はじめに
槙田紀子
東京大学大学院医学系研究科内分泌病態学
このたび,歴史ある『医学のあゆみ』において,約20年ぶりに内分泌代謝疾患の大特集を組ませていただく機会を得ました.当初は疾患研究の最前線を取り上げることを考えていましたが,2026年に日本内分泌学会が創立100周年を迎えます.この貴重な機会に,内分泌学の歴史を振り返り,未来を展望する1冊としたいと考えました.
内分泌系は,1902年のスターリングらによるセクレチンの発見以来,神経系や免疫系と並ぶ,われわれの恒常性維持に欠かせないシステムです.その中心にあるのはホルモンとその受容体です.この100年間で数々のホルモンが同定され,その作用機序が解明されてきました.さらに神経系,免疫系,内分泌系が互いに絡み合い,複雑な“個”を形成していることも明らかになってきました.医療技術や研究手法は日々進歩していますが,内分泌学の根幹は依然としてホルモンです.内分泌代謝領域は内科,小児科,産婦人科,泌尿器科,脳神経外科,内分泌外科,病理学,ゲノム医学といった多岐にわたる分野が融合し,幅広い疾患に関わっています.
本特集では,100年前,いやそれよりもはるか以前から知られていた古典的な内分泌代謝疾患からはじまり,ホルモン測定技術の進歩やゲノム研究,病理学の理解によって発見されてきた疾患,そして免疫チェックポイント阻害薬など,これまでにない治療法が生み出したまったく新しい病態まで,本領域の鍵となる疾患と病態を網羅しました.そして,執筆くださったのは今まさに走っている内分泌学を愛する先生方.論文では得られない歴史的な知見や教科書には載っていない最新の情報,そして未来の課題について論じてくださいました.
本特集が内分泌学に興味を持つ先生方だけでなく,初学者や入門者にも大きなインパクトを与え,内分泌学の次の100年を見すえるきっかけとなることを,企画者として心より願っています.
槙田紀子
東京大学大学院医学系研究科内分泌病態学
このたび,歴史ある『医学のあゆみ』において,約20年ぶりに内分泌代謝疾患の大特集を組ませていただく機会を得ました.当初は疾患研究の最前線を取り上げることを考えていましたが,2026年に日本内分泌学会が創立100周年を迎えます.この貴重な機会に,内分泌学の歴史を振り返り,未来を展望する1冊としたいと考えました.
内分泌系は,1902年のスターリングらによるセクレチンの発見以来,神経系や免疫系と並ぶ,われわれの恒常性維持に欠かせないシステムです.その中心にあるのはホルモンとその受容体です.この100年間で数々のホルモンが同定され,その作用機序が解明されてきました.さらに神経系,免疫系,内分泌系が互いに絡み合い,複雑な“個”を形成していることも明らかになってきました.医療技術や研究手法は日々進歩していますが,内分泌学の根幹は依然としてホルモンです.内分泌代謝領域は内科,小児科,産婦人科,泌尿器科,脳神経外科,内分泌外科,病理学,ゲノム医学といった多岐にわたる分野が融合し,幅広い疾患に関わっています.
本特集では,100年前,いやそれよりもはるか以前から知られていた古典的な内分泌代謝疾患からはじまり,ホルモン測定技術の進歩やゲノム研究,病理学の理解によって発見されてきた疾患,そして免疫チェックポイント阻害薬など,これまでにない治療法が生み出したまったく新しい病態まで,本領域の鍵となる疾患と病態を網羅しました.そして,執筆くださったのは今まさに走っている内分泌学を愛する先生方.論文では得られない歴史的な知見や教科書には載っていない最新の情報,そして未来の課題について論じてくださいました.
本特集が内分泌学に興味を持つ先生方だけでなく,初学者や入門者にも大きなインパクトを与え,内分泌学の次の100年を見すえるきっかけとなることを,企画者として心より願っています.
はじめに(槙田紀子)
視床下部・下垂体
クッシング病─診断と治療の現状と今後の展望(大月道夫)
成人成長ホルモン分泌不全症と先端巨大症(山本雅昭・福岡秀規)
下垂体TSH産生腫瘍のこれまでとこれから(堀口和彦)
腫瘍随伴自己免疫性下垂体炎─疾患概念の発展と今後の展望(坂東弘教・井口元三)
下垂体腺腫/下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)の病理診断,今昔(井下尚子・他)
GH治療の歴史と展開(水野晴夫)
バソプレシン分泌異常症─中枢性尿崩症,抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(萩原大輔・有馬 寛)
先天性腎性尿崩症の新しい治療戦略(安藤史顕・原 悠)
甲状腺
バセドウ病の成因・診断・治療(稲葉秀文)
甲状腺眼症の現状と展望(山内一郎)
慢性甲状腺炎と潜在性甲状腺機能低下症─妊娠関連含む(吉原 愛)
先天性甲状腺機能障害と遺伝子異常(中尾佳奈子)
薬剤性甲状腺機能障害(間中勝則)
ゲノムからみた甲状腺癌と分子標的薬(光武範吏)
副甲状腺とカルシウムミネラル代謝
原発性副甲状腺機能亢進症を考える(槙田紀子)
副甲状腺機能低下症,偽性副甲状腺機能低下症と類縁疾患(難波範行)
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症とリン感知機構(士祐一)
内分泌・代謝疾患としての骨粗鬆症(鈴木敦詞)
骨系統疾患と新規治療(道上敏美)
ビタミンDと全身疾患(井上玲子・井上大輔)
副腎
原発性アルドステロン症の温故知新(曽根正勝)
アルドステロン産生病変の病理学(西本紘嗣郎・向井邦晃)
コルチゾール産生副腎腫瘍の遺伝子異常(佐久間一基・田中知明)
褐色細胞腫・パラガングリオーマ(與那嶺正人)
単一遺伝子疾患としての原発性副腎不全(鳴海覚志)
原発性両側大結節性副腎皮質過形成(PBMAH)と遺伝子異常(奥野陽亮)
糖尿病・脂質代謝
1型糖尿病─劇症,急性発症,緩徐進行(3つのサブタイプ)(今川彰久)
肥満,2型糖尿病とアディポネクチン/アディポネクチン受容体シグナル(小堀勤子・他)
糖代謝異常合併妊娠(曽根博仁・山田貴穂)
尿酸代謝異常症と内分泌疾患(久留一郎)
脂質異常症の未来予想図(岡ア啓明)
性腺
性分化疾患の考え方─Update(齋藤洋子・鹿島田健一)
多嚢胞性卵巣症候群(原田美由紀)
男性性腺機能低下症の診断と治療─小児から加齢男性性腺機能低下症まで(白石晃司)
内分泌疾患と診療科連携
遺伝性腫瘍症候群としての内分泌腫瘍(櫻井晃洋)
免疫チェックポイント阻害薬による内分泌代謝障害(岩間信太郎)
内分泌代謝領域におけるDOHaD学説(橋本貢士)
内分泌疾患の移行期医療─小児科医師と成人診療科医師に必要な視点(長谷川行洋)
次号の特集予告
サイドメモ
PIT-1(pituitary transcription factor 1)
甲状腺眼症(Thyroid eye disease)の名称に至るまで
甲状腺自己抗体と妊娠との関連
新生児マススクリーニング
後天性低Ca尿性高Ca血症(AHH)
FGF23の作用障害による家族性高リン血症性腫瘍状石灰沈着症(FHTC)
二次性骨折予防継続管理料とリエゾンサービス
骨系統疾患診療における多診療科・多職種連携の重要性
クッシング症候群の由来
PPGLの多遺伝子パネル検査(MGPT)
膵島炎(insulitis)
ICA(islet cell antibodies)
DOHaD学説とエピジェネティクス
視床下部・下垂体
クッシング病─診断と治療の現状と今後の展望(大月道夫)
成人成長ホルモン分泌不全症と先端巨大症(山本雅昭・福岡秀規)
下垂体TSH産生腫瘍のこれまでとこれから(堀口和彦)
腫瘍随伴自己免疫性下垂体炎─疾患概念の発展と今後の展望(坂東弘教・井口元三)
下垂体腺腫/下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)の病理診断,今昔(井下尚子・他)
GH治療の歴史と展開(水野晴夫)
バソプレシン分泌異常症─中枢性尿崩症,抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(萩原大輔・有馬 寛)
先天性腎性尿崩症の新しい治療戦略(安藤史顕・原 悠)
甲状腺
バセドウ病の成因・診断・治療(稲葉秀文)
甲状腺眼症の現状と展望(山内一郎)
慢性甲状腺炎と潜在性甲状腺機能低下症─妊娠関連含む(吉原 愛)
先天性甲状腺機能障害と遺伝子異常(中尾佳奈子)
薬剤性甲状腺機能障害(間中勝則)
ゲノムからみた甲状腺癌と分子標的薬(光武範吏)
副甲状腺とカルシウムミネラル代謝
原発性副甲状腺機能亢進症を考える(槙田紀子)
副甲状腺機能低下症,偽性副甲状腺機能低下症と類縁疾患(難波範行)
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症とリン感知機構(士祐一)
内分泌・代謝疾患としての骨粗鬆症(鈴木敦詞)
骨系統疾患と新規治療(道上敏美)
ビタミンDと全身疾患(井上玲子・井上大輔)
副腎
原発性アルドステロン症の温故知新(曽根正勝)
アルドステロン産生病変の病理学(西本紘嗣郎・向井邦晃)
コルチゾール産生副腎腫瘍の遺伝子異常(佐久間一基・田中知明)
褐色細胞腫・パラガングリオーマ(與那嶺正人)
単一遺伝子疾患としての原発性副腎不全(鳴海覚志)
原発性両側大結節性副腎皮質過形成(PBMAH)と遺伝子異常(奥野陽亮)
糖尿病・脂質代謝
1型糖尿病─劇症,急性発症,緩徐進行(3つのサブタイプ)(今川彰久)
肥満,2型糖尿病とアディポネクチン/アディポネクチン受容体シグナル(小堀勤子・他)
糖代謝異常合併妊娠(曽根博仁・山田貴穂)
尿酸代謝異常症と内分泌疾患(久留一郎)
脂質異常症の未来予想図(岡ア啓明)
性腺
性分化疾患の考え方─Update(齋藤洋子・鹿島田健一)
多嚢胞性卵巣症候群(原田美由紀)
男性性腺機能低下症の診断と治療─小児から加齢男性性腺機能低下症まで(白石晃司)
内分泌疾患と診療科連携
遺伝性腫瘍症候群としての内分泌腫瘍(櫻井晃洋)
免疫チェックポイント阻害薬による内分泌代謝障害(岩間信太郎)
内分泌代謝領域におけるDOHaD学説(橋本貢士)
内分泌疾患の移行期医療─小児科医師と成人診療科医師に必要な視点(長谷川行洋)
次号の特集予告
サイドメモ
PIT-1(pituitary transcription factor 1)
甲状腺眼症(Thyroid eye disease)の名称に至るまで
甲状腺自己抗体と妊娠との関連
新生児マススクリーニング
後天性低Ca尿性高Ca血症(AHH)
FGF23の作用障害による家族性高リン血症性腫瘍状石灰沈着症(FHTC)
二次性骨折予防継続管理料とリエゾンサービス
骨系統疾患診療における多診療科・多職種連携の重要性
クッシング症候群の由来
PPGLの多遺伝子パネル検査(MGPT)
膵島炎(insulitis)
ICA(islet cell antibodies)
DOHaD学説とエピジェネティクス














