やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第7版の序
 中村隆一先生と齋藤宏先生が1976年に本書を世に送り出してから,もうすぐ半世紀を迎えようとしている.この間,本書は理学療法士,作業療法士などの専門職のバイブルとして,知識の支柱となってきたことは間違いない.しかし,2019年の年初に“諸行無常”を実感することになる.中村隆一先生が1月13日にご逝去されたとの一報を受け,諸先輩と共に最後をお見送りした.その後,本書を心から大切にしている研究者のなかで,後世に引き継ぐべく意見交換が進められ,この度,新たな一歩を踏み出すこととなったものである.今回の改訂においては,本書の核心部分を継承しながら,新たに定着してきた知見を加え,内容を整理することから始めた.
 さて,本書の英語名にはfundamental kinesiologyが付けられている.このキネシオロジーという用語は,わが国では戦後に体育学会を中心に取り入れられたものである.ただし,戦前においても,1902年には川瀬元九郎がPosse BNが著したSpecial kinesiology of educational gymnastics(1894)の訳本を『瑞典式教育的体操法』として出版し,1912年にはDu Bois-Reymond RのSpecielle Muskelphysiologie oder Bewegungslehre(1903)が『筋生理・運動学』として紹介されている.このように,戦後のわが国における“身体運動の科学”には,米国からの“kinesiology”とドイツからの“bewegungslehre”があった.
 戦後,1950年には日本体育学会が設立され,1957年には日本体育学会キネシオロジー専門分科会が設置され,さらに同年キネシオロジー研究会が発足したこの時期には宮畑虎彦と高木公三郎が『身体運動学(kinesiology)』を刊行(1957年),1968年には松井秀治が『身体運動学入門基礎編』を出版している.一方,岸野雄三,松田岩男らは1968年に『序説運動学』を書籍のタイトルに掲げ,訳語としては“身体運動学”と“運動学”が混在する状態となっていた.なお,運動の科学としての体系化を意識した場合には“身体運動学”,体育教育の体系化を意識した場合には“運動学”が用いられる傾向にあった.ところで,キネシオロジー研究会は1978年に日本バイオメカニクス学会へと移行し,体育・スポーツに関する研究においては機能解剖学中心のアメリカキネシオロジーから,力学中心のヨーロッパの“バイオメカニクス(biomechanics)”へと流れが変化した経緯がある.
 そのような時代背景のもと,医療専門職を意識した本書は『基礎運動学(fundamental kinesiology)』をタイトルに掲げたのであるが,そこには医療の側面からkinesiologyへのこだわりがあった.すなわち,機能解剖学,運動生理学,心理学などを統合した“身体運動の科学”がkinesiologyであり,リハビリテーション医療にはその概念が重要であるとの思いであったと受け止めている.しかし,その一方で力学(mechanics)が運動学(kinematics)と運動力学(kinetics)から構成され,訳語として定着していることも忘れてはならない.そこで,第7版においては本文中の“kinesiology”に対しては,“身体運動学”を用いることとした.本書がこれからも身体運動学を学ぶ多くの方々に読まれ続けることを願っている.
 ここで,改訂作業にあたり,ご理解とご指導をいただいた齋藤宏先生,長崎浩先生に心よりお礼申し上げたい.また,改訂について快く承諾してくださった中村隆一先生のご親族にも深謝する.
 令和6年11月
 編者を代表して
 藤澤宏幸


第6版の序
 昨年,『臨床運動学 第3版』の上梓に当たり,私たちは『基礎運動学 第5版』の記述が不十分であったことを痛感した.
 20世紀後半を振り返ってみると,1970年代の神経科学,80年代の認知科学,そして90年代の脳科学へと,運動学の基礎となる科学領域における発展はめざましいものであった.現在,それらは認知神経科学へと再統合される方向にあるように思える.しかし,人間の運動発達や運動学習を理解するためのモデルには,反射階層モデル,システムモデル,生態心理学やコネクショニストのモデルなどが複数の領域から提出されている.それらと並行して,姿勢や動作の制御にかかわる神経機構にも新たな仮説が導入され,感覚-運動過程を中枢神経系における情報処理というメタファーで説明することが盛んに行われている.また,運動行動について,それの意味的描写に終始し,原因となる生体の活動を区別して記述することが不十分なこともある.近年,脳画像の技術的進歩にともなって,運動行動と中枢神経系の活動との関連を検討することも進められるようになった.運動学の基底をなす自然科学の領域が急速に拡大しているのである.
 科学を,(1)人々に受け入れられる仕方で現象を記述し,(2)それを説明する概念的システムやモデル(説明的仮説)を掲げ,(3)モデルから諸現象を演繹し,(4)それらの現象を実際に確認するという過程であるとすれば,運動の性質や原因を予測できて,中枢神経系の解剖学および生理学の知識とすべての点で整合性を示しているような運動制御の理論は,現在のところ確立していない.
 このような状況を考慮して,今回はとくに動作の運動制御,運動発達と運動学習に多くの修正,加筆を行った.また,解剖学用語をはじめとして,全体を通して学術用語にもかなりの訂正を加えた.読者諸氏のご批判,ご教示を仰ぎたい.
 平成15年10月
 中村隆一

〔追記〕
 人体にかかわる名称が学問領域によって相違することがあるため,第6版第10刷の発行に際し,日本解剖学会監修『解剖学用語 改訂13版』(医学書院,2007)に準拠して用語の統一を図った.また,内容の一部に最近の知見を加え,主として第2〜5,10章を補足,訂正した.
 平成24年1月
 中村隆一

<付記>
 本書の共著者である中村隆一先生は2019(平成31)年1月にご逝去されました.先生のご冥福を心からお祈り申し上げます.
 本書は,1976年4月に第1版を発行して以来,今日まで40余年,第6版まで改訂を重ねることができました.この間,読者の皆様から多くの貴重なご意見,ご指摘,ご批判をいただき,その都度,検討を加えさせていただきました.さらに皆様のお役に立てるものとして充実させてまいりたいと考えております.今後ともご指導・ご教示を賜りますようお願い申し上げます.
 2020年12月
 著者を代表して
 齋藤 宏

<付記>
 これまで使用されてきた関節可動域表示ならびに測定法は,1995年2月に日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が協議して改訂されたものである.その後,解釈や運用のなかで,足関節・足部・趾に関する用語について種々の問題が指摘されるようになり,日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会,日本足の外科学会でそれぞれに検討が加えられた.その結果まとめられた新しい改訂案は2022年4月1日より発効することとなった.
 本書はこの改訂案にそって,用語・記載の修正を行った.
 2022年10月
 齋藤 宏


第5版の序
 『基礎運動学』の初版が出版されてから間もなく4半世紀になる.この間にも最近の知見を取り入れつつ,部分的な改訂は加えてきた.今回は全体の構成も検討して,数年をかけて規模の大きな見直しを行った.
 本書は人間の身体運動を理解するための基礎的知識を紹介することを旨として,また運動学は応用科学であることを前提に執筆してきた.身体運動を理解するために,現象としての身体運動を力学,解剖学と生理学へ還元して説明する試み,次いで運動を基礎として動作や行為を構成的に説明することに努めている.運動発達や運動学習では,心理学からのアプローチを主体とした記述が多くなる.この領域は神経科学あるいは脳科学によって説明できる段階に至ってはいないと思うからである.
 初版の「はじめに」で述べた「人間の運動をまず自分の眼で見て,紙とペンで記載できるところに運動学の基礎がある」という立場は,ここでも踏襲した心積もりである.しかし,身体運動の分析にかかわる各種機器の利用が比較的容易となった現在,言語だけでは正確な記述が困難である運動軌跡の説明などには,機器による測定記録を多く採用した.学生や研究生が機器の利用とデータの解釈に慣れることによって,現場における肉眼的観察が正確になることは,私たちの長年にわたる経験である.本書に描かれている運動軌跡,そのほかのデータを熟視することによって,運動分析に優れた技能を獲得されることを期待したい.そこに基礎運動学の出発点があるからである.
 平成12年1月
 中村隆一
 齋藤 宏

〔追記〕
 平成14年5月,私たちは臨床運動学第3版を上梓し,3次元空間における運動軌道や床反力記録など,多くの運動学的分析および運動力学的分析を紹介した.そのさい,種々の記録がどのようにして得られるのか,それらの意味づけはどのようにしてなされるのかに関する基礎的知識が,読者にあることを前提としていた.しかし,既存の「基礎運動学」では不十分である.そこで,長崎 浩教授の協力を得て,「2.力学の基礎」を「2.生体力学の基礎」と変更し,各種の機器によって得られるデータの処理法や意味づけの役に立つように,内容を大幅に改訂した.
 平成14年11月
 中村隆一


第4版の序
 高齢化社会を迎えるにあたって,わが国では昨年から保健医療と福祉の統合が進められている.慢性疾患や加齢に伴う身体運動機能とフィットネスの低下を予防あるいは改善するために,関連医療職種に求められる専門的知識と技能は多様になり,また高度のものになりつつある.
 このような状況を踏まえて,今回の改訂では「第9章 運動学習」に最新の知見を,そして新たに「第10章 身体良好と運動処方」を加えた.そのため,一部に重複があるが,御容赦頂きたい.その他,誤植と用語の修正を行った.
 この間,いろいろと御教示,御示唆を下さった読者諸氏に心から御礼を申し上げる次第である.
 平成3年12月
 中村隆一


第3版の序
 浅学を顧みずに「基礎運動学」を世に問うてから10年の歳月が流れた.振り返ってみると,この間に運動学の分野では以前にはなかった大きな変化が生れていた.
 運動生理学,生体エネルギー論が技術面に広く応用されるようになり,physical fitness,aerobicsなどの言葉も日常の用語となった.運動発現,運動制御の神経生理学は情報理論の応用により急速な発展をみせている.そしてパフォーマンス研究では,以前のproduct-oriented approachからprocess-oriented approachへの変化があり,運動の諸側面を力学的に説明する努力がなされている.また運動学習も独立した心理学の研究分野になりつつある.
 最新の知見,理論のうち,どれが多くの現象をよく説明できるか,あるいは近い将来体系化されるか,研究としては興味深い時代になっている.しかし,運動学への入門書としてこれをまとめるとなると至難の技になる.今回の改訂はいわば挑戦であり,賭けである.いずれにせよ,あらたな内容を必要とされている時であり,全面的に書き直す結果となった.改めて読者諸氏の御批判,御教示をお願いしたい.
 おわりに,今回の改訂にあたり用語の統一など編集にご尽力いただいた,医歯薬出版の田所洋之氏に感謝する.
 昭和62年12月
 中村隆一
 斎藤 宏


第2版の序
 昭和51年,「基礎運動学」が出版されてから7年が経過した.この間に,世間の健康と身体運動への関心は高まり,医師や理学療法士,作業療法士などの専門職への期待も大きくなった.これに適切な技術と指導をもって答えるためには運動学の基礎知識が不可欠であり,その拠り所として本書も何分の役割を果してきたと思っている.
 一方,学問の進歩もめざましく,各分野にわたって新しい知見も加えられている.しかし,入門書としての本書の性格を考慮して,今回の改訂でははじめの形式をそのまま踏襲した.随意運動の発現と制御過程,運動技能の発達と学習などはかなり内容を充実させたが,これらは,とくにリハビリテーション医学の分野では,初心者にとっても必須の知識であろうと判断したからである.
 本書が発刊以来,多くの読者を得たことは著者らにとって大きな喜びであり,また大きな責任も感じている.今後も機会のあるごとに改訂を加え,つねに新鮮な内容を保てるように努力する所存である.なお不備な点については,読者諸氏の御教示をお願いしたい.
 昭和58年1月
 中村隆一
 斎藤 宏


第1版の序
 臨床医学の中でも,動物生理系の疾患を対象とする分野は,今日でも植物生理系の疾患を対象とする領域にくらべてせまい.これは後者が直接生命の維持に結びつくからである.しかし輓近の医学の進歩は生命を維持する諸手段を大幅に可能にし,その進歩は著しい.次のテーマは当然生命ある個体の存在理由を最大限に発揮せしめる動物生理系,運動器官の機能の障害を出来るだけ克服することであろう.この領域を対象とするのが神経内科や整形外科,ことにリハビリテーション科などの諸科である.近年これらの諸科が発展し,重要性を認識されて来たのは,人間が生きるだけでなく,その人間性を発現するために何かを為すことの本質を医学の対象として掘り下げる学科であるからにほかならない.
 この領域の基礎的知識として運動学が重要性を加え,それに関する成書も次第に数を増している現状である.しかしそれらの成書はともすれば運動生理学に偏したり,応用解剖学に近かったり,あまりにもmechanizedな方法論に過ぎたりするものが多かったが,基礎と臨床の橋渡しをする立場から書かれたものとして本書は,全般をかたよることなく包括し,運動学の歴史,力学的基礎知識,運動器官すなわち骨,関節,筋と運動を調節・支配する末梢ならびに中枢神経の発生,構造と機能を,最新の知見にいたるまで,明解な図解とわかりやすく,しかも重点は漏らさない要領の良い著述により読者に伝える非常にすぐれた運動学書であると考える.ことに根底にある考え方として,人間の運動をまず自分の眼で見て紙とペンで記載するということから出発し,かつリハビリテーションの立場に立って論述していることが,方法論倒れし勝ちな運動学でなく,臨床に結びついたものとしている.
 著者の一人中村隆一君は,東大整形外科とその関連施設で,多年運動器官の諸病態につき研鑽を積んだうえ,東京都神経科学総合研究所のリハビリテーション研究室長に移られた,運動学の多方面にわたり深い学殖を持つ好学の士であり,共著者の斎藤宏君も東大整形外科で研鑽のうえ,同研究所主任研究員として中村室長を助け,次々とお二人で新しいアイデアのもとに研究をすすめ,成果を世に問うておられる新進学徒である.新知見だけでなく,運動学書に盛るべき内容を選ばれたセンスが,著書らの若く旺盛な研究意欲をそのまま伝えている.
 江湖にひろく自信をもっておすすめできる書であると考える.
 昭和51年3月
 東京大学医学部整形外科学教室
 主任教授 津山直一


はじめに
 人間の運動の科学と定義される運動学は,医学,物理学,心理学,社会学など多くの学問分野を統合したものの上に成立っている.そのため運動学というものは,独立した学問体系ではなく,人間の運動をみる一つの立場としての応用の学問としてとらえられるものである.現在のところ運動学の分野では,同じ研究手法によっても,時として異なった結果が報告されることがある.また,運動学で用いられる用語もまだ不統一で混乱している.これらのことから,運動学は今後も多くの修正が加えられる学問であるといえよう.
 人間の運動は,主として筋肉の収縮力を原動力として骨格に伝達されてなされるが,それは地球上に存在するかぎり,常に重力という外力の影響をうける動力学的現象である.そのため単に人体の解剖学的構造だけでは,人間の運動を分析することは不可能である.力学的要素,生理学的要素,心理学的要素などあらゆる知識を動員してはじめて理解されるものである.
 研究方法についても,筋電図,トランスジューサーなどの開発と応用は運動学の進歩に寄与するところは大きい.ことに筋電図は,動的な生体現象を記録できることから,運動学の歴史上重要な役割を果している.しかし本書では,これらの機器を用いての分析方法についての詳細は述べていない.それは,人間の運動をまず自分の眼で見て,紙とペンで記載できるというところに運動学の基礎があると信ずるからである.
 この書は,運動学の基礎的な知識が必須である医師,理学および作業療法士,体育指導者を対象として著るした.病的な,あるいは異常な運動を分析し,治療を行なうことは,発達段階を考慮した正常の人間の運動を理解した上ではじめて可能となることから,とくに運動学習,運動発達についても触れてある.
 おわりに,丁重な序文を賜った東大整形外科津山直一教授に御礼を申し上げる.
 東京都神経科学総合研究所
 リハビリテーション研究室
 中村隆一
 斎藤 宏
 第7版の序
 第6版の序
 第5版の序
 第4版の序
 第3版の序
 第2版の序
 第1版の序
 はじめに
1 身体運動学とは
 1 身体運動学とその領域
 2 身体運動学の歴史
 3 身体運動学の現状と展望
  1)身体運動学の分野と捉え方
  2)神経機構と心身二元論
  3)身体運動学における公理と法則
  4)自己組織化
  5)呼吸循環代謝領域
  6)運動発達領域
2 運動に関する身体の構造と機能
 1 解剖学と生理学
 2 細胞
  1)細胞の構造
  2)細胞内での化学反応
  3)細胞膜の興奮
   (1)静止電位
   (2)活動電位
  4)神経線維の興奮伝導
  5)神経線維の種類
 3 組織
  1)上皮組織
  2)結合組織
  3)筋組織
  4)神経組織
 4 運動器の構造と機能
  1)骨の構造と機能
   (1)基本構造
   (2)骨の循環系と神経系
   (3)骨の構成成分
   (4)骨の発生と成長
   (5)骨とビタミン,ホルモン
  2)関節の構造と機能
   (1)関節の分類
   (2)関節軟骨
   (3)関節包
   (4)滑膜と滑液
   (5)関節円板と関節半月
   (6)関節運動の表し方
  3)腱および靱帯の構造と機能
   (1)腱
   (2)靱帯
  4)骨格筋
   (1)骨格筋の構造
   (2)骨格筋の血管
   (3)骨格筋の微細構造と筋収縮機序
   (4)筋線維の種類
   (5)神経筋接合部と神経筋伝達
   (6)運動単位
   (7)筋収縮の基礎的性質
   (8)筋収縮の様態
   (9)筋の働き
   (10)筋肥大と筋萎縮
 5 神経系
  1)末梢神経系
   (1)体性神経線維
   (2)自律神経
  2)シナプス
   (1)シナプス伝達
   (2)神経回路網
  3)中枢神経系
   (1)脊髄
   (2)脳
   (3)運動性下行路の機能的分類
 6 反射
  1)反射運動
   (1)反射弓
   (2)反射運動の種類
   (3)中枢神経系と反射統合
  2)脊髄反射
   (1)伸張反射
   (2)屈筋反射
   (3)交差性反射
   (4)脊髄節間反射
   (5)反射の中枢制御
 7 感覚器の構造と機能
  1)感覚の性質
  2)感覚の分類
  3)体性感覚
   (1)皮膚受容器とその機能
   (2)固有受容器とその機能
   (3)体性感覚の伝導路
  4)平衡感覚
   (1)卵形嚢,球形嚢とその機能
   (2)半規管とその機能
   (3)前庭神経核の出力系
  5)視覚
   (1)眼球運動
   (2)眼球運動と視覚
   (3)視覚と姿勢,運動
 8 呼吸
  1)呼吸器
  2)換気
   (1)吸息
   (2)呼息
  3)肺活量測定と肺気量分画
  4)ガス交換
  5)呼吸運動の制御
   (1)呼吸運動の中枢
   (2)呼吸中枢の中枢性制御
   (3)呼吸中枢の末梢性制御
 9 血液と循環
  1)血液
   (1)血漿
   (2)細胞成分
  2)心臓
   (1)心臓の構造
   (2)心周期
   (3)心拍出量の調整
  3)体循環と肺循環
   (1)体循環
   (2)肺循環
  4)リンパ液とリンパ系
 10 体温調整
  1)熱の産生
  2)熱の喪失
  3)体温調節の機序
  4)運動の影響
 11 腎臓と酸塩基平衡
  1)腎臓の構造と機能
   (1)ネフロン
   (2)尿の生成
   (3)ホルモンによる調節
  2)尿
  3)酸塩基平衡
  4)運動と腎機能
 12 栄養とエネルギー代謝
  1)消化と吸収
  2)栄養素
   (1)糖質
   (2)脂質
   (3)蛋白
   (4)その他
  3)運動と消化機能
  4)エネルギー代謝
   (1)カロリー
   (2)エネルギー代謝の測定
   (3)基礎代謝
   (4)エネルギー代謝率
   (5)代謝当量
   (6)効率
 13 運動に対する呼吸循環応答
  1)体力
  2)運動負荷の系統
  3)心肺フィットネス(運動時の呼吸循環応答)
   (1)呼吸と循環の連関
   (2)換気
   (3)心拍出量
   (4)1回拍出量
   (5)心拍数
   (6)運動昇圧反射
  4)身体運動のエネルギー代謝
   (1)エネルギー供給
   (2)ATPの再合成と無酸素性閾値(嫌気性代謝閾値)
   (3)乳酸シャトル
   (4)静的運動におけるエネルギー供給
   (5)持続的運動時のエネルギー供給
   (6)ホルモンによる調整
  5)心肺フィットネスの指標
   (1)最大酸素摂取量(VO2max)
   (2)身体作業能力(PWC)
   (3)嫌気性代謝閾値(AT)
   (4)血中乳酸蓄積開始点(OBLA)
  6)運動強度
   (1)Karvonen法
   (2)主観的運動強度
  7)一定負荷に対する呼吸循環応答
3 生体力学の基礎
 1 身体運動と力学
  1)生体力学的アプローチ
  2)運動学と運動力学
 2 時間と空間
  1)時間
  2)空間
   (1)位置の直交座標表示
   (2)極座標表示
  3)身体運動の面と軸
   (1)基本肢位
   (2)運動の面と軸
 3 運動の観測
  1)観測
   (1)アナログとデジタル
   (2)観測表
   (3)観測表の例
  2)運動軌道とそのグラフ表示
   (1)運動軌道
   (2)位置-時間グラフ
 4 運動学的分析
  1)変位
  2)速度
   (1)平均速度と瞬間速度
   (2)速度の単位
   (3)運動時間
   (4)速度-時間グラフ
   (5)瞬間速度
  3)加速度
   (1)平均加速度
   (2)加速度の単位
   (3)加速度-時間グラフ
   (4)瞬間加速度
  4)変位,速度,加速度の関係
 5 回転運動
  1)並進運動と回転運動
   (1)関節運動の極座標表示
  2)角速度と角加速度
  3)接線速度と接線加速度
  4)スティック・ダイアグラム
  5)周期運動と振動
  6)振幅-周波数ダイアグラム
  7)角度空間と運動協調性
 6 筋力と重力
  1)筋の活動張力と重力
   (1)筋の静止張力と活動張力
   (2)重力
   (3)筋力と重力の働き
  2)ベクトル
   (1)ベクトルとスカラー
   (2)ベクトルの合成と分解
 7 モーメント
  1)剛体と回転運動
  2)モーメント
   (1)力の回転作用
   (2)モーメント,トルク
   (3)モーメントの向き
  3)剛体の平衡条件
   (1)回転平衡条件
   (2)並進平衡条件
   (3)てこの平衡
  4)重心
   (1)剛体の重心
   (2)バランスの安定性
   (3)体節の重心と体重心
   (4)外力と内力
 8 運動法則
  1)Newtonの運動法則
   (1)運動の第2法則
   (2)運動の第1法則
   (3)運動の第3法則
  2)質量と力の単位
   (1)質量と質量中心
   (2)力の単位:ニュートン
  3)重心の運動
   (1)重力加速度
   (2)重心の運動
   (3)重量
  4)剛体の回転運動
   (1)剛体の運動法則
   (2)身体運動の原因としての筋張力
   (3)身体運動の原因としての重力
   (4)連結した剛体の回転とトルク成分
  5)床反力
 9 仕事とエネルギー
  1)仕事
   (1)エネルギーと仕事
   (2)仕事率(パワー)
  2)力学的エネルギー
   (1)運動エネルギー
   (2)位置エネルギー
   (3)力学的エネルギーの保存法則
 10 身体とてこ
  1)てこの種類
   (1)第1のてこ
   (2)第2のてこ
   (3)第3のてこ
  2)てこの力学的有利性
   (1)力学的有利性
   (2)力の作用する角度
  3)滑車と輪軸
 11 骨と関節の運動
  1)骨の運動の基本形
  2)関節内の運動
4 四肢と体幹の運動
 1 機能解剖学─筋学を中心に
 2 上肢帯と上肢の運動
  1)上肢帯と肩関節での上腕の運動
   (1)関節と靱帯
   (2)上肢帯と肩関節での上腕の動き
   (3)上肢帯の筋
   (4)肩関節の筋
  2)肘関節と前腕の運動
   (1)関節と靱帯
   (2)肘関節における前腕の動き
   (3)肘関節の筋
  3)手関節と手の運動
   (1)手の皮膚
   (2)手の骨
   (3)手の関節と靱帯
   (4)腱鞘
   (5)指背腱膜
   (6)手関節と手の筋
   (7)手のアーチ
   (8)手の把持動作パターン
   (9)手の機能肢位
   (10)手の変形
 3 下肢帯と下肢の運動
  1)下肢帯と股関節の運動
   (1)関節と靱帯
   (2)股関節の動き
   (3)股関節の筋
  2)膝関節の運動
   (1)関節と靱帯
   (2)膝関節の動き
   (3)膝関節の筋
  3)足の関節と足の運動
   (1)関節と靱帯
   (2)足の筋
   (3)足のアーチ
   (4)足の変形
 4 体幹の運動
  1)頸椎の運動
   (1)頸椎
   (2)椎骨動脈
   (3)頸神経
   (4)頸部の筋
  2)胸椎と胸郭の運動
   (1)胸郭
   (2)関節
   (3)胸郭の動き
   (4)胸郭の筋
  3)腰椎の運動
   (1)腰椎
   (2)関節と靱帯
   (3)筋
 5 顔面および頭部の運動
   (1)頭蓋骨
   (2)頭部の筋
5 運動の制御機構
 1 運動制御の概念
  1)随意運動と運動制御
  2)フィードバック制御とフィードフォワード制御
  3)表象と運動行動
  4)運動行動からみた階層構造
 2 運動の計画と実行
  1)運動計画
  2)運動プログラム
  3)運動準備状態
  4)運動計画と実行の中枢神経機構
  5)運動計画と実行の情報処理過程
 3 運動制御モデル
  1)Mass-spring model
  2)Impulse-timing model
  3)内部モデル
  4)スキーマ・モデル
  5)最適軌道生成モデル
  6)HKBモデル
6 バランス制御
 1 姿勢の定義
  1)体位と構え
  2)アライメント
  3)静的姿勢と動的姿勢
  4)体格
 2 姿勢とその分類
  1)基本的立位姿勢
  2)姿勢の分類
  3)日常的な姿勢
  4)不良姿勢と分類
 3 バランス制御
  1)バランス制御の理論的背景
  2)反射階層理論─除脳動物による理論構築
   (1)除脳固縮
   (2)脊髄動物
   (3)低位除脳動物
   (4)高位除脳動物
   (5)大脳皮質の関与する反応
  3)ヒトの姿勢保持と平衡運動反射
   (1)静止姿勢保持の反射
   (2)平衡運動反射
   (3)姿勢保持にかかわる応答の適応性
  4)姿勢保持機構と意図的運動
  5)システム理論
  6)バランス制御における力学的平衡
   (1)並進平衡と回転平衡
   (2)体重心と圧中心の関係
   (3)安定性
   (4)静的バランスと動的バランス
  7)立位姿勢保持
   (1)安静立位姿勢と筋活動
   (2)立位姿勢保持の制御
7 運動と動作の分析
 1 運動行動の分析の枠組み
 2 分析の尺度水準(レベル)と測定技法の特徴
 3 運動分析(身体運動学的分析)
  1)分析の原則と手順
   (1)分析の原則
   (2)分析手順
  2)関節運動,筋活動の分析用語
   (1)観察された関節運動(observed joint action)
   (2)外力の関節運動への影響(joint action tendency of outside forces)
   (3)活動している筋群(muscle group active)
   (4)特定の筋活動(specific muscles active)
   (5)筋収縮の種類(kinds of contraction)
   (6)身体運動の種類(kinds of body movement)
   (7)好ましくない活動(undesired side actions)
  3)運動分析の例─腕立て伏せ
  4)分析の難易度
 4 作業・動作の分析
  1)作業分析
   (1)作業分析の方法
   (2)作業分析の例:庭散水
  2)動作分析
   (1)動作分析の方法
   (2)動作分析の例─ペンで文字を書く
  3)時間研究
   (1)時間研究の方法
   (2)時間研究の例─椅子間移動
   (3)作業測定の方法
8 日常動作
 1 日常生活活動と基本動作
 2 リーチ動作と把持動作
  1)運動学的分析
  2)運動力学的分析
  3)筋活動
 3 起き上がり動作と立ち上がり動作
  1)背臥位からの立ち上がり動作の動作分析
  2)椅子からの立ち上がり動作の運動分析
   (1)運動学的分析
   (2)運動力学的分析
   (3)筋活動
 4 歩行と走行
  1)歩行と運動学
  2)歩行周期
 5 運動学的分析
  1)体重心移動と体節回旋
   (1)体重心の軌跡
   (2)体節の回旋
  2)下肢関節の角度変化
  3)歩行の決定因
  4)歩行時の上肢の運動
 6 運動力学的分析
  1)床反力
  2)足底圧
  3)歩行時の筋モーメント
 7 筋電図ポリグラフ
 8 歩行時のエネルギー代謝
  1)エネルギー消費の測定
  2)歩行速度とエネルギー消費
  3)生理的コスト指数と6分間歩行テスト
 9 小児の歩行
  1)小児の起立と歩行の発達
  2)小児歩行の特徴
 10 高齢者の歩行
 11 歩行の神経機構
 12 異常歩行
  1)正常歩行の変形(歩き方のくせ)
  2)異常歩行の観察
  3)異常歩行の原因
   (1)運動器疾患による異常歩行
   (2)痛みによる異常歩行
   (3)神経筋疾患による異常歩行
 13 走行
  1)走行の姿勢と力学的原理
  2)運動学的分析(関節の運動)
  3)走行時の経済性と疲労
  4)走行の運動発達
 14 階段と踏台の昇降
  1)歩行周期
   (1)昇段(walking up stairs)
   (2)降段(walking down stairs)
  2)階段昇降の分析
  3)段差の昇降
 15 車椅子の推進
  1)推進周期と空間時間変数
   (1)押し出し相(push phase)
   (2)回復相(recovery phase)
  2)運動学的分析
  3)運動力学的分析
  4)筋電図ポリグラフ
  5)車椅子推進のエネルギー消費と呼吸循環器系の反応
9 運動発達
 1 発達とは
  1)成長,成熟と発達
  2)運動発達の研究の歴史
  3)発達段階
 2 発達分析
  1)発達分析について
   (1)状態像の特徴づけ
   (2)発達の特徴
  2)発達分析の手順
   (1)構造-機能分析
   (2)系列分析
   (3)移行分析
  3)運動発達研究への応用例
   (1)背臥位から立位への動作
   (2)重力下での協調運動の獲得
 3 中枢神経系の発生と運動発達
 4 胎児,幼児および学童期の運動発達
  1)胎児期
  2)乳幼児期
   (1)反射と反応
   (2)全身運動
  3)上肢の運動
  4)知覚運動機能
  5)学齢期の運動発達
 5 運動発達のテスト
  1)バランス反応テスト
  2)運動年齢テスト
  3)起居・移動のテスト
10 運動学習
 1 学習と記憶
  1)学習とは
   (1)学習の諸側面
   (2)2種類の学習
  2)感覚記憶,短期記憶と長期記憶
  3)2つの記憶系
  4)運動学習の特徴
 2 運動技能
  1)運動技能とパフォーマンス
  2)運動課題
  3)協調と制御,技能
  4)運動学習における感覚系の役割
  5)運動能力
 3 学習の諸理論
  1)生得的行動と学習行動
  2)単純学習
  3)条件づけ
   (1)古典的条件づけ
   (2)道具的条件づけ
  4)認知的立場の学習理論
 4 運動学習の諸理論
  1)運動学習における段階とは
  2)運動技能学習の3段階
  3)スキーマ(図式:schema)説
  4)運動学習への認知科学的アプローチ
   (1)ACT*モデル
   (2)ニューラルネットワーク・モデル
   (3)神経心理学的理論
 5 運動学習の神経生物学
  1)ニューロンとシナプス,局所回路の変化
  2)小脳
  3)大脳皮質と基底核
 6 練習と訓練
  1)練習と訓練,ドリル
  2)学習曲線
  3)練習の効果
  4)動機づけ
  5)フィードバック
  6)訓練および練習の時間
  7)全体法と部分法
  8)学習の転移
  9)運動技能の保持

 文献
 付録
  1.人体の骨格
  2.人体の筋
  3.皮膚の感覚神経
  4.四肢の末梢神経
  5.主な筋の神経支配
  6.関節可動域表示ならびに測定法
  7.本書で用いる単位:国際単位系(SI)に準拠(一部,他の単位を使用)
  8.モーメントアーム

 索引