はじめに
東海大学医学部リハビリテーション学教室 石田 暉
『医学のあゆみ』でリハビリテーション(以下,リハ)が特集として取り上げられたのは約10年前と聞いている.その間にリハ医療・医学を取り巻く環境は大きく変化を遂げ,新しいリハ評価法・治療法の確立など,医学・医療での大きな進歩に加え,介護保険の導入などの医療システムにおいてもリハに影響を与える数々の変革が行われている.この変化は,リハを専門に行う者はもちろんのこと,それを取り巻くさまざまな医学・医療の分野,さらには介護・福祉に至る領域にも影響を与えることになり,知識の共有を通じて新しい世紀における医学・医療のあり方を考えていかなければならない時期にきているといえる.
まず医療システムにおける変化として,リハ医療の大きなスキームに急性期,回復期,維持期という枠組みが示されたことである.発症あるいは入院直後のベッドサイドから,あるいは救急救命センターからはじめられる早期リハの重要性が認められ,多くの急性期医療機関で定着しつつあることである.早期から集中的にリハを行うことで退院時あるいは転院時の機能,能力が高まることがより・・客観的に示され,量的にも質的にもリハのさらなる充実が見込まれる.それらを支えるリハ専門職の増加はここ数年間で著しく,今後は量的拡充とも合わせて質的な充実が問われることになる.さらに,診療報酬上現在検討されている診断群類別包括的支払い方式(diagnosis related group prospective payment system:DRG/PPS)がわが国に導入されれば,リハ開始早期化の傾向は加速されることが予想される.しかし,DRG/PPS先進国であるアメリカでは,リハの立場からみてもかならずしも楽観視できる状況になっていない.DRG/PPSによる入院期間の短縮が過度に進み,その結果,急性期病院におけるリハの量と質の低下がおこり,リハが不十分のまま安易に亜急性期病院やナーシングホームへの転院が行われていることにも注意を払わなければならない.
DRG/PPS導入にさきだってわが国では,クリニカルパス(あるいはクリティカルパス)が急性期の医療機関で広がっている.クリニカルパスは,医療の標準化・効率化のツールとして医療機関の特性に応じた内容で作成されている.リハ対象疾患(とくに整形疾患)の多くでリハクリニカルパスが作成され,治療の標準化と在院日数の短縮に貢献していることは事実である.このクリニカルパス作成の流れとは別に,日本リハビリテーション医学会を中心としては EBMに基づいた各種疾患のリハガイドライン作成が緊急の課題として考えられている.
昨今のリハ医療の現場では,従来からリハ治療の対象となっていた疾患においては,より早期から多職種による包括的アプローチが行われると同時に,従来対象になっていなかった疾患への適応拡大が試みられている.また,それと同時にリハの新しい技術や治療法が積極的に導入され,機能障害の改善に効果を示している.今後はより効果のある治療技術の進展に対応すべく,より客観的で簡便な評価法の開発が必須なものとなってくるであろう.
最後に,高齢化が進行する21世紀にあって,医療を終えた高齢者,障害者が地域のなかで活動的で QOLの高い生活を送れるように,介護保険を含めた維持期リハや地域リハのシステムづくりのニーズがますます拡大していくものと考えられる.
東海大学医学部リハビリテーション学教室 石田 暉
『医学のあゆみ』でリハビリテーション(以下,リハ)が特集として取り上げられたのは約10年前と聞いている.その間にリハ医療・医学を取り巻く環境は大きく変化を遂げ,新しいリハ評価法・治療法の確立など,医学・医療での大きな進歩に加え,介護保険の導入などの医療システムにおいてもリハに影響を与える数々の変革が行われている.この変化は,リハを専門に行う者はもちろんのこと,それを取り巻くさまざまな医学・医療の分野,さらには介護・福祉に至る領域にも影響を与えることになり,知識の共有を通じて新しい世紀における医学・医療のあり方を考えていかなければならない時期にきているといえる.
まず医療システムにおける変化として,リハ医療の大きなスキームに急性期,回復期,維持期という枠組みが示されたことである.発症あるいは入院直後のベッドサイドから,あるいは救急救命センターからはじめられる早期リハの重要性が認められ,多くの急性期医療機関で定着しつつあることである.早期から集中的にリハを行うことで退院時あるいは転院時の機能,能力が高まることがより・・客観的に示され,量的にも質的にもリハのさらなる充実が見込まれる.それらを支えるリハ専門職の増加はここ数年間で著しく,今後は量的拡充とも合わせて質的な充実が問われることになる.さらに,診療報酬上現在検討されている診断群類別包括的支払い方式(diagnosis related group prospective payment system:DRG/PPS)がわが国に導入されれば,リハ開始早期化の傾向は加速されることが予想される.しかし,DRG/PPS先進国であるアメリカでは,リハの立場からみてもかならずしも楽観視できる状況になっていない.DRG/PPSによる入院期間の短縮が過度に進み,その結果,急性期病院におけるリハの量と質の低下がおこり,リハが不十分のまま安易に亜急性期病院やナーシングホームへの転院が行われていることにも注意を払わなければならない.
DRG/PPS導入にさきだってわが国では,クリニカルパス(あるいはクリティカルパス)が急性期の医療機関で広がっている.クリニカルパスは,医療の標準化・効率化のツールとして医療機関の特性に応じた内容で作成されている.リハ対象疾患(とくに整形疾患)の多くでリハクリニカルパスが作成され,治療の標準化と在院日数の短縮に貢献していることは事実である.このクリニカルパス作成の流れとは別に,日本リハビリテーション医学会を中心としては EBMに基づいた各種疾患のリハガイドライン作成が緊急の課題として考えられている.
昨今のリハ医療の現場では,従来からリハ治療の対象となっていた疾患においては,より早期から多職種による包括的アプローチが行われると同時に,従来対象になっていなかった疾患への適応拡大が試みられている.また,それと同時にリハの新しい技術や治療法が積極的に導入され,機能障害の改善に効果を示している.今後はより効果のある治療技術の進展に対応すべく,より客観的で簡便な評価法の開発が必須なものとなってくるであろう.
最後に,高齢化が進行する21世紀にあって,医療を終えた高齢者,障害者が地域のなかで活動的で QOLの高い生活を送れるように,介護保険を含めた維持期リハや地域リハのシステムづくりのニーズがますます拡大していくものと考えられる.
はじめに 石田 暉
■医療システム
1.リハビリテーション医学・医療の最近の動向―リハビリテーションの新しい方向性 石田 暉
2.アメリカのリハビリテーション医療システム―その現状と将来 吉田清和
3.救命救急センターにおけるリハビリテーション―システム,評価,治療 菊地尚久
4.リハビリテーション医学とEBM 里宇明元
5.リハビリテーション専門職の現状――リハビリテーション医療におけるおもなco-medical staffとは 立野勝彦
■リハビリテーションUPDATE
6.リハビリテーションにおける電気生理――最近の知見 大田哲生・木村彰男
7.リハビリテーションへのクリニカルパスの導入とその適応――Overview 吉永勝訓
8.整形外科疾患に対するリハビリテーションプログラム――クリニカルパス導入によるリハビリテーションの効率化 森田定雄
9.早期脳卒中リハビリテーションのクリニカルパス 鈴木堅二・竹内正人
10.脳卒中嚥下障害の治療指針 武田斉子・才藤栄一
11.失語症の治療効果――EBMに基づく治療効果と今後の展望 小林一成
12.脳外傷のリハビリテーション――社会復帰を阻害する高次脳機能障害への対応 大橋正洋
13.全国労災病院脊髄損傷データベースからみた脊髄損傷 徳弘昭博
14.大腿義足の進歩――コンピュータ制御膝継手 陳 隆明・小西克浩
■新しい技術・システム
15.脳卒中リハビリテーション最新ガイドライン 園田 茂
16.脳卒中機能障害に対するnew intervention――バイオフィードバック,CIMT,部分免荷トレッドミル 越智文雄・石神重信
17.脊髄損傷の歩行再建 島田洋一
18.ボツリヌス毒素の臨床応用 中馬孝容・眞野行生
19.バクロフェン髄腔内投与療法 根本明宜
20.油圧ダンパーを利用した新しい短下肢装具――歩行分析に基づく装具の開発 山本澄子
21.臨床医に必要な福祉機器の知識 荒巻駿三
22.回復期リハビリテーション病棟――現状と問題点 大島 峻
23.介護保険と地域リハビリテーション 山口昌夫
24.RBRVS(資源準拠相対評価尺度)のリハビリテーション医療への応用――リハビリテーション領域での適切な技術料評価に向けた検討 田中宏太佳
■新しい評価
25.脳卒中機能評価――Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)を中心に 道免和久
26.脳卒中患者のQOL評価 佐伯 覚・蜂須賀研二
27.脊髄損傷の機能障害評価――ISCSCIを中心に 永田雅章
28.脳性麻痺児のライフステージと機能評価 近藤和泉
29.摂食・嚥下障害の評価 椿原彰夫・阿部泰昌
30.国際生活機能分類(ICF)――国際障害分類改訂版 西村尚志
■先端医学とリハビリテーション
31.再生医学とリハビリテーション医学 正門由久
32.リハビリテーション医療におけるロボティックス 富田 豊
33.随意運動と脳の機能画像――機能的MRIの知見を中心に 豊倉 穣
34.経頭蓋磁気刺激――物理医学の新しい技術 出江紳一
■最近の話題
35.心不全患者へのリハビリテーションの適応――トレーニング効果とその機序 牧田 茂
36.呼吸リハビリテーションとEBM 花山耕三
37.高次脳機能障害のリハビリテーション 渡邉 修・米本恭三
38.痴呆とリハビリテーション 原 寛美
39.Parkinson病の認知リハビリテーション 尾花正義
40.痙直型脳性麻痺に対する整形外科手術とリハビリテーションのあり方――脳性麻痺児粗大運動の向上をめざして 朝貝芳美
41.関節リウマチのリハビリテーション 中西浩司・前田真治
42.骨粗鬆症患者のリハビリテーション――つまずき,転倒予防 上好昭孝
43.転倒教室 関根千晶・井上和彦
44.高齢者の運動療法 原 行弘
45.生活習慣病とリハビリテーション 上月正博
46.運動障害者におけるインスリン抵抗性――リハビリテーション医学におけるその位置づけ 間嶋 満
47.NICUにおけるリハビリテーションアプローチ 前野 豊・松波智郁
48.口腔・中咽頭癌術後のリハビリテーション――構音障害と摂食・嚥下障害 小山祐司
49.リエゾン精神医学とリハビリテーション 渡辺俊之
50.緩和ケア病棟におけるリハビリテーション(理学療法)――その具体的アプローチ 仲 正宏・池永昌之
51.スポーツリハビリテーション――スポーツ復帰のためのリハビリテーション 栗山節郎・星田隆彦
■サイドメモ
リハビリテーション前置主義
UDS(Uniform Data System)
CARF(commission for accreditation of rehabilitation facilities
転院はどこへ
リハで利用可能な研究デザイン
予測的姿勢調節
バリアンスの原因
人工股関節
拘束-誘発運動療法
高次脳機能障害
脊髄損傷の評価
脳卒中片麻痺の訓練方法
神経生理学的アプローチ
選択的後根切断術
AFOの特性比較
新しい福祉機器の紹介
リハビリテーション医療サービスの分類
日本における客観的な診療報酬体系作成の試みとしての外科系学会社会保険委員会連合の試案
Rasch分析
ADLとAPDL
脊髄損傷患者の能力低下の評価法
医療保健尺度とRasch分析
要約健康尺度とDALE
選択的培養法による神経幹細胞の同定
fMRI
Lance-Adams症候群
LVASまたはLVAD(左室補助人工心臓)
障害について
認知リハビリテーションと評価
痴呆性疾患にみられるさまざまな巣症状
Parkinson病の認知機能障害に対する薬物療法の効果
脳性麻痺例に対する訓練指導標準化の試み
関節運動学的アプローチ(AKA)
骨粗鬆症の骨折
Concentric contractionとeccentric contraction
1日1万歩と廃用症候群
インスリン抵抗性
発達支援ケア(developmental care)
見舞いにこない娘とナースに向けた転移
緩和ケア病棟入院料(1日につき3,780点)
膝前十字靱帯損傷
■医療システム
1.リハビリテーション医学・医療の最近の動向―リハビリテーションの新しい方向性 石田 暉
2.アメリカのリハビリテーション医療システム―その現状と将来 吉田清和
3.救命救急センターにおけるリハビリテーション―システム,評価,治療 菊地尚久
4.リハビリテーション医学とEBM 里宇明元
5.リハビリテーション専門職の現状――リハビリテーション医療におけるおもなco-medical staffとは 立野勝彦
■リハビリテーションUPDATE
6.リハビリテーションにおける電気生理――最近の知見 大田哲生・木村彰男
7.リハビリテーションへのクリニカルパスの導入とその適応――Overview 吉永勝訓
8.整形外科疾患に対するリハビリテーションプログラム――クリニカルパス導入によるリハビリテーションの効率化 森田定雄
9.早期脳卒中リハビリテーションのクリニカルパス 鈴木堅二・竹内正人
10.脳卒中嚥下障害の治療指針 武田斉子・才藤栄一
11.失語症の治療効果――EBMに基づく治療効果と今後の展望 小林一成
12.脳外傷のリハビリテーション――社会復帰を阻害する高次脳機能障害への対応 大橋正洋
13.全国労災病院脊髄損傷データベースからみた脊髄損傷 徳弘昭博
14.大腿義足の進歩――コンピュータ制御膝継手 陳 隆明・小西克浩
■新しい技術・システム
15.脳卒中リハビリテーション最新ガイドライン 園田 茂
16.脳卒中機能障害に対するnew intervention――バイオフィードバック,CIMT,部分免荷トレッドミル 越智文雄・石神重信
17.脊髄損傷の歩行再建 島田洋一
18.ボツリヌス毒素の臨床応用 中馬孝容・眞野行生
19.バクロフェン髄腔内投与療法 根本明宜
20.油圧ダンパーを利用した新しい短下肢装具――歩行分析に基づく装具の開発 山本澄子
21.臨床医に必要な福祉機器の知識 荒巻駿三
22.回復期リハビリテーション病棟――現状と問題点 大島 峻
23.介護保険と地域リハビリテーション 山口昌夫
24.RBRVS(資源準拠相対評価尺度)のリハビリテーション医療への応用――リハビリテーション領域での適切な技術料評価に向けた検討 田中宏太佳
■新しい評価
25.脳卒中機能評価――Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)を中心に 道免和久
26.脳卒中患者のQOL評価 佐伯 覚・蜂須賀研二
27.脊髄損傷の機能障害評価――ISCSCIを中心に 永田雅章
28.脳性麻痺児のライフステージと機能評価 近藤和泉
29.摂食・嚥下障害の評価 椿原彰夫・阿部泰昌
30.国際生活機能分類(ICF)――国際障害分類改訂版 西村尚志
■先端医学とリハビリテーション
31.再生医学とリハビリテーション医学 正門由久
32.リハビリテーション医療におけるロボティックス 富田 豊
33.随意運動と脳の機能画像――機能的MRIの知見を中心に 豊倉 穣
34.経頭蓋磁気刺激――物理医学の新しい技術 出江紳一
■最近の話題
35.心不全患者へのリハビリテーションの適応――トレーニング効果とその機序 牧田 茂
36.呼吸リハビリテーションとEBM 花山耕三
37.高次脳機能障害のリハビリテーション 渡邉 修・米本恭三
38.痴呆とリハビリテーション 原 寛美
39.Parkinson病の認知リハビリテーション 尾花正義
40.痙直型脳性麻痺に対する整形外科手術とリハビリテーションのあり方――脳性麻痺児粗大運動の向上をめざして 朝貝芳美
41.関節リウマチのリハビリテーション 中西浩司・前田真治
42.骨粗鬆症患者のリハビリテーション――つまずき,転倒予防 上好昭孝
43.転倒教室 関根千晶・井上和彦
44.高齢者の運動療法 原 行弘
45.生活習慣病とリハビリテーション 上月正博
46.運動障害者におけるインスリン抵抗性――リハビリテーション医学におけるその位置づけ 間嶋 満
47.NICUにおけるリハビリテーションアプローチ 前野 豊・松波智郁
48.口腔・中咽頭癌術後のリハビリテーション――構音障害と摂食・嚥下障害 小山祐司
49.リエゾン精神医学とリハビリテーション 渡辺俊之
50.緩和ケア病棟におけるリハビリテーション(理学療法)――その具体的アプローチ 仲 正宏・池永昌之
51.スポーツリハビリテーション――スポーツ復帰のためのリハビリテーション 栗山節郎・星田隆彦
■サイドメモ
リハビリテーション前置主義
UDS(Uniform Data System)
CARF(commission for accreditation of rehabilitation facilities
転院はどこへ
リハで利用可能な研究デザイン
予測的姿勢調節
バリアンスの原因
人工股関節
拘束-誘発運動療法
高次脳機能障害
脊髄損傷の評価
脳卒中片麻痺の訓練方法
神経生理学的アプローチ
選択的後根切断術
AFOの特性比較
新しい福祉機器の紹介
リハビリテーション医療サービスの分類
日本における客観的な診療報酬体系作成の試みとしての外科系学会社会保険委員会連合の試案
Rasch分析
ADLとAPDL
脊髄損傷患者の能力低下の評価法
医療保健尺度とRasch分析
要約健康尺度とDALE
選択的培養法による神経幹細胞の同定
fMRI
Lance-Adams症候群
LVASまたはLVAD(左室補助人工心臓)
障害について
認知リハビリテーションと評価
痴呆性疾患にみられるさまざまな巣症状
Parkinson病の認知機能障害に対する薬物療法の効果
脳性麻痺例に対する訓練指導標準化の試み
関節運動学的アプローチ(AKA)
骨粗鬆症の骨折
Concentric contractionとeccentric contraction
1日1万歩と廃用症候群
インスリン抵抗性
発達支援ケア(developmental care)
見舞いにこない娘とナースに向けた転移
緩和ケア病棟入院料(1日につき3,780点)
膝前十字靱帯損傷