はじめに
本書は2022年10月から2023年10月の1年間にわたり歯界展望に連載された『臨床家のための疼痛コントロールCheckPoint』をもとに，一部修正，追加し，さらに痛みに関する日常的な疑問をQ & Aの形で加筆して別冊化したものです．主に開業医の先生を対象に，歯科診療におけるさまざまな痛みの管理法を，各分野の第一線の先生方にそれぞれの立場から解説していただきました．
患者が痛みを主訴として歯科を受診する際，そのほとんどの痛みは齲蝕や歯髄炎，歯周病などの歯科疾患に起因しており，それらは診断が容易で即日治療を開始することができます．一方，歯や歯周疾患に起因しない原因不明の痛みである非歯原性疼痛を含め，治療に難渋する口腔顔面痛も最近非常に注目されている分野です．
周術期perioperative period，もしくは周治療期peritreatment periodともいうべき歯科治療期間中の痛みとは，歯を削ったり抜歯したりという治療行為に伴う痛みだけでなく，術前から存在する痛み，さらに治療後の痛みまで，患者が経験する一連の痛みとして考える必要があります．患者にとっては，術前の痛みも術後の痛みも独立しているわけではないからです．
これまで，局所麻酔に関する解説や，慢性痛の診断・治療に関する優れた書籍は出版されていますが，治療から術後までの“歯科周術期・周治療期”における疼痛管理を横断的に解説したものはありません．特に最近では，口腔外科手術やインプラント手術など侵襲の大きい処置・手術を自院で施行される先生方も多いと思われ，その侵襲に対する疼痛管理は患者満足度にも直結する重要なポイントとなります．ここでもう一度基本に立ち返り，歯科周術期における患者が経験する痛みについて，丁寧に向き合う必要があるのではないかと考えて企画いたしました．
本書が，先生方の日々の臨床に少しでも役立つことを祈念しています．
2024年5月
城戸幹太
北海道大学大学院歯学研究院 歯科麻酔学教室 教授
神部芳則
神奈川歯科大学 客員教授
自治医科大学医学部 歯科口腔外科学講座 元教授
本書は2022年10月から2023年10月の1年間にわたり歯界展望に連載された『臨床家のための疼痛コントロールCheckPoint』をもとに，一部修正，追加し，さらに痛みに関する日常的な疑問をQ & Aの形で加筆して別冊化したものです．主に開業医の先生を対象に，歯科診療におけるさまざまな痛みの管理法を，各分野の第一線の先生方にそれぞれの立場から解説していただきました．
患者が痛みを主訴として歯科を受診する際，そのほとんどの痛みは齲蝕や歯髄炎，歯周病などの歯科疾患に起因しており，それらは診断が容易で即日治療を開始することができます．一方，歯や歯周疾患に起因しない原因不明の痛みである非歯原性疼痛を含め，治療に難渋する口腔顔面痛も最近非常に注目されている分野です．
周術期perioperative period，もしくは周治療期peritreatment periodともいうべき歯科治療期間中の痛みとは，歯を削ったり抜歯したりという治療行為に伴う痛みだけでなく，術前から存在する痛み，さらに治療後の痛みまで，患者が経験する一連の痛みとして考える必要があります．患者にとっては，術前の痛みも術後の痛みも独立しているわけではないからです．
これまで，局所麻酔に関する解説や，慢性痛の診断・治療に関する優れた書籍は出版されていますが，治療から術後までの“歯科周術期・周治療期”における疼痛管理を横断的に解説したものはありません．特に最近では，口腔外科手術やインプラント手術など侵襲の大きい処置・手術を自院で施行される先生方も多いと思われ，その侵襲に対する疼痛管理は患者満足度にも直結する重要なポイントとなります．ここでもう一度基本に立ち返り，歯科周術期における患者が経験する痛みについて，丁寧に向き合う必要があるのではないかと考えて企画いたしました．
本書が，先生方の日々の臨床に少しでも役立つことを祈念しています．
2024年5月
城戸幹太
北海道大学大学院歯学研究院 歯科麻酔学教室 教授
神部芳則
神奈川歯科大学 客員教授
自治医科大学医学部 歯科口腔外科学講座 元教授
総論
歯科診療のための疼痛コントロールの基礎（城戸幹太）
治療中の疼痛コントロールの基本(1)局所麻酔編（田中香衣・城戸幹太）
治療中の疼痛コントロールの基本(2)鎮静法／全身麻酔編（讃岐拓郎）
歯科診療のための術後疼痛管理（城戸幹太）
各論
痛みの診断と治療法の決定（滝澤慧大・野間 昇）
歯科保存治療における疼痛コントロール（石井信之）
歯周外科治療のための疼痛コントロール（好士亮介）
小児歯科治療のための疼痛コントロール（木本茂成）
口腔外科手術のための疼痛コントロール（田中香衣・神部芳則）
高齢者の歯科診療時の疼痛コントロール（林 恵美・森本佳成）
原因不明の痛み（非歯原性疼痛）のコントロール（滝澤慧大・野間 昇）
補論
歯科用局所麻酔薬の基本の再確認―添付文書を読み込む―（亀倉更人・城戸幹太）
これからの周術期疼痛管理と歯科麻酔科医の役割（城戸幹太）
Q & A
（作山 葵・林 宏栄・工藤葉子・神部芳則・城戸幹太）
NSAIDsやアセトアミノフェン以外に，歯科で処方できる鎮痛薬はありますか？
鎮痛薬はどのくらいの期間，服用させてよいのでしょうか？
患者から「手持ちの市販の鎮痛薬と処方された鎮痛薬を併用して飲んでもよいか？」と問い合わせがきました．どうすればよいのでしょうか？
歯性感染症や観血的処置における抗菌薬の投与基準を教えてください．
歯科医院で使用している各種局所麻酔薬は，一度にどのくらいまで使用できますか？
新しい歯科用局所麻酔薬アルチカインについて，教えてください．
局所麻酔薬による治療後の不快なしびれを早くとる方法はありませんか？
開口時に雑音を認める場合の診断と治療法を，教えてください．
開口時に疼痛が強く，それ以上口を開けることができない場合の診断と治療法は，何がありますか？
顎関節痛患者への鎮痛薬の処方の仕方がよくわかりません．
咀嚼筋痛に対して，冷湿布は有効でしょうか？
顎関節症にボトックス（ボツリヌス）療法は有効でしょうか？
次の症例の患者の痛みの原因を追究するために，画像検査以外にできることはありますか？（その(1)）
次の症例の患者の痛みの原因を追究するために，画像検査以外にできることはありますか？（その(2)）
次の症例の患者の痛みの原因を追究するために，画像検査以外にできることはありますか？（その(3)）
多発性アフタやびらん型扁平苔癬など口腔粘膜炎への疼痛時の対応は，どのようにすればよいでしょうか？
ドライソケットの痛みには，どのように対応すればよいでしょうか？
歯科診療のための疼痛コントロールの基礎（城戸幹太）
治療中の疼痛コントロールの基本(1)局所麻酔編（田中香衣・城戸幹太）
治療中の疼痛コントロールの基本(2)鎮静法／全身麻酔編（讃岐拓郎）
歯科診療のための術後疼痛管理（城戸幹太）
各論
痛みの診断と治療法の決定（滝澤慧大・野間 昇）
歯科保存治療における疼痛コントロール（石井信之）
歯周外科治療のための疼痛コントロール（好士亮介）
小児歯科治療のための疼痛コントロール（木本茂成）
口腔外科手術のための疼痛コントロール（田中香衣・神部芳則）
高齢者の歯科診療時の疼痛コントロール（林 恵美・森本佳成）
原因不明の痛み（非歯原性疼痛）のコントロール（滝澤慧大・野間 昇）
補論
歯科用局所麻酔薬の基本の再確認―添付文書を読み込む―（亀倉更人・城戸幹太）
これからの周術期疼痛管理と歯科麻酔科医の役割（城戸幹太）
Q & A
（作山 葵・林 宏栄・工藤葉子・神部芳則・城戸幹太）
NSAIDsやアセトアミノフェン以外に，歯科で処方できる鎮痛薬はありますか？
鎮痛薬はどのくらいの期間，服用させてよいのでしょうか？
患者から「手持ちの市販の鎮痛薬と処方された鎮痛薬を併用して飲んでもよいか？」と問い合わせがきました．どうすればよいのでしょうか？
歯性感染症や観血的処置における抗菌薬の投与基準を教えてください．
歯科医院で使用している各種局所麻酔薬は，一度にどのくらいまで使用できますか？
新しい歯科用局所麻酔薬アルチカインについて，教えてください．
局所麻酔薬による治療後の不快なしびれを早くとる方法はありませんか？
開口時に雑音を認める場合の診断と治療法を，教えてください．
開口時に疼痛が強く，それ以上口を開けることができない場合の診断と治療法は，何がありますか？
顎関節痛患者への鎮痛薬の処方の仕方がよくわかりません．
咀嚼筋痛に対して，冷湿布は有効でしょうか？
顎関節症にボトックス（ボツリヌス）療法は有効でしょうか？
次の症例の患者の痛みの原因を追究するために，画像検査以外にできることはありますか？（その(1)）
次の症例の患者の痛みの原因を追究するために，画像検査以外にできることはありますか？（その(2)）
次の症例の患者の痛みの原因を追究するために，画像検査以外にできることはありますか？（その(3)）
多発性アフタやびらん型扁平苔癬など口腔粘膜炎への疼痛時の対応は，どのようにすればよいでしょうか？
ドライソケットの痛みには，どのように対応すればよいでしょうか？
