序
本書の企画について,出版社より打診された際,正直あまり気が進まなかった.理由としては,「歯内療法」と「補綴」という2つの専門領域にまたがるこのトピックは,それぞれの専門家の意見が一致していない論点が多くあり,取り上げ方が難しいことを知っていたからである.かといって,どちらかの専門家だけでまとめたとしても偏った意見になってしまいがちで,それもまた問題である.
この領域の大きなポイントは3つあり,「歯根破折」,「細菌漏洩」,「修復物脱離」である.この3つのどこに比重をおいた処置を行い,論じるのかは,術者や演者によって異なってくる.また,各論点における専門医ならではの知識の偏りも,意見の集約が困難な理由になっている.たとえば,歯根破折や細菌漏洩の原因や対策について,一般歯科医や補綴歯科医は深く学ぶ機会は限られているし,歯内療法専門医が修復物脱離に関する力学的,技術的なことを習得するための時間も十分とはいえない.
本書は,2名の歯内療法専門医と1名の補綴専門医,そして,歯内療法と修復処置に研鑽を積んだ1名の一般歯科医という,バランスのとれた執筆陣となった.このことは,本書の内容が偏りなく,それぞれの専門性を深く考察しながら構成されるための重要な要因となっている.
各章はそれぞれの専門性から,必ずおさえなければいけない臨床的,文献的ポイントが示され,解説されている.本書の最も特徴的な点は,歯内療法と修復処置のはざまである「築造処置」について,各術者の専門性の違いをふまえた視点で十分に語られているところであろう.最終章(Chapter 4)では,それまでに解説されたコンセプトやテクニックを用いた症例を,読者がイメージしやすい形で提示している.
本書が日本におけるこの領域のメルクマールとなり,多くの歯科医師にとって福音となってほしい.そして,日本中の歯科医師に,一人でも多くの患者に正しい方法で処置を提供していただきたいと願う.
2025年6月
執筆者を代表して
歯内療法専門医 石井 宏
本書の企画について,出版社より打診された際,正直あまり気が進まなかった.理由としては,「歯内療法」と「補綴」という2つの専門領域にまたがるこのトピックは,それぞれの専門家の意見が一致していない論点が多くあり,取り上げ方が難しいことを知っていたからである.かといって,どちらかの専門家だけでまとめたとしても偏った意見になってしまいがちで,それもまた問題である.
この領域の大きなポイントは3つあり,「歯根破折」,「細菌漏洩」,「修復物脱離」である.この3つのどこに比重をおいた処置を行い,論じるのかは,術者や演者によって異なってくる.また,各論点における専門医ならではの知識の偏りも,意見の集約が困難な理由になっている.たとえば,歯根破折や細菌漏洩の原因や対策について,一般歯科医や補綴歯科医は深く学ぶ機会は限られているし,歯内療法専門医が修復物脱離に関する力学的,技術的なことを習得するための時間も十分とはいえない.
本書は,2名の歯内療法専門医と1名の補綴専門医,そして,歯内療法と修復処置に研鑽を積んだ1名の一般歯科医という,バランスのとれた執筆陣となった.このことは,本書の内容が偏りなく,それぞれの専門性を深く考察しながら構成されるための重要な要因となっている.
各章はそれぞれの専門性から,必ずおさえなければいけない臨床的,文献的ポイントが示され,解説されている.本書の最も特徴的な点は,歯内療法と修復処置のはざまである「築造処置」について,各術者の専門性の違いをふまえた視点で十分に語られているところであろう.最終章(Chapter 4)では,それまでに解説されたコンセプトやテクニックを用いた症例を,読者がイメージしやすい形で提示している.
本書が日本におけるこの領域のメルクマールとなり,多くの歯科医師にとって福音となってほしい.そして,日本中の歯科医師に,一人でも多くの患者に正しい方法で処置を提供していただきたいと願う.
2025年6月
執筆者を代表して
歯内療法専門医 石井 宏
序
Chapter 1 Concept
1 歯内療法と歯冠修復処置 ―そのインターフェースの重要性
2 EndoとProstho ―細菌漏洩の考え方
Chapter 2 エンド処置歯の支台築造
1 エンド治療後の支台築造 ―直接法・間接法の考え方
2 残存歯質の評価
3 ポストおよびコアの考え方
4 メタルコア/ファイバーポストアンドコアの適応
Chapter 3 エンド処置歯の歯冠修復
1 エンド処置歯の歯冠修復の考え方 ―基礎的視点
2 エンド処置歯の歯冠修復について ―エンドの観点から
3 エンド処置歯の歯冠修復について ―補綴の観点から
Chapter 4 EndoとProstho―ケースから紐解く
1 残存歯質は十分と判断した前歯部のケース ―ポストを設置せず,充填のみにて修復を行ったケース
2 残存歯質は十分と判断した臼歯部のケース ―ポストを設置しないでよいと判断したケース
3 残存歯質が十分でない臼歯部のケース ―ポストを設置するべきと判断したケース
4 隔壁を作製せず,再根管治療を1回で完了し支台築造まで行った前歯部のケース
5 隔壁を作製して(仮歯を隔壁で維持して)支台歯形成した前歯部のケース ―補綴診断の重要性
6 残存歯質がほとんどなく矯正的挺出と歯冠長延長術を行ったケース
7 間接法(鋳造メタルポストアンドコア)にて支台築造を行ったケース
8 エンド治療後の最終補綴時期への視点 ―外科的歯内療法を行った症例
索引
執筆者一覧
Chapter 1 Concept
1 歯内療法と歯冠修復処置 ―そのインターフェースの重要性
2 EndoとProstho ―細菌漏洩の考え方
Chapter 2 エンド処置歯の支台築造
1 エンド治療後の支台築造 ―直接法・間接法の考え方
2 残存歯質の評価
3 ポストおよびコアの考え方
4 メタルコア/ファイバーポストアンドコアの適応
Chapter 3 エンド処置歯の歯冠修復
1 エンド処置歯の歯冠修復の考え方 ―基礎的視点
2 エンド処置歯の歯冠修復について ―エンドの観点から
3 エンド処置歯の歯冠修復について ―補綴の観点から
Chapter 4 EndoとProstho―ケースから紐解く
1 残存歯質は十分と判断した前歯部のケース ―ポストを設置せず,充填のみにて修復を行ったケース
2 残存歯質は十分と判断した臼歯部のケース ―ポストを設置しないでよいと判断したケース
3 残存歯質が十分でない臼歯部のケース ―ポストを設置するべきと判断したケース
4 隔壁を作製せず,再根管治療を1回で完了し支台築造まで行った前歯部のケース
5 隔壁を作製して(仮歯を隔壁で維持して)支台歯形成した前歯部のケース ―補綴診断の重要性
6 残存歯質がほとんどなく矯正的挺出と歯冠長延長術を行ったケース
7 間接法(鋳造メタルポストアンドコア)にて支台築造を行ったケース
8 エンド治療後の最終補綴時期への視点 ―外科的歯内療法を行った症例
索引
執筆者一覧














