緒言
この度,1998年8月に発刊された『摂食・嚥下リハビリテーション』(金子芳洋,千野直一監修)が改訂されることになった.本書初版は,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の主要メンバーが力を合わせて編纂した日本の摂食・嚥下リハビリテーション臨床家のための教科書だった.実際,1万部を超える発行部数は,その極めて大きな訴求力を示している.そして,第2版発行までに9年の歳月が経過した.ここでは摂食・嚥下リハビリテーションの歴史をごく簡単に振り返りながら,そのようななかで生まれた本書とその改訂の意義に触れてみたい.
摂食・嚥下障害に対するリハビリテーションの歴史は新しい.欧米では,1981年に創設されたJohns Hopkins大学Swallowing Centerに代表される学際的な「嚥下障害センター」がその発展に大きく寄与した.また,Logemanによる教科書は,1983年に刊行されている.これら1980年代前半の仕事によって,本領域はその基礎が確立した.また,学際誌Dysphagia(Springer)は1986年に刊行され,リハビリテーション医学の代表的教科書Kruzen's Handbook第4版に嚥下の章が登場したのは1990年のことであった.
日本では,1980年代初めより耳鼻科領域で研究会が開催されるようになった.リハビリテーション領域では,1980年代半ばより臨床的検討が始まり,1990年代に入って急速に普及していった.そして,1994年の診療報酬改定において「摂食機能療法」が医科と歯科に同時に新設されたことが,大きな転機となった.以降,歯科関係者の積極的関与が日本特有の傾向となる.
1995年,学際的学会である日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が創設された.同会は拡張を続けて,現在,会員数5,000名を超え,年3巻の学術誌を発刊している.また,2006年には摂食機能療法の保険上の扱いが大幅に拡張された.さらに専門性についてみれば,1999年に言語聴覚士が国家資格となったことも大きな変化点であった.また,認定看護師制が2006年に始まり,言語聴覚士協会でも認定制検討が始まっている.日本摂食・嚥下リハビリテーション学会でも2008年に多職種に対応するシステムのスタートを検討している.
科学の進歩は大きく,特に,始まったばかりの本領域は,本書初版刊行の1998年以降も大きな変化をとげてきた.生理学的概念,診断法,治療法,対処法も大きく変わった.臨床では,嚥下造影のみならず嚥下内視鏡検査も広く用いられるようになった.また,球麻痺の病態生理の解明など,その理解が精緻化されたものばかりでなく,プロセスモデルのように概念を根本的に変容させたものさえあった.
以上を鑑みれば,改訂までの間隔はやや長過ぎたかもしれない.ただそれだけに,改訂内容の充実ぶりが明瞭であると思う.この教科書が,摂食・嚥下リハビリテーションの進歩・普及にさらに貢献できればありがたい.
最後に,改訂版を発刊するにあたり,ご尽力いただいた著者の皆様,編集委員の皆様,そして,医歯薬出版株式会社に心より感謝申し上げる.
2007年8月
才藤栄一
向井美惠
初版監修者のことば
わが国において,この分野のまとまった動きが出始めたのは1990年代のことである.そのため,今日においてなお,研究も臨床も,まだまだ発展途上にあるといっても過言ではないであろう.
1990年代初め頃から,摂食・嚥下障害に対する知識やリハビリテーションの必要性が次第に関係者間で知られるようになり,1994年には,医科と歯科の両医学領域の保険診療に,“摂食機能療法”が取り入れられた.これは当時としては極めて異例なことであり,過去の実績からというよりも,将来の必要性を見越して取り入れられたという経緯がある.これがまさに正鵠を得ていたということは,現状に鑑みれば理解できよう.しかも,まだまだこの領域で働く各職種の人材も知識も技術も増え続ける需要に追いついていないのが現状である.各大学の医科,歯科の附属病院,各地域の中核病院の一部ではチーム的なアプローチが増えつつあるが,施設や在宅という地域社会レベルではその活動はまだ点にしか過ぎない.
1995年,学際的な日本摂食・嚥下リハビリテーション研究会(現学会)が設立された.同年の第1回の学術大会では,全国から予想をはるかに超えた参加者が集まり,会場に入ることができずお帰りを願わざるを得なかった方々が多くあったことは誠に申し訳ないことであったが,それだけの関心があることに驚かされたと同時に,この学会を何としても大きくして必要な活動をしていかなければと決意することとなった.さらに2年後の1997年には,「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌」が発刊され,現在は年3号が発行されている.学会会員数は2006年9月現在ですでに5,000名を超え,年々右肩上がりに上昇している.
このような状況の中で急がれたのが,この領域の基礎と臨床をほぼカバーするような教科書的な“羅針盤”の編纂であり,その希求が結実したものが1998年に発行された『摂食・嚥下リハビリテーション第1版』であった.
そして,それからほぼ10年が経過した.この10年間における摂食・嚥下の概念,診断,リハビリテーション治療手技等には,大きな進歩と変化,考え方の変遷が見られている.この時代変化の要請に応えるべく,第2版は監修者も現役の教授に替わり,執筆陣も現在この領域の教育,研究あるいは臨床で活躍中の85名と,第1版の時の42名のほぼ倍の人数で,しかもその約80%が前版の執筆者ではなく,またほとんどの原稿が新しく書き下ろされた内容であり,この分野の幅の広い各領域をきめ細かに分担している.さらに,執筆陣には近年におけるこの分野の発展に大きく貢献しているJohns Hopkins大学のProf.Jeffrey B.Palmerや,同大学のProf.Rebecca Z.Germanも参加している.
この時代の要請に応えた第2版は,初版の完全な全面改訂版である.この第2版も読者諸氏のよき指針となることを確信している.
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会名誉理事(前理事長)
明海大学客員教授
金子芳洋
初版監修者のことば
この度,『摂食・嚥下リハビリテーション第2版』が発刊されることになった.大変喜ばしいことである.初版の監修者として,心よりお祝いを申し上げたい.
金子芳洋教授と私とで監修した初版を発刊した1998年は,まさに日本において,摂食・嚥下リハビリテーションがその産声を上げた時であると思う.もちろん,産声を上げるには,その前に重要な胎生の時期があり,それは恐らく1980年代初めから始まった.1982年,嚥下障害を呈した舌根部ガン術後患者を診る機会があり,今回の監修者の1人である才藤栄一君達,教室員が耳鼻咽喉科とともにシネ嚥下造影を行って,嚥下訓練や体位効果をあれこれ試行錯誤したことを思い出す.当時,世界中を見渡しても摂食・嚥下リハビリテーションに関する科学は皆無で,胡散臭い経験論が出回っているだけの状況であった.
その後,リハビリテーション医学領域でビデオ嚥下造影が普及するようになり,科学的な摂食・嚥下リハビリテーションが展開されるようになった.さらに,今や日本の特徴といってよい歯科関係者の熱心な協力もあり,1995年に日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が設立され,摂食・嚥下リハビリテーションが颯爽とスタートしたのである.そして,1998年,その中心メンバーを著者として本書初版が発行された.
それから9年,改訂というにはやや長過ぎた感はあるが,内容が一新された本書を眺めて,その期間の長さを許容する充実ぶりと思う.改訂に当たった全ての関係者に心より感謝申し上げたい.
本書によって今後ますますこの領域の充実が加速され,一人でも多くの摂食・嚥下障害患者さんが幸福になることを祈願している.
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会名誉理事
慶應義塾大学名誉教授
千野直一
初版序文
摂食・嚥下障害に対する医療領域は,わが国で認められるようになって日が浅く,まだ普遍化していないため,多くの医療関係者は対応に苦慮しているのが実状である.このような状況は,ほとんどの先進諸国においても同様であり,そのニーズの大きさにもかかわらず,系統的な医療対応は十分にはなされていないといえよう.
摂食・嚥下障害への取り組みに関しては,特別の教育も研修も受けたことのない医療関係者が多い現状にありながら,関係する職種によっては訓練や指導を委ねられるという例も珍しくない.また,現在,多くの医療機関において,摂食・嚥下障害は,その機能に関与する器官の多さから,複数の医療専門領域の対象とされている.一方,食べることが生きるための基本であり日常的な営みであることから,保健や福祉などの領域とのかかわりを必要とすることも多く,医療における対応のみでは限界がある.
最近では,社会的にも医療や介護のあり方がこれまでになく注目され,かつ,摂食・嚥下障害の対応が可能であることが理解されるに伴い,それぞれの専門領域で,摂食・嚥下に関する基礎知識ならびに,有用な診断(評価)法の開発や効果的な治療(訓練)手技などが強く求められてきている.
そこで,このような大きな期待に,少しでも応えることができればとの願いから企画されたのが本書である.
本書は,摂食・嚥下リハビリテーションという新しい視点で,摂食・嚥下に関する学究的な裏づけと,臨床技術の両面にわたってまとめたはじめての手引き書であり,医師,歯科医師をはじめ,摂食・嚥下障害にかかわる医療,保健,福祉領域の専門家および,それらを志す学生諸君や卒後教育のための指針となることをねらいとしている.
本書のような乳幼児から高齢者までの摂食・嚥下に関する基礎と臨床を1冊にまとめた成書は,世界に類をみないと自負している.
本書が生まれるまでには,摂食・嚥下障害に対する貴重な臨床や研究があり,そこから学ばせていただいたことが基盤となっていることはいうまでもない.これらの多くの摂食・嚥下障害に取り組んでこられた方々に感謝するとともに,本書が摂食・嚥下リハビリテーションに関心をよせられる読者諸氏のお役に立てることを願って,序とさせていただく.
なお,なにぶんにも新たなテーマであり,また執筆者も多領域にわたるため,重複する箇所,内容や用語の整備など,いたらない面も多々あるかと思われる.今後,読者のご叱正ならびにご批判を賜れば幸いである.
最後に,本書の出版にあたり,執筆に快く協力していただいた著者の先生方に心から御礼申し上げるとともに,多大なご助力をいただいた医歯薬出版株式会社に深謝する次第である.
1998年8月
監修者・編集委員一同
この度,1998年8月に発刊された『摂食・嚥下リハビリテーション』(金子芳洋,千野直一監修)が改訂されることになった.本書初版は,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の主要メンバーが力を合わせて編纂した日本の摂食・嚥下リハビリテーション臨床家のための教科書だった.実際,1万部を超える発行部数は,その極めて大きな訴求力を示している.そして,第2版発行までに9年の歳月が経過した.ここでは摂食・嚥下リハビリテーションの歴史をごく簡単に振り返りながら,そのようななかで生まれた本書とその改訂の意義に触れてみたい.
摂食・嚥下障害に対するリハビリテーションの歴史は新しい.欧米では,1981年に創設されたJohns Hopkins大学Swallowing Centerに代表される学際的な「嚥下障害センター」がその発展に大きく寄与した.また,Logemanによる教科書は,1983年に刊行されている.これら1980年代前半の仕事によって,本領域はその基礎が確立した.また,学際誌Dysphagia(Springer)は1986年に刊行され,リハビリテーション医学の代表的教科書Kruzen's Handbook第4版に嚥下の章が登場したのは1990年のことであった.
日本では,1980年代初めより耳鼻科領域で研究会が開催されるようになった.リハビリテーション領域では,1980年代半ばより臨床的検討が始まり,1990年代に入って急速に普及していった.そして,1994年の診療報酬改定において「摂食機能療法」が医科と歯科に同時に新設されたことが,大きな転機となった.以降,歯科関係者の積極的関与が日本特有の傾向となる.
1995年,学際的学会である日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が創設された.同会は拡張を続けて,現在,会員数5,000名を超え,年3巻の学術誌を発刊している.また,2006年には摂食機能療法の保険上の扱いが大幅に拡張された.さらに専門性についてみれば,1999年に言語聴覚士が国家資格となったことも大きな変化点であった.また,認定看護師制が2006年に始まり,言語聴覚士協会でも認定制検討が始まっている.日本摂食・嚥下リハビリテーション学会でも2008年に多職種に対応するシステムのスタートを検討している.
科学の進歩は大きく,特に,始まったばかりの本領域は,本書初版刊行の1998年以降も大きな変化をとげてきた.生理学的概念,診断法,治療法,対処法も大きく変わった.臨床では,嚥下造影のみならず嚥下内視鏡検査も広く用いられるようになった.また,球麻痺の病態生理の解明など,その理解が精緻化されたものばかりでなく,プロセスモデルのように概念を根本的に変容させたものさえあった.
以上を鑑みれば,改訂までの間隔はやや長過ぎたかもしれない.ただそれだけに,改訂内容の充実ぶりが明瞭であると思う.この教科書が,摂食・嚥下リハビリテーションの進歩・普及にさらに貢献できればありがたい.
最後に,改訂版を発刊するにあたり,ご尽力いただいた著者の皆様,編集委員の皆様,そして,医歯薬出版株式会社に心より感謝申し上げる.
2007年8月
才藤栄一
向井美惠
初版監修者のことば
わが国において,この分野のまとまった動きが出始めたのは1990年代のことである.そのため,今日においてなお,研究も臨床も,まだまだ発展途上にあるといっても過言ではないであろう.
1990年代初め頃から,摂食・嚥下障害に対する知識やリハビリテーションの必要性が次第に関係者間で知られるようになり,1994年には,医科と歯科の両医学領域の保険診療に,“摂食機能療法”が取り入れられた.これは当時としては極めて異例なことであり,過去の実績からというよりも,将来の必要性を見越して取り入れられたという経緯がある.これがまさに正鵠を得ていたということは,現状に鑑みれば理解できよう.しかも,まだまだこの領域で働く各職種の人材も知識も技術も増え続ける需要に追いついていないのが現状である.各大学の医科,歯科の附属病院,各地域の中核病院の一部ではチーム的なアプローチが増えつつあるが,施設や在宅という地域社会レベルではその活動はまだ点にしか過ぎない.
1995年,学際的な日本摂食・嚥下リハビリテーション研究会(現学会)が設立された.同年の第1回の学術大会では,全国から予想をはるかに超えた参加者が集まり,会場に入ることができずお帰りを願わざるを得なかった方々が多くあったことは誠に申し訳ないことであったが,それだけの関心があることに驚かされたと同時に,この学会を何としても大きくして必要な活動をしていかなければと決意することとなった.さらに2年後の1997年には,「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌」が発刊され,現在は年3号が発行されている.学会会員数は2006年9月現在ですでに5,000名を超え,年々右肩上がりに上昇している.
このような状況の中で急がれたのが,この領域の基礎と臨床をほぼカバーするような教科書的な“羅針盤”の編纂であり,その希求が結実したものが1998年に発行された『摂食・嚥下リハビリテーション第1版』であった.
そして,それからほぼ10年が経過した.この10年間における摂食・嚥下の概念,診断,リハビリテーション治療手技等には,大きな進歩と変化,考え方の変遷が見られている.この時代変化の要請に応えるべく,第2版は監修者も現役の教授に替わり,執筆陣も現在この領域の教育,研究あるいは臨床で活躍中の85名と,第1版の時の42名のほぼ倍の人数で,しかもその約80%が前版の執筆者ではなく,またほとんどの原稿が新しく書き下ろされた内容であり,この分野の幅の広い各領域をきめ細かに分担している.さらに,執筆陣には近年におけるこの分野の発展に大きく貢献しているJohns Hopkins大学のProf.Jeffrey B.Palmerや,同大学のProf.Rebecca Z.Germanも参加している.
この時代の要請に応えた第2版は,初版の完全な全面改訂版である.この第2版も読者諸氏のよき指針となることを確信している.
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会名誉理事(前理事長)
明海大学客員教授
金子芳洋
初版監修者のことば
この度,『摂食・嚥下リハビリテーション第2版』が発刊されることになった.大変喜ばしいことである.初版の監修者として,心よりお祝いを申し上げたい.
金子芳洋教授と私とで監修した初版を発刊した1998年は,まさに日本において,摂食・嚥下リハビリテーションがその産声を上げた時であると思う.もちろん,産声を上げるには,その前に重要な胎生の時期があり,それは恐らく1980年代初めから始まった.1982年,嚥下障害を呈した舌根部ガン術後患者を診る機会があり,今回の監修者の1人である才藤栄一君達,教室員が耳鼻咽喉科とともにシネ嚥下造影を行って,嚥下訓練や体位効果をあれこれ試行錯誤したことを思い出す.当時,世界中を見渡しても摂食・嚥下リハビリテーションに関する科学は皆無で,胡散臭い経験論が出回っているだけの状況であった.
その後,リハビリテーション医学領域でビデオ嚥下造影が普及するようになり,科学的な摂食・嚥下リハビリテーションが展開されるようになった.さらに,今や日本の特徴といってよい歯科関係者の熱心な協力もあり,1995年に日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が設立され,摂食・嚥下リハビリテーションが颯爽とスタートしたのである.そして,1998年,その中心メンバーを著者として本書初版が発行された.
それから9年,改訂というにはやや長過ぎた感はあるが,内容が一新された本書を眺めて,その期間の長さを許容する充実ぶりと思う.改訂に当たった全ての関係者に心より感謝申し上げたい.
本書によって今後ますますこの領域の充実が加速され,一人でも多くの摂食・嚥下障害患者さんが幸福になることを祈願している.
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会名誉理事
慶應義塾大学名誉教授
千野直一
初版序文
摂食・嚥下障害に対する医療領域は,わが国で認められるようになって日が浅く,まだ普遍化していないため,多くの医療関係者は対応に苦慮しているのが実状である.このような状況は,ほとんどの先進諸国においても同様であり,そのニーズの大きさにもかかわらず,系統的な医療対応は十分にはなされていないといえよう.
摂食・嚥下障害への取り組みに関しては,特別の教育も研修も受けたことのない医療関係者が多い現状にありながら,関係する職種によっては訓練や指導を委ねられるという例も珍しくない.また,現在,多くの医療機関において,摂食・嚥下障害は,その機能に関与する器官の多さから,複数の医療専門領域の対象とされている.一方,食べることが生きるための基本であり日常的な営みであることから,保健や福祉などの領域とのかかわりを必要とすることも多く,医療における対応のみでは限界がある.
最近では,社会的にも医療や介護のあり方がこれまでになく注目され,かつ,摂食・嚥下障害の対応が可能であることが理解されるに伴い,それぞれの専門領域で,摂食・嚥下に関する基礎知識ならびに,有用な診断(評価)法の開発や効果的な治療(訓練)手技などが強く求められてきている.
そこで,このような大きな期待に,少しでも応えることができればとの願いから企画されたのが本書である.
本書は,摂食・嚥下リハビリテーションという新しい視点で,摂食・嚥下に関する学究的な裏づけと,臨床技術の両面にわたってまとめたはじめての手引き書であり,医師,歯科医師をはじめ,摂食・嚥下障害にかかわる医療,保健,福祉領域の専門家および,それらを志す学生諸君や卒後教育のための指針となることをねらいとしている.
本書のような乳幼児から高齢者までの摂食・嚥下に関する基礎と臨床を1冊にまとめた成書は,世界に類をみないと自負している.
本書が生まれるまでには,摂食・嚥下障害に対する貴重な臨床や研究があり,そこから学ばせていただいたことが基盤となっていることはいうまでもない.これらの多くの摂食・嚥下障害に取り組んでこられた方々に感謝するとともに,本書が摂食・嚥下リハビリテーションに関心をよせられる読者諸氏のお役に立てることを願って,序とさせていただく.
なお,なにぶんにも新たなテーマであり,また執筆者も多領域にわたるため,重複する箇所,内容や用語の整備など,いたらない面も多々あるかと思われる.今後,読者のご叱正ならびにご批判を賜れば幸いである.
最後に,本書の出版にあたり,執筆に快く協力していただいた著者の先生方に心から御礼申し上げるとともに,多大なご助力をいただいた医歯薬出版株式会社に深謝する次第である.
1998年8月
監修者・編集委員一同
総論
1章―リハビリテーション医学総論(才藤栄一)
1 リハビリテーション医学の対象
(1)リハビリテーション医学が扱う活動障害
(2)リハビリテーション医学が扱う臓器系
2 リハビリテーション医学に必要な概念体系
(1)運動学
(2)障害階層論
3 リハビリテーション医学の介入法
(1)システムとしての解決
(2)健常部の重要性
(3)帰結予測の重要性
(4)ハビリテーション医療の専門家
(5)リハビリテーションチームの形態
4 リハビリテーション医学の四つの対応法
(1)障害者の包括的医学管理(comprehensive medical management for disabled)
(2)活動-機能-構造連関(activity-function-structure relationship)
(3)治療的学習(therapeutic learning)
(4)支援システム(assistive system)
2章―摂食・嚥下リハビリテーション総論
1 はじめに(才藤栄一)
(1)摂食・嚥下障害とは
(2)摂食・嚥下リハビリテーションの臨床
(3)摂食・嚥下リハビリテーションの基礎知識
2 小児の摂食・嚥下リハビリテーション(向井美惠)
(1)障害の分類と特徴
(2)発達過程と機能障害
3 成人の摂食・嚥下リハビリテーション(才藤栄一)
(1)成人の摂食・嚥下障害の特徴
(2)摂食・嚥下障害の評価・診断
(3)摂食・嚥下障害への対応
(4)陥りたくない二分法的思考
基礎編
1章―摂食・嚥下器官の解剖
1 口腔の構造(井出吉信)
(1)口腔粘膜
(2)口唇
(3)口蓋
(4)頬
(5)舌
(6)歯
(7)唾液腺
2 鼻腔,咽頭,喉頭,食道の構造(肥田岳彦)
(1)鼻腔
(2)咽頭
(3)喉頭
(4)食道
3 摂食・嚥下に関与する筋(井出吉信)
(1)口裂周囲の表情筋群
(2)咀嚼筋群
(3)舌骨上筋・舌骨下筋群
(4)舌筋群
(5)軟口蓋の筋群
(6)咽頭の筋群
(7)喉頭の筋群
2章―摂食・嚥下機能の生理(山田好秋)
1 食物の認知と取り込み(先行期)
2 食物の咀嚼と味の伝達(準備期〈咀嚼期〉)
(1)咀嚼運動
(2)咀嚼の神経機構
(3)味覚
3 嚥下の中枢機構と嚥下反射(口腔期,咽頭期)
(1)嚥下運動
(2)嚥下の神経機構
4 食道の機能(食道期)
5 嚥下に関連する神経機構
(1)呼吸
(2)嘔吐
3章―摂食・嚥下のモデル
1 摂食・嚥下機能とは(才藤栄一)
(1)3期モデルおよび4期モデル(three stage model & four stage model)
(2)5期モデル(five stage model)
(3)プロセスモデル(process model)
2 哺乳類における口腔・咽頭・喉頭の比較形態学と摂食・嚥下機能の解剖(Rebecca Z.German 松尾浩一郎訳)
(1)臨床家のための比較形態学と進化生態学による洞察
(2)哺乳類の乳児期の解剖学的特徴と機能
(3)哺乳類の成体の解剖学的特徴
(4)哺乳類の成体の機能
(5)なぜ動物の摂食を研究するのか?
3 摂食・嚥下のプロセスモデル;生理学と運動学(松尾浩一郎,Jeffrey B.Palmer)
(1)摂食(eating)と嚥下(swallowing)のパラダイム
(2)4期モデルと液体の命令嚥下
(3)プロセスモデル
(4)プロセスモデルの臨床応用と将来の方向性
4 補足-各種条件下における液体嚥下(松尾浩一郎)
(1)連続嚥下中の食物動態と運動機能の変化
4章―摂食・嚥下機能と発達,加齢
1 発達と摂食・嚥下機能
(1)発達と摂食・嚥下機能の獲得過程(向井美惠)
(2)小児期の摂食・嚥下障害(田角 勝)
2 摂食・嚥下機能と加齢
(1)摂食・嚥下諸器官(石井雅之)
(2)口腔領域(植田耕一郎)
5章―摂食・嚥下に関与する諸因子
1 唾液と摂食・嚥下(伊藤加代子)
(1)唾液
(2)口腔乾燥症
2 栄養と摂食・嚥下(大越ひろ)
(1)食物の物性と摂食・嚥下
(2)食物のおいしさと飲み込みやすさ
3 呼吸と摂食・嚥下(熊倉勇美)
(1)呼吸のしくみ
(2)呼吸と嚥下
4 姿勢と摂食・嚥下(太田喜久夫)
(1)姿勢調節法の意義
(2)姿勢調節法の摂食・嚥下障害への適応
(3)食塊通過経路(流通方向)と姿勢
(4)姿勢調節法の適応における留意点
5 発声・構音と摂食・嚥下(伊藤元信)
(1)「発生・構音機能」と「摂食・嚥下機能」
(2)「発生・構音障害」と「摂食・嚥下障害」
(3)発生・構音障害と摂食・嚥下障害の評価・治療
臨床編I 序説
1章―摂食・嚥下リハビリテーション序説
1 チームアプローチの重要性藤島一郎
(1)チームアプローチが必要な理由
(2)チームアプローチに必要なこと
(3)チームアプローチの問題点
(4)チームアプローチ成功の鍵
2 リハビリテーション科医の立場から(本多知行)
3 耳鼻咽喉科医の立場から(津田豪太)
(1)嚥下機能評価
(2)外科的治療
4 歯科医師の立場から(植松 宏)
(1)歯科医療と摂食・嚥下リハビリテーション
(2)歯科からの取り組みとその特徴
(3)高齢社会における摂食・嚥下障害との対峙
5 看護師の立場から鎌倉やよい
(1)急性期からのリハビリテーションを担う
(2)摂食・嚥下障害看護認定看護師による協働
6 歯科衛生士の立場から(牛山京子)
(1)専門的口腔ケア
(2)食生活の支援
7 言語聴覚士(ST)の立場から(藤原百合)
8 理学療法士(PT)の立場から(太田清人)
(1)頸・体幹機能改善
(2)呼吸リハビリテーション
9 作業療法士(OT)の立場から(東嶋美佐子)
10 管理栄養士の立場から(河原和枝,太田弘子)
(1)栄養ケアマネジメントの流れ
(2)管理栄養士に求められるもの
臨床編II 評価・検査・診断・訓練法の基本
1章―摂食・嚥下障害の評価・検査・診断
1 診察(馬場 尊)
(1)問診(医療面接)―原疾患,現病歴,既往歴,主訴
(2)症状の把握
(3)身体所見
2 栄養評価(馬場 尊)
(1)栄養評価の重要性
(2)栄養評価の要点
3 スクリーニングの意義・検査の意義(戸原 玄)
4 各種スクリーニングテスト(戸原 玄)
(1)単一の標準化テスト
(2)複数の標準化テストの組み合わせ
(3)まとめ
5 嚥下造影(VF)(馬場 尊)
(1)検査の概要
(2)嚥下造影の準備
(3)嚥下造影の実際
(4)液体嚥下と咀嚼嚥下
(5)嚥下造影の所見
(6)異常所見への対応
(7)嚥下造影の限界
(8)嚥下造影の標準的検査法
6 嚥下内視鏡検査(VE)(藤島一郎)
(1)嚥下造影との比較
(2)嚥下内視鏡検査の具体的方法
(3)評価
7 小児の嚥下造影・嚥下内視鏡・呼吸動態(上気道)検査(北住映二)
(1)嚥下造影(VF)
(2)嚥下内視鏡検査(VE)
(3)呼吸動態(上気道)の検査
8 超音波エコー検査(US)
(1)検査の概要(内海明美)
(2)超音波エコー検査評価の要点(村田尚道)
(3)小児における超音波エコー検査(US)(村田尚道)
9 頸部聴診法(高橋浩二)
(1)頸部聴診法とは
(2)頸部聴診に用いる器具,試料
(3)頸部聴診法評価の要点
(4)小児の頸部聴診法
10 筋電図検査(加賀谷斉)
(1)針筋電図検査
(2)動作筋電図検査
11 CT,MRI,シンチグラフィなどその他の検査(谷本啓二)
(1)各検査の概要
(2)摂食・嚥下障害の新しい診断法
(3)研究への応用
2章―摂食・嚥下障害に対する訓練法
1 成人の間接訓練法の基本(岡田澄子)
(1)間接訓練の考え方と進め方
(2)間接訓練の手技
2 成人の直接訓練法の基本
(1)直接訓練法(清水充子)
(2)食具を用いた直接訓練法(小島千枝子)
3 呼吸訓練(神津 玲)
(1)摂食・嚥下リハビリテーションにおける呼吸訓練の意義
(2)呼吸訓練の実際
(3)排痰法
4 バルーンカテーテル拡張法(角谷直彦)
(1)バルーン拡張法の目的
(2)拡張訓練の実際
5 小児における訓練法
(1)間接訓練法(弘中祥司)
(2)直接訓練法(尾本和彦)
3章―摂食・嚥下障害と口腔衛生管理
1 摂食・嚥下障害がある小児の口腔衛生管理(大塚義顕)
(1)障害児の口腔衛生管理
(2)口腔機能と形態の悪循環
(3)重度障害児の口腔衛生管理の実際
(4)口腔衛生管理の留意点
(5)疾患別口腔症状と口腔衛生管理
(6)おわりに
2 成人期・老年期における口腔衛生管理(角 保徳)
(1)口腔衛生管理の必要性
(2)成人期における口腔衛生管理
(3)老年期における口腔衛生管理
3 急性期全身疾患およびICUにおける口腔衛生管理(大野友久)
(1)全身疾患急性期患者の口腔内
(2)口腔ケア
(3)歯科治療
(4)まとめ
4章―摂食・嚥下障害とリスク管理
1 誤嚥性肺炎(藤谷順子)
(1)分類と発症要因
(2)誤嚥性肺炎の予防
(3)誤嚥性肺炎の包括的治療
2 窒息・排痰(藤谷順子)
(1)窒息
(2)排痰
3 低栄養・脱水(藤谷順子)
(1)低栄養
(2)脱水
4 気管切開管理(高橋博達)
(1)気管切開の目的
(2)気管カニューレの種類と特徴
(3)気管切開孔閉鎖へのアプローチ
(4)気管切開と摂食・嚥下障害
5 感染防御(尿路感染と褥瘡)(高橋博達)
(1)尿路感染
(2)褥瘡
5章―摂食・嚥下障害と栄養
1 摂食・嚥下障害と栄養管理(東口志)
(1)栄養管理の概念
(2)高齢者医療と栄養管理
(3)摂食・嚥下障害患者の栄養管理
(4)経口摂取に向けた栄養管理
2 栄養サポートチーム(NST)(東口志)
(1)栄養サポートとNST
(2)NSTの誕生
(3)わが国独自のNST
(4)NSTの目的と役割
(5)NST活動の実際
(6)NST活動の効果
(7)おわりに
3 増粘食品(とろみ調整食品)(大越ひろ)
(1)増粘食品(とろみ調整食品)の定義
(2)増粘食品(とろみ調整食品)の分類
(3)添加濃度と硬さの関係
(4)添加飲料の影響
(5)飲料のテクスチャーを改良する方法
4 嚥下調整食の調理(金谷節子)
(1)嚥下調整食に求められるもの
(2)嚥下調整食の品質管理
(3)嚥下調整食調理に必要な調理器具類
(4)ゼラチン,増粘食品(とろみ調整食品)
(5)嚥下調整食の分類
(6)喜ばれるメニューレシピ
6章―経管栄養
1 経管栄養法の種類と適応(P田 拓)
(1)経管栄養法の種類
(2)経管栄養法の適応(選択基準)
(3)その他の経管栄養法
(4)静脈栄養法
2 経管栄養法の手順(P田 拓)
(1)経鼻経管栄養法(NG法)
(2)胃瘻栄養法
(3)間欠的経管栄養法(IC法)
3 経管栄養法の問題点と抜去(P田 拓)
(1)経管栄養法の合併症
(2)抜去
4 経腸栄養管理(櫻井洋一)
(1)経腸栄養施行ルートの選択
(2)胃瘻造設の適応
(3)腸瘻と経腸栄養管理
(4)胃瘻・腸瘻施行後の長期的栄養管理
7章―摂食・嚥下障害と看護・介護
1 看護の役割(鎌倉やよい)
2 生活場面における観察(深田順子,鎌倉やよい)
(1)摂食・嚥下機能の観察
(2)フィジカル・アセスメント
(3)異常の早期発見
3 生活のコーディネート(浅田美江,鎌倉やよい)
(1)生活への訓練の定着
(2)食事介助とその実施者
(3)食事介助時の安全
8章―在宅での摂食・嚥下障害管理の基本
1 在宅での摂食・嚥下障害者(藤島百合子)
(1)患者・家族に合わせた対応
(2)長期的できめ細かな管理計画
(3)緊急時の対応と危機管理
(4)在宅医療の限界と地域連携
2 かかわる職種と病診連携(溝尻源太郎)
(1)摂食・嚥下障害への取り組みの目的
(2)摂食・嚥下障害への取り組みの実際
(3)病診連携による検査・評価とリハビリテーションの分担の一例
3 在宅摂食・嚥下障害者への対応の目的と留意点(藤森まり子)
(1)在宅療養の問題点
(2)在宅療養支援の目的
(3)在宅療養の支援における留意点
(4)異常の早期発見と対処方法の指導
臨床編III 原疾患と評価・対処法
1章―成人期・老年期の疾患と摂食・嚥下障害の評価・対処法
1 脳血管障害(藤島一郎)
(1)摂食・嚥下障害の原因
(2)脳血管障害の摂食・嚥下障害の頻度
(3)摂食・嚥下障害を起こす三つの病態と鑑別,一側性大脳病変
(4)ハビリテーション
(5)対処法
(6)「thermal stimulation」と「喉のアイスマッサージ」について
2 Parkinson(パーキンソン)病(野ア園子)
(1)疾患の概要
(2)摂食・嚥下障害の特徴
(3)対処法
(4)摂食・嚥下障害に関連する合併症
(5)外科的治療による嚥下障害
3 筋ジストロフィー,筋疾患(野ア園子)
(1)疾患の概要
(2)摂食・嚥下障害の特徴
(3)対処法
(4)その他の筋疾患
4 Guillain-Barre(ギラン・バレー)症候群(松嶋康之,蜂須賀研二)
(1)疾患の概要
(2)評価
(3)対処法
5 頸静脈孔神経鞘腫(千坂洋巳,蜂須賀研二)
(1)疾患の概要
(2)術後の経過
6 その他の神経疾患(松嶋康之,蜂須賀研二)
(1)反回神経麻痺
(2)ポリオ後症候群
7 胃食道逆流症(P田 拓)
(1)疾患の概要
(2)診断
(3)対処法
(4)経管栄養とGERD
8 頭部外傷(片桐伯真)
(1) 疾患の概要
(2) 頭部外傷に伴う摂食・嚥下障害の評価と対応
9 口腔領域の腫瘍および術後(鄭 漢忠)
(1)疾患の概要
(2)口腔癌患者における摂食・嚥下リハビリテーション
(3)おわりに
10 咽喉頭領域の腫瘍(藤本保志,中島 務)
(1)頭頸部癌手術後の障害への対処
(2)おわりに
11 薬剤性摂食・嚥下障害(木内祐二)
(1)意識レベルや注意力を低下させる薬剤
(2)唾液分泌低下を起こす薬剤
(3)運動機能を障害する薬剤
(4)粘膜障害を起こす薬剤
12 精神疾患(統合失調症)(向井美惠)
(1)精神疾患(統合失調症)の摂食・嚥下障害
(2)評価
(3)臨床対応の基本
2章―小児期の疾患と摂食・嚥下障害の評価・対処法
1 解剖学的な構造異常を伴う疾患
(1)唇顎口蓋裂(舘村 卓)
(2)Pierre Robin(ピエール・ロバン)症候群(Pierre Robin syndrome〈Robin sequence〉)(舘村 卓)
(3)食道閉鎖症(田角 勝)
2 中枢神経,末梢神経,筋障害を伴う疾患
(1)脳性麻痺(北住映二)
(2)染色体異常,先天異常症候群(北住映二)
(3)筋ジストロフィー(野ア園子)
(4)先天性ミオパチー(野ア園子)
3 知的障害を伴う疾患(弘中祥司)
(1)Down(ダウン)症
(2)精神遅滞(MR)
4 自閉・行動障害を伴う疾患(篠ア昌子)
(1)広汎性発達障害(pervasive developmental disorder;自閉症スペクトラム)
(2)AD/HD(注意欠陥多動性障害)
5 その他(田角 勝)
(1)拒食(摂食拒否)
(2)医原性栄養過剰症と幼児経管栄養依存症
臨床編IV 摂食・嚥下障害への再建的対応
1章―摂食・嚥下障害と外科的対応
1 口腔領域への対応(鄭 漢忠)
(1)外科的手技の適応
(2)歯槽提形成術
(3)まとめ
2 咽頭・喉頭(気道)領域への対応(桜井一生)
(1)嚥下機能改善手術
(2)誤嚥防止手術
3 胃・食道領域への対応(土岐 彰)
(1)胃内視鏡の挿入が可能な場合
(2)PEGが不可能な場合
(3)胃内容の逆流がある場合
(4)その他胃食道逆流症に対する根治的手術
(5)特殊な病態
2章―摂食・嚥下障害と歯科補綴的対応
1 嚥下機能補助装置とは(向井美惠)
2 舌接触補助床(PAP)による対応(舘村 卓)
(1)PAPとは
(2)PAPの製作法
(3)咀嚼運動における舌-口蓋接触圧とPAP
(4)PAPと食形態
3 軟口蓋挙上装置(PLP)による対応(鄭 漢忠)
(1)PLPとは
(2)PLPの構造とメカニズム
(3)特殊なタイプのPLP
(4)PLP装着にあたって
4 Swalloaid(嚥下補助装置)による対応(菊谷 武,向井美恵)
5 その他の補綴装置による対応(菊谷 武)
(1)口唇閉鎖を補う補綴装置(口唇閉鎖床)
(2)咬合を維持する補綴装置
(3)人工舌床
6 義歯による対応(植田耕一郎)
(1)義歯装着に関する問題点
(2)訓練用装置としての義歯
(3)義歯管理自立のための支援
実践編 摂食・嚥下リハビリテーションモデル
1章―チームアプローチの実際とケースプレゼンテーション(馬場 尊)
(1)摂食・嚥下リハビリテーションの実践手順の原則
(2)チームアプローチ
(3)まとめ
2章―摂食・嚥下障害に対するリハビリテーション科の対応例
1 仮性球麻痺への対応例(石井雅之)
2 球麻痺への対応例(三石敬之)
3 誤嚥性肺炎,高齢者の摂食・嚥下障害への対応例(薛 克良)
(1)誤嚥性肺炎
(2)高齢者の摂食・嚥下障害
3章―摂食・嚥下障害に対する耳鼻咽喉科・外科の対応例
1 脳血管障害による摂食・嚥下障害への機能改善手術(唐帆健浩)
2 誤嚥防止手術(岩田義弘)
(1)手術の概要
(2)手術を行う際の留意点
4章―摂食・嚥下障害に対する歯科の対応例
1 補綴的対応例藤本篤士
(1)機能印象法を応用した対応例
(2)まとめ
2 口腔外科的対応例(高橋浩二,代田達夫)
3 口腔ケアを主とした対応例(精神疾患患者への対応例)(高橋浩二)
(1)精神疾患患者への対応の実際
5章―摂食・嚥下障害に対する看護師の対応例
1 脳血管障害急性期への対応例(宇佐美康子,鎌倉やよい)
2 NSTとの協働による対応例(今田智美,巨島文子)
3 嚥下外来における対応例(三鬼達人,馬場 尊)
(1)摂食・嚥下リハビリテーションの流れ
(2)看護師の役割
6章―摂食・嚥下障害に対する言語聴覚士(ST)の対応例
1 リハビリテーション科担当症例への対応例
(1)脳血管障害症例への対応(宮崎彰子,熊倉勇美)
(2)口腔・中咽頭癌症例等への対応例(熊倉勇美)
2 耳鼻咽喉科症例への対応例(濱川真己子,熊倉勇美)
(1)摂食・嚥下訓練の実際
(2)まとめ
3 小児疾患症例への対応例(小坂美鶴,熊倉勇美)
(1)小児の摂食・嚥下障害のアプローチ
(2)問題点とその対応
7章―在宅摂食・嚥下障害者への対応例
1 開業医の対応例(藤島百合子)
(1)地域におけるチームアプローチ
(2)地域における在宅管理の実際
2 開業歯科医の対応例(角町正勝)
(1)摂食・嚥下障害と歯科の役割
(2)摂食・嚥下障害者への支援
3 言語聴覚士(ST)の対応例(名古将太郎,熊倉勇美)
(1)通所系サービスでの在宅患者へのかかわり
(2)訪問リハでの在宅患者へのかかわり
(3)今後の展望
文献
用語リスト(馬場 尊)
索引
1章―リハビリテーション医学総論(才藤栄一)
1 リハビリテーション医学の対象
(1)リハビリテーション医学が扱う活動障害
(2)リハビリテーション医学が扱う臓器系
2 リハビリテーション医学に必要な概念体系
(1)運動学
(2)障害階層論
3 リハビリテーション医学の介入法
(1)システムとしての解決
(2)健常部の重要性
(3)帰結予測の重要性
(4)ハビリテーション医療の専門家
(5)リハビリテーションチームの形態
4 リハビリテーション医学の四つの対応法
(1)障害者の包括的医学管理(comprehensive medical management for disabled)
(2)活動-機能-構造連関(activity-function-structure relationship)
(3)治療的学習(therapeutic learning)
(4)支援システム(assistive system)
2章―摂食・嚥下リハビリテーション総論
1 はじめに(才藤栄一)
(1)摂食・嚥下障害とは
(2)摂食・嚥下リハビリテーションの臨床
(3)摂食・嚥下リハビリテーションの基礎知識
2 小児の摂食・嚥下リハビリテーション(向井美惠)
(1)障害の分類と特徴
(2)発達過程と機能障害
3 成人の摂食・嚥下リハビリテーション(才藤栄一)
(1)成人の摂食・嚥下障害の特徴
(2)摂食・嚥下障害の評価・診断
(3)摂食・嚥下障害への対応
(4)陥りたくない二分法的思考
基礎編
1章―摂食・嚥下器官の解剖
1 口腔の構造(井出吉信)
(1)口腔粘膜
(2)口唇
(3)口蓋
(4)頬
(5)舌
(6)歯
(7)唾液腺
2 鼻腔,咽頭,喉頭,食道の構造(肥田岳彦)
(1)鼻腔
(2)咽頭
(3)喉頭
(4)食道
3 摂食・嚥下に関与する筋(井出吉信)
(1)口裂周囲の表情筋群
(2)咀嚼筋群
(3)舌骨上筋・舌骨下筋群
(4)舌筋群
(5)軟口蓋の筋群
(6)咽頭の筋群
(7)喉頭の筋群
2章―摂食・嚥下機能の生理(山田好秋)
1 食物の認知と取り込み(先行期)
2 食物の咀嚼と味の伝達(準備期〈咀嚼期〉)
(1)咀嚼運動
(2)咀嚼の神経機構
(3)味覚
3 嚥下の中枢機構と嚥下反射(口腔期,咽頭期)
(1)嚥下運動
(2)嚥下の神経機構
4 食道の機能(食道期)
5 嚥下に関連する神経機構
(1)呼吸
(2)嘔吐
3章―摂食・嚥下のモデル
1 摂食・嚥下機能とは(才藤栄一)
(1)3期モデルおよび4期モデル(three stage model & four stage model)
(2)5期モデル(five stage model)
(3)プロセスモデル(process model)
2 哺乳類における口腔・咽頭・喉頭の比較形態学と摂食・嚥下機能の解剖(Rebecca Z.German 松尾浩一郎訳)
(1)臨床家のための比較形態学と進化生態学による洞察
(2)哺乳類の乳児期の解剖学的特徴と機能
(3)哺乳類の成体の解剖学的特徴
(4)哺乳類の成体の機能
(5)なぜ動物の摂食を研究するのか?
3 摂食・嚥下のプロセスモデル;生理学と運動学(松尾浩一郎,Jeffrey B.Palmer)
(1)摂食(eating)と嚥下(swallowing)のパラダイム
(2)4期モデルと液体の命令嚥下
(3)プロセスモデル
(4)プロセスモデルの臨床応用と将来の方向性
4 補足-各種条件下における液体嚥下(松尾浩一郎)
(1)連続嚥下中の食物動態と運動機能の変化
4章―摂食・嚥下機能と発達,加齢
1 発達と摂食・嚥下機能
(1)発達と摂食・嚥下機能の獲得過程(向井美惠)
(2)小児期の摂食・嚥下障害(田角 勝)
2 摂食・嚥下機能と加齢
(1)摂食・嚥下諸器官(石井雅之)
(2)口腔領域(植田耕一郎)
5章―摂食・嚥下に関与する諸因子
1 唾液と摂食・嚥下(伊藤加代子)
(1)唾液
(2)口腔乾燥症
2 栄養と摂食・嚥下(大越ひろ)
(1)食物の物性と摂食・嚥下
(2)食物のおいしさと飲み込みやすさ
3 呼吸と摂食・嚥下(熊倉勇美)
(1)呼吸のしくみ
(2)呼吸と嚥下
4 姿勢と摂食・嚥下(太田喜久夫)
(1)姿勢調節法の意義
(2)姿勢調節法の摂食・嚥下障害への適応
(3)食塊通過経路(流通方向)と姿勢
(4)姿勢調節法の適応における留意点
5 発声・構音と摂食・嚥下(伊藤元信)
(1)「発生・構音機能」と「摂食・嚥下機能」
(2)「発生・構音障害」と「摂食・嚥下障害」
(3)発生・構音障害と摂食・嚥下障害の評価・治療
臨床編I 序説
1章―摂食・嚥下リハビリテーション序説
1 チームアプローチの重要性藤島一郎
(1)チームアプローチが必要な理由
(2)チームアプローチに必要なこと
(3)チームアプローチの問題点
(4)チームアプローチ成功の鍵
2 リハビリテーション科医の立場から(本多知行)
3 耳鼻咽喉科医の立場から(津田豪太)
(1)嚥下機能評価
(2)外科的治療
4 歯科医師の立場から(植松 宏)
(1)歯科医療と摂食・嚥下リハビリテーション
(2)歯科からの取り組みとその特徴
(3)高齢社会における摂食・嚥下障害との対峙
5 看護師の立場から鎌倉やよい
(1)急性期からのリハビリテーションを担う
(2)摂食・嚥下障害看護認定看護師による協働
6 歯科衛生士の立場から(牛山京子)
(1)専門的口腔ケア
(2)食生活の支援
7 言語聴覚士(ST)の立場から(藤原百合)
8 理学療法士(PT)の立場から(太田清人)
(1)頸・体幹機能改善
(2)呼吸リハビリテーション
9 作業療法士(OT)の立場から(東嶋美佐子)
10 管理栄養士の立場から(河原和枝,太田弘子)
(1)栄養ケアマネジメントの流れ
(2)管理栄養士に求められるもの
臨床編II 評価・検査・診断・訓練法の基本
1章―摂食・嚥下障害の評価・検査・診断
1 診察(馬場 尊)
(1)問診(医療面接)―原疾患,現病歴,既往歴,主訴
(2)症状の把握
(3)身体所見
2 栄養評価(馬場 尊)
(1)栄養評価の重要性
(2)栄養評価の要点
3 スクリーニングの意義・検査の意義(戸原 玄)
4 各種スクリーニングテスト(戸原 玄)
(1)単一の標準化テスト
(2)複数の標準化テストの組み合わせ
(3)まとめ
5 嚥下造影(VF)(馬場 尊)
(1)検査の概要
(2)嚥下造影の準備
(3)嚥下造影の実際
(4)液体嚥下と咀嚼嚥下
(5)嚥下造影の所見
(6)異常所見への対応
(7)嚥下造影の限界
(8)嚥下造影の標準的検査法
6 嚥下内視鏡検査(VE)(藤島一郎)
(1)嚥下造影との比較
(2)嚥下内視鏡検査の具体的方法
(3)評価
7 小児の嚥下造影・嚥下内視鏡・呼吸動態(上気道)検査(北住映二)
(1)嚥下造影(VF)
(2)嚥下内視鏡検査(VE)
(3)呼吸動態(上気道)の検査
8 超音波エコー検査(US)
(1)検査の概要(内海明美)
(2)超音波エコー検査評価の要点(村田尚道)
(3)小児における超音波エコー検査(US)(村田尚道)
9 頸部聴診法(高橋浩二)
(1)頸部聴診法とは
(2)頸部聴診に用いる器具,試料
(3)頸部聴診法評価の要点
(4)小児の頸部聴診法
10 筋電図検査(加賀谷斉)
(1)針筋電図検査
(2)動作筋電図検査
11 CT,MRI,シンチグラフィなどその他の検査(谷本啓二)
(1)各検査の概要
(2)摂食・嚥下障害の新しい診断法
(3)研究への応用
2章―摂食・嚥下障害に対する訓練法
1 成人の間接訓練法の基本(岡田澄子)
(1)間接訓練の考え方と進め方
(2)間接訓練の手技
2 成人の直接訓練法の基本
(1)直接訓練法(清水充子)
(2)食具を用いた直接訓練法(小島千枝子)
3 呼吸訓練(神津 玲)
(1)摂食・嚥下リハビリテーションにおける呼吸訓練の意義
(2)呼吸訓練の実際
(3)排痰法
4 バルーンカテーテル拡張法(角谷直彦)
(1)バルーン拡張法の目的
(2)拡張訓練の実際
5 小児における訓練法
(1)間接訓練法(弘中祥司)
(2)直接訓練法(尾本和彦)
3章―摂食・嚥下障害と口腔衛生管理
1 摂食・嚥下障害がある小児の口腔衛生管理(大塚義顕)
(1)障害児の口腔衛生管理
(2)口腔機能と形態の悪循環
(3)重度障害児の口腔衛生管理の実際
(4)口腔衛生管理の留意点
(5)疾患別口腔症状と口腔衛生管理
(6)おわりに
2 成人期・老年期における口腔衛生管理(角 保徳)
(1)口腔衛生管理の必要性
(2)成人期における口腔衛生管理
(3)老年期における口腔衛生管理
3 急性期全身疾患およびICUにおける口腔衛生管理(大野友久)
(1)全身疾患急性期患者の口腔内
(2)口腔ケア
(3)歯科治療
(4)まとめ
4章―摂食・嚥下障害とリスク管理
1 誤嚥性肺炎(藤谷順子)
(1)分類と発症要因
(2)誤嚥性肺炎の予防
(3)誤嚥性肺炎の包括的治療
2 窒息・排痰(藤谷順子)
(1)窒息
(2)排痰
3 低栄養・脱水(藤谷順子)
(1)低栄養
(2)脱水
4 気管切開管理(高橋博達)
(1)気管切開の目的
(2)気管カニューレの種類と特徴
(3)気管切開孔閉鎖へのアプローチ
(4)気管切開と摂食・嚥下障害
5 感染防御(尿路感染と褥瘡)(高橋博達)
(1)尿路感染
(2)褥瘡
5章―摂食・嚥下障害と栄養
1 摂食・嚥下障害と栄養管理(東口志)
(1)栄養管理の概念
(2)高齢者医療と栄養管理
(3)摂食・嚥下障害患者の栄養管理
(4)経口摂取に向けた栄養管理
2 栄養サポートチーム(NST)(東口志)
(1)栄養サポートとNST
(2)NSTの誕生
(3)わが国独自のNST
(4)NSTの目的と役割
(5)NST活動の実際
(6)NST活動の効果
(7)おわりに
3 増粘食品(とろみ調整食品)(大越ひろ)
(1)増粘食品(とろみ調整食品)の定義
(2)増粘食品(とろみ調整食品)の分類
(3)添加濃度と硬さの関係
(4)添加飲料の影響
(5)飲料のテクスチャーを改良する方法
4 嚥下調整食の調理(金谷節子)
(1)嚥下調整食に求められるもの
(2)嚥下調整食の品質管理
(3)嚥下調整食調理に必要な調理器具類
(4)ゼラチン,増粘食品(とろみ調整食品)
(5)嚥下調整食の分類
(6)喜ばれるメニューレシピ
6章―経管栄養
1 経管栄養法の種類と適応(P田 拓)
(1)経管栄養法の種類
(2)経管栄養法の適応(選択基準)
(3)その他の経管栄養法
(4)静脈栄養法
2 経管栄養法の手順(P田 拓)
(1)経鼻経管栄養法(NG法)
(2)胃瘻栄養法
(3)間欠的経管栄養法(IC法)
3 経管栄養法の問題点と抜去(P田 拓)
(1)経管栄養法の合併症
(2)抜去
4 経腸栄養管理(櫻井洋一)
(1)経腸栄養施行ルートの選択
(2)胃瘻造設の適応
(3)腸瘻と経腸栄養管理
(4)胃瘻・腸瘻施行後の長期的栄養管理
7章―摂食・嚥下障害と看護・介護
1 看護の役割(鎌倉やよい)
2 生活場面における観察(深田順子,鎌倉やよい)
(1)摂食・嚥下機能の観察
(2)フィジカル・アセスメント
(3)異常の早期発見
3 生活のコーディネート(浅田美江,鎌倉やよい)
(1)生活への訓練の定着
(2)食事介助とその実施者
(3)食事介助時の安全
8章―在宅での摂食・嚥下障害管理の基本
1 在宅での摂食・嚥下障害者(藤島百合子)
(1)患者・家族に合わせた対応
(2)長期的できめ細かな管理計画
(3)緊急時の対応と危機管理
(4)在宅医療の限界と地域連携
2 かかわる職種と病診連携(溝尻源太郎)
(1)摂食・嚥下障害への取り組みの目的
(2)摂食・嚥下障害への取り組みの実際
(3)病診連携による検査・評価とリハビリテーションの分担の一例
3 在宅摂食・嚥下障害者への対応の目的と留意点(藤森まり子)
(1)在宅療養の問題点
(2)在宅療養支援の目的
(3)在宅療養の支援における留意点
(4)異常の早期発見と対処方法の指導
臨床編III 原疾患と評価・対処法
1章―成人期・老年期の疾患と摂食・嚥下障害の評価・対処法
1 脳血管障害(藤島一郎)
(1)摂食・嚥下障害の原因
(2)脳血管障害の摂食・嚥下障害の頻度
(3)摂食・嚥下障害を起こす三つの病態と鑑別,一側性大脳病変
(4)ハビリテーション
(5)対処法
(6)「thermal stimulation」と「喉のアイスマッサージ」について
2 Parkinson(パーキンソン)病(野ア園子)
(1)疾患の概要
(2)摂食・嚥下障害の特徴
(3)対処法
(4)摂食・嚥下障害に関連する合併症
(5)外科的治療による嚥下障害
3 筋ジストロフィー,筋疾患(野ア園子)
(1)疾患の概要
(2)摂食・嚥下障害の特徴
(3)対処法
(4)その他の筋疾患
4 Guillain-Barre(ギラン・バレー)症候群(松嶋康之,蜂須賀研二)
(1)疾患の概要
(2)評価
(3)対処法
5 頸静脈孔神経鞘腫(千坂洋巳,蜂須賀研二)
(1)疾患の概要
(2)術後の経過
6 その他の神経疾患(松嶋康之,蜂須賀研二)
(1)反回神経麻痺
(2)ポリオ後症候群
7 胃食道逆流症(P田 拓)
(1)疾患の概要
(2)診断
(3)対処法
(4)経管栄養とGERD
8 頭部外傷(片桐伯真)
(1) 疾患の概要
(2) 頭部外傷に伴う摂食・嚥下障害の評価と対応
9 口腔領域の腫瘍および術後(鄭 漢忠)
(1)疾患の概要
(2)口腔癌患者における摂食・嚥下リハビリテーション
(3)おわりに
10 咽喉頭領域の腫瘍(藤本保志,中島 務)
(1)頭頸部癌手術後の障害への対処
(2)おわりに
11 薬剤性摂食・嚥下障害(木内祐二)
(1)意識レベルや注意力を低下させる薬剤
(2)唾液分泌低下を起こす薬剤
(3)運動機能を障害する薬剤
(4)粘膜障害を起こす薬剤
12 精神疾患(統合失調症)(向井美惠)
(1)精神疾患(統合失調症)の摂食・嚥下障害
(2)評価
(3)臨床対応の基本
2章―小児期の疾患と摂食・嚥下障害の評価・対処法
1 解剖学的な構造異常を伴う疾患
(1)唇顎口蓋裂(舘村 卓)
(2)Pierre Robin(ピエール・ロバン)症候群(Pierre Robin syndrome〈Robin sequence〉)(舘村 卓)
(3)食道閉鎖症(田角 勝)
2 中枢神経,末梢神経,筋障害を伴う疾患
(1)脳性麻痺(北住映二)
(2)染色体異常,先天異常症候群(北住映二)
(3)筋ジストロフィー(野ア園子)
(4)先天性ミオパチー(野ア園子)
3 知的障害を伴う疾患(弘中祥司)
(1)Down(ダウン)症
(2)精神遅滞(MR)
4 自閉・行動障害を伴う疾患(篠ア昌子)
(1)広汎性発達障害(pervasive developmental disorder;自閉症スペクトラム)
(2)AD/HD(注意欠陥多動性障害)
5 その他(田角 勝)
(1)拒食(摂食拒否)
(2)医原性栄養過剰症と幼児経管栄養依存症
臨床編IV 摂食・嚥下障害への再建的対応
1章―摂食・嚥下障害と外科的対応
1 口腔領域への対応(鄭 漢忠)
(1)外科的手技の適応
(2)歯槽提形成術
(3)まとめ
2 咽頭・喉頭(気道)領域への対応(桜井一生)
(1)嚥下機能改善手術
(2)誤嚥防止手術
3 胃・食道領域への対応(土岐 彰)
(1)胃内視鏡の挿入が可能な場合
(2)PEGが不可能な場合
(3)胃内容の逆流がある場合
(4)その他胃食道逆流症に対する根治的手術
(5)特殊な病態
2章―摂食・嚥下障害と歯科補綴的対応
1 嚥下機能補助装置とは(向井美惠)
2 舌接触補助床(PAP)による対応(舘村 卓)
(1)PAPとは
(2)PAPの製作法
(3)咀嚼運動における舌-口蓋接触圧とPAP
(4)PAPと食形態
3 軟口蓋挙上装置(PLP)による対応(鄭 漢忠)
(1)PLPとは
(2)PLPの構造とメカニズム
(3)特殊なタイプのPLP
(4)PLP装着にあたって
4 Swalloaid(嚥下補助装置)による対応(菊谷 武,向井美恵)
5 その他の補綴装置による対応(菊谷 武)
(1)口唇閉鎖を補う補綴装置(口唇閉鎖床)
(2)咬合を維持する補綴装置
(3)人工舌床
6 義歯による対応(植田耕一郎)
(1)義歯装着に関する問題点
(2)訓練用装置としての義歯
(3)義歯管理自立のための支援
実践編 摂食・嚥下リハビリテーションモデル
1章―チームアプローチの実際とケースプレゼンテーション(馬場 尊)
(1)摂食・嚥下リハビリテーションの実践手順の原則
(2)チームアプローチ
(3)まとめ
2章―摂食・嚥下障害に対するリハビリテーション科の対応例
1 仮性球麻痺への対応例(石井雅之)
2 球麻痺への対応例(三石敬之)
3 誤嚥性肺炎,高齢者の摂食・嚥下障害への対応例(薛 克良)
(1)誤嚥性肺炎
(2)高齢者の摂食・嚥下障害
3章―摂食・嚥下障害に対する耳鼻咽喉科・外科の対応例
1 脳血管障害による摂食・嚥下障害への機能改善手術(唐帆健浩)
2 誤嚥防止手術(岩田義弘)
(1)手術の概要
(2)手術を行う際の留意点
4章―摂食・嚥下障害に対する歯科の対応例
1 補綴的対応例藤本篤士
(1)機能印象法を応用した対応例
(2)まとめ
2 口腔外科的対応例(高橋浩二,代田達夫)
3 口腔ケアを主とした対応例(精神疾患患者への対応例)(高橋浩二)
(1)精神疾患患者への対応の実際
5章―摂食・嚥下障害に対する看護師の対応例
1 脳血管障害急性期への対応例(宇佐美康子,鎌倉やよい)
2 NSTとの協働による対応例(今田智美,巨島文子)
3 嚥下外来における対応例(三鬼達人,馬場 尊)
(1)摂食・嚥下リハビリテーションの流れ
(2)看護師の役割
6章―摂食・嚥下障害に対する言語聴覚士(ST)の対応例
1 リハビリテーション科担当症例への対応例
(1)脳血管障害症例への対応(宮崎彰子,熊倉勇美)
(2)口腔・中咽頭癌症例等への対応例(熊倉勇美)
2 耳鼻咽喉科症例への対応例(濱川真己子,熊倉勇美)
(1)摂食・嚥下訓練の実際
(2)まとめ
3 小児疾患症例への対応例(小坂美鶴,熊倉勇美)
(1)小児の摂食・嚥下障害のアプローチ
(2)問題点とその対応
7章―在宅摂食・嚥下障害者への対応例
1 開業医の対応例(藤島百合子)
(1)地域におけるチームアプローチ
(2)地域における在宅管理の実際
2 開業歯科医の対応例(角町正勝)
(1)摂食・嚥下障害と歯科の役割
(2)摂食・嚥下障害者への支援
3 言語聴覚士(ST)の対応例(名古将太郎,熊倉勇美)
(1)通所系サービスでの在宅患者へのかかわり
(2)訪問リハでの在宅患者へのかかわり
(3)今後の展望
文献
用語リスト(馬場 尊)
索引