔粘膜
II 口腔病変のみかた
1 肉眼による観察
1)色の変化
2)腫れ方(腫脹,腫瘤)
(1)腫脹の形態
(2)腫脹の内容物
3)表面の変化
2 診察(検診)の手順
1)口腔診察器具
2)診察の位置
3)診察の順序
4)部位別診察法
(1)口唇の診察法
(2)頬粘膜の診察法
(3)歯肉の診察法
(4)舌の診察法
(5)口腔底の診察法
(6)口蓋の診察法
III 口腔の腫瘍
1 悪性腫瘍(がん)の特性
2 腫瘍の分類と命名法
3 口腔にみられる良性腫瘍
1)上皮性腫瘍
2)非上皮性腫瘍
3)顎骨腫瘍,腫瘍性疾患
4 口腔にみられる悪性腫瘍
1)口腔扁平上皮癌
(1) 口腔がんの部位…UICCの解剖学的分類
(2)好発部位
2)口腔扁平上皮癌の症状
(1)増殖様式別症状
(2)部位別症状
(3)疣贅性癌
3)その他の癌
4)非上皮性腫瘍
IV 口腔病変の病態と症状
1 口腔粘膜の嚢胞病変
2 白色病変と角化性病変
3 色素沈着疾患
4 口内炎
5 アフタ
6 薬疹などアレルギー反応に起因する疾患
7 ウイルス性口内炎
8 自己免疫性水疱病変
9 部位特異的病変
1)舌病変
2)口唇病変
3)歯肉疾患
V がんの原因と治療法
1 がんの原因(多段階発がん)
(1)イニシエーションとプロモーション
(2)喫煙は口腔癌の原因
(3)field cancerization
2 前癌病変と前癌状態
1)前癌病変
(1)口腔白板症
(2)口腔紅板症
2)前癌状態
(1)扁平苔癬
(2)色素性乾皮症
(3)鉄欠乏症
(4)萎縮性表皮水疱症
(5)円板状エリテマトーデス
(6)口腔粘膜下線維腫症
(7)梅毒
3)癌化に伴う細胞変化
3 口腔癌の治療
1)口腔癌の進行度
2)外科療法
(1)放射線治療
(2)化学療法
(3)合併症
VI がん患者の口腔ケアと歯科治療
1 放射線障害に対して
1)口内炎(口腔粘膜炎)
2)口腔乾燥症
3)顎骨壊死
2 化学療法と口腔合併症
1)口内炎(口腔粘膜炎)
2)感染症
3)骨髄移植合併症
3 術後の口腔管理
VII がんの簡易検査法
1 生体染色法
1)ヨード生体染色法
(1)原理
(2)準備するもの
(3)禁忌
(4)手技
(5)注意すべき点
2)トルイジンブルー生体染色法
(1)原理
(2)準備するもの
(3)禁忌
(4)手技
(5)注意すべき点
2 細胞診
1)擦過細胞診の方法
(1)準備するもの
(2)手技
(3)注意すべき点
(4)キットを用いる方法
2)細胞診の判定結果
COLUMN1 口腔がんの転移
COLUMN2 口腔がんに遭遇したとき
参考資料
文献
索引








