やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 一つの新しい診断装置を真に使いこなすためには,その装置の原理・基本的な使用方法・診断方法のみならず,診断結果の信頼性・擬陽性・偽陰性および医療事故についての知識が求められるば.さらに,実際の運用には実践的な技能の習得も必要となる.特にX線診断機器は,被曝を伴うことで特別な管理が要求されることも忘れてはならない.
 現在,歯科用CT(以下CT)は急速に普及が進もうとしているが,系統的な講義や実習が十分になされているとはいえないのが現状であろう.
 CTの代表的な断層面が提示されている論文や書籍を目にする機会も多くなり,その重要性が認識されるようになった.しかし,自らCTの画像を読像するときにその膨大な断層像の数にとまどい,正しく情報を引き出せない読者も多いと思われる.特に,XYZの3面の断層像の3次元的な空間的位置関係を理解するには,一定の訓練が必要とされる.
 本書では,CTが取り巻く問題点を実践的に考察した.基本的な解剖学を図説するだけでなく,断層面の3次元的な位置関係を自分のものとして理解していただくために,ペーパーフィギュアを用意した.同時に,パソコンを使用してXYZの断面を連続的に変化させて観察していただくDVD-ROMも付加した.これらの実習を通じて断層面の3次元的な位置関係を理解し,実践的な知識と技能が身につくよう工夫を施した.
 本書を単に読むだけではなく,ぜひ実際に作業をしてみることでCTの限界を知り,自らのCTの実践的な読像能力を向上していただければ幸いである.
 なお,本書は2008年1月から12月まで『歯界展望』に連載された「歯科臨床における3次元CT画像の有効活用」を再編集し,Windows XPまたはVistaの起動するPCで実行できるDVD-ROMなどを付加したものである.
 発刊にあたり,ご尽力いただいた医歯薬出版の水島健二郎氏をはじめ歯界展望編集部,歯科書籍編集者,クロスメディア企画室,そして北千住ラジスト歯科の運営を支援していただいた新井良江,三浦麗香の両氏にあらためて御礼申し上げる.
 2009年2月吉日
 新井嘉則 谷本英之
 序
 謝辞
 著者略歴
 本書の特徴および使い方 窶使いこなすにはステップ0から
 画像診断体験プログラムDVD-ROMについて
ステップ1 CT画像の正しい理解と診断のために
 はじめに
 画像センター開設の動機
 CT万能伝説の偽(ウソ)
 3次元画像を理解するには訓練が必要!
 CT画像の理解と錯覚
 CT撮像のための仮説は十分か?
 CT撮像によってトラブル発生?
ステップ2 危機管理とCT検査
 インプラントを目的としたCT検査の進めかた
  演習1 自分で治療計画を立てる患者
  演習2 手術の日程が決まっている
  演習3 CT検査の結果,インプラント不適応で中止となった患者
 画像センターの役割
 CTは何のた嚢襄裹に
ステップ3 CTと被曝の考え方 窶ALARAの原則
 ALARAの原則
 医療被曝の正当化
 歯科用CTは低被曝とはいえない
 その撮像が必須なのかを問う
 治療成績が良くなるのか?
 どのような場合が正当化されるのか?
 常に最小の照射野を選択する
 位置付けにも細心の注意を
 撮像条件も低被曝を考慮して
 若年者への適応は慎重に
ステップ4 CTの画像の考え方 窶解像力・ノイズ・被曝線量
 画質とは何か
 基本性能を超えることはない
 隠れた基本性能を見逃すな
  求められる解像力
 ノイズとの戦い
 真の性能とは
 実際の画像
ステップ5 CT画像理解のための基礎知識
 CT画像の読み方
 CT画像の特徴
 XYZ方向の3面を同時に見る訓練
 十字のクロスは同じ地点
 1つの断層面上で円形に観察されたものは?
 “2つの円形の部屋”が観察された場合は?
ステップ6 正しい距離をもとめるコツ
 計測方法と顎骨の読像
 正しい距離を計測する
  (1)2相当部の骨は分厚い?
  (2)XYZ軸の断層像上にある直線の意味は?
  (3)計測したいラインを適切に回転
  (4)正しい距離とは最短距離をもとめること!
 適切な断層面を切り出す
  (1)2軸回転の法則
  (2)歯を垂直にスライス
  (3)1軸しか回転しないで断面を決定するのは誤診を生む!
 顎骨の読像 窶CTでここまで見える
  (1)2軸を適切に動かせば,骨の中に血管が見える?
  (2)3軸を適切に動かせば,血管の走行も確認できる
 CT読像に専用ソフトは必須
ステップ7 インプラント可能な安全領域(下顎臼歯部)
 下顎歯列と下顎管の位置関係を把握しよう!
  (1)下顎管はどこ?
  (2)まずはオトガイ孔を探そう
  (3)下顎管は見えたけれど
 インプラントを安全に埋入できる範囲は?
  (1)インプラントの直径・方向を考慮すべき
  (2)下顎骨の舌側には“舌孔”
  (3)歯軸の方向に回転
  (4)インプラント可能な安全領域とは?
  (5)同じ部位でも断層方向がわずかに変化するだけで,顎骨の大きさが異なる
 専用ソフトにて読像すべき
ステップ8 CT画像における下顎骨と歯の解剖
 下顎骨の解剖
 歯と下顎骨の位置関係
  (1)下顎前歯部(有歯顎)
  (2)下顎犬歯部・小臼歯部(有歯顎)
  (3)下顎小臼歯部・大臼歯部(有歯顎)
  (4)無歯顎
 下顎骨はねじれている!
 下顎前歯部周囲の顎骨内に血管が見える
ステップ9 CT画像における上顎骨と歯の解剖
 上顎骨の解剖
 歯と上顎骨の位置関係
  (1)上顎前歯部
  (2)上顎犬歯部
  (3)上顎小臼歯部
  (4)上顎大臼歯部
  (5)上顎洞
 無歯顎
ステップ10 CT画像における上顎骨にみられる管(くだ)と上顎洞
 有歯顎における上顎洞後壁と後上歯槽動脈
  (1)濃淡のある“シミ”
  (2)XYZすべてに“シミ”が見える!
  (3)骨の中に管(くだ)が見える!
 有歯顎における上顎洞前壁と後上歯槽動脈
  (1)上顎洞前壁に“シミ”を見つけよう
  (2)十字点を“シミ”に合わせて3面同時に観察しよう
  (3)適切に断層像を回転させて観察しよう
 無歯顎における上顎洞後壁と後上歯槽動脈
 無歯顎における上顎洞前壁と後上歯槽動脈
 高度な治療に臨むなら十分なCT読像が必要
 解剖学的ランドマークを把握し,専用ソフトにて読像しよう
ステップ11 インプラントにおける診断用ステントの重要性
 ステントの目的
  (1)口腔内(あるいは模型上)にて歯根や顎骨の方向は,わからない!
  (2)CT画像と実際の手術を関連付けるもの
 ステントの作成
  (1)咬合器に模型を付着,診断用ワックスアップ
  (2)診断用ステントは咬合面保持タイプ
  (3)口腔内にて“歯科医師が”ステントを試適・確認
  (4)パノラマ撮影
  (5)ステントに造影性レジン塗布
  (6)CT撮像・読像
  (7)インプラント埋入
 まとめ
ステップ12 臨床応用の実際
 症例1 歯根分割抜歯
 症例2 歯性上顎洞炎
 症例3 歯根破折
 症例4 4根管性
 症例5 側切歯根尖病巣のあるインプラント中止症例
 症例6 下顎側切歯の観察
 症例7 123欠損症例
 まとめ
ステップ13 総まとめとガイドラインによる画像センターの運用
 歯科用CTが手術をするわけではない
 CTの限界
 ガイドラインとは
 歯科用CTとガイドライン
 CTの安全性をどのように担保するか
 歯の保存のためのCT
 おわりに
参考文献
ステップ14 ペーパーフィギュア
 ステップ 0 1根管の数はいくつ?
 ステップ 0 7図0-3と図0-4は同じ症例?それとも異なる症例?
 ステップ 5 CT画像理解のための基礎知識
 ステップ 6 正しい距離をもとめるコツ・正しい距離は最短距離
 ステップ 7 インプラント可能な安全領域(下顎臼歯部)
 ステップ 8 CT画像における下顎骨と歯の解剖
 ステップ 9 CT画像における上顎骨と歯の解剖
 ステップ 9 CT画像における上顎骨と歯の解剖
 ステップ10 CT画像における上顎骨にみられる管(くだ)と上顎洞
索引
ステップ15 付属DVD-ROM(画像診断体験プログラム)