序文
筆者が大学を卒業し,林 都志夫教授が主宰する第3歯科補綴学教室に入局した1979年当時は,患者が使用していた義歯(旧義歯)が適正な床外形を有していない場合,これに修理用のレジンを添加し,義歯床を延長し,さらにはリライニング,咬合面の再構成,そして義歯の支持,維持,安定を改善してから新義歯製作に入るという習慣があった.患者の少ない新人医局員にとっては,一人の患者で2回総義歯製作が楽しく学べ,さらには義歯修理のノウハウを習得することができるというありがたい環境であった.しかしながら,時代の趨勢か,この習慣が若い世代にうまく引き継がれていないようで残念に感じている.
義歯の修理には絶対に正しいという方法はなく,いろいろな方法がある.もちろん,技術および知識の習得も必要ではあるが,本書に示すような典型的な修理のパターンを知ることで,義歯修理が以前よりもはるかに容易となり,さらに患者の信頼を得ることが可能となる.
義歯の修理自体は,通常,義歯の破折,人工歯の脱離などを生じた場合に行われる.しかし,歯周病や根尖病巣の悪化などにより,広範囲な抜歯が必要となった場合の修理もある.このようなときには,抜歯に先立って修理計画を考え,義歯のない状態をつくらないことが患者の審美性およびQOLの観点から大変重要である.また,他医院で抜歯した患者が来院した場合,義歯をチェアサイドで速やかに修理することは,自医院の患者との信頼関係や評判にも大きく関係してくる.
本書は,直接法による少数歯の人工歯増歯から,チェアサイドでも可能な間接法による大規模な義歯修理について,わかりやすく写真を中心に解説したものである.なお,修理術式はできるだけフローチャート化するなど工夫をこらした.
本書が,義歯修理をこれから学ぼうとする若い先生方にとって,修理計画の立案や修理のノウハウを理解,習得するのにお役に立てれば幸いである.
最後に,このような執筆の機会を与えていただいた医歯薬出版株式会社に,お礼申し上げたい.
2007年8月31日
小林賢一
筆者が大学を卒業し,林 都志夫教授が主宰する第3歯科補綴学教室に入局した1979年当時は,患者が使用していた義歯(旧義歯)が適正な床外形を有していない場合,これに修理用のレジンを添加し,義歯床を延長し,さらにはリライニング,咬合面の再構成,そして義歯の支持,維持,安定を改善してから新義歯製作に入るという習慣があった.患者の少ない新人医局員にとっては,一人の患者で2回総義歯製作が楽しく学べ,さらには義歯修理のノウハウを習得することができるというありがたい環境であった.しかしながら,時代の趨勢か,この習慣が若い世代にうまく引き継がれていないようで残念に感じている.
義歯の修理には絶対に正しいという方法はなく,いろいろな方法がある.もちろん,技術および知識の習得も必要ではあるが,本書に示すような典型的な修理のパターンを知ることで,義歯修理が以前よりもはるかに容易となり,さらに患者の信頼を得ることが可能となる.
義歯の修理自体は,通常,義歯の破折,人工歯の脱離などを生じた場合に行われる.しかし,歯周病や根尖病巣の悪化などにより,広範囲な抜歯が必要となった場合の修理もある.このようなときには,抜歯に先立って修理計画を考え,義歯のない状態をつくらないことが患者の審美性およびQOLの観点から大変重要である.また,他医院で抜歯した患者が来院した場合,義歯をチェアサイドで速やかに修理することは,自医院の患者との信頼関係や評判にも大きく関係してくる.
本書は,直接法による少数歯の人工歯増歯から,チェアサイドでも可能な間接法による大規模な義歯修理について,わかりやすく写真を中心に解説したものである.なお,修理術式はできるだけフローチャート化するなど工夫をこらした.
本書が,義歯修理をこれから学ぼうとする若い先生方にとって,修理計画の立案や修理のノウハウを理解,習得するのにお役に立てれば幸いである.
最後に,このような執筆の機会を与えていただいた医歯薬出版株式会社に,お礼申し上げたい.
2007年8月31日
小林賢一
序文
序説
義歯修理の要因と対策
1.義歯修理が必要となる主な原因
1─義歯床の破折
2─人工歯の脱離,破折
2.義歯床そのものの破折防止の試み
1─床用レジンの理工学的性質改善の試み
1)耐衝撃性レジン(ハイインパクトレジン)
2)各種繊維の添加
3)スルホン床義歯の応用
4)金属線による補強
2─義歯製作時における技工操作上の注意
文献
義歯修理の実際
1章 義歯床の破折
1.部分破折
1─直接法による修理
2─間接法による修理
2.完全破折
1─復位が良好な場合
2─復位が不良な場合
3─破折部位の固定法
3.不完全破折
修理法
補強線が埋入されている義歯の破折を修理するうえでの注意点
本書掲載の主な器材
2章 増歯・増床
1.義歯があり,対象歯がすでに抜歯されている場合
1─直接法による増歯・増床
Case-1:直接法による少数歯の増歯・増床例
2─間接法による増歯・増床
1)義歯を預かることができる場合─取り込み印象
Case-2:チェアサイドで行った取り込み印象による少数歯の増歯・増床例
2)義歯を預かることができない場合─修理用パーツの製作
Case-3:修理用パーツの製作による前歯部の多数歯増歯例
2.義歯があり,対象歯の抜歯が予定されている場合
1─チェアサイドにおける増歯・増床
1)少数歯の増歯・増床
Case-4:間接法による少数歯の増歯・増床例
参考症例
Case-5:スプーンデンチャーの製作による少数歯の増歯例
2)大規模な増歯
Case-6:大規模な増歯およびティッシュコンディショニング処置例
Case-7:義歯床が不安定で取り込み印象が難しい床内面の適合不良例
3.使用中の義歯(旧義歯)はなく,残存歯すべての抜歯が予定されている場合
Case-8:上顎大型ブリッジから即時総義歯への移行例
Case-9:下顎大型ブリッジから総義歯への移行例
3章 床延長―足し算の義歯調整
1.義歯床延長材(デンチャーエイドLC(R))の理工学的性質
2.修理の実際
1─直接法による床延長
1)義歯床の修理対象部分に金属が使用されていない場合
Case-1:下顎総義歯に大規模な床延長を行った例
2)義歯床の修理対象部分に金属が使用されている場合
Case-2:残存歯の抜歯により総義歯となった下顎金属床義歯に対する床延長例
Case-3:左側臼歯部ブリッジの抜歯により両側性遊離端となった片側性金属床に対して口腔内で床延長を行い,両側遊離端義歯とした症例
長期経過症例
Case-4:下顎総義歯に大規模な床延長を行った長期経過症例
2─複製義歯の製作
文献
4章 咬合関係の不調和の修正
1.咬合関係の評価
下顎位の評価─下顎の中心位への誘導による診査
中心位定義の変遷
2.咬合関係の修正
1─咬合紙を用いた咬合調整
2─オクルーザルインディケーターワックス(R)を用いた咬合調整
Case-1:義歯の維持力に問題がある場合の咬合調整
中心位での咬合調整のポイント
3─咬合面再構成―光重合型レジン(レボテックLC(R))の応用
Case-2:上下顎臼歯部にレジン歯を用いた義歯の咬合面再構成
Case-3:上顎舌側咬頭が完全に失われている場合の前処置
Case-4:陶歯の除去
臨床のヒント─人工歯の組合せ
4─リマウントによる人工歯再配列
Case-5:上顎に陶歯,下顎にレジン歯を配列した症例の下顎人工歯再配列
Case-6:簡便な下顎人工歯の再配列
文献
5章 リライニング
1.直接法によるリライニング
1─使用中の義歯(旧義歯)の診査および修正
1)維持力不足の原因
(1)辺縁封鎖が得られない原因
(2)維持力よりも離脱力が大きい原因
2)義歯床外形の診査および修正
(1)上顎義歯床
(2)下顎義歯床
〔1〕義歯後縁部および咬筋影響部
〔2〕頬側床縁および頬小帯
Case-1:側床縁の延長方向が誤っている症例
〔3〕唇側床縁
〔4〕舌下腺部
〔5〕顎舌骨筋線部および後顎舌骨筋窩
2─リライニング時の舌の位置と開口量
(1)リライニング時の舌の位置
(2)リライニング時のタイミング
参考症例
Case-2:間接法による舌下腺部の床延長例
Case-3:直接法によるリライニング例
2.間接法によるリライニング
Case-4:チェアサイドにおける間接法によるリライニング例
3.リライニング後の調整
文献
6章 バー,クラスプの修理
1.金属との接着
2.バーの修理
Case-1:チェアサイドでのパラタルバーの修理,リンガルバーの修理
3.クラスプの修理
Case-2:チェアサイドでの下顎義歯のクラスプ修理
参考 各種の金属接着プライマー
文献
索引
序説
義歯修理の要因と対策
1.義歯修理が必要となる主な原因
1─義歯床の破折
2─人工歯の脱離,破折
2.義歯床そのものの破折防止の試み
1─床用レジンの理工学的性質改善の試み
1)耐衝撃性レジン(ハイインパクトレジン)
2)各種繊維の添加
3)スルホン床義歯の応用
4)金属線による補強
2─義歯製作時における技工操作上の注意
文献
義歯修理の実際
1章 義歯床の破折
1.部分破折
1─直接法による修理
2─間接法による修理
2.完全破折
1─復位が良好な場合
2─復位が不良な場合
3─破折部位の固定法
3.不完全破折
修理法
補強線が埋入されている義歯の破折を修理するうえでの注意点
本書掲載の主な器材
2章 増歯・増床
1.義歯があり,対象歯がすでに抜歯されている場合
1─直接法による増歯・増床
Case-1:直接法による少数歯の増歯・増床例
2─間接法による増歯・増床
1)義歯を預かることができる場合─取り込み印象
Case-2:チェアサイドで行った取り込み印象による少数歯の増歯・増床例
2)義歯を預かることができない場合─修理用パーツの製作
Case-3:修理用パーツの製作による前歯部の多数歯増歯例
2.義歯があり,対象歯の抜歯が予定されている場合
1─チェアサイドにおける増歯・増床
1)少数歯の増歯・増床
Case-4:間接法による少数歯の増歯・増床例
参考症例
Case-5:スプーンデンチャーの製作による少数歯の増歯例
2)大規模な増歯
Case-6:大規模な増歯およびティッシュコンディショニング処置例
Case-7:義歯床が不安定で取り込み印象が難しい床内面の適合不良例
3.使用中の義歯(旧義歯)はなく,残存歯すべての抜歯が予定されている場合
Case-8:上顎大型ブリッジから即時総義歯への移行例
Case-9:下顎大型ブリッジから総義歯への移行例
3章 床延長―足し算の義歯調整
1.義歯床延長材(デンチャーエイドLC(R))の理工学的性質
2.修理の実際
1─直接法による床延長
1)義歯床の修理対象部分に金属が使用されていない場合
Case-1:下顎総義歯に大規模な床延長を行った例
2)義歯床の修理対象部分に金属が使用されている場合
Case-2:残存歯の抜歯により総義歯となった下顎金属床義歯に対する床延長例
Case-3:左側臼歯部ブリッジの抜歯により両側性遊離端となった片側性金属床に対して口腔内で床延長を行い,両側遊離端義歯とした症例
長期経過症例
Case-4:下顎総義歯に大規模な床延長を行った長期経過症例
2─複製義歯の製作
文献
4章 咬合関係の不調和の修正
1.咬合関係の評価
下顎位の評価─下顎の中心位への誘導による診査
中心位定義の変遷
2.咬合関係の修正
1─咬合紙を用いた咬合調整
2─オクルーザルインディケーターワックス(R)を用いた咬合調整
Case-1:義歯の維持力に問題がある場合の咬合調整
中心位での咬合調整のポイント
3─咬合面再構成―光重合型レジン(レボテックLC(R))の応用
Case-2:上下顎臼歯部にレジン歯を用いた義歯の咬合面再構成
Case-3:上顎舌側咬頭が完全に失われている場合の前処置
Case-4:陶歯の除去
臨床のヒント─人工歯の組合せ
4─リマウントによる人工歯再配列
Case-5:上顎に陶歯,下顎にレジン歯を配列した症例の下顎人工歯再配列
Case-6:簡便な下顎人工歯の再配列
文献
5章 リライニング
1.直接法によるリライニング
1─使用中の義歯(旧義歯)の診査および修正
1)維持力不足の原因
(1)辺縁封鎖が得られない原因
(2)維持力よりも離脱力が大きい原因
2)義歯床外形の診査および修正
(1)上顎義歯床
(2)下顎義歯床
〔1〕義歯後縁部および咬筋影響部
〔2〕頬側床縁および頬小帯
Case-1:側床縁の延長方向が誤っている症例
〔3〕唇側床縁
〔4〕舌下腺部
〔5〕顎舌骨筋線部および後顎舌骨筋窩
2─リライニング時の舌の位置と開口量
(1)リライニング時の舌の位置
(2)リライニング時のタイミング
参考症例
Case-2:間接法による舌下腺部の床延長例
Case-3:直接法によるリライニング例
2.間接法によるリライニング
Case-4:チェアサイドにおける間接法によるリライニング例
3.リライニング後の調整
文献
6章 バー,クラスプの修理
1.金属との接着
2.バーの修理
Case-1:チェアサイドでのパラタルバーの修理,リンガルバーの修理
3.クラスプの修理
Case-2:チェアサイドでの下顎義歯のクラスプ修理
参考 各種の金属接着プライマー
文献
索引

















