やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版 まえがき
 日本で「理学療法士および作業療法士国家試験」が開始されて令和7年で60年になります.この60年間の日本の医療・化学・工学の研究・開発は著しいものでした.時代は昭和・平成を経て令和となり,令和7年の第60回理学療法士・作業療法士国家試験から新しい「令和6年版 理学療法士・作業療法士国家試験出題基準」が適用されることになりました.
 この新しい「理学療法士・作業療法士国家試験出題基準」の大きな特徴の一つとして,PT・OTそれぞれの専門分野の「評価学」の項目において「画像評価」が明記されたことが挙げられます.その中身は「エックス線」「CT,MRI,SPECT,PET」「超音波エコー」「心電図」などです.
 私たちは2000年頃から「近い将来,画像の読み取りができる理学療法士・作業療法士が当たり前となる時代が来る」と予測していました.そこで何度も相談・議論を積み重ね,2014年に「PT・OT基礎から学ぶ 画像の読み方」の初版を出版するに至りました.当時の国家試験でも多少の「エックス線,CT,MRI」の画像問題が出題されてはいましたが,PT・OTそれぞれ200問中3〜4問程度でした.しかし,「厚生労働省医政局医事課」は令和7年の国家試験から「新出題基準」を適応すると打ち出しました.つまり,「出題基準の画像の項目」に挙げられている画像写真であれば,「どの種類の画像であっても」「身体のどこの部分であっても」読み取れるようになっていなければならないということなのです.
 また,高齢化が進んだ令和時代の臨床現場では,「あらゆる」疾患,障害がリハビリテーションの対象となってきています.「骨関節障害」「中枢神経障害」「神経筋障害」「発達障害」「内部障害(呼吸,循環(心疾患),代謝(糖尿病,腎障害))」「がん」「サルコペニア,フレイル」「有痛性障害」「摂食嚥下障害」など多岐にわたり,それらが複合的に重なり合っています.あらゆる障害の評価の一つとして,「画像を読み取る力」が必要とされているのです.
 以上のことから,第4版改訂にあたり,以下のことを考えて編集・執筆しました.
 (1)養成校入学後の基礎学力教育段階の学生が教科書として使用しやすいこと
 (2)健常者の画像写真を部位ごとにまとめて,健常の画像写真について理解できるようにすること
 (3)学生の「読み取る力」を強化するために,画像写真を「イラスト」にして理解しやすくすること
 (4)過去10年分のPT・OT国家試験出題画像の具体的な解答解説を掲載して,国家試験受験のために役立てられるようにすること
 この「PT・OT基礎から学ぶ 画像の読み方」の改訂第4版を全国の理学療法士・作業療法士養成校で教科書としてぜひ採用していただきたい.そして,できるだけ早い段階から本書を通して「画像を読み取る力」をしっかりと引き上げ,国家試験の合格はもちろんのこと,卒業後に臨床現場において思う存分活躍してくださることを心から願っております.
 2025年3月
 中島雅美
 中島晃徳


改訂第4版の執筆にあたって
 筆者が学生だった約22年前,臨床実習で訪れた病院で,指導者の先生から次のような言葉をいただきました.
 「エックス線写真,CT画像,MRI画像は医師が読むものであって,理学療法士や作業療法士が読影できるような代物ではないよ.われわれの腕の見せどころは,画像所見なしに患者さんの状態をどこまで正確に把握できるかにあるんだ.」
 当時,その言葉にどこか違和感を覚えつつも,実際に画像をどのように活用できるのかは明確に示されていなかったため,納得せざるを得ませんでした.しかし,今振り返ると,それは当時の理学療法士・作業療法士の世界において,画像の活用方法がまだ十分に認識されていなかったことの表れだったのではないかと感じます.
 しかし,時代は変わりました.2020年4月以降の入学生に適用された理学療法士・作業療法士学校養成施設指定規則の改正により,専門基礎分野の「疾病の成り立ち及び回復過程の促進」に「医用画像の基礎」が,さらに専門分野の「理学療法評価学」および「作業療法評価学」に「医用画像の評価」が必修科目として追加されました.これにより,卒前教育における画像評価の重要性が大きく認識され,多くの関連テキストが刊行されるようになりました.しかし,それらの多くは医師によって執筆されており,理学療法士・作業療法士の学習に適しているとは言い難いものも少なくありませんでした.
 本書の第1版が刊行されたのは約11年前のことです.当時,理学療法士・作業療法士の卒前教育に焦点を当て,脳・運動器・内臓の画像評価を体系的に学べる書籍は,本書が唯一の存在でした.筆者も第1版に深く感銘を受け,改訂第2版から執筆に関わらせていただいております.
 本書は改訂のたびに,新たな画像の追加,レイアウトや解説文の改良,さらには最新の国家試験問題への対応を重ね,内容の充実を図ってきました.創刊以来,一貫して「シンプルで平易な解説」を心がけており,多くの画像評価のテキストが登場した現在においても,その価値は十分に保たれていると自負しています.
 本書は,画像評価に苦手意識を持つ方,難解に感じている方にこそ手に取っていただきたい一冊です.本書が,学生のみなさんの学びの助けとなることを心より願っております.
 2025年3月
 大村優慈


第1版 まえがき
 2000年以降の日本の医療の進歩はめざましく,特にME機器は,工学系の研究開発と連動して発展してきています.臨床現場でもますますペーパーレス化が進み,医療従事者は各々の仕事場のパソコン上で患者情報を検索・閲覧できるようになりました.患者情報の一つとして画像・映像があり,単純X線,X線CT,MRIの画像は直接リハビリテーション室で閲覧できるようになりました.当然,患者情報(画像および画像以外の情報を含む)を随時確認できる分,医師に限らずすべての医療スタッフには,それらの情報を読み取る知識・技術が求められるようになりました.
 臨床で活躍されているPT・OTの方々は,臨床の勉強会などで日々新しい知識を吸収されているでしょうが,今現在,PT・OTの養成校で学んでいる学生達は,学内で画像診断について学習し,卒業時には画像を読み取れるようになっていなければなりません.PT・OTの国家試験で画像問題が出題されるようになってすでに5年以上が経ちました.今後は,養成校内でも授業の一環として画像の読み方を教育していかなければならない時代となってきたのです.
 そこで,PT・OTを目指す学生達が基本的な画像の読み方を理解するための書籍として,本書を製作することに致しました.
 本書の特徴は以下のとおりです.
 1.基本的な画像の読み方を理解できるように,易しく説明している.
 2.実際に臨床で使用された単純X線,X線CT,MRIの画像を掲載している.
 3.1ページで,正常画像と病的画像を比較しながら説明している.
 4.病的画像の異常部位を示してわかりやすくしている.
 5.付録として「国家試験の画像問題」を掲載し,その解説を行っている.
 養成校学内での画像診断の学習,国家試験の画像問題の対策に本書をご活用いただき,画像が読めるPT・OTとして皆様方が養成校を巣立っていくことを願ってやみません.
 2014年1月
 中島雅美
 中島喜代彦
 第4版 まえがき
 改訂第4版の執筆にあたって
 第1版 まえがき
序章 PT・OTのための画像読影の基礎知識
 エックス線画像の基本的なポイント
 各画像の撮影方法
 リハビリテーション領域にかかわる代表的なMRIの撮像方法
 頭部画像の基本的な読影ポイント
第1章 脳
 正常像 脳
 疾患像
  1 (右)中大脳動脈閉塞
  2 (両側)脳動脈硬化・(左)後大脳動脈閉塞
  3 (両側)脳梗塞(前大脳動脈領域)
  4 (右)脳梗塞(中大脳動脈領域)
  5 (右)脳梗塞(後大脳動脈領域)
  6 (両側)脳梗塞(境界領域)
  7 (左)脳梗塞(放線冠の下部領域(1))
  8 (右)脳梗塞(放線冠の下部領域(2))
  9 (多発性)脳梗塞
  10 (右)脳梗塞(内包膝〜内包後脚領域)
  11 (右)脳梗塞(側頭葉〜後頭葉,中脳)
  12 (左)脳梗塞(橋)
  13 (右)脳梗塞(小脳半球)
  14 (左)被殻出血
  15 (左)視床出血
  16 小脳出血(虫部)
  17 小脳出血(虫部〜左半球)
  18 脳幹(橋)出血
  19 (左)皮質下出血(前頭葉)
  20 くも膜下出血
  21 くも膜下出血(コイリング術後)
  22 正常圧水頭症
  23 (左)慢性硬膜下血腫
  24 (右)急性硬膜下血腫・(両側)脳挫傷
  25 (左)急性硬膜外血腫
  26 脳腫瘍(神経膠腫)
  27 Alzheimer型認知症(急性硬膜外血腫術後)
  28 前頭側頭型認知症
 コラム(1) 観念運動失行
 コラム(2) 運動失調
第2章 体幹(肋骨・脊椎)
 正常像 脊椎
 疾患像
  1 肋骨骨折(第8・9・12肋骨骨折)
  2 頸椎椎間板ヘルニア
  3 頸椎症性脊髄症
  4 頸椎症性神経根症
  5 後縦靱帯骨化症
  6 Arnold-Chiari奇形
  7 脊髄空洞症
  8 腰椎圧迫骨折
  9 腰椎変性分離症(第5腰椎変性分離症)
  10 脊椎すべり症
  11 腰椎椎間板ヘルニア
  12 後縦靱帯骨化症
  13 脊柱管狭窄症
  14 強直性脊椎炎
  15 特発性側弯症
 Topics Cobb法
第3章 四肢(上肢・下肢)
 正常像 上肢
 疾患像:上肢
  1 (右)肩甲骨骨折
  2 (右)鎖骨骨折
  3 (左)肩鎖関節脱臼
  4 (左)肩甲上腕関節脱臼
  5 (右)肩腱板断裂
  6 (左)上腕骨骨頭骨折
  7 (右)上腕骨外科頸骨折
  8 (右)上腕骨近位端骨折
  9 (右)上腕骨骨幹部骨折(らせん骨折)
  10 (左)上腕骨顆上骨折
  11 (右)上腕骨内顆骨折
  12 (左)上腕骨外顆骨折
  13 (左)尺骨肘頭骨折
  14 (左)尺骨骨幹部骨折
  15 (右)橈骨骨幹部骨折
  16 (右)Monteggia骨折(尺骨骨幹部骨折および橈骨頭脱臼)
  17 (左)Galeazzi骨折〔遠位橈尺関節脱臼(手関節脱臼)を伴う橈骨骨幹部骨折〕
  18 (左)Colles骨折(橈骨遠位端背側転位骨折)
  19 (左)Smith骨折(橈骨遠位端掌側転位骨折)
  20 (左掌側)Barton骨折(橈骨遠位端関節内骨折)
  21 (右)Benet骨折
  22 (右)ボクサー骨折(中手骨頸部骨折)
  23 (左)(骨性)マレット変形(槌指)(DIP関節内の骨折)
  24 (右)(母指)Z変形(ダックネック変形)
  25 (右)(第2〜5指)ボタンホール変形
 正常像 下枝
 疾患像:下枝
  1 (右)恥骨骨折
  2 (右)Perthes病
  3 (両側)発育性股関節形成不全
  4 (両側)大腿骨頭すべり症
  5 (左)変形性股関節症
  6 (両側)人工股関節置換術
  7 (両側)大腿骨頸部内側骨折
  8 (左)大腿骨転子部骨折
  9 (左)大腿骨転子下(近位1/3部)骨折
  10 (右)大腿骨骨幹部骨折
  11 (右)大腿骨外側上顆骨折
  12 前十字靭帯損傷
  13 後十字靭帯損傷
  14 (右)内側・外側の半月板損傷
  15 (右)変形性膝関節症
  16 (右)変形性膝関節症/(右)人工膝関節全置換術
  17 (左)Osgood-Schlatter病
  18 脛骨中下1/3骨折および腓骨骨折
  19 (右)腓骨外果骨折
  20 関節リウマチ(左足部)
第4章 胸部(肺・心臓)
 正常像 胸部
  胸部画像の基本的な読影ポイント
 疾患像:肺
  1 肺気腫
  2 肺線維症
  3 胸水・肺水腫
  4 気胸
 疾患像:心臓
  1 (心臓弁膜症による)心拡大
  2 心タンポナーデ

 付録 第50〜59回国試精選問題集
 解答用紙
 解答
 索引