やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発行にあたって
 手技療法の特徴の1つは,未病を治するというところにあります.未病を治するとは病気になる以前の状態に対策を行い,病気を未然に防ぐということです.生活習慣病と呼び,よい生活習慣のなかで予防しようという考え方と同じものです.手技療法は,よい生活習慣による病気の予防という場面で,よい休養習慣の最も頼れる専門的技術なのです.
 現在,あん摩マッサージ指圧師免許を持たないものによる類似の手技療法が氾濫しており,無免許の問題を含め制度設計,技術の向上などの抜本的な見直しの時期にきているように思います.
 従来のテキストは,施術する部位および流れについては詳しく書かれていますが,施術者の立つ位置や施術を行っている時の向きなどについて書かれているものは非常に少ないのです.そこで,簡単にわかりやすく,立つ位置や向きなどを解説した本を作れないかと考え,手技のテキストを書いてみることとなったのです.
 まず,ごく簡単に各手技の基本的事項の概要を確認し,いちばん重要な中身の技法については,現在行われているものをもう一度見直し,伝統的なよいところを残しつつ,未来志向の手技を開発していかなければならないと考えました.第一歩として,術者は,(1)右手,左手はどこに置き,(2)どの位置に立ち,(3)どこをみて,(4)どのように行うのか,(5)さらに何をしようとしているのかの視点から手技のテキストを書けないだろうかとの考えのもとに,立ち位置,向きについて重点をおいて執筆していただけるよう,著者の先生方にお願いをしました.
 次に,日本にマッサージ技術を導入した先達の業績を紹介し,さらに欧米における手技療法研究の現状はどうなっているのか,英文文献をレビューしました.そして根拠に基づく医療(EBM)という時代の要請にも対応でき,自信をもって施術にあたっていただけるよう,手技療法の自律神経反射機構を明らかにしました.
 また,全体にわかりやすい解説を行うように努め,読みやすく,役に立つテキストにしました.
 皆様方のご意見・ご感想をいただいて,さらによいものにしていきたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします.
 2006年1月
 編著者 森 英俊
 ・「心地よさ」を商品とする手技療法を学べ技術を高められる書として推薦します(西條一止)
 ・発行にあたって(森 英俊)
はじめに あん摩・マッサージ・指圧(森 英俊・殿山 希)
 1.あん摩・マッサージ・指圧
 2.あん摩・マッサージ・指圧(手技療法)の歴史
  1)あん摩の歴史
  2)マッサージの歴史
  3)指圧の歴史
 3.あん摩・マッサージ・指圧の
  違いと特徴
 4.あん摩・マッサージ・指圧のこつ
 5.基本手技
  1)軽擦法(なでる方法)
  2)揉捏法(もむ方法)
  3)圧迫法(おす方法)
  4)振せん法(ふるわす方法)
  5)叩打法(たたく方法)
  6)強擦法(もみ,こねる方法)
  7)曲手
 6.おわりに
第1部 プロトタイプA(あん摩)(上田正一・森 英俊)
 プロトタイプA(あん摩)で用いる用語
  補足事項
 プロトタイプA(あん摩)の術式
  I.側臥位
   A.左側臥位
   1.頸肩部
   2.上肢
   3.腰部
   4.下肢
   B.右側臥位
  II.腹臥位
   (肩上部・肩甲間部・上腕部・背部・腰部・殿部・下肢)
  III.仰臥位
   (下肢)
  IV.座位
   (頭頸部・肩上部・上背部)
第2部 ライトオイルマッサージ(谷脇英一)
  ライトオイルマッサージの術式
  手技・効果・目的
  マッサージを行うにあたって(注意事項)
 I.腹臥位
  1.頸・肩・背・腰部
  2.下肢後面
 II.仰臥位〔背臥位〕
  1.下肢前面
  2.上肢
  3.腹部
  4.頸・胸部(デコルテ)
第3部 指圧(木下 誠)
 はじめに
  A.指圧療法の概要
  B.押圧操作
   <押圧操作の基本>
  C.指圧操作の3原則
  D.圧の強弱の段階
  E.手指操作法の種類
  F.圧法の種類(基本圧法)
  G.運動操作(運動法)
  H.指圧の心得
 指圧の術式
  I.側臥位〔横臥位〕(マット)
   A.左側
    1.頸部
    2.肩背腰部
   B.右側
  II.伏臥位〔腹臥位〕(マット)
   A.正中
    1.頭項部
   B.左右両側
    後頸部
   C.左側
    1.肩背部,腰部
    2.殿部,下肢
   D.右側
   E.左右両側・正中
    1.背部調整
  III.仰臥位〔背臥位〕
   A.左側
    1.下肢
    2.上肢
   B.右側
   C.正中,左・右,左右両側
    1.頭部
    2.顔面
    3.胸部
    4.腹部
  IV.座位
   A.左・右,左右同時
    1.頸部
    2.頭部
    3.肩・背部
日本にマッサージ技術を導入した人々(野口栄太郎)
 1.はじめに
 2.マッサージと2人の陸軍軍医
 3.明治のマッサージ書
 4.盲学校とマッサージ
 5.おわりに
あん摩・マッサージ・指圧の効果─とくに欧米における手技療法研究の現状(田中秀明・森 英俊)
 1.皮膚,筋の循環に及ぼす反応および効果
 2.手技療法が筋に及ぼす影響
  1)筋疲労に対する手技療法の効果
  2)遅発性筋痛に対する手技療法の効果
  3)筋機能に対するマッサージの筋電図学的検討
 3.手技療法が自律神経機能へ及ぼす影響
 4.マッサージが免疫機能に及ぼす影響
 5.マッサージが内分泌に及ぼす影響
 6.手技療法研究の現状と今後の課題
 文献
手技療法の生理学的機序─自律神経反射の立場から(大沢秀雄)
 1.はじめに
 2.体性─内臓(自律神経)反射
  1)脊髄分節反射
  2)上脊髄反射
 3.種々の自律機能に及ぼす体性感覚刺激の効果
  1)心拍数・血圧
  2)胃腸運動
  3)膀胱
  4)尿管
  5)子宮運動と子宮血流
  6)瞳孔
  7)副腎髄質機能
  8)脳血流
 4.軸索反射
 5.内臓-内臓(自律神経)反射
 まとめ

 ・編集者略歴