やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「在宅でのリハビリがわかりません」
 こんな言葉をよく聞きます.「ごもっとも!」
 在宅で適切なリハビリを行うことは,大変難しいものです.しかし,あなたの目の前には,リハビリを必要としている患者さんがいて,ご家族もあなたのリハビリを待っています.
 早くはじめなければ…….
 そこで,今までの経験と知識を総動員し,目の前の患者さんにリハビリを開始します.「本当にこのやり方でいいんだろうか?」と自問自答しながら……
 在宅での現実はこんなところではないでしょうか.
 私が訪問診療をはじめたばかりの頃,毎日のように訪問先で患者さんやご家族に,リハビリのやり方を質問されました.満足に答えられなかったため,リハビリの教科書を買いに行きました.ところが,書かれているのは脳卒中の病院内でのリハビリのことばかりで,在宅でのリハビリのことがほとんど書かれていないのでがっかりしました.
 それからというもの,在宅でのリハビリについて,現場ですぐに使える実践的な本が欲しいと思っていました.そのような私自身の経験から,本書は在宅でのリハビリを理解,実践していただけるように図表やイラストを多く取り入れてあります.そして在宅リハビリ最大のテーマである「やる気を出すにはどうしたらよいか?」について,解決法を追求しました.
 また,実際に在宅リハビリを行っているスタッフに直接インタビューをして,日々の素朴な疑問を聞き取り,調査し,その疑問を解消していただけるように工夫しました.
 訪問看護師,理学療法士,作業療法士,マッサージ師のみなさん,あるいは訪問ヘルパーなど在宅スタッフのみなさん,もう闇の中で,自問自答しながらリハビリをする必要はありません.
 さあ,はじめましょう.患者さんもご家族もあなたがくるのを待っています!!
 2006年8月
 在宅リハビリ探検家 飯島 治
 すいせんの序(山崎摩耶)
 はじめに
 目次

I.やる気をだすには?
 1.やる気をだすには?(苦悩)
 2.ある認知症患者さんに教わったこと
 3.みんな「昔」を語り始めた
 4.なぜ急に昔を語りはじめたか
 5.話の内容
 6.お年寄りに教わる
 7.「ギブ&テイク」の関係を作る
 8.「自己愛」を感じてもらい「気力」を引き出す
 9.イチレツランパン破裂して
 10.在宅リハビリ発展のためには
 11.「心」と「身体」は一体だ
II.在宅リハビリの現状
 1.ヤミの中の行為
 2.これが在宅リハビリの現実
 3.国(厚生労働省)と現場のギャップ
III.リハビリの実際
 A●要介護3,4,5の人におすすめのリハビリ
  1.だらけ体操
   (1)紹介
   (2)多くのバリエーション
   (3)誕生秘話
   (4)なぜ「だらけ」なのか
   (5)なぜ効果があるのか,その背景を考える
   (6)真のねらい
   (7)どんな患者さんによいのか
   (8)何回やればよいのか
   (9)脳梗塞の片麻痺に対する考え方
   (10)身体面からみた効果
  2.だらけ体操では物足りない人におすすめのリハビリ
   あわおどり体操
  3.パワーリハビリvs.だらけ体操
  4.だらけ呼吸
   (1)紹介
   (2)やり方
   (3)その意義
    〈1〉身体について
    〈2〉心について
  5.要介護4,5の人におすすめのリハビリ
   (1)足裏トントンマッサージ
   (2)のけぞりユラユラリハビリ
   (3)ふねこぎユラユラリハビリ
   (4)尻上げ・股開きリハビリ(尊厳リハビリ)
   (5)ミニペットボトルホカホカリハビリ
    コラム:ミニペットボトルホカホカリハビリは脳にも効く!!
   (6)チークダンスバランスリハビリ
 B●要介護2,3の人におすすめのリハビリ
   (1)カベピタ立位リハビリ
   (2)へそ出し立ち上がりリハビリ
   (3)カベピタ立位リハビリ,へそ出し立ち上がりリハビリを上手に行うためには?
   (4)転ばないように歩くためには?
   (5)スイングバー・ポータブルトイレ足踏みリハビリ
 C●嚥下・構音(発声)リハビリ
  1.嚥下・構音障害とリハビリ
  2.障害を評価する(患者さんの嚥下力を評価するテスト)
  3.実践―知ってしまえば簡単にできるリハビリの紹介
   1)バカバカ発声リハビリ
   2)ペットボトルブクブクリハビリ
    コラム:大人気のペットボトルブクブクリハビリ
   3)食事前の準備運動(首・口・舌・顔の体操,深呼吸,発声練習)
   4)カラオケリハビリ
   5)ヒエヒエスプーンリハビリ(アイスマッサージ)
   6)口腔ケア
    a.いまなぜ口腔ケアなのか?
    b.口腔ケアの実際
    c.おすすめグッズ紹介
    d.口腔ケア中の誤嚥を防ぐ
    e.脳卒中の左右差を意識する
    f.胃瘻が造設されている人こそ口腔ケアが必要
    コラム:
     (1)口を開けたままゴックンさせないで
     (2)カバくんに学ぶ正しいうがい法
   7)肺炎のリスクをにする意外な薬
 D●すでに拘縮してしまっている人におすすめのリハビリ
  関節ゆるゆるリハビリ
   (1)紹介
   (2)リハビリ前の基礎知識
   (3)実践
    〈1〉はじめに
    〈2〉足指の関節のリハビリ
    〈3〉足関節のリハビリ
    〈4〉膝関節のリハビリ
    〈5〉股関節のリハビリ
    〈6〉手指と手関節のリハビリ
    〈7〉肘関節のリハビリ
    〈8〉肩関節のリハビリ
 E●在宅リハビリの「格言」/時間配分とリハビリの実例
  1.在宅リハビリの「格言」
   1)訪問時,まず「顔色」「バンザイ」チェック
   2)迷ったときは本人や介護者に聞こう
   3)「いつもと違う」は立派な症状
   4)必須ツールは「ばか話」
  2.時間配分とリハビリの実例
IV.現場の疑問に答える
 Q1.やる気のない人に対するリハビリの方法は?
 Q2.だんだん気力がなくなり,食欲と体力が低下してきたのですが
 Q3.週1〜2回のリハビリで効果はあるの?
  コラム:腰痛を訴えているときはリハビリをするべきか?
 Q4.腰椎圧迫骨折後の痛みの評価は?
 Q5.冷たい湿布と温かい湿布
 Q6.リハビリの目標設定ができない場合の対処法
 Q7.車いすからの転落予防には
 Q8.足踏み運動のコツは?
 Q9.筋トレの動機づけ
 Q10.膝の関節拘縮を伸ばすには?
 Q11.膝関節拘縮で痛がるときの対処法
 Q12.肥満による膝痛に運動は?
 Q13.膝の水を抜くとクセになる?
 Q14.痛みのためリハビリが進められない
 Q15.腰椎が骨折したかどうかを見分ける方法は?
 Q16.肋骨を骨折しているかどうか見分けるには?
 Q17.おなかを痛がる患者さんを動かしてよいか
 Q18.痛がったかと思うとすぐすいすい歩き出したりする場合,リハビリは
 Q19.骨粗鬆症による痛みの緩和法
 Q20.リハビリ中にふるえ出したらどうすればよいか
 Q21.片麻痺でも車いすをうまく操作するコツは?
 Q22.鍼(はり)や灸(きゅう)の質問にはどう答えたらよいのか?
 Q23.家で使える歩行器を紹介して
 Q24.膝に効くサプリメントって?
 Q25.ペットセラピー導入についてアドバイスを
V.疾患に応じたリハビリのポイント
 1.脳卒中
  1)脳卒中とリハビリ
  2)脳の仕組み
  3)片麻痺とは
  4)左麻痺は転倒注意
  5)慢性期のリハビリの考え方
  6)運動麻痺を評価する
   (a)ブルンストロームテスト
   (b)脳卒中の回復過程の特殊性を知る
   (c)ブルンストロームテストで簡単評価
   (d)ブルンストロームテストの利用─下肢麻痺とADLの考え方
  7)車いす訓練
  8)着替えはリハビリにもってこい
  9)拘縮のリハビリ
  10)肩の亜脱臼に注意?そんなに神経質にならないで
  11)脳卒中の「痛み」と「しびれ」は難治性
 2.骨折
  1)お年寄りの骨折とは
  2)寝たきりを防ぐには
  3)大腿骨頸部骨折のリハビリ
  4)腰椎圧迫骨折のリハビリ
   コラム:腰の重だるさが残る→腰背筋の疲れによるもの
  5)橈骨遠位端骨折のリハビリ
  6)上腕骨頸部骨折
  7)2度と骨折しないためには
 3.変形性膝関節症
  1)変形性膝関節症とは
  2)治療の3本柱
  3)運動療法
   大腿四頭筋訓練(足上げ体操/座って足上げ体操/足踏み体操/タオル押しつけ体操)
  4)物理療法
 4.変形性腰椎症
  1)いわゆる老化による腰痛
  2)在宅リハビリの考え方
  3)リハビリの実際
   (温熱療法/腰背筋のストレッチング)
 5.リウマチ
  1)リウマチとは
  2)3つのタイプ
   コラム:根拠のない健康食品をすすめないで
  3)リウマチ患者さんは賢い
  4)「リウマチのリハビリ」の特徴
  5)在宅リハビリのキッカケを作る
  6)少しずつ体を動かすリハビリを紹介する
  7)リウマチ体操
 6.パーキンソン病
  1)パーキンソン病とは
  2)まず介護者にねぎらいの言葉を
  3)パーキンソン病はこんな病気
   コラム:パーキンソン病は転倒注意
  4)リハビリ前の基礎知識
  5)リハビリの実際
   (A)押しかえして〜リハビリ
   (B)吸って〜,吐いて〜リハビリ
   (C)ゴルフスイング寝返り起き上がりリハビリ
   (D)バージンロード歩行リハビリ
   (E)横断歩道またげまたげリハビリ
   (F)前方足出し歩行介助法
VI.リハビリの基礎知識
 1.なぜリハビリをするのか
 2.どのタイプか考える
 3.脳卒中・骨折タイプのリハビリ
 4.加齢タイプのリハビリ
 5.介護援助タイプのリハビリ
 6.3つのタイプは連鎖する
 7.お年寄りのための新しい運動の考え方
 8.リハビリ中止の基準 (1)血圧
 9.リハビリ中止の基準 (2)痛み
 10.生活状況を評価する
 11.身体状況を評価する
 12.病院リハビリと在宅リハビリのちがい
 13.在宅リハビリスタッフはスーパーマン??
 14.心臓病患者にリハビリは可能か?
 15.寝たきりにさせないためにはまず「座る」こと
 16.「座る」リハビリのすすめ方と注意点
 17.「立つ」リハビリ
 18.「歩く」リハビリ
 19.安易に「転倒注意」と言わないで
 20.お年寄りの寝たきり予防とは
 21.要介護5の考え方から学ぶもの

 あとがき