やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦のことば
 東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座主任教授
 安保雅博
 亀戸大島クリニック・飯島治院長が,『要介護3・4・5の人のためのやる気がでる在宅リハビリ「なつかしの国」の扉を開けよう』を出版されました.『要介護3・4・5の人のための在宅リハビリ-やる気がでる簡単リハビリのすすめ-』の続編になります.
 日々の在宅診療・リハビリにおいて,患者さんのやる気をいかに起こさせようかとする工夫や努力が熱く伝わってくる本です.よりよい在宅リハビリを目指し,試行錯誤をされていないと書けない内容が随所に登場します.特別な装置を使うのではなく,全人的に考えてリハビリアプローチをするところもこの本の特徴的なところだと感じます.
 障害の医学であるリハビリテーション医学では,機能低下や能力低下などを正しく評価し,適切なリハビリアプローチを処方し,施行しなければなりません.また,必要に応じて対処法など教育的アプローチも行わなければいけないことは皆様ご存知のとおりです.しかしながら,それを成功させるには,やはり患者さんの「やる気」の有無が大切になってきます.要するに,手段手法はどうであれ,「やる気」にさせないと話になりません.やる気がないと,どんなによい残存機能があっても引き出すことができないからです.そのやる気の1つのきっかけとなるものが,「成功のコツは仏壇と広瀬中佐だった」になるわけです.私も試しに昭和1桁以前に生まれた数人の患者さんに広瀬中佐の歌を口ずさんでみたら,皆が歌いました.外来が長引いたのはいうまでもありません…….
 高齢化はどんどん進む一方であり,寝たきり患者も寝たきり予備軍も増え続けています.何としても,飯島院長のいうように,広瀬中佐など,高齢者と共感できるものを見つけ出し,やる気を起こさせ,攻めのリハビリをして,自分でできることは自分でする環境を整えたいものです.これは,入院中でも在宅でも同様のことです.
 多くの方がこの本を読み,実践されることを期待し,本書を推薦したいと思います.
 2010年6月
 プロローグ
  ・ある学生さんの悩み(実習中のKくんのぼやき)
  ・源じいさんのリハビリ
 推薦のことば(安保雅博 東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座主任教授)
A.「なつかしの国」の扉を開けよう
 1.お帰りなさい「なつかしの国」へ
 2.我々の知らない「なつかしの国」とは?
 3.「なつかしの国」を知り,お年寄りと友達になる
  (1)まず大日本帝国へ入り込む
  (2)お年寄りの昔話はかなり正確であることを知っておく(傾聴に値する話が聞ける)
  (3)年代によってかなり話題が異なることに気付く
 4.お年寄りが目を輝かせてしゃべり続ける5つの話題
  (1)太平洋戦争で空襲を受けた話,疎開した話
  (2)戦地での話
  (3)食べ物の話
  (4)出身地の話
  (5)(尋常)小学校時代の話,女学校時代の話
 5.広瀬中佐発見!
 6.いざ「なつかしの国」へ
 7.「世代のカベ」をぶち壊せ!
 8.キーワードは「人とのつながり」と「安心感」
 9.とにかく歌って「なつかしの国」に入り込もう
 10.「広瀬中佐」とその背景(1)〜(3)
 11.大日本帝国生まれであるお年寄りが元気になる歌とその背景
  (1)「水師営の会見」(大日本帝国の誇りの歌)
  (2)「戦友」(お年寄りの心が落ち着く歌)
  (3)「愛国行進曲」(体が動いてしまう歌)
  (4)「イチレツランパン」(すべての元“女の子”の右手が動いてしまう魔法の歌)
  (5)お年寄りはなぜ軍歌を好むのか
  (6)お年寄りがなつかしむ唱歌
 12.お年寄りと盛り上がれるキーワード10選
  その1 東京大空襲に代表される「空襲」
  その2 「爆弾(肉弾)三勇士」(1920〜1930年代生まれの人に聞いてみよう)
  その3 「木口小平は死んでもラッパを口から離しませんでした」(1920年代生まれの人に聞いてみよう)
  その4 「尋常小学校」と「国民学校」
  その5 「女子挺身隊」と「勤労奉仕」
  その6 「防空壕」
  その7 「疎開」と「食料難」
  その8 「手まり歌」(昔の女の子限定),「手あそび歌」
  その9 「貫一・お宮」(金色夜叉)
  その10 「李香蘭」(山口淑子)
B.仏壇リハビリ発見!
 1.仏壇リハビリ発見!
 2.要介護認定と仏壇
  超簡単 要介護度判定法
  当院における要介護度と仏壇水供えの関係
 3.インカ帝国のミイラと日本の仏壇
 4.認知症と仏壇
 5.高齢社会における仏壇リハビリの重要性
 6.なぜそこまでして水を供えるのか?
 7.企画倒れの「水備えマシーン」
 8.どうして仏壇がそんなに大切なのか?
 9.仏壇前ペットボトルは一石三鳥
 10.亡くなった子どもの名前書きリハビリ
C.お年寄りの話を聞く
 1.何を話したらよいか?-「家の中はヒントだらけ」
 2.心のリハビリに必要なものとは?
 3.傾聴のコツ
  (1)“オウム返し”の術
  (2)“映し鏡”の術
  (3)“雑談”の術
 4.知っておきたい基礎知識
  (1)座る位置
  (2)視線の高さ
  (3)距離
 5.お年寄りの話しをリハビリにつなげる
  (1)仏壇モデル
  (2)傾聴モデル
  (3)だらけ体操モデル
 6.認知症かな?と思ったら
 7.お年寄りのプライド(今なお誇りに思い続けていること)――男は海軍,女は女学校(当時のエリートたち)
 8.お盆とお彼岸
 9.シンガポール陥落に想う
D.新発明オリジナルリハビリ集
 1.だらけ体操
  1)だらけ体操とは
   ・やり方/いいところ/何回やればいいの?
  2)「心」と「体」に効き,笑いを引き出す脱力系の体操
   (1)なぜ“だらけ”なのか?
   (2)身体面からみた効果
   (3)真のねらいは「心」
   (4)総合的な効能
  3)脳卒中の片麻痺の場合
   脳卒中の片麻痺に対する考え方
  4)大腰筋をきたえて転倒防止
  5)漬け物桶足湯だらけ体操
  6)青竹踏みだらけ体操
 2.ペットボトルブクブクリハビリ
 3.チャンバラリハビリ
 4.孫の名前書き体操
 5.着メロリハビリ
 6.ぬいぐるみキャッチリハビリ
 7.膝拘縮ちゃぶ台リハビリ
 8.週刊誌まるめ・手すりイメージトレーニング
 9.新聞紙破り・まるめリハビリ
 10.深おじぎ肩まわしリハビリ
 11.貧乏ゆすり立ち上がり法
 12.足裏トントンマッサージ
 13.ユラユラリハビリ
   (1)のけぞりユラユラリハビリ
   (2)ふねこぎユラユラリハビリ
 14.盆踊り 炭坑節リハビリ
E.在宅リハビリの実際-攻めのリハビリ
 1.在宅リハビリには「攻め」と「守り」がある
 2.「攻めのリハビリ」とは?(骨盤を起こせば豊かな人生を送れる)
 3.大人気のK先生の在宅リハビリ実況中継
  (1)ベッド上編
  (2)座位編
  (3)立位編
 4.リハビリのニーズが高い「脳卒中片麻痺:要介護4」の人のための「攻めのリハビリ」
  (1)チークダンス・カニ歩きリハビリ(絶望の淵から生還させる希望のリハビリ)
  (2)“つき出し”サイドレール立ち上がり法(福祉用具の進歩のたまもの)
  (3)患肢すくい上げひねり座り法(介護者の腰を守る介護継続のためのリハビリ)
  (4)すねさすり・おじぎリハビリ(靴の着脱をめざして)
  (5)予後を予測し,リハビリニーズを探る
  (6)脳卒中の運動麻痺の評価法であるブルンストローム・ステージを学ぶ
 5.急増する「膝が伸びない認知症のお年寄り」のための「攻めのリハビリ」
  ・手すり利用・横歩き法
 6.膝に関する「攻めのリハビリ」
 7.「円背のおばあちゃん(要介護3〜4)」のための「攻めのリハビリ」
  ・スキージャンプ台立ち上がり歩行法(立って歩いた,あの青春をもういちど)
 8.「両下肢筋力低下(要介護3〜4)」のための「攻めのリハビリ」
 9.「嚥下リハビリが必要な人」のための「攻めのリハビリ」
  (1)「くるリーナブラシ」ごしごしリハビリ
  (2)嚥下障害って何だろう?
  (3)障害を評価する
   a.30秒間ツバゴックンテスト
   b.水飲みテスト
  (4)ガムかみリハビリ
 10.「認知症のため,現在と過去がごちゃごちゃで会話にとりとめがない人」のための「攻めのリハビリ」
  ・「これでいいのだ!」法
 11.「さすが」「また来てほしい」と思わせるための「攻めのリハビリ」
 12.そもそも「リハビリ」とは何だろう?
 13.21世紀の在宅リハビリとは?

 エピローグ
 あとがきにかえて
  「私には夢がある」