やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監修の序
 米国や英国では,スマイルチャートが活用されている.たとえば,就職するときも「あなたは人前で何本歯が見せられますか?」という質問項目があり,実際に笑ったときに何本の歯が見せられるかが採用の大きな基準となっている.人前でSmileできないような人を雇っても,どうしようもないということである.
 歯列矯正によって歯ならびを整えたり,漂白によって歯を白くすると,その人の心は豊かになりactiveになる.つまり,美しい顔が豊かな心をつくり,また,豊かな心が美しい顔をつくるのである.歯科医師は歯だけを治すのではなく心をも治すのであり,真の歯科医業とは患者さんの心を治す職業だと,私は思っている.
 美容口腔管理学会(ACOC:Academy of Cosmetic Oral Care)を設立してもう5年が経過した.2002年には臨床器材研究所コスメティックリサーチ部門から『ホワイトニングのリーセントステータス』(医歯薬出版)が発刊され,読者から高い評価を得た.今回の『ホワイトニングのマーケティングストラテジー』はその続編として,川原 大,中井宏昌,添田義博の3氏により執筆されたものである.臨床現場で役立つ実践的な内容となっているので,読者の皆様にもWhiteningとAnti-Halitosisを積極的に採用していただきたい.WhiteningとAnti-Halitosisは,Oral Careへのモチベーションを高めるための大きな推進力となるはずである.
 2006年8月30日 米寿
 大阪歯科大学名誉教授
 臨床器材研究所所長
 美容口腔管理学会初代会長
 川原春幸


 患者さん本位の治療システムであるPatients Oriented System(POS)が提唱され,歯科治療にもその考え方がさけばれて久しい.しかしながら,多くの学術論文や学術雑誌に掲載されている内容の多くが,いわゆるEvidence Based Medicine(EBM)の考え方に基づいた科学的正当性を競い合うような記述であると感ずるのは筆者ばかりではあるまい.
 本書の前身である『ホワイトニングのリーセントステータス』(2002年発行)は,いわゆる「ハウツーモノ」の書物であったが,発行後によせられたさまざまな疑問を整理してみると,「どのようにしてクライアントの心をつかんでホワイトニングのクライアントを獲得するのか?」という疑問が大半であった.患者さん(クライアント)の期待に応えることが歯科医療の最大の目的であり責務であるはずなのに,前著では治療の技術論やEBMの情報などに目をうばわれ,十分な情報提示が行われていなかったのであろう.その事実を認め,本書を企画・執筆した次第である.
 本書では,「クライアントに十分なTreatment Optionを提示できるか?」「そのオプションがクライアントの希望をかなえられる内容かどうか?」「そのオプションを選択した場合の結果を十分に説明でき,満足させられると予測できるか?」に重点をおき,クライアントのWANTS(需要)別に,クライアントのWANTSにいち早く応えられる方法をまとめてみた.いささか奇異な試みではあるが,臨床経験にとぼしい初学者においても,ホワイトニングを希望するクライアントのWANTSに応えられるような内容にしたつもりである.
 なお,本書の執筆にあたってはさまざまな企業の関係者にお世話になった.下記にその社名を表記し謝意を表したい.
 株式会社城楠歯科商会 サイブロンデンタルハニックスフィトンタオ
 株式会社モモセ歯科商会 株式会社松風 白水貿易株式会社 FGM Japan
 東京歯科産業株式会社 サンデンタル 株式会社ジーシー
 ウェーブインターナショナル
 2006年9月
 川原 大 中井宏昌 添田義博
 監修の序
 序文
第1章 クライアントのWANTSは?
 1.ホワイトニングのWANTSとは?
 2.歯のクリーニング(PMTC)を求めるクライアントのWANTS
 3.オフィスブリーチングを求めるクラインアントのWANTS
 4.ホームブリーチングを求めるクライアントのWANTS
 5.コーティングを求めるクライアントのWANTS
  1)OTC
  2)光重合レジンによるコーティング
 6.カバーリングを求めるクライアントのWANTS
 7.可撤性床義歯を装着するクライアントのWANTS
 8.口臭の改善を求めるクライアント
第2章 ホワイトニングのための診査と臨床診断
 1.全身疾患に起因する禁忌症
  1)絶対的禁忌症
  2)相対的禁忌症
 2.局所的な条件に起因する禁忌症
  1)エナメル質減形成とエナメル質形成不全症
  2)象牙質形成不全症
  3)象牙質知覚過敏症
  4)齲蝕
  5)歯肉炎
  6)急性症状を伴うシビアな歯周炎
 3.ホワイトニングの際に気になる因子
  1)歯髄の生死
  2)歯の亀裂
  3)ホワイトスポット
  4)バンディング
  5)齲蝕の大きさ
  6)修復物と補綴物
  7)年齢
  8)嗜好品
  9)色相の診断と漂白の難易度
  10)歯種による漂白速度の相違
  11)歯の部位による漂白速度の相違
 4.診査・診断に必要な準備
  1)術前写真
  2)シェードガイド
  3)測色計
  4)拡大鏡
  5)イルミネーションライト
  6)デンタルエックス線写真
 5.臨床診断の症例
 ■多大な要求をするクラインアントへの対応
第3章 コスメティックPMTC
 1.なぜ「コスメティック」PMTCなのか?
 2.クライアントの求めているクリーニングとは?
 3.器材の選択
  1)研磨材選択の4つのキーポイント
  2)1種類のペーストで仕上げ研磨からつや出しまでできる研磨材は?
  3)光沢を増すために適した研磨材は?
  4)齲蝕のリスクコントロールを目的とした研磨材は?
  5)漂白の術前処置を目的とした研磨材は?
  6)漂白の術後処置を目的とした研磨材は?
  7)定期検診・サポーティブケアを目的とした研磨材は?
 4.PMTC用の機器の選択
  1)モータードライブンツール
  2)エアドライブンツール
 5.コスメティックPMTCのClinical Tips
  1)模型上でのモータードライブンツールのイメージトレーニング
  2)モータードライブンツールの実践
  3)エアドライブンツールの実践
 6.ツールの組み合わせと料金設定
第4章 オフィスブリーチング
 1.オフィスブリーチングの概念
  1)オフィスブリーチングシステムの現在
 2.オフィスブリーチングの術式
 3.オフィースブリーチングで最も注意することは?
  1)コンサルテーション
  2)知覚過敏様症状
  3)所要時間
  4)ホームブリーチングの併用
  5)漂白剤の付着
 4.システムの選択と料金設定
 ■ホワイトニングのクライアントを増やすために
第5章 ホームブリーチング
 1.オフィスブリーチングとホームブリーチングの関係
 2.ホームブリーチングの選択基準
  1)過酸化尿素? それとも過酸化水素?
  2)薬剤の濃度
  3)薬剤の保存性に基づく選択基準
  4)ほかのオフィスと差をつけるための選択基準
 3.ホームブリーチングのためのトレーについて
  1)模型製作の要点
  2)トレーのデザイン
  3)即日トレーの製作
 4.ホームブリーチングのクレームと合併症
 ■トレーケース
第6章 OTCとその周辺
 1.OTCとは
 2.OTC製品で注意しておくこと
 3.OTCのタイプと特徴
  1)トレータイプ
  2)ストリップスタイプ
  3)ペイントオンタイプ(マニキュアタイプ)
  4)ペンタイプ
  5)歯のマニキュア
第7章 コスメティックコンポジットボンディングレストレーション
 1.コスメティックコンポジットボンディングレストレーションとMI
 2.CCBRと従来のコンポジットレジン(CR)修復
 3.CCBRに必要な材料・器材
  1)コンポジットレジンのカラーバリエーション
  2)切削用ダイヤモンドポイントとカーバイドバー
  3)充填用インスツルメント
  4)ボンディングシステム
  5)マトリックス
  6)クサビ
 4.CCBRのトレーニング
  1)臼歯部咬合面のトレーニング
  2)前歯のトレーニング
 5.CCBRの臨床例
 ■カバーリング
 ■コーティング
 ■コスメティックデンチャー(ホワイトデンチャー)
第8章 歯肉の着色への対応
 1.歯肉の着色とホワイトニングの関係
 2.歯肉のメラニン色素の除去
  1)化学的表皮剥離法(Chemical Peeling)
  2)物理的なメラニンの除去法
 3.Er:YAGレーザーによるメラニン色素の除去症例
第9章 口臭
 1.口臭について
 2.口臭の分類
  1)病的分類
  2)非病的分類
 3.口臭の測定
  1)オーラルクロマ
  2)MSハリメーター
  3)ブレストロン
  4)アテイン
 4.口臭をもつクライアントへの対応
第10章 マーケティングストラテジー(戦略)
 1.マーケティング動向の把握
  1)統合医療市場の動向
  2)エステティックサロンのマーケティング動向
  3)オーラルケア商品の物品販売をもっと重視すべき
 2.待合室の利用とオフィスのイメージづくり
  1)情報提供の方法とクライアントの感じ方
  2)クライアントから問い合わせを引き出す
  3)アクティブなオフィスのために
 3.ホームケアとプロケア
  1)ホームケア
  2)プロケアの考え方
 製品一覧
 索引