はじめに
渡邉裕司
浜松医科大学理事・副学長
『臨床薬理学UPDATE』を手にとっていただき,有難うございます.
臨床薬理学は日本では比較的新しい学問領域ですが,薬理学の知識に基づき,薬物治療の有効性と安全性を最大限に高め,個々の患者に最新・最良の治療を提供することをめざしています.この目的を実現するために,(1)臨床試験を実践しあらたな医薬品や医療技術を開発していくこと,(2)薬物動態や薬力学,あるいは遺伝的背景や合併症の情報に基づき個別化治療の水準を向上させること,を大きな2つの柱としています.
薬物治療の進歩は,予後不良と考えられた病気をコントロール可能なものへと変化させてきましたが,いくら医療技術が進歩しても,最終的に適切な薬物治療が患者に提供されなければ,最良の治療効果は得られません.医師と患者とのインターフェイスは多くの場合“くすり”であり,薬物治療の基本が理解されなければ,十分な治療効果を得られないばかりか,有害作用さえ招きます.
本特集がこのような薬物治療の基本と,新しい医薬品や医療技術を生み出す臨床試験への理解を深める一助になれば幸いです.
最後に,本誌の完成に尽力くださった執筆者の先生方と,『医学のあゆみ』編集部の方々に心から感謝申し上げます.
渡邉裕司
浜松医科大学理事・副学長
『臨床薬理学UPDATE』を手にとっていただき,有難うございます.
臨床薬理学は日本では比較的新しい学問領域ですが,薬理学の知識に基づき,薬物治療の有効性と安全性を最大限に高め,個々の患者に最新・最良の治療を提供することをめざしています.この目的を実現するために,(1)臨床試験を実践しあらたな医薬品や医療技術を開発していくこと,(2)薬物動態や薬力学,あるいは遺伝的背景や合併症の情報に基づき個別化治療の水準を向上させること,を大きな2つの柱としています.
薬物治療の進歩は,予後不良と考えられた病気をコントロール可能なものへと変化させてきましたが,いくら医療技術が進歩しても,最終的に適切な薬物治療が患者に提供されなければ,最良の治療効果は得られません.医師と患者とのインターフェイスは多くの場合“くすり”であり,薬物治療の基本が理解されなければ,十分な治療効果を得られないばかりか,有害作用さえ招きます.
本特集がこのような薬物治療の基本と,新しい医薬品や医療技術を生み出す臨床試験への理解を深める一助になれば幸いです.
最後に,本誌の完成に尽力くださった執筆者の先生方と,『医学のあゆみ』編集部の方々に心から感謝申し上げます.
はじめに Introduction(渡邉裕司)
総論
1.臨床薬理学とは(渡邉裕司)
・個別化治療の水準向上
・臨床試験を通じた新規医薬品や医療技術の開発
臨床薬物治療学
2.臨床薬物動態学UPDATE(越前宏俊)
・薬物動態を記述するモデルの変遷
・生理学的薬物動態(PBPK)モデルを用いた特殊集団における薬物動態の予測
・統合的PK-PDモデルを用いた薬物効果の予測
・薬物動態に関係する機能分子としての膜トランスポーター分子の注目
3.薬物間相互作用の定量的予測のための内在性物質およびPETプローブの利用(三宅健之・他)
・生体内の内在性物質を用いた薬物間相互作用のリスク評価
・陽電子断層撮影法(PET)の活用による薬物間相互作用のリスク評価
4.薬物有害反応(鶴岡秀一)
・薬物有害反応の定義および有害事象との違い
・薬物有害反応の分類と重篤度
・薬物有害反応の要因
・全身性有害反応
・臓器別有害反応
5.薬理遺伝学(PGx)―医薬品の適正使用,創薬をめざして(家入一郎)
・薬物代謝酵素
・薬物輸送蛋白質(薬物トランスポーター)
・PGxの活用
6.小児・高齢者・妊産婦および病態時の薬物投与計画―スペシャルポピュレーションの薬物治療における留意点(内田信也)
・スペシャルポピュレーションにおける薬物動態と薬力学
・腎障害,肝障害および心不全時における薬物投与計画と留意点
・高齢者における薬物投与計画と留意点
・小児における薬物投与計画と留意点
・妊産婦・授乳婦における薬物投与計画と留意点
・まとめ
7.がん治療の臨床薬理学(下方智也・安藤雄一)
・適切な抗がん薬の選択
・適切な用法・用量の設定
・高齢者におけるPK/PD
・治療薬物モニタリング(TDM)
8.WHOが勧める医薬品の適正処方―パーソナルドラッグ(P-drug)と個別化治療(内田英二)
・パーソナルドラッグ(P-drug)とは
・Guide to Good Prescribing(GGP)出版の背景
・P-drug選択の手順
・P-drugによる患者の治療
・P-drugの選択に際して考慮する事項
・適正な薬物療法
新規医薬品開発と臨床研究
9.新薬開発のステップとトランスレーショナルリサーチ(熊谷雄治)
・新薬開発のステップ
・第I相試験
・第II相試験(代表的な試験:探索的試験)と第III相試験
10.薬物療法に関するクリニカルクエスチョン(CQ)からリサーチクエスチョン(RQ)へ―適切な研究計画書の作成(植田真一郎)
・薬剤についてのクリニカルクエスチョンをリサーチクエスチョンに落とし込み,研究計画を作成する―誰に何をして,どのような結果(予後)を得たいのか
・CQ1:「この薬剤はもともとAという疾患に使われているが,Bにも効果があるような気がする」―新しい治療はその立ち位置,対象となる患者,有効性と安全性をどう評価するかを考える
・CQ2:「この薬は20mg1日1回で使うけどもっと増やしたほう(あるいは減らしたほうが)がいいと思う」―何が優れているのか,何が劣らないのか
・CQ3:「高齢者のベンゾジアゼピンはよくないといわれているし,中止したいけど,患者は嫌がる.どうしよう?」―まず何が起こっているかを知ること
・CR4:「3人もの専門医から逆紹介を受けて処方箋を見たけど“ガイドラインに沿った”薬剤がたくさん処方されている.全部必要なのかなぁ.全部服用しているのかなぁ」―プライマリケアでの薬物療法を考える
11.臨床研究のデザイン(大津 洋)
・代表的な研究デザイン
・臨床試験を取り巻く状況
・臨床試験の方法論の複雑化
・臨床試験のデザインをどう考えるか
12.バイオマーカーによる薬効評価(小島勇貴・米盛 勧)
・がん領域のバイオマーカー
・抗がん剤の治療効果判定
・バイオマーカーによる薬効評価
13.臨床研究・疫学研究における傾向スコアを用いた統計解析(野間久史)
・交絡
・傾向スコア
・傾向スコアを用いたその他の解析方法
14.医薬品開発とregulatory science(佐藤淳子)
・Regulatory scienceとは
・Regulatory scienceの向上に向けて
・ベネフィットの最大化とリスクの最小化
・患者の参画
・Gate keeper,そしてGate openerとして
■サイドメモ
薬剤誘発性リンパ球刺激試験(DLST)
医薬品・医療機器等安全性情報報告制度
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
小児用医薬品開発におけるモデリング&シミュレーション(M&S)
韓国での第1回P-drugワークショップ
総論
1.臨床薬理学とは(渡邉裕司)
・個別化治療の水準向上
・臨床試験を通じた新規医薬品や医療技術の開発
臨床薬物治療学
2.臨床薬物動態学UPDATE(越前宏俊)
・薬物動態を記述するモデルの変遷
・生理学的薬物動態(PBPK)モデルを用いた特殊集団における薬物動態の予測
・統合的PK-PDモデルを用いた薬物効果の予測
・薬物動態に関係する機能分子としての膜トランスポーター分子の注目
3.薬物間相互作用の定量的予測のための内在性物質およびPETプローブの利用(三宅健之・他)
・生体内の内在性物質を用いた薬物間相互作用のリスク評価
・陽電子断層撮影法(PET)の活用による薬物間相互作用のリスク評価
4.薬物有害反応(鶴岡秀一)
・薬物有害反応の定義および有害事象との違い
・薬物有害反応の分類と重篤度
・薬物有害反応の要因
・全身性有害反応
・臓器別有害反応
5.薬理遺伝学(PGx)―医薬品の適正使用,創薬をめざして(家入一郎)
・薬物代謝酵素
・薬物輸送蛋白質(薬物トランスポーター)
・PGxの活用
6.小児・高齢者・妊産婦および病態時の薬物投与計画―スペシャルポピュレーションの薬物治療における留意点(内田信也)
・スペシャルポピュレーションにおける薬物動態と薬力学
・腎障害,肝障害および心不全時における薬物投与計画と留意点
・高齢者における薬物投与計画と留意点
・小児における薬物投与計画と留意点
・妊産婦・授乳婦における薬物投与計画と留意点
・まとめ
7.がん治療の臨床薬理学(下方智也・安藤雄一)
・適切な抗がん薬の選択
・適切な用法・用量の設定
・高齢者におけるPK/PD
・治療薬物モニタリング(TDM)
8.WHOが勧める医薬品の適正処方―パーソナルドラッグ(P-drug)と個別化治療(内田英二)
・パーソナルドラッグ(P-drug)とは
・Guide to Good Prescribing(GGP)出版の背景
・P-drug選択の手順
・P-drugによる患者の治療
・P-drugの選択に際して考慮する事項
・適正な薬物療法
新規医薬品開発と臨床研究
9.新薬開発のステップとトランスレーショナルリサーチ(熊谷雄治)
・新薬開発のステップ
・第I相試験
・第II相試験(代表的な試験:探索的試験)と第III相試験
10.薬物療法に関するクリニカルクエスチョン(CQ)からリサーチクエスチョン(RQ)へ―適切な研究計画書の作成(植田真一郎)
・薬剤についてのクリニカルクエスチョンをリサーチクエスチョンに落とし込み,研究計画を作成する―誰に何をして,どのような結果(予後)を得たいのか
・CQ1:「この薬剤はもともとAという疾患に使われているが,Bにも効果があるような気がする」―新しい治療はその立ち位置,対象となる患者,有効性と安全性をどう評価するかを考える
・CQ2:「この薬は20mg1日1回で使うけどもっと増やしたほう(あるいは減らしたほうが)がいいと思う」―何が優れているのか,何が劣らないのか
・CQ3:「高齢者のベンゾジアゼピンはよくないといわれているし,中止したいけど,患者は嫌がる.どうしよう?」―まず何が起こっているかを知ること
・CR4:「3人もの専門医から逆紹介を受けて処方箋を見たけど“ガイドラインに沿った”薬剤がたくさん処方されている.全部必要なのかなぁ.全部服用しているのかなぁ」―プライマリケアでの薬物療法を考える
11.臨床研究のデザイン(大津 洋)
・代表的な研究デザイン
・臨床試験を取り巻く状況
・臨床試験の方法論の複雑化
・臨床試験のデザインをどう考えるか
12.バイオマーカーによる薬効評価(小島勇貴・米盛 勧)
・がん領域のバイオマーカー
・抗がん剤の治療効果判定
・バイオマーカーによる薬効評価
13.臨床研究・疫学研究における傾向スコアを用いた統計解析(野間久史)
・交絡
・傾向スコア
・傾向スコアを用いたその他の解析方法
14.医薬品開発とregulatory science(佐藤淳子)
・Regulatory scienceとは
・Regulatory scienceの向上に向けて
・ベネフィットの最大化とリスクの最小化
・患者の参画
・Gate keeper,そしてGate openerとして
■サイドメモ
薬剤誘発性リンパ球刺激試験(DLST)
医薬品・医療機器等安全性情報報告制度
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
小児用医薬品開発におけるモデリング&シミュレーション(M&S)
韓国での第1回P-drugワークショップ